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第一章 吸血鬼編
第十一話 吸血鬼は夜空をゆく
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ーー「発信機からの通信が途絶えてる…!」
気軽に聞いたはずだった。旅の始まり、まだ二日目というにも関わらず強い逆風が吹き始めた瞬間だった。
「途絶えてるって…!じゃあどうやってあの女を追うんだよ!」
ディバイドが声を荒げる。
「昨日まではロストロの方を指してたと思うんだけど…まさか、こんなにも途絶えるなんて…。あの女に撃った弾丸の中に発信機を入れてたんだけど、もう取り除いたのかな…。弾丸はとても小さく気が付きにくいはずなんだけど…」
シードが慌てて受信機をドライバーで弄りながら話す。
その時だった。
ーーコンコンコン
後ろのドアが鳴った。マルガルだろうか。
「いいよ、俺が出る」
俺は二人にそう伝え、ドアを開けた。
「どちら様ですk…」
ーードゴッ!!!!!
「ガハッ!」
俺はドアを開けたが、刹那、俺の元に何者かの強烈なタックルをくらう。
「あんたたち、さっきの話は本当なの??ねぇ、答えて欲しいわ」
俺はふらつきながら視線を上にやる。そこに居たのはパティだった。
「パティ!どうしたんだ。気に。」
「どうしたもないわよ。ごめんけど、さっきのマル爺との会話、聞かせてもらったわ。盗み聞きってやつかしらね。もう家を六回も壊したからついに村の大工がヤケクソになって壁をめっちゃくちゃに薄く作ったのよ。そのおかげで中の会話は外に丸聞こえだわ。私は家の裏であんたたちの話を聞いてたの」
パティが早口に言葉を投げかける。
「話聞いてたのか??」
ディバイドは剣を磨く布をベットの上に置き、俺らの元に近づいてきた。
「えぇ。申し訳ないけど聞かせてもらったわ。あんたたち、ロストロへ行くんでしょう?」
「まぁ、そうだな。安全なルートが選べるなら安全な方がもちろんいいんだが、そうもいかないらしいな」
ディバイドが答える。
「そこであなた達に提案があるの」
「提案?」
意外な単語に思わず俺は聞き返す。
「えぇ。そうよ。私を旅に連れて行って欲しいの」
「「「!?!?」」」
俺、ディバイド、シードが一斉にパティの方を見る。それだけ衝撃的な発言だ。
「連れてってくれって……とんでもなく危険な旅になるのは間違いないぞ」
ディバイドが忠告をするようにパティの顔を覗き込む。
「そんな事分かってるわよ!3人が4人になるだけだわ。ダメなの?」
「どうする?シャル?」
ディバイドが俺に尋ねてきた。
「別に俺らは困らないけど…パティはどうして着いてくるんだ?」
その答えは恐らくトレシアへの報復のためだろう。しかし、この旅は確実に危険ものとなる。ギルドですら抑え込めてない戦乱に真っ向から突っ込む可能性があるのだ。慎重に理由を聞く必要がある。
「……マル爺から事情を聞いてると思うから分かると思うけれど、私はトレシア・マーレードに復讐したいのよ…それだけじゃないわ。ロストロには昔世話になった孤児院もあるわ。ほっておけないじゃない」
ある程度は予想通りだが、一つ気になるワードがある。"世話になった孤児院"?パティは孤児院では虐められていたはずだ。
「あと、もう一つ私があんたたちに着いていく理由があるわ」
パティはそう言うと俺を指差した。
「あんたよ!あんた、魔導士だっていうじゃない。トレシアは近距離にめっぽう強いわ。そんな時、遠距離で魔法で攻撃できる魔導士がいると心強いのよ」
「…行くにしてもまずはマルガルさんに許可をとった方が良いんじゃない?」
そう俺らの後ろから話すのはシードだ。
「確かにな。今からでも交渉に行くか?」
ディバイドが納得した様子でパティの方を見る。
「……マル爺は、きっと許してはくれないわ。娘を危険な場所に行かせるなんてあの人ならそんな事はしない。それに…」
「それに?」
珍しくパティの口が止まった。俺も思わず聞き返す。
「それに…マル爺はルードルートのせいで親友を失ってるの!」
「ルードルート??」
初めて聞く名だ。
「…ルードルートを知らないのね。水瓶戦争を起こした組織よ。トレシアだってクラックだってきっとルードルートの傘下だわ」
パティは目を細め、そう言う。
「私、知ってるの。今でも覚えてる。五年前、あの"ピースウォールの大審門が開く日"の出来事を…」
驚くべき話は始まった。
気軽に聞いたはずだった。旅の始まり、まだ二日目というにも関わらず強い逆風が吹き始めた瞬間だった。
「途絶えてるって…!じゃあどうやってあの女を追うんだよ!」
ディバイドが声を荒げる。
「昨日まではロストロの方を指してたと思うんだけど…まさか、こんなにも途絶えるなんて…。あの女に撃った弾丸の中に発信機を入れてたんだけど、もう取り除いたのかな…。弾丸はとても小さく気が付きにくいはずなんだけど…」
シードが慌てて受信機をドライバーで弄りながら話す。
その時だった。
ーーコンコンコン
後ろのドアが鳴った。マルガルだろうか。
「いいよ、俺が出る」
俺は二人にそう伝え、ドアを開けた。
「どちら様ですk…」
ーードゴッ!!!!!
