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4章 魔術大国に行ってみる件

俺の刀が斬れすぎる件について

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 晴れ渡る空にカラッとした空気。絶好のピクニック日和である。そんな日に俺たちはダンジョンに潜りに来ている。

「やっぱ地道にダンジョンとかでレベルを上げるのが早道なんだなー」
「草刈りより優先すべきと、常々言ってるような気がしますけれど」

 アーアーキコエナイー。

「今回のダンジョンは、魔術を使う魔物が多いんだっけか?」
「物理攻撃が効かない者も居るそうでしてよ」

 ……物理攻撃無効? 何それ、初耳なんですけど?

「いわゆるゴーストタイプという種別ですわね。彼らには魔力を介した攻撃しか効きませんの」
「あのー、おれ、ゴッテゴテの物理攻撃手段しか持ち合わせちゃいないんだが……?」

 漫画とかでよくある武器に魔力を纏わせるとか器用な真似なんてできねーぞ?

 ……やっぱ予定変更してピクニックでもしないか、シータさんよ。こんな天気のいい日地下に潜るとか健康に悪いと思うんだ。と、提案したら即座に却下された。

「魔力を介せば攻撃は通るのだから、私がリュージのカタナに術を掛ければ問題ありませんでしょう?」
「ああ、いつもコボルトさん達に掛けてる攻撃強化のバフか」
「まあ、もしかすると必要無いかもしれませんが……」
「?」

 そりゃどういう意味だ……?





 魔術師の幽霊が呪文を唱え終わるより前に、サッと走り寄って刀を横に一振り。それだけで幽霊は上下に分かれて消えていった。ついでに返す刀で、隣にいた別の幽霊を下から上へと薙ぎ払う。そしたらソイツも二つに分かれて消えていった。

「サクサクジェノサイドォォ!!」

 ――俺、絶好調!

 何でか知らないが、魔断ち君ってば斬れ味が良すぎる。シータがバフ掛けてないのに幽霊普通に斬れてるし。……もしかして完成してから草刈りしかしてなかったから、血に飢えてらっしゃる?
 それにしてもやばい。良くある例えに『バターのようにさっくり斬れる』というのがあるが、まさにそれを体感している。手応えを全く感じないのに斬れてるという不思議体験。初ダンジョン体験時の早乙女達もこんな気分だったのだろうか?

 なお、何時もの罪悪感はこれっぽっちも襲ってこない。まー、いま斬ってる奴らもう既に死んでるからね。むしろ、成仏せいやー! という気分である。

「ま、まさに獅子奮迅の活躍ですわね……」

 今までとの落差に、シータさんが少し引いてらっしゃる。なんでや! 大器晩成型な俺の才能がちょーっと開花しただけやん!

「このダンジョン。こないだの中級より俺と相性良いかもしれない」
「お陰で私達の出番がありませんが」
「そこはまぁ、今回は俺に譲って貰うって事で……」

 次にいつ今回みたいな機会がくるかわからんからな。稼げるときに稼がせて貰うッ!





「――で、正直なところどう思うよ? 魔断ち君の斬れ味について」

 明らかに斬れすぎじゃね? そりゃー、湯田が「そこらの魔剣よりも斬れる」と太鼓判押してたが、いくらなんでも自画自賛が過ぎると思ってたんだわ。

「気付いてないようですから申し上げますけど、そのカタナ……おそらく魔剣や聖剣の類いですわよ。後世に伝われば『伝説の』と名が付くレベルの」

 …………why?

 …………友人に作ってもらったおニューの刀が魔剣・聖剣の類いだった件。え、こんなお手軽にそんな『伝説の剣』的なのが出来たらマズくね?

「そう言われましても……そのカタナの刃からは、強いプレッシャーみたいなものを感じますし……」

 鞘に収まってた時は感じなかったらしい。それじゃまるで刀に意志があるみたいなんだが……いや、持ち主を蝕む系じゃないっぽいし問題ねーな。さっきヒャッハーしてたのは俺自身の意思だし。

「けどシータにプレッシャーかけるとは許せん。仲間にプレッシャーかける武器が何処にある」

 コツンと魔断ち君にげんこつ食らわす。俺に好意を抱いてくれてる娘に威嚇とかすんなよな!

「あら?」
「どした?」
「いえ、そのカタナからのプレッシャーが消えた、と申しますか……」

 ついでにコボルト君ちゃんさん達もウンウンうなづいてる。彼らも威嚇されてたんだな。


 ……つーか、まじで意志があるんすか相棒よ。



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