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小話
しあわせの第一歩
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2024年3月10日(日)開催のJ.GARDEN55及び通販で頒布させていただきました無配小説です。お手に取ってくださった皆様に心より感謝申し上げます!
『行き倒れてた奴隷が好みドストライクだったので持ち帰ってみた』第一話のこぼれ話的な短編。アルがラビの家に来たばかりの頃、二人がまだ打ち解ける前のお話になります。
—————————
俺の名前はラビ。とある下町の片隅でひっそりと暮らしている、いたって平凡な男だ。
とある雨の日——俺は、路地裏で行き倒れていた奴隷を拾った。
アルと名乗った彼はかなり衰弱していて、拾ってきて数日は怪我と栄養失調でまともに起き上がることもできなかった。そのため俺はとても心配していたが、必死の看病の甲斐あってか、二週間もすればアルは問題なく身体を起こせるようになり、食事も俺と同じものを食べることができるようになったのだった。
「アル、おやつだよー」
ある休日の昼下がり。キッチンで下準備を終えた俺は、そう言いながら寝室にいるアルを呼びに行く。
アルは足の怪我はまだ完治していないが、短い距離であればある程度は自由に歩けるようになっていた。なので最近はベッドのある寝室ではなく、ダイニングで共に食事をするようになっている。
とはいえアルは俺に対して人見知りしているのか、それとも大した理由もなくいきなり自分を拾ってきた俺を信用しきれないのか、食事の時間以外は俺と顔を合わせず寝室に篭っていることが多かった。
怪我が治るまで、という一時的なものとはいえ、せっかく同居をすることになったのに……と少し寂しい気持ちはあった。だが幼い頃から長いこと奴隷として生活してきた彼の心の内は、彼本人にしかわからないのだろう。彼には彼なりの人との関わり方だったり、考え方だったり、そういうものがきっとあるのだと思う。なので俺は滅多に寝室から出てこないアルに特に何も言うことはなく、基本的には彼のしたいようにさせていた。
そんな感じで、同居しているからといってアルと積極的に距離を詰めようとはしてこなかった俺。しかし、今日は違った。
「……おやつ?」
「そう、おやつの時間。知らない?」
アルは『おやつ』という単語の意味すらわからないようで、俺の言葉に首を傾げていた。そして俺のおやつを知っているかという問いかけにも、ふるふると首を横に振る。
俺はアルの奴隷時代の生活だったり、育ってきた環境だったり、そういったことはよく聞いていない。思い出したくない記憶だろうし、アルが詳細を話したくないのであればそれで構わないと思っている。辛うじて俺が知っているのは、家族に売られ、幼い頃から奴隷として生きてきたということだけだ。
しかし、知らないなりにある程度の推測はできる。今はそもそも奴隷売買自体が違法だから、当然奴隷の人権を保護するような法律もない。出会った時のあのボロボロだったアルの様子を思い出しても、奴隷として買われた先で酷い扱いを受けてきたのだろうということは想像に難くなかった。
だからきっと、彼には『おやつの時間』なんてものは与えられなかったし、お菓子なんかもあまり口にしたことがないのかもしれない。それどころか、アルの痩せ細った身体を見るに、まともな食事を与えられていたかどうかすら怪しいくらいだ。
俺は、アルには幸せになってほしいと思っている。
今まで奴隷として必死に生き抜いてきたアルに〝普通の生活〟をさせてあげたい。毎日ちゃんとしたものを三食しっかり食べて、ゆっくり心身を休めてほしい。この家が、アルにとって少しでも安心できる場所になるといい……これは、ちょっと烏滸がましいかもしれないけれど。でも、俺にはそのくらいしかできないから。
今日のこの『おやつ』のお誘いも、その一環のつもりだった。アルが甘い物を好きかどうかはわからないが、もし苦手だったら次からは甘くないものを用意すればいい。俺が出したものを何でも文句ひとつ言わず食べてくれるアルだが、彼の食の好みもちゃんと知って、より美味しいものを食べさせてあげたい。