「ガハッ!」
俺はドアを開けたが、刹那、俺の元に何者かの強烈なタックルをくらう。
「あんたたち、さっきの話は本当なの??ねぇ、答えて欲しいわ」
俺はふらつきながら視線を上にやる。そこに居たのはパティだった。
「パティ!どうしたんだ。気に。」
「どうしたもないわよ。ごめんけど、さっきのマル爺との会話、聞かせてもらったわ。盗み聞きってやつかしらね。もう家を六回も壊したからついに村の大工がヤケクソになって壁をめっちゃくちゃに薄く作ったのよ。そのおかげで中の会話は外に丸聞こえだわ。私は家の裏であんたたちの話を聞いてたの」
パティが早口に言葉を投げかける。
「話聞いてたのか??」
ディバイドは剣を磨く布をベットの上に置き、俺らの元に近づいてきた。
「えぇ。申し訳ないけど聞かせてもらったわ。あんたたち、ロストロへ行くんでしょう?」
「まぁ、そうだな。安全なルートが選べるなら安全な方がもちろんいいんだが、そうもいかないらしいな」
ディバイドが答える。
「そこであなた達に提案があるの」
「提案?」
意外な単語に思わず俺は聞き返す。
「えぇ。そうよ。私を旅に連れて行って欲しいの」
「「「!?!?」」」
俺、ディバイド、シードが一斉にパティの方を見る。それだけ衝撃的な発言だ。
「連れてってくれって……とんでもなく危険な旅になるのは間違いないぞ」
ディバイドが忠告をするようにパティの顔を覗き込む。
「そんな事分かってるわよ!3人が4人になるだけだわ。ダメなの?」
「どうする?シャル?」
ディバイドが俺に尋ねてきた。
「別に俺らは困らないけど…パティはどうして着いてくるんだ?」
その答えは恐らくトレシアへの報復のためだろう。しかし、この旅は確実に危険ものとなる。ギルドですら抑え込めてない戦乱に真っ向から突っ込む可能性があるのだ。慎重に理由を聞く必要がある。
「……マル爺から事情を聞いてると思うから分かると思うけれど、私はトレシア・マーレードに復讐したいのよ…それだけじゃないわ。ロストロには昔世話になった孤児院もあるわ。ほっておけないじゃない」
ある程度は予想通りだが、一つ気になるワードがある。"世話になった孤児院"?パティは孤児院では虐められていたはずだ。
「あと、もう一つ私があんたたちに着いていく理由があるわ」
パティはそう言うと俺を指差した。
「あんたよ!あんた、魔導士だっていうじゃない。トレシアは近距離にめっぽう強いわ。そんな時、遠距離で魔法で攻撃できる魔導士がいると心強いのよ」
「…行くにしてもまずはマルガルさんに許可をとった方が良いんじゃない?」
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「……マル爺は、きっと許してはくれないわ。娘を危険な場所に行かせるなんてあの人ならそんな事はしない。それに…」
「それに?」
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「…ルードルートを知らないのね。水瓶戦争を起こした組織よ。トレシアだってクラックだってきっとルードルートの傘下だわ」
パティは目を細め、そう言う。
「私、知ってるの。今でも覚えてる。五年前、あの"ピースウォールの大審門が開く日"の出来事を…」
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