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1章 異世界に召喚されたら職業が旅人だった件
ステータス上げは意外と大変
しおりを挟む夢中で本にかじりついていたせいか、気が付くと室内が薄暗くなりはじめていた。
「こんなに本を見たのは、人生で初なんじゃなかろうか……」
読まなくても内容がわかるのは実にありがたかった。漫画ならいくらでも読めるが、文字ばかりの本を読むとか柄じゃないので、真面目に読もうとしたらどれだけ掛かった事か。森羅万象さん万歳である。内容のイメージはテレビの番組みたいなものだった。旅番組だったり、教育番組だったり。時折意味の分からない部分があったのは、俺のかしこさが足りなかったのだろう。
「問題は、どのくらい『かしこさ』あがってるかだな……」
そしてステータスを見てみると……。
かしこさ:10
あれだけ本を漁ってプラス1かよ! もしや森羅万象でズルしてるからなのか? 文字の読み書きからしないと駄目なのか!? ……いや、でもこれで平均値はクリアできたじゃないか。今日はこれで良しとしておこう。この世界の簡単な事情とかも分かったし。地理とか習慣とか。これでいつでも……と言うわけでもないが一人旅するぐらいなら問題ない。
「――異邦の方。もうそろそろ部屋を閉めますので……」
「あ、はい。長居してスミマセン」
「いえいえ。ここの本達も貴方に読んでもらえて嬉しがっている事でしょう」
そういや、読んでる間にここに来たやつ居ないな。過疎ってるのだろうか。クラスのみんなは講義やらなにやらで忙しいのはわかるが、城の人間なら一人や二人は来そうなモンだが。……まあいいか。通ってれば遭う事もあるだろう。いや、遭っちゃまずいか。怪しいよな、教官に放り出されたのに図書館に通ってる落第生って……。いや、しかし図書館での学習は魅力的だ。敵を知るにはまだまだ知識が足りない。
「あの、明日も来て良いっすか?」
「もちろん構いませんが……明日は武術訓練なのでは?」
「……あー、それが終わってからでも?」
「問題がなければ大丈夫ですよ」
にこりと微笑む司書さん。営業スマイルだとしても嬉しいな。俺の周りの異世界人ときたら渋い顔してるやつばっか――ヴァルさん除く。ただし彼は申し訳なさそうな表情がデフォだ――だし新鮮だ。まあ原因は俺なんですけどねー。そして俺は司書さんに見送られて図書室を後にした。
*
部屋での夕食――味付けが丁度良い塩梅になっていた。反映が早いな――を終えて、お待ちかねの筋トレのお時間です。体を壊しては元も子もないのでストレッチは念入りにしておく。明日に響いてもいけないのでやり過ぎは良くない。
「素早さ優先でいくか……」
筋力なら明日の訓練で嫌ってほど鍛えられそうだしなあ。今日は反復横跳びでもしとくか。
幸いここは一階で、周りは空き部屋なので多少大きな音を出しても怒られない。……よくよく考えたら、完全に隔離されてるな。いつ切り捨てられてもおかしくない?
……いやいや、逆に考えよう。これは放置プレイだ。つまりこの国に害を与えるような事さえしなければ、何やっても見逃してもらえるのだと! 例えば保身の為にコッソリとステータス上げするとか、スキルを身に付けるとか! 幸いステータスの大部分——職業以外——は、他の人間には判らないようだし行ける!
ハタから見れば奇怪な行動をしているように見えるかもしれないが仕方が無い。俺も命がかかってるんだ。——というわけで話が逸れたが、反復横跳び開始だ!
右、左、左、右、右、左、左、右、右、左、左、右、右…………。
「……なんか虚しいぞ、これ」
夜の部屋でひたすら反復横跳びする男子高校生って何なんだろうな……?
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