俺はアルをダイニングに連れて行って、椅子に座って待っているように言った。アルは首を傾げながらも俺の指示に黙って従い、ダイニングの椅子にスッと腰掛ける。
俺はお茶の準備をしてから、キッチンの戸棚から『あるもの』を取り出すと、それをアルの元へと持っていった。
「どうぞ。マドレーヌだよ!」
「まどれーぬ……?」
俺が出したのは、近所の洋菓子店で売っている素朴な焼き菓子だった。
特段高級志向というわけでもない、地域の皆に親しまれている洋菓子店。俺も職場への差し入れなんかでたまにお世話になっているが、一人暮らしではあまりお菓子を食べる習慣もなかったので、自宅用にマドレーヌを購入したのは初めてのことだった。実際、これを買い求めた時は「ラビくんが珍しいわねぇ」と店の奥さんに言われてしまった。
なので俺自身も食べるのは久しぶりなのだが、アルはそもそもマドレーヌ自体を知らないようだ。素で珍しがっている様子を見るに、本当に今までお菓子の類を口にしてこなかったのだなと思い知らされる。
「マドレーヌ。甘い焼き菓子だよ。アルは食べたことない?」
「見たことはあるけど、食べたことはない……」
俺がマドレーヌをひとつ手に取って見せてやると、アルはそれをまじまじと見つめながらそう言った。
富裕層だけでなく庶民にも広く親しまれているこの焼き菓子を、アルはまったく口にしたことがないと言う。予想はしていたが、お菓子のひとつも食べることを許されなかった彼の今までの環境を思うと、胸が痛くなった。
そんな気持ちとは裏腹に、俺は笑顔でアルに言う。
「そっか、じゃあ今日が初めてなんだね。どうぞ、よかったら食べて」
「……いいの?」
俺がお茶と共にマドレーヌを勧めると、アルはそれを見つめながらもおずおずとそう返してきた。
アルは、俺の許可がないと基本的には何もしようとしない。これはおそらく奴隷時代の名残で、きっと命令以外のことを勝手にしようものなら、それは酷い仕打ちを受けてきたのだろう。それこそ食事や入浴、睡眠に至るまで、アルは俺が「いい」と言わない限り、どれだけ時間が経とうとも絶対にそれをしようとはしなかった。
アルのこういった習性は、現状では仕方のないことだと思っている。アルはつい先日まで奴隷だったわけで、だから今まではそれが彼にとっての〝普通〟であり、最善の生きる術だったのだ。俺はアルの『ご主人様』ではないから、アルが何かをするときに俺の許可なんて本当は必要ないのだけど、アル本人がそのほうが過ごしやすいと言うのなら無理にやめさせようとは思わない。今まで当たり前だった習慣を急に変えるのはとても難しいことだというのも、俺なりに理解しているつもりだ。
アルは今はまだ心身共に休養が必要な時期だ。俺にできることは少ないけれど、ここで休むことで少しでも生きるエネルギーを得て元気になってほしい。そうしたらきっと、いずれは彼自身の意思でやりたいことを見つけるだろうし、他者に命令されて落ち着くということも減っていくのではないだろうか。……ゆっくりでいいから、いつかはそうなってくれるといい。
「いいよ」
だから俺は、アルにお菓子を食べても構わないと許可を出した。本当は必要なくとも、俺が言わなければアルは絶対に手を付けようとはしないだろうから。
俺がにこりと笑ってそう言ったのをしっかりと確認すると、アルは恐る恐るといった様子でバスケットに盛られたマドレーヌに手を伸ばした。手に取る間も、アルはちらちらと伺うように俺の顔を見ている。相当遠慮しているようだ。
アルはバスケットの中のマドレーヌをひとつだけ摘んでから、また俺の顔を確認する。それに対して俺が笑顔で頷いてみせると、彼はごくりと唾を飲んでから、マドレーヌの端っこをそっと口に含んだ。
「……!」
この時のアルの顔は、今でも忘れられない。
本当に可愛かった。表情が乏しく感情の起伏が少ないアルが、こんなにもわかりやすい顔を見せたのは出会って以降初めてのことだった。マドレーヌの味にどれほど感動したのか、その表情を見ただけでわかってしまったくらいに。
「おいしい?」
聞くまでもないかもしれないが、俺はアルにそう尋ねる。するとアルはマドレーヌを咀嚼しながらこくこくと頷いた。
こうしているとなんだか子供みたいだ。
アルは俺より背が高いし、見る限りでは俺よりも少し年上に見える。おまけに容姿は類稀なほど美しく整っているし、無口かつ無表情であるがゆえに最初こそ冷たい印象を受けたが、よくよく接してみるととても真面目で優しい性格だ。だけどまだ〝普通〟の感覚をよく知らない彼は、時々ちょっと子供っぽい面が出る。そういうところも魅力的で、俺はすごく好きなんだけれど。
アルはマドレーヌをひとつ、ゆっくりと咀嚼して味わうと、そのあとにぽつりと独り言のように呟いた。
「甘くて、やわらかくて、すごくおいしい……」
本当に、生まれて初めて食べたのだとわかる感想だった。
アルの蜂蜜色の瞳は心なしか細められて、頬はほんのりと桜色に染まっている。一目で気に入ってくれたことがわかり、口に合うかと内心不安だった俺はほっと息を吐いた。
「よかった。たくさんあるから、好きなだけ食べていいよ」
「……ラビは?」
食べないの?と言わんばかりの顔をしているアル。
「俺はいいや。それよりも、アルにいっぱい食べてほしいな」
俺のその言葉は、紛れもなく本音だった。
少しの間だけでも一緒にいたいという、ただそれだけの理由で俺に引き留められて、うちで暮らすことになったアル。同居しているからといって、これまでの経験から人間不信気味である彼との距離が縮まるとは限らない。
ただ彼には、美味しいものを食べて、あたたかいベッドで眠って——そんな平穏な生活をしてほしい。そして元気になったら、やりたいことをやって、行きたい場所に行って、幸せになってほしいと切に思っている。このマドレーヌは、そのための第一歩なのだ。
「遠慮しないでいいよ。あ、お茶もあるからね!」
俺はそう言ってアルに紅茶を勧める。アルは勧められるがままにそっとティーカップの取っ手に指を通すと、アールグレイをひと口こくりと飲んだ。
「おいしい……」
紅茶はこれまでの同居生活の過程でも既に飲ませていたけど、甘いお菓子のお供に飲む紅茶はまた格別だろう。無口なアルが珍しく「おいしい」と口に出してしまうくらいだ。
何を隠そう、このアールグレイは数あるフレーバーティーの中でも俺のお気に入りだった。元より今日はアルと初めてのお茶をするつもりでいたから、事前にマドレーヌと一緒に茶葉を買い求めておいたのだ。
アールグレイは香りに少しクセがあるから、人気ではあるが同時に好き嫌いが分かれるフレーバーでもある。紅茶自体ほとんど飲んだことがないらしいアルが気に入ってくれるかどうかは未知数だったけど、口に合ったようで本当に良かった。
ちびちびと紅茶を飲みつつぎこちない手つきでマドレーヌを食べるアルを眺めていると、自然と口元が緩んで笑みがこぼれる。そんな風についついじっとアルの顔を見つめてしまっていると、ふいに顔を上げた彼と目が合った。
「……」
「あ、ごめん! 食べづらいよね。その、喜んでもらえたのが嬉しくて、つい……」
しまった。アルは他人にじろじろと見られるのが嫌いなのだ。決して悪意があったりだとか、好奇の目で見ていたわけではないが、たとえどんな意味であろうとアルからしたら不快だっただろう。俺は慌てて謝罪して彼の顔から視線を逸らした。
しかしアルはそんな俺に対して特に嫌悪感を示す様子はなく、逆に俺の顔をしきりに見ながら何か言いたげにしていた。
「あ、あの……」
「うん?」
「……こ、これ」
アルはそう言い淀みながら、マドレーヌの入ったバスケットを俺のほうについと押し出す。
「……すごく美味しいから、ラビにも食べてほしい」
彼のその言葉を聞いて、俺は思わず目をしばたたかせた。
二人きりの共同生活にまだ慣れていないアルは、俺と一緒に何かをすることは苦手なのだと思っていた。食事もその例には漏れず、ここ最近は毎日食卓を共にしているとはいえ、俺が見ている限りではアルは居心地が悪そうにしていたから。
「いいの?」
先程同じことを言ったアルに「俺の許可なんか必要ないんだけどなぁ」と思ったばかりだというのに、俺はつい彼にそう尋ねてしまった。
俺の言葉にアルはこくりと頷くと、バスケットからマドレーヌをふたつ手に取る。そして、そのうちのひとつを俺に向かって差し出した。
「一緒に食べよう」
一緒に。彼からそう言われて俺はとてつもなく嬉しくなった。
自分を買った貴族の元から逃げ出して、何もわからないままに俺に拾われたアル。まだ身体も万全ではない中で、知らない人間と慣れない生活を送るのは少なからず苦痛もあるだろう。だけど今、そんなアルが一緒にお菓子を食べようと言ってくれている。
アルからそんなことを言われたのは初めてのことだった。否が応でも胸の奥があたたかくなって、ふわふわとした高揚感に包まれながらも、俺はアルからマドレーヌを受け取り、それをぱくりと食べた。
「わ……おいしい!」
ひと口かじった途端口の中にじゅわっとバターの風味が広がって、とっても美味しい。
俺もマドレーヌを食べるのは久しぶりだったので、その美味しさに思わず笑顔になってしまった。そしてそんな俺を見たアルの表情も、なんとなくだが先程より少し柔らかくなった気がした。
「ほんとだ、すごく美味しいね」
「うん。おいしい……」
俺が美味しいねと言って笑いかけると、アルも小さな声ではあったが同意の言葉を返してくれた。
アルと一緒にこんなに穏やかな時間を過ごすことができるなんて。俺、今すごく幸せだ。
「ラビ」
アルのよく通る心地良い声が、俺の名前を呼ぶ。
それだけでドキドキしてしまうのだから、俺は既に手遅れなのかもしれない。
俺は、アルのことが好きだ。
少しの間だけ一緒にいられればいい、なんて思っていたけど、本当は……もう気持ちに誤魔化しがきかないほど好きになっていた。
「その……ありがとう」
控えめに、しかし律儀にお礼を言ってくれるアルの姿が、俺にはとても眩しく見えた。
アルの過去について、俺は彼にほとんど詮索していないが、幼い頃から長く奴隷として生きてきた中で、おそらく肉体労働だけではなく所謂〝そういうこと〟もされてきたのだと思う。
アル本人には言っていないが、実は彼が寝込んでいて意識がなかったとき、医者に彼を診てもらっていた。俺はその際に、アルについて「性的暴行を受けた形跡がある」と医者から伝えられたのだ。
アルはとても美しい容姿をしているので、きっとそういうことをされたのも一度や二度ではなかったはず。そして時には自分と同じ男性からもそういう目で見られてきたのだろう、ということは想像に難くなかった。
アルは多分、俺のことを『いい人』だと思っているかもしれない。行き倒れていた自分を助けて、無条件で衣食住まで与えてくれる、根っからの善人だと。
しかし俺のこの感情はそんなアルの信頼を裏切るようなもので、それがひどく心苦しい。
罪悪感。その一言に尽きる。
だから俺は、何も言わない。絶対に好きだなんて告げてはいけない。
せめて彼の心を傷付けることがないように。そう遠くないうちに訪れるであろう彼との別れの日まで、彼にとっての『いい人』を演じ切ることが、今の俺にできる唯一の贖罪なのだ。
「明日も一緒にお菓子食べよう。何か食べたいものがあったら言ってね」
明日も、と俺が言うと、それを聞いたアルの目がわずかに輝きを帯びたような気がした。その反応だけで〝次〟を楽しみにしてくれていることが伝わってきて、俺も嬉しくなる。
今日はとても良いお茶会ができた。アルもお菓子を気に入ってくれたし、俺の自惚れかもしれないがほんの少しだけ、彼との距離も縮まった気がして。俺としては大満足だった。
そう思いながら俺はテーブルを片付けようとしたが、しかしその前にアルに引き留められた。
「……ラビ、あの……」
「なに?」
「これ、……」
遠慮がちにアルが示したのは、テーブルに置いてあるティーカップだった。これは、俺が先程まで飲んでいたアールグレイのカップだ。
「紅茶の淹れ方、教えてほしい。だめ?」
俺は自分の耳を疑った。
アルが、自分から何かをしたいと言った。これはうちに来てから初めてのことだった。これまでは俺に何を要求するでもなく、自ら意思表示をすることもほとんどなかったのに。
これは、きっとアルにとってはとても大きな変化だ。
当然、俺はアルの言葉を快く了承する。すると途端にアルは安堵したような、緊張が解けたような、そんな表情になった。
「それと、その……他にも、やりたいことがあるんだ。明日、聞いてほしい」
頼ってもいい?
そう言われているような気がして、俺は思わず笑顔になった。
「もちろん!」
アルがやりたいこと、興味を持っていること、どんな些細なことでも話してほしい。俺は自分に出来うる全てを以て、アルの力になりたい。
俺は、アルの幸せを何より願っている。俺の気持ちになんか気付かなくていい。アルとさよならする日が来ても、アルが他の誰かと幸せになったとしても、それでいいんだ。そう自分に言い聞かせて、「ずっと一緒にいたい」という本音に、俺はそっと蓋をした。
こうしてアルと一緒にいられる時間は、おそらくあっという間に終わってしまうだろう。だからこそ、今だけは。
ごめんね、アル。
もう少しだけ、君のそばにいさせてほしい。
end.
『行き倒れてた奴隷が好みドストライクだったので持ち帰ってみた』第一話のこぼれ話的な短編。アルがラビの家に来たばかりの頃、二人がまだ打ち解ける前のお話になります。
—————————
俺の名前はラビ。とある下町の片隅でひっそりと暮らしている、いたって平凡な男だ。
とある雨の日——俺は、路地裏で行き倒れていた奴隷を拾った。
アルと名乗った彼はかなり衰弱していて、拾ってきて数日は怪我と栄養失調でまともに起き上がることもできなかった。そのため俺はとても心配していたが、必死の看病の甲斐あってか、二週間もすればアルは問題なく身体を起こせるようになり、食事も俺と同じものを食べることができるようになったのだった。
「アル、おやつだよー」
ある休日の昼下がり。キッチンで下準備を終えた俺は、そう言いながら寝室にいるアルを呼びに行く。
アルは足の怪我はまだ完治していないが、短い距離であればある程度は自由に歩けるようになっていた。なので最近はベッドのある寝室ではなく、ダイニングで共に食事をするようになっている。
とはいえアルは俺に対して人見知りしているのか、それとも大した理由もなくいきなり自分を拾ってきた俺を信用しきれないのか、食事の時間以外は俺と顔を合わせず寝室に篭っていることが多かった。
怪我が治るまで、という一時的なものとはいえ、せっかく同居をすることになったのに……と少し寂しい気持ちはあった。だが幼い頃から長いこと奴隷として生活してきた彼の心の内は、彼本人にしかわからないのだろう。彼には彼なりの人との関わり方だったり、考え方だったり、そういうものがきっとあるのだと思う。なので俺は滅多に寝室から出てこないアルに特に何も言うことはなく、基本的には彼のしたいようにさせていた。
そんな感じで、同居しているからといってアルと積極的に距離を詰めようとはしてこなかった俺。しかし、今日は違った。
「……おやつ?」
「そう、おやつの時間。知らない?」
アルは『おやつ』という単語の意味すらわからないようで、俺の言葉に首を傾げていた。そして俺のおやつを知っているかという問いかけにも、ふるふると首を横に振る。
俺はアルの奴隷時代の生活だったり、育ってきた環境だったり、そういったことはよく聞いていない。思い出したくない記憶だろうし、アルが詳細を話したくないのであればそれで構わないと思っている。辛うじて俺が知っているのは、家族に売られ、幼い頃から奴隷として生きてきたということだけだ。
しかし、知らないなりにある程度の推測はできる。今はそもそも奴隷売買自体が違法だから、当然奴隷の人権を保護するような法律もない。出会った時のあのボロボロだったアルの様子を思い出しても、奴隷として買われた先で酷い扱いを受けてきたのだろうということは想像に難くなかった。
だからきっと、彼には『おやつの時間』なんてものは与えられなかったし、お菓子なんかもあまり口にしたことがないのかもしれない。それどころか、アルの痩せ細った身体を見るに、まともな食事を与えられていたかどうかすら怪しいくらいだ。
俺は、アルには幸せになってほしいと思っている。
今まで奴隷として必死に生き抜いてきたアルに〝普通の生活〟をさせてあげたい。毎日ちゃんとしたものを三食しっかり食べて、ゆっくり心身を休めてほしい。この家が、アルにとって少しでも安心できる場所になるといい……これは、ちょっと烏滸がましいかもしれないけれど。でも、俺にはそのくらいしかできないから。
今日のこの『おやつ』のお誘いも、その一環のつもりだった。アルが甘い物を好きかどうかはわからないが、もし苦手だったら次からは甘くないものを用意すればいい。俺が出したものを何でも文句ひとつ言わず食べてくれるアルだが、彼の食の好みもちゃんと知って、より美味しいものを食べさせてあげたい。
俺はアルをダイニングに連れて行って、椅子に座って待っているように言った。アルは首を傾げながらも俺の指示に黙って従い、ダイニングの椅子にスッと腰掛ける。
俺はお茶の準備をしてから、キッチンの戸棚から『あるもの』を取り出すと、それをアルの元へと持っていった。
「どうぞ。マドレーヌだよ!」
「まどれーぬ……?」
俺が出したのは、近所の洋菓子店で売っている素朴な焼き菓子だった。
特段高級志向というわけでもない、地域の皆に親しまれている洋菓子店。俺も職場への差し入れなんかでたまにお世話になっているが、一人暮らしではあまりお菓子を食べる習慣もなかったので、自宅用にマドレーヌを購入したのは初めてのことだった。実際、これを買い求めた時は「ラビくんが珍しいわねぇ」と店の奥さんに言われてしまった。
なので俺自身も食べるのは久しぶりなのだが、アルはそもそもマドレーヌ自体を知らないようだ。素で珍しがっている様子を見るに、本当に今までお菓子の類を口にしてこなかったのだなと思い知らされる。
「マドレーヌ。甘い焼き菓子だよ。アルは食べたことない?」
「見たことはあるけど、食べたことはない……」
俺がマドレーヌをひとつ手に取って見せてやると、アルはそれをまじまじと見つめながらそう言った。
富裕層だけでなく庶民にも広く親しまれているこの焼き菓子を、アルはまったく口にしたことがないと言う。予想はしていたが、お菓子のひとつも食べることを許されなかった彼の今までの環境を思うと、胸が痛くなった。
そんな気持ちとは裏腹に、俺は笑顔でアルに言う。
「そっか、じゃあ今日が初めてなんだね。どうぞ、よかったら食べて」
「……いいの?」
俺がお茶と共にマドレーヌを勧めると、アルはそれを見つめながらもおずおずとそう返してきた。
アルは、俺の許可がないと基本的には何もしようとしない。これはおそらく奴隷時代の名残で、きっと命令以外のことを勝手にしようものなら、それは酷い仕打ちを受けてきたのだろう。それこそ食事や入浴、睡眠に至るまで、アルは俺が「いい」と言わない限り、どれだけ時間が経とうとも絶対にそれをしようとはしなかった。
アルのこういった習性は、現状では仕方のないことだと思っている。アルはつい先日まで奴隷だったわけで、だから今まではそれが彼にとっての〝普通〟であり、最善の生きる術だったのだ。俺はアルの『ご主人様』ではないから、アルが何かをするときに俺の許可なんて本当は必要ないのだけど、アル本人がそのほうが過ごしやすいと言うのなら無理にやめさせようとは思わない。今まで当たり前だった習慣を急に変えるのはとても難しいことだというのも、俺なりに理解しているつもりだ。
アルは今はまだ心身共に休養が必要な時期だ。俺にできることは少ないけれど、ここで休むことで少しでも生きるエネルギーを得て元気になってほしい。そうしたらきっと、いずれは彼自身の意思でやりたいことを見つけるだろうし、他者に命令されて落ち着くということも減っていくのではないだろうか。……ゆっくりでいいから、いつかはそうなってくれるといい。
「いいよ」
だから俺は、アルにお菓子を食べても構わないと許可を出した。本当は必要なくとも、俺が言わなければアルは絶対に手を付けようとはしないだろうから。
俺がにこりと笑ってそう言ったのをしっかりと確認すると、アルは恐る恐るといった様子でバスケットに盛られたマドレーヌに手を伸ばした。手に取る間も、アルはちらちらと伺うように俺の顔を見ている。相当遠慮しているようだ。
