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4章 魔術大国に行ってみる件
話しても分かり合えないことは割とある
しおりを挟む司令塔だった骨のじーさんが消滅するやいなや、周りの骨達がバラバラになって崩れ落ちた。あっという間に骨の絨毯ができあがる。
「……嫌な置き土産だな」
帰りはあの上を通らないといけないのか? めっちゃ背徳感に苛まれるんだが……。
「それに関してはスライムちゃんに道を作って貰えば万事大丈夫でしょう」
「それにしても自然系ダンジョンだろ、ここ。ダンマス倒してもすぐにはダンジョンって無くならないモンなのか?」
「まだダンジョンコアが無事なのでしょうね。まあ、コアを壊してもしばらくは魔力が残ってますから、ダンジョンは維持されるんですのよ」
……まぁそうじゃないと、攻略するたびに某考古学者ばりの脱出劇を繰り広げなきゃいけないもんなー。ぶっちゃけ俺にはムリ。
「じゃ、まあコアの破壊とお宝拝見といこうかね」
「一体何が出てくるのでしょうか」
あの骨のじーさんの宝物か……あんま期待できないのは何でだろうか。
*
「やあ、二人ともお疲れ様!」
にこやかにリトが出迎えてくれた。ちなみに俺らのガーディナーでの滞在先は『魔術の友』本部として使われている民家だ。タダで泊めてくれるという言葉にホイホイ乗ってしまった……。
協力する代わりの代金だと思えば悪くないんだが、正直リトがうざい。こいつ、いつもここにいるけど仕事とかしてないの? プー太郎なの?
「仕事ならしているよー。この本部の地下でね!」
「チッ、思わず本音が漏れちまったぜ」
「リュージ君のその飾らない態度は好感が持てるよ、うん」
「好感持たれるなら女子のが良い」
ボソッと告げたが黙殺。シータは早々に離脱してキッチンにお茶をいれにいってしまった。
「――ところで例のダンジョンでの収穫はどうだったんだい?」
ニコニコと満面の笑みで問うてくるリト。こいつ、さては最初から知っててあのダンジョンを俺たちに勧めやがったな。
「お目当てはコレだろう、やるよ」
そら、とリトに放って渡したのは紙の束だ。あのじーさんのダンジョン攻略達成ご褒美のうち一つである。あのじーさんの研究のアレコレが記された記録書だ。
「いやー、あそこのダンジョンのスケルトンとゴーストの多さには困ってたんだよ。本当に助かるなぁ!」
「……あのじーさんなら話し合いでも何とかなったんじゃねーのか?」
なんかお前らと趣味合いそうだったし、話が通じるなら国に保護してもらえるんだろ?
「いやねー、これが生前から意固地なご老体でね。しかもリッチ化した後はダンジョンマスターだろう?」
意固地な性格とダンジョンマスターという性質が合わさった結果、研究結果を誰にも見せないようにすべくダンジョンの要塞化が始まったのだそうだ。説得しようにも『魔術師の友』メンバーにダンジョンを突破できる者がほとんどいない。
そんな時に現れたのが俺たちである。リトがこれ幸いと差し向けたのは当然の流れだったという。
「倒してでも奪い取る……か。世知辛い世の中だな」
「モンスターだから……というわけではないけれど、あの老人の場合は思い込みが激しすぎて、私達では話を聞いて貰えない可能性が高かったんだよ……」
あのじーさん研究が絡むと特に性格の変わる御仁だったらしい。同業者だと話し合いも難しい程度には。……親近憎悪ってやつか?
「――ま、結果的にお前らの研究が一歩進んだってわけだ」
「君たちもダンジョンの攻略経験が積めてウィンウィンだろう?」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべるリト。うわっ、すっげームカつく。
「ああ、そういえばスキルの件はどうだったんだい?」
「……一応、使えるようになった」
今は受け流しだけだが、なんか他にもできそうな気はしてる。
「それはよかった。ダンジョンをオススメした甲斐があるというものだ」
「まぁ、びっくりするほど俺と相性のいいダンジョンだったんだが……お前、俺の刀のこと判ってたん?」
「まあね。ただの刀だとは思ってなかったけれど……驚きだね。肝心の持ち主が一番それを判っていないだなんて」
「そりゃ悪かったな!!」
俺の心の叫びがリビングに響き渡った。どうせ俺には武器の見立てなんてできねーよ!!
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