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2章 冒険者ギルドに入ってみる件
俺の彼女(予定)がカッコよすぎる
しおりを挟むあらかたゴブリンを片付けた所にシータがやってきた。なんかコボルト君ちゃんさん達が血塗れで怖いが、彼女自身は無傷で綺麗なものである。
「首尾はどうでして?」
「上々ではあるんだが……後味悪ぃな、これ」
俺の視線の先にはゴブリンのしかばねが山と積まれていた。ダンジョンではないので後処理をしなくてはならないのだが、どっと押し寄せた疲労で動く気がしない。
「シータ。悪いけど後、頼めるか?」
「……初めての実戦でしたものね。最初くらいはサービスして差し上げます」
彼女は胸元から宝石の嵌ったペンダントを取り出した。彼女のダンジョンコアだ。だがここでそれを取り出した意味がわからない。
俺の戸惑いをよそに、彼女がコアをかざすと――ゴブリンのしかばねの山が光の粒になってコアに吸い込まれていった。
「彼等は私のダンジョンの糧となりました。罪悪感を感じる必要はありません。これで貴方の行為は単なる殺りくではなくなりましたわ」
と、俺に告げた。
…………やだ、俺に惚れてる女の子が超絶格好良すぎる件! これは惚れざるを得ないのでは!?
*
「初めての討伐依頼を二人だけで完遂するとは……ほんとあんた達、将来有望だねえ」
おばちゃんから花マル評価いただきましたァァ! やっと正式に冒険者を名乗れる気がしてきた!! もうすぐ借金も返済し終えるし、この街との別れも近い。なんかさびしくなってきたな……。
「借金の事が無くなってもこの街に残って欲しいモンなんだが……」
「おばさまの気持ちは嬉しいのですが……私たちにも目的がありますの」
たそがれていた俺の代わりにシータが、おばちゃんに言いたいことを言ってくれた。
そうそう。このままこの国に留まって生存がバレてしまうと、送還魔術を探すための旅が困難になってしまうんだよな。……送還魔術がこの国にしか存在しないというオチもありえるんだが、まずは命を守るのが先決だ。今はまだ自衛するにも戦闘能力が心許ない。
「そうかい。まあ、あんたたちなら大丈夫だとは思うけど……油断はしないようにね」
「はい!」
「了解っす」
「――とまあ、湿っぽくなっちまったが、残りの期間もよろしく頼むよ」
そう言っておばちゃんは酒場の仕事に戻っていった。
この街、本当にいい人が多いんだよなー。唯一の欠点が、あの王族とか貴族どもが治めてる国っていう……。治世だけはマトモってことなのか、それとも上下に挟まれてメッチャ苦労してる中間管理職の人がいるんだろうか?
……ああ、もしかすると王都から離れるごとにマトモになってくパターンなのかもしれん。この街、王都よりも国境のが近いしな。
*
そんなこんなで採取やら討伐やら草刈りなんかをこなしていたら、とうとうその日がやって来た。
「はいよ。二人合わせて銀貨十枚、確かに受け取ったよ。――これであんた達は晴れて自由の身、正式な冒険者さね」
「……いよいよか」
「……ですわね」
「その様子じゃあ、すぐに出発するつもりかい?」
なんだかんだ言って居心地が良かったからなーこの街。俺がこの世界の住人だったら永住していたかもしれない。名残惜しいが、時間も惜しい。
俺たちの顔を見ておばちゃんも察してくれた。
「そうさね……役に立つかは判らないが、これを持っていくといいよ」
そうして差し出されたのは一通の封筒だった。
「困った事が起きた時に近くの冒険者ギルドにこれを見せれば、何とかなるかもしれないよ」
紹介状、みたいなモンかねぇ? ……おばちゃん実はスゲー人だったんか? まあせっかくの好意、ありがたく頂いておこう。
「ありがとう、おばちゃん。最初に辿り着いたのがこの街で良かったよ」
「ええ、本当に。おばさまには大変良くして頂いて、返せるものが無いのが口惜しいですわ」
「――全く。嬉しい事言ってくれるねえ、この子達は!」
そしてギュッと俺とシータをまとめて抱きしめるおばちゃん。く、苦しい。
「あんた達の目的を果たしたなら、また遊びにでもおいで。この街はいつでもあんた達を歓迎しているよ」
そんな言葉を背に俺たちはオルレットから旅立った。目指すは隣国――ユニオールだ!
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