45 / 106
4章 魔術大国に行ってみる件
腕力が欲しい!
しおりを挟む俺の血液が入った試験管を満足そうにうっとりと眺めるリト。異世界召喚魔術の研究が進むのが嬉しいんだろうが、ハタから見てると変態でしかないぞ。せっかくの美形が台無しだ。
「で、俺たちが急ぎでしなきゃならん事は特にないって事でいいのか?」
「――ん? ああ、そうだね」
「なら教えて欲しいことがあるんだが……」
私に分かることなら何でも。との言葉が返ってきたので遠慮なく聞いてみた。
「この国に草刈りの需要とかないか?」
あ、なんかシータが呆れた目で俺を見ている。しょうがないじゃないか! まだ剣術使えねぇから練習が必要なんだよ!!
「ギルドに行けばあるかもねぇ。研究者の家なんかは、普通にボウボウだろうし」
あー、ユニオールと同じパターンか。「そんなん手配してる暇があるなら研究進めるわ!」みたいな。
「ただ、相場は安いと思うよ。研究者は研究にはお金をかけるけれど、それ以外はからっきしだ」
……チッ。むしろ「草刈りに金出すくらいなら研究に金かけるわ」パターンかよ。世知辛いな。
「まぁ、この際それでもいい。刀の扱いの練習にはなるしな」
「どうして貴方はそこまで草刈りにこだわるんですの……」
「『庭師のリュージ』とまで言われて引き下がれなくなったんだよ! 悪いか!?」
あと、ひたすら同じ長さに整えていくあの作業……なんか無心になれる気がするんだ。そういう境地に至ったら強くなれそうな気が――しないですか、そうですか……。
「…………リュージったらどうしてこう明後日の方向に突っ走っちゃうのかしら」
せっかくのカタナも台無しですわ、ってそれを使いこなすための草刈りだっつーの!
「まあ、男には引き下がれない戦いもあるよね」
「リトに言われても胡散臭さしか感じねーよ!」
「手っ取り早く|ステータスを上げる(じっけんちゅうの)薬がここにあるんだけど要るかい?」
そんなニュアンスからしてヤバイ代物に手ェなんぞ出すか!!
「つかなんで、ステータス不足が原因だと判った!?」
「スキルの使用可不可はステータスに依存することが多いからね」
ちなみに俺に足りないのは、相変わらず『ちから』である。中級ダンジョンでレベルが十五くらい上がって、ステータスも結構上がったんだが、『ちから』が伸び悩んでてなー。
森羅さんでスキルを調べてみたら、剣術を使うにはあとちょっと足りないらしい。『ちから』よ、何故貴様はいつも俺の前に立ちはだかるんだ!? え? 単に俺の腕力が足りないだけ?
「ぐぬ……」
あとちょっと……ちょっとくらいドーピングしても……。チラチラと視界を横切るリトの持つ薬瓶。それに手を伸ばしかけた刹那――
「――リト。切実な悩みを持つ若者で遊ぶのは大概にしてくださいな」
横からシータに薬瓶をかっさらわれた。そして彼女は蓋をあけると一息にそれを飲んだ。
「あら、意外と美味しい」
「ちょ、シータさぁぁん何してんのぉぉ!?」
「ただの果実水ですわよ、これ」
「へっ?」
半眼で俺に真実を告げる彼女。
「いやぁ、リュージ君は本当にからかい甲斐があって楽しいなぁ! そしてシータ君は肝が座っているね!」
もし毒だったらどうしていたんだい? とか意地の悪いことを言うリト。
「その時はリュージが即座に私の仇を討ってくれるはずですわ。そもそもここで毒を出す理由がありませんでしょう?」
「確かに。……出会ったばかりだと言うのにそこまで信用いただけて嬉しいよ」
えーっと、ところでステータスを上げる薬というのは……? あるの? それとも無いの? どっちなんだよ!?
「あったら良かったんだけどねー。今の所、ダンジョン産しか見つかっていないよ」
「そんな便利な物があれば噂くらいにはなってますわよ」
俺、悩み損ですか……
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
すれ違い、そして和解
四季
恋愛
ウタとウィクトルのちょっとしたすれ違い。
『奇跡の歌姫』という自作小説の番外編として書いたものですが、本編を読まなくても、ある程度理解していただけるのではないかと思います。
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
【短編】悪役令嬢の侍女 〜ヒロインに転生したけど悪役令嬢の侍女になりました〜
みねバイヤーン
恋愛
リリーは乙女ゲームのヒロインである。侍女として、悪役令嬢のクロエお嬢さまに仕えている。クロエお嬢さまには孤児院から救っていただいた大恩がある。生涯仕える覚悟である。だからってねー、広大な公爵家の敷地で指輪を探すなんて、そんなこと許しませんからね。ワガママお嬢さまをうまく誘導するのも侍女の務め。お嬢さまと猛獣使いリリーの戦いが繰り広げられる、そんな平和な日常を描いた物語。
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
新世界で… 妖精少女は、ロボットを夢見る
チキンとり
ファンタジー
なろうからのお試しです。
とある事件に巻き込まれ…… 約三年ぐらいの意識不明の寝たきりから目覚めて、ちょっと世間からズレてしまった。
ロボ好き女性主人公が自分の夢を叶える為に、それ系のマニアに近い知識を基にその仲間たちを巻き込んで、がんばる系のファンタジーフルダイブVRMMOです。
動物大好きな子が動物と遊んでいたらいつの間にか最強に!!!!
常光 なる
ファンタジー
これは生き物大好きの一ノ瀬夜月(いちのせ ないと)が有名なVRMMOゲーム
Shine stay Onlineというゲームで
色々な生き物と触れて和気あいあいとする
ほのぼの系ストーリー
のはずが夜月はいつの間にか有名なプレーヤーになっていく…………
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる