魔導士Aの革命前夜

鳩ろっく

文字の大きさ
上 下
11 / 15
第一章 吸血鬼編

第十一話 吸血鬼は夜空をゆく

しおりを挟む
ーー「発信機からの通信が途絶えてる…!」
 気軽に聞いたはずだった。旅の始まり、まだ二日目というにも関わらず強い逆風が吹き始めた瞬間だった。
「途絶えてるって…!じゃあどうやってあの女を追うんだよ!」
 ディバイドが声を荒げる。
「昨日まではロストロの方を指してたと思うんだけど…まさか、こんなにも途絶えるなんて…。あの女に撃った弾丸の中に発信機を入れてたんだけど、もう取り除いたのかな…。弾丸はとても小さく気が付きにくいはずなんだけど…」
 シードが慌てて受信機をドライバーで弄りながら話す。

 その時だった。
 ーーコンコンコン
 後ろのドアが鳴った。マルガルだろうか。

「いいよ、俺が出る」
 俺は二人にそう伝え、ドアを開けた。
「どちら様ですk…」

 ーードゴッ!!!!!

「ガハッ!」
 俺はドアを開けたが、刹那、俺の元に何者かの強烈なタックルをくらう。

「あんたたち、さっきの話は本当なの??ねぇ、答えて欲しいわ」
 俺はふらつきながら視線を上にやる。そこに居たのはパティだった。
「パティ!どうしたんだ。気に。」

「どうしたもないわよ。ごめんけど、さっきのマル爺との会話、聞かせてもらったわ。盗み聞きってやつかしらね。もう家を六回も壊したからついに村の大工がヤケクソになって壁をめっちゃくちゃに薄く作ったのよ。そのおかげで中の会話は外に丸聞こえだわ。私は家の裏であんたたちの話を聞いてたの」

 パティが早口に言葉を投げかける。
「話聞いてたのか??」
 ディバイドは剣を磨く布をベットの上に置き、俺らの元に近づいてきた。

「えぇ。申し訳ないけど聞かせてもらったわ。あんたたち、ロストロへ行くんでしょう?」

「まぁ、そうだな。安全なルートが選べるなら安全な方がもちろんいいんだが、そうもいかないらしいな」
 ディバイドが答える。
「そこであなた達に提案があるの」
  
「提案?」
 意外な単語に思わず俺は聞き返す。

「えぇ。そうよ。私を旅に連れて行って欲しいの」

「「「!?!?」」」

 俺、ディバイド、シードが一斉にパティの方を見る。それだけ衝撃的な発言だ。

「連れてってくれって……とんでもなく危険な旅になるのは間違いないぞ」
 ディバイドが忠告をするようにパティの顔を覗き込む。

「そんな事分かってるわよ!3人が4人になるだけだわ。ダメなの?」

「どうする?シャル?」
 ディバイドが俺に尋ねてきた。

「別に俺らは困らないけど…パティはどうして着いてくるんだ?」
 その答えは恐らくトレシアへの報復のためだろう。しかし、この旅は確実に危険ものとなる。ギルドですら抑え込めてない戦乱に真っ向から突っ込む可能性があるのだ。慎重に理由を聞く必要がある。

「……マル爺から事情を聞いてると思うから分かると思うけれど、私はトレシア・マーレードに復讐したいのよ…それだけじゃないわ。ロストロには昔世話になった孤児院もあるわ。ほっておけないじゃない」

 ある程度は予想通りだが、一つ気になるワードがある。"世話になった孤児院"?パティは孤児院では虐められていたはずだ。

「あと、もう一つ私があんたたちに着いていく理由があるわ」
 パティはそう言うと俺を指差した。
「あんたよ!あんた、魔導士だっていうじゃない。トレシアは近距離にめっぽう強いわ。そんな時、遠距離で魔法で攻撃できる魔導士がいると心強いのよ」

「…行くにしてもまずはマルガルさんに許可をとった方が良いんじゃない?」
 そう俺らの後ろから話すのはシードだ。
「確かにな。今からでも交渉に行くか?」
 ディバイドが納得した様子でパティの方を見る。
「……マル爺は、きっと許してはくれないわ。娘を危険な場所に行かせるなんてあの人ならそんな事はしない。それに…」  

「それに?」
 珍しくパティの口が止まった。俺も思わず聞き返す。

「それに…マル爺はルードルートのせいで親友を失ってるの!」

「ルードルート??」
 初めて聞く名だ。

「…ルードルートを知らないのね。水瓶戦争を起こした組織よ。トレシアだってクラックだってきっとルードルートの傘下だわ」
 パティは目を細め、そう言う。
  
「私、知ってるの。今でも覚えてる。五年前、あの"ピースウォールの大審門が開く日"の出来事を…」

 驚くべき話は始まった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

karashima_s
ファンタジー
 地球にダンジョンが出来て10年。 その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。  ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。  当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。  運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。  新田 蓮(あらた れん)もその一人である。  高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。 そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。 ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。 必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。 落ちた。 落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。 落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。 「XXXサバイバルセットが使用されました…。」 そして落ちた所が…。

ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……

石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。 主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。 その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。 聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。 話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。 聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。 聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。 しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。 そのステータスに絶望したが……実は。 おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。 いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません…… からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。 カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる
ファンタジー
己の娯楽の為に異世界テンプレ展開を差し向けてくる神VS異世界小説とか知らないからとにかく誰にも指図されず次こそ平凡な人生を全うしたい少年。   名前から人生の全てが平均値だった少年は不運にも神の手違いで死んでしまう。異世界モノが大好きな神によってテンプレ通りの能力を渡され、転生することになった凡太郎だが、彼と神には大きな齟齬があった。それは、 神は彼くらいの年齢の少年なら誰でも異世界モノ小説を嗜んでいると思っていた事。 そして、彼は異世界モノなど全く知らない。それどころかファンタジー系の全てに関してまっっっったく知識がないという事だ。 さらにその後ジョンという少年として転生した彼が前世を思い出した時には既に住んでいた村を追放された直後だった!しかもそれは神の策略で…… 巨大なドラゴンと秘密を持った美少女を始めとした普通じゃない出会い、そして山積みの問題……彼は無事に平凡な人生を送ることができるのか? ※想定の100倍もふもふしそうなのでタグつけました

処理中です...