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5章 潜入!魔族の国……な件

俺たちがシリアルだ!

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 俺が魔王軍の陣地から踏み出すと、義勇軍側からも一人歩いてくるのが見えた。

「――よぉ、一ヶ月と少しぶりだな。魔断ちの斬れ味はどうよ?」

 俺たちの頼れる兄貴分・流さんであった。

「すげースパスパ斬れて、助かってんよ。特にアンデット無双の時とか」
「……まー、魔を断つ刀だしなぁ」
「ちなみにそっち監視役とか居ねーの?」
「教官ならその辺に転がってるぜ」
「――教官が死んだ!? この人でなし!!」
「死んでねーから! 荒縄で縛った上で昏倒魔術かけてるだけだっつの!」
「荒縄プレイとはまたマニアックな……」

 教官が新たな趣味に目覚めてしまうではないか!

「――とまぁ、小粋なトークはこの辺りにしとくか」

 コホンと咳払いをする流。ここからはシリアスモードという訳だな。俺も頷く。

「……で、何でお前が魔王側に居んの? あとシータちゃんは何処だ? 別れたのか、なら俺に譲れ」
「どさくさに紛れて願望がダダ漏れになってんぞ、流さんや。あとシータは正式に俺の彼女になりましたー。あげませーん」
「なん、だと……!?」

 ――俺たちにシリアスは無理だった。シリアルうまい。あとな、魔国の中心でプロポーズとかいう羞恥プレイまでして得た彼女をそう簡単に手放すものか!

「ちなみに魔王に全権委任されて、魔国の和平大使になったんでよろしく!」

 俺の宣言に目を丸くする流。
 正式決定ではないがウソは言ってない。遠からずそうなるんだからウソじゃねーのです。

「というわけで、ここで魔王軍と戦われると困る。一時的に魔国の保護下に入ってもらいたい」
「まー、お前がいるならアルスターの保護下よりはマシっぽいな、魔国」
「魔王も国民も基本的に平和主義者だからな。何処ぞの職業差別国よりは断然マシだ」
「根に持ってんなー。暗殺までされかけたんだから当然っちゃ当然だが」

 流さん「それにしても平和主義者の魔王とかwww」とか草生やしてらっしゃる。

「そういや甲斐先生はどうしたんだ? こういう交渉ごとだと真っ先に出てきそうなモンだが……」

 思えばおかしい。流はクラスの兄貴分ではあるが、今はあくまでも生産職連中のリーダーであって全体のまとめ役ではない。こっから見える範囲だと戦闘職の奴らもいるから、普通に考えれば全体のまとめ役である甲斐先生が出てこないのはおかしい。

 うん? いや、よーく見てみよう。

「……そういや、なんか、人数が、ちょっと、足りない、ような……」

 俺の途切れ途切れの言葉に流はバツの悪い顔をした。

「……それがな、勇者パーティーは先行して魔王の討伐に行っちまってだな……」

 勇者パーティーすなわち、勇者・早乙女、聖女・新名、聖騎士・石田、賢者・甲斐先生の四人である。聞くと一日先行して魔国入りしたとのこと。

「やべぇ、あの脳筋魔王絶対に即応戦しやがる!」

 アイツ、殴られたら殴り返す系! 全てが台無しになる前に止めねぇと。勇者と魔王が戦ったという既成事実を作っちゃイカン!

「あと、騎士団長が妙な動きしてんだわ。ジャックロットまで軍連れてきてたのに別行動とかあり得なくね?」

 ――別・行・動!

 ついさっき似たようなことがありましたね。シータさんったら、もしかして騎士団長を見つけた……? 俺たちよりはつきあい長いだろうし、奴らの行動パターンが読めてもおかしくない。問題なのは戦力がこちら側に極振りされているので、シータが一人で応戦している可能性が高いこと。

「――シータが危ない!」
「姿が見えないと思ったら、単独別行動させてたのかよお前!?」
「ちょっと様子見てきますねーなんて軽い調子で言われたら、『おう、わかった』としか言えねーよ!」
「どっちだ!?」
「ここから見て街の反対側だ!!」

 まるで示し合わせたかのようにドォンと大きな音が響いた。まさに今言った方角から上がった音。そして立ち上り始める煙。

「おい、神山! 俺は皆に事情話して誘導するから、お前も魔王軍にナシつけたら急いでシータちゃん助けに行ってこい!!」
「わかった!」

 義勇軍というかクラスメートの元にとって返した流と同時に、俺も魔王軍の責任者の元へと走った。

 事情を説明し、義勇軍は敵ではない事を伝えると俺は一目散に飛竜へと飛び乗る。向かうは戦闘が起こっていると思しき地点。だが今までにないほどの焦燥感。嫌な汗が吹き出して止まらない。


 無事でいてくれよ、シータ!


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