1 / 2
1話
しおりを挟む
俺は百井和。高校2年になる。
「なあー、百井」
「ねぇね、和くん」
「そういや、和~」
進級し、始業式の日。新しいクラスで、去年から親しみのある人から見たこともないような人まで話しかけてくる。
なぜかって、俺は俗に言う"猫被り"であり、それを誰かが俺を優男という言葉で表してしまってからというもの、人気を得てしまっているからだ。
本当は周りに興味の欠片もない、冷酷人間だが。
でも、このキャラを俺は貫き通そうと思う。
「ねえ!聞いてる~?…2-2の名簿、あの浅黄くんがいるんだよ」
「ああごめんね。浅黄くん?初めて聞くなあ。」
あの、って…有名なやつなのか?
確かに聞いたことがあるような。
「百井くん知らないの?喧嘩ばっかしてるって噂のヤンキー、浅黄夕だよ!」
話しかけてきた女子がこの人が浅黄くんだよ、とスマホの画面を見せてくる。
映っていたのは長い金髪をハーフアップにした、美形な男だった。
そんな男が、人を殴っている写真。
「…その、浅黄くんは学校に来てるの?」
「いない日もあるみたいだけど、来てるらしいよ。
でも、屋上でよくサボってる噂もあるって。」
そんなんだ、と笑ってみせる。
確かに今いないっぽいし、サボりかな。
まあ、俺には関係ないけど。多分明日には忘れてるだろうね。
しかし、浅黄ってやつも大変だな。噂が1人歩きして。
そんなことになる前に、俺みたいに猫でも被ればいいのにな。
…やっぱり、それはおすすめできないか。
ホームルームや始業式などの一式を終え、あっという間に帰りの時間。
ゲームセンターやカラオケ、映画など誘われたが断った。バイトが入っている、と言うとなんでこんな日にもバイトを入れるんだ、とキレられた。
俺はバイトが好きだ。
俺のバイトはここ、"Sasaki Flowers"。
通称ササワズであるこの花屋は、俺の家の隣にある。
ササワズの店主である佐々木さんは俺のことをよく思ってくれていて、俺が幼い頃から面倒を見てくれる母親のような存在だ。
そんな佐々木さんのもとで働けるのは、本当に感謝してる。俺の数少ない大切な人だ。
「あら!和くん来てたのね。今日もよろしくね。」
よろしくお願いします、と挨拶をしていつも通り仕事を始める。
今日も順調に仕事が進んでいる。
…つもりだった。
「きゃあああああ!!」
どこからか聞こえた女の人の悲鳴と、かすかなざわめき。
俺は佐々木さんが店内に見当たらないことに嫌な予感を感じ、店の外へ出た。
そこには赤くなった頬を抑える佐々木さんと、倒れている怪我を負った2、3人の男たち。
そして…もう1人の男を殴る、どこか見覚えのある金髪頭の男がいた-...。
倒れていた男たちが逃げ出し、殴られていた男も捨て台詞を言いながら後を追って逃げ出した。
「てめえ浅黄!!覚えてろよ!」
…と。
浅黄、か。
思い出した、浅黄夕だったかな…。
「すみません、浅黄さんですよね?貴方、喧嘩で有名の。こんなところで何を?」
浅黄は俺を睨む。
美形だと思っていたその顔も今は憎らしいな。
「…てめえには、関係ねえよ。」
「関係ない?貴方が佐々木さんに怪我を負わせたのでしょう?あなた方の勝手な喧嘩に、巻き込まないでください。」
後ろで佐々木さんが俺を止める声も、今は聞こえない。ただ、俺は怒っていた。
普段、こんな怒ることなんてないけれど。
新学期によるストレスか…?
うるせえな、と浅黄が呟き去っていく。
俺は引き留めようとして声を出そうとしたが、必死に止めようとする佐々木さんに押され、結局逃がしてしまった。
「なあー、百井」
「ねぇね、和くん」
「そういや、和~」
進級し、始業式の日。新しいクラスで、去年から親しみのある人から見たこともないような人まで話しかけてくる。
なぜかって、俺は俗に言う"猫被り"であり、それを誰かが俺を優男という言葉で表してしまってからというもの、人気を得てしまっているからだ。
本当は周りに興味の欠片もない、冷酷人間だが。
でも、このキャラを俺は貫き通そうと思う。
「ねえ!聞いてる~?…2-2の名簿、あの浅黄くんがいるんだよ」
「ああごめんね。浅黄くん?初めて聞くなあ。」
あの、って…有名なやつなのか?
確かに聞いたことがあるような。
「百井くん知らないの?喧嘩ばっかしてるって噂のヤンキー、浅黄夕だよ!」
話しかけてきた女子がこの人が浅黄くんだよ、とスマホの画面を見せてくる。
映っていたのは長い金髪をハーフアップにした、美形な男だった。
