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5章 潜入!魔族の国……な件

じゃしんのひみつ?

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 残念ながら「昨日はお楽しみでしたね」イベントは起きなかった。俺とシータの交際は清い交際なのだ。ぷらとにっくというやつである。そしてイベントフラグ完遂までにはまだ時間がかかりそうだ。今日とかさっそく別行動だしな……。

 それはともかく。

「そういや告白騒動ですっかり忘れてたんだが、この国に勇者送還魔術の研究してるヤツとかいないか?」

 元々この国に来た目的はこれだったと思い出したのは今朝の事だった。邪神ショックやべぇ。

 本来ならこの世界を救う義理のない異界の勇者と命懸けで戦うくらいなら、元の世界に帰してやった方が早いと考える魔王が居てもおかしくはないと思うんだよな。まー、それなら最初から勇者召喚陣を完璧に壊しておけよって話なんだが……。

「歴代魔王にも同様の考えの方がいらしたようで、部署として存在しておりますよ」
「まじか!」
「ただ、我が国には勇者召喚陣が無いので成果は芳しくはないのですが……」

 そりゃ魔王の国には無いよなー。勇者の召喚陣。あれ、でも……

「そういや邪神の召喚陣はあるんだよな?」
「ええ。今回は使用しても反応がなかった訳ですが……」
「ちなみに、そっちには送還機能付いてるのか?」

 ルージオはそっぽを向いた。こっちもないのかよ! アフターケア大事、とっても!!

「いえ、これには理由があるのです!!」
「ほー、一応聞いてやろう」
「邪神として呼ばれるのは、基本的に自力で元の世界に帰れる方のみなのです!」

 俺は自力では帰れませんがそれは?

「リュージ様の場合は……本来の召喚方法で呼ばれていないのが、何らかの作用を及ぼしているのではないかと……」
「いや、仮に本来の邪神用召喚陣で呼ばれてても今と変わらんかった気がヒシヒシとするんだが……?」

 だって俺、至って普通の一般人。召喚された時に何かしら能力付与されるんなら話は別だが。……もしかしてまだ使えないスキルに秘密でもあるんかいな? あの莫大な賢さを要求してくる『陰陽の理』辺り。賢くなったら世界移動する魔術とか使えるようになるんかね。森羅さんと組み合わせたら最強じゃね? あ、でも俺のまりょくで世界移動の魔術とか、無理だわ。

「どう考えても自力で帰れる気がしない……」
「今はそうかもしれませんが、レベルが上がれば何らかの変化がある可能性は高いと思われます」

 レベルなー。今、いくつだったっけか? ステータス確認っと。

「――四十九、か。あと一上がればキリが良いな」

 たぶん、最初の街に着く前に遭遇した魔物戦で上がったんだろう。さすがラスボスのお膝元、経験値効率がハンパない。まあ、実際あの時は死ぬかと思ったもんな……これくらいの恩恵がないとやってられない、か。

 そういや地味にクラス名が変わってるのに気づいた。『縁を手繰り寄せる者』とかいう、なんかカッコ良さげなやつになっている。……いつ変わったのかイマイチわからんが。

「俺が自力で帰る方法を見つけたら、召喚された勇者たちも帰せると思うか?」
「そこは何とも……。ですが、邪神様は全てを見通すとも言われていますので、もしかすると」
「現状じゃ、そんな大層なことできねーけどなぁ」

 せいぜい、森羅さんで調べ物するくらいである。……待てよ? 森羅さんで勇者召喚陣を調べたら何かわかるんじゃ……? いや、俺の頭の出来を考えたら無理か?

「そういえば何故、リュージ様は勇者送還魔術の探求をされておられるのですか?」
「今回呼ばれた勇者たちとは顔見知りでなー。国の操り人形みたくされるのが気に食わないんだよ」

 皆は元の世界への帰還をエサにアルスター王国に使われている状態だ。……そのエサも幻だと判ったいま早急に帰る方法を探さないと、きっと大変な事になる。何とか離反出来れば良いんだが、ガッチガチに守りを固められてるだろうしなぁ……。ガーディナーのリトも勇者に接触するのは難しいって言ってた。

 なんとか都合よく全員国を出るような事態になってくんねーかなぁ……。


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