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3章 武器が欲しいので頑張る件
炭鉱にはカナリヤ少年ってのがいるらしいですね……
しおりを挟む「あら、これはなにかしら?」
そんなシータの声と共に、ガコンと大きな音がした。――って危ねえ! 俺の歩いてた床が抜けた!! とっさに飛びのいて回避。
「ちょ、シータお前っ!」
「ここだけ微妙に色が違ってますわね?」
ポチッとな、と彼女が壁の一部分を押し込むと、俺のいる側の壁からヒュンッと矢が――
「うぉぉぉいっっ!」
避けられる矢は避け、無理なものはナイフで叩き落とした。……あっぶねぇ。初心者用ダンジョンだから矢が少なめで助かったが中級者用ダンジョンだったら死んでたぞ!?
「ちょっと疲れましたわね。……あらここに丁度良い岩が――」
あいつ! あからさまに怪しい配置の岩に腰掛けようとしていやがる!!
「シータ、待てすわるな――」
――ガコン。
遅かったぁぁぁ!!
*
俺の前にはシュンとうなだれたシータの姿があった。なお正座。お説教タイムである。コボルトさんたちには周囲の警戒をしてもらっている。……他の冒険者に野生の魔物と間違われて倒されたりしない、よな?
……まあ、今はお説教が先だ。
「ダンマスといえども攻略は初心者なんだから、怪しいものには不用意に触らない!」
おかげで俺が死にかけるとかおかしくね? 普通、罠って作動させたやつに襲いかかるものだよな?
「でも私、他のダンジョンって初めてですし……まさか罠があるなんて思ってもみなかったのです!」
「あからさまだったろうが、あれ!」
初心者ダンジョンなのに罠をてんこ盛りにするダンマスの意地が悪いのか、それともシータが素直すぎるのか……。判断が難しいところである。つーかそんな認識で一攫千金とか言ってたのか……。
初心者用でなく、自然発生ダンジョンに潜ってたら、俺いまごろ死んでたかもしれない。昨日、安全マージンについてとうとうと語った甲斐があったというものだ。
「とにかく今後は、むやみやたらと触らない、押さない、踏まない! さぁ復唱!!」
「触りませんし、押しませんし、踏んだりもしません!」
「……よし、じゃあ探索を再開するか」
ダンジョンに入って数十分。未だに地下三階。このダンジョンは全地下十階なのでまだ先は長い。勇者達みたいにサクサクジェノサイドとはいかないのもデカイ。一応、受付嬢のオススメなんだが、やたらと罠が多いのどうにかならないのか……。ホント性格悪いなここのダンマス。
とか思ってたら、コボルトさんたちが騒ぎ始めた。どうやら敵さんのお出ましらしい。
「――行くか」
「ですわね」
俺は定番になった気配遮断を使い、コボルトさんたちが指し示す方向へと走った。気配遮断を使うとシータたちも俺を見失ってしまうのが難点なのだが、幸か不幸か巻き込み事故を起こすような攻撃手段を俺たちは持ってないのでまだ問題にはなっていない。これに関してはそういう手段が手に入ってから決めようということになっている。
シータたちが引きつけている間にゴブリンの急所にナイフを叩き込む。この生々しさは何度やっても慣れないが、経験を積まないとレベルも上がらないのでやるしかない。何度もやっているからか、だんだん苦しませないように介錯出来るようになってきた気がする。ちなみに野生とダンジョン産モンスターの手応えに違いは無かった。ただ死体が残らない分、ダンジョンの方が気は楽だ。
あらかた倒したので気配遮断を解いて一息つく。何体か取り逃がしたが、まああっちには彼女たちがいるから心配はないだろう。むしろ俺が心配されてそうだ。ゴブリンを倒すのに夢中になって少し距離が開いてしまった。
さーて、サッサと戻るとしようか。
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