そんな男が、人を殴っている写真。
「…その、浅黄くんは学校に来てるの?」
「いない日もあるみたいだけど、来てるらしいよ。
でも、屋上でよくサボってる噂もあるって。」
そんなんだ、と笑ってみせる。
確かに今いないっぽいし、サボりかな。
まあ、俺には関係ないけど。多分明日には忘れてるだろうね。
しかし、浅黄ってやつも大変だな。噂が1人歩きして。
そんなことになる前に、俺みたいに猫でも被ればいいのにな。
…やっぱり、それはおすすめできないか。
ホームルームや始業式などの一式を終え、あっという間に帰りの時間。
ゲームセンターやカラオケ、映画など誘われたが断った。バイトが入っている、と言うとなんでこんな日にもバイトを入れるんだ、とキレられた。
俺はバイトが好きだ。
俺のバイトはここ、"Sasaki Flowers"。
通称ササワズであるこの花屋は、俺の家の隣にある。
ササワズの店主である佐々木さんは俺のことをよく思ってくれていて、俺が幼い頃から面倒を見てくれる母親のような存在だ。
そんな佐々木さんのもとで働けるのは、本当に感謝してる。俺の数少ない大切な人だ。
「あら!和くん来てたのね。今日もよろしくね。」
よろしくお願いします、と挨拶をしていつも通り仕事を始める。
今日も順調に仕事が進んでいる。
…つもりだった。
「きゃあああああ!!」
どこからか聞こえた女の人の悲鳴と、かすかなざわめき。
俺は佐々木さんが店内に見当たらないことに嫌な予感を感じ、店の外へ出た。
そこには赤くなった頬を抑える佐々木さんと、倒れている怪我を負った2、3人の男たち。
そして…もう1人の男を殴る、どこか見覚えのある金髪頭の男がいた-...。
倒れていた男たちが逃げ出し、殴られていた男も捨て台詞を言いながら後を追って逃げ出した。
「てめえ浅黄!!覚えてろよ!」
…と。
浅黄、か。
思い出した、浅黄夕だったかな…。
「すみません、浅黄さんですよね?貴方、喧嘩で有名の。こんなところで何を?」
浅黄は俺を睨む。
美形だと思っていたその顔も今は憎らしいな。
「…てめえには、関係ねえよ。」
「関係ない?貴方が佐々木さんに怪我を負わせたのでしょう?あなた方の勝手な喧嘩に、巻き込まないでください。」
後ろで佐々木さんが俺を止める声も、今は聞こえない。ただ、俺は怒っていた。
普段、こんな怒ることなんてないけれど。
新学期によるストレスか…?
うるせえな、と浅黄が呟き去っていく。
俺は引き留めようとして声を出そうとしたが、必死に止めようとする佐々木さんに押され、結局逃がしてしまった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話
あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話
基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想
からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。

総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。


例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

楓の散る前に。
星未めう
BL
病弱な僕と働き者の弟。でも、血は繋がってない。
甘やかしたい、甘やかされてはいけない。
1人にしたくない、1人にならなくちゃいけない。
愛したい、愛されてはいけない。
はじめまして、星見めうと申します。普段は二次創作で活動しておりますが、このたび一次創作を始めるにあたってこちらのサイトを使用させていただくことになりました。話の中に体調不良表現が多く含まれます。嘔吐等も出てくると思うので苦手な方はプラウザバックよろしくお願いします。
ゆっくりゆるゆる更新になるかと思われます。ちょくちょくネタ等呟くかもしれないTwitterを貼っておきます。
星見めう https://twitter.com/hoshimimeu_00
普段は二次垢におりますのでもしご興味がありましたらその垢にリンクあります。
お気に入り、しおり、感想等ありがとうございます!ゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる