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3章 武器が欲しいので頑張る件

刀、完成!

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 錬金術師の友瀬が作り上げた玉鋼を材料に、上級鍛治師の流が一振りの刀を鍛え上げた。街の工房を借りての鍛治に、滅多にいない上級鍛治師の実演という事でかなりの数の鍛治師が見物に押し寄せたが、あいつは意にも介さずひたすら刀を打ち続けた。その精神力は職業補正があるとしても凄いと正直思った。

 最終的な仕上げは引き続き続投の流と、付加魔術師の湯田、装飾師の佐伯に託された。この段階で他のみんなは滞在先である大使館に戻っている。あまり全員で留守にすると教官に怪しまれるらしい。シータも退屈だーと言って帰ってしまった。

 しかし、いざ刃が出来上がれば刀が仕上がるまではあっという間だった。さすがは新進気鋭の生産職集団。

 差し出されたのはシンプルながらも上品な細工をされた鞘に収められた刀だった。ダンジョン報酬の宝玉がストラップみたいに加工されて鞘に括り付けられているのが渋くて良い感じだ。すげー。これを作ったのがクラスメイトとか信じられないくらい立派なものである。何百万とか値段が付きそうなシロモノだ。
 しかし、そんな立派な刀を流はぽいっと俺に放って渡す。おいおい、いくら製作者だからってこんな立派な刀をぞんざいに扱うなよ!

「どーせ神山は自分で手入れとかできねーだろーし、湯田と協力して自動修復つけといたから」
「いろいろ付加したから、切れ味とかもそこらの魔剣並みだよ!」

 まじか! 上級鍛治師と付加術師の合わせ技すげーな!! そして凄く助かる。刀の扱いとか知らんし。って、俺もしかして本当は刀を使う資格無い?

「私は鞘の装飾ついでに持ち主認定機能付けといたから。これで神山くん以外の人には刀が使えないよ」

 ……なあ佐伯。お前の所業、装飾師の技量超えてないか? だけど――

「――みんな……俺のためにここまでしてくれてありがとう!」

 俺が素直にお礼を言ったというのに、皆さんバツの悪い顔をしてらっしゃる。何でだよ!!

「いやー。好きに作れる機会とかあんまないから、思いっきりシュミに走ったというか……」
「僕も自分がどこまでできるか確かめたかったんだよねー……」
「楽しくてついついやりすぎちゃった、てへっ」

 俺のためじゃなくてそれぞれが自分の趣味に走った結果かよ!! ……いや、プラスに考えるんだ。こいつらの趣味に走る性癖のおかげで魔改造された最高の刀が手に入ったんだと。

「でもまぁ、これを使いこなせれば神山の生存率もグッと上がるだろ」

 持てれば、だけどな。とか冗談めかしていう流。うっせーよ城にいた頃と違って刀持てるくらいの腕力はあるわい! レベルだって上がってんだからな!

「シータちゃんもいるし、神山くんもそうそう無茶なんてしないでしょ」

 佐伯、そうは言うが無茶の度合いはシータのが多いんだぜ……。あいつ変なところで漢らしいからな。俺はまだ忘れてない、初ダンジョンでの罠発動祭りを。

「それにしても女の子と二人旅とか超羨ましいんですけど?」
「お前の思うようなラッキースケベ展開とかねーぞ湯田」

 あったらコボルト君ちゃんさんにボッコボコにされるわ!! 俺はまだ死にたくねぇよ?

「……そっか、残念だなぁ。せっかくのファンタジー世界なのに」

 お前ファンタジー世界に夢見すぎ。

「そういやこの刀の銘は何にするよ?」

 流が聞いてきた。『銘』?

「刀の名前だよ。この世界じゃ付けた名前によっては不思議な効果が出るらしいから慎重に決めろよ」

 いきなり難問を突きつけるなよ。責任重大じゃねーか。この刀の将来性を俺が決めるって事だろ、それ?

 ……銘、銘ねぇ。

 森羅さんに頼るのは駄目か? 俺のネーミングセンスだとめっちゃ不安だ。――よし、頼ろう!


銘:なし

異界の神のために、異界よりきたりし鍛治師の打った最高傑作。異界の付加術師と装飾師によってカスタムメイドされた逸品。魔を断つ一条の閃光のごとき刀。


 ……なんかカッケーな。森羅さんセンスバリバリじゃんか。よし、決めたぞ!

「――『魔断ち』ってのはどうだ?」
「それは魔を断つ的な?」
「そうそう」
「もうちょっと捻りが欲しいかなー」
「神山くんにしては頑張ったと思うよ、私は」

 否定の嵐かよ! かっこいいじゃん魔断ち!

「んじゃ、こいつの銘は『魔断ち・流』な」

 ――ちょっと待て。なぜ当然のようにお前の名前が入るんだ流。

「製作者名とか入れるとそれっぽいじゃん?」

 まぁ、言われてみれば俺の知ってる刀も結構な頻度で作ったやつの名前が入ってるし……正宗とか村正とか。おかしくは……ない、のか?


 こうして俺の相棒となる刀がここに完成したのだった。これからよろしくな!


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