上 下
32 / 106
3章 武器が欲しいので頑張る件

炭鉱にはカナリヤ少年ってのがいるらしいですね……

しおりを挟む


「あら、これはなにかしら?」

 そんなシータの声と共に、ガコンと大きな音がした。――って危ねえ! 俺の歩いてた床が抜けた!! とっさに飛びのいて回避。

「ちょ、シータお前っ!」
「ここだけ微妙に色が違ってますわね?」

 ポチッとな、と彼女が壁の一部分を押し込むと、俺のいる側の壁からヒュンッと矢が――

「うぉぉぉいっっ!」

 避けられる矢は避け、無理なものはナイフで叩き落とした。……あっぶねぇ。初心者用ダンジョンだから矢が少なめで助かったが中級者用ダンジョンだったら死んでたぞ!?

「ちょっと疲れましたわね。……あらここに丁度良い岩が――」

 あいつ! あからさまに怪しい配置の岩に腰掛けようとしていやがる!!

「シータ、待てすわるな――」

 ――ガコン。

 遅かったぁぁぁ!!





 俺の前にはシュンとうなだれたシータの姿があった。なお正座。お説教タイムである。コボルトさんたちには周囲の警戒をしてもらっている。……他の冒険者に野生の魔物と間違われて倒されたりしない、よな?

 ……まあ、今はお説教が先だ。

「ダンマスといえども攻略は初心者なんだから、怪しいものには不用意に触らない!」

 おかげで俺が死にかけるとかおかしくね? 普通、罠って作動させたやつに襲いかかるものだよな?

「でも私、他のダンジョンって初めてですし……まさか罠があるなんて思ってもみなかったのです!」
「あからさまだったろうが、あれ!」

 初心者ダンジョンなのに罠をてんこ盛りにするダンマスの意地が悪いのか、それともシータが素直すぎるのか……。判断が難しいところである。つーかそんな認識で一攫千金とか言ってたのか……。

 初心者用でなく、自然発生ダンジョンに潜ってたら、俺いまごろ死んでたかもしれない。昨日、安全マージンについてとうとうと語った甲斐があったというものだ。

「とにかく今後は、むやみやたらと触らない、押さない、踏まない! さぁ復唱!!」
「触りませんし、押しませんし、踏んだりもしません!」
「……よし、じゃあ探索を再開するか」

 ダンジョンに入って数十分。未だに地下三階。このダンジョンは全地下十階なのでまだ先は長い。勇者達みたいにサクサクジェノサイドとはいかないのもデカイ。一応、受付嬢のオススメなんだが、やたらと罠が多いのどうにかならないのか……。ホント性格悪いなここのダンマス。

 とか思ってたら、コボルトさんたちが騒ぎ始めた。どうやら敵さんのお出ましらしい。

「――行くか」
「ですわね」

 俺は定番になった気配遮断を使い、コボルトさんたちが指し示す方向へと走った。気配遮断を使うとシータたちも俺を見失ってしまうのが難点なのだが、幸か不幸か巻き込み事故を起こすような攻撃手段を俺たちは持ってないのでまだ問題にはなっていない。これに関してはそういう手段が手に入ってから決めようということになっている。

 シータたちが引きつけている間にゴブリンの急所にナイフを叩き込む。この生々しさは何度やっても慣れないが、経験を積まないとレベルも上がらないのでやるしかない。何度もやっているからか、だんだん苦しませないように介錯出来るようになってきた気がする。ちなみに野生とダンジョン産モンスターの手応えに違いは無かった。ただ死体が残らない分、ダンジョンの方が気は楽だ。

 あらかた倒したので気配遮断を解いて一息つく。何体か取り逃がしたが、まああっちには彼女たちがいるから心配はないだろう。むしろ俺が心配されてそうだ。ゴブリンを倒すのに夢中になって少し距離が開いてしまった。

 さーて、サッサと戻るとしようか。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件

有沢天水
ファンタジー
立花烈はある日、不思議な鏡と出会う。鏡の中には死んだはずの妹によく似た少女が写っていた。烈が鏡に手を触れると、閃光に包まれ、気を失ってしまう。烈が目を覚ますと、そこは自分の知らない世界であった。困惑する烈が辺りを散策すると、多数の屈強な男に囲まれる一人の少女と出会う。烈は助けようとするが、その少女は瞬く間に屈強な男たちを倒してしまった。唖然とする烈に少女はにやっと笑う。彼の目に真っ赤に燃える赤髪と、金色に光る瞳を灼き付けて。王国の存亡を左右する少年と少女の物語はここから始まった!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...