アルはバスケットの中のマドレーヌをひとつだけ摘んでから、また俺の顔を確認する。それに対して俺が笑顔で頷いてみせると、彼はごくりと唾を飲んでから、マドレーヌの端っこをそっと口に含んだ。
「……!」
この時のアルの顔は、今でも忘れられない。
本当に可愛かった。表情が乏しく感情の起伏が少ないアルが、こんなにもわかりやすい顔を見せたのは出会って以降初めてのことだった。マドレーヌの味にどれほど感動したのか、その表情を見ただけでわかってしまったくらいに。
「おいしい?」
聞くまでもないかもしれないが、俺はアルにそう尋ねる。するとアルはマドレーヌを咀嚼しながらこくこくと頷いた。
こうしているとなんだか子供みたいだ。
アルは俺より背が高いし、見る限りでは俺よりも少し年上に見える。おまけに容姿は類稀なほど美しく整っているし、無口かつ無表情であるがゆえに最初こそ冷たい印象を受けたが、よくよく接してみるととても真面目で優しい性格だ。だけどまだ〝普通〟の感覚をよく知らない彼は、時々ちょっと子供っぽい面が出る。そういうところも魅力的で、俺はすごく好きなんだけれど。
アルはマドレーヌをひとつ、ゆっくりと咀嚼して味わうと、そのあとにぽつりと独り言のように呟いた。
「甘くて、やわらかくて、すごくおいしい……」
本当に、生まれて初めて食べたのだとわかる感想だった。
アルの蜂蜜色の瞳は心なしか細められて、頬はほんのりと桜色に染まっている。一目で気に入ってくれたことがわかり、口に合うかと内心不安だった俺はほっと息を吐いた。
「よかった。たくさんあるから、好きなだけ食べていいよ」
「……ラビは?」
食べないの?と言わんばかりの顔をしているアル。
「俺はいいや。それよりも、アルにいっぱい食べてほしいな」
俺のその言葉は、紛れもなく本音だった。
少しの間だけでも一緒にいたいという、ただそれだけの理由で俺に引き留められて、うちで暮らすことになったアル。同居しているからといって、これまでの経験から人間不信気味である彼との距離が縮まるとは限らない。
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「遠慮しないでいいよ。あ、お茶もあるからね!」
俺はそう言ってアルに紅茶を勧める。アルは勧められるがままにそっとティーカップの取っ手に指を通すと、アールグレイをひと口こくりと飲んだ。
「おいしい……」
紅茶はこれまでの同居生活の過程でも既に飲ませていたけど、甘いお菓子のお供に飲む紅茶はまた格別だろう。無口なアルが珍しく「おいしい」と口に出してしまうくらいだ。
何を隠そう、このアールグレイは数あるフレーバーティーの中でも俺のお気に入りだった。元より今日はアルと初めてのお茶をするつもりでいたから、事前にマドレーヌと一緒に茶葉を買い求めておいたのだ。
アールグレイは香りに少しクセがあるから、人気ではあるが同時に好き嫌いが分かれるフレーバーでもある。紅茶自体ほとんど飲んだことがないらしいアルが気に入ってくれるかどうかは未知数だったけど、口に合ったようで本当に良かった。
ちびちびと紅茶を飲みつつぎこちない手つきでマドレーヌを食べるアルを眺めていると、自然と口元が緩んで笑みがこぼれる。そんな風についついじっとアルの顔を見つめてしまっていると、ふいに顔を上げた彼と目が合った。
「……」
「あ、ごめん! 食べづらいよね。その、喜んでもらえたのが嬉しくて、つい……」
しまった。アルは他人にじろじろと見られるのが嫌いなのだ。決して悪意があったりだとか、好奇の目で見ていたわけではないが、たとえどんな意味であろうとアルからしたら不快だっただろう。俺は慌てて謝罪して彼の顔から視線を逸らした。
しかしアルはそんな俺に対して特に嫌悪感を示す様子はなく、逆に俺の顔をしきりに見ながら何か言いたげにしていた。
「あ、あの……」
「うん?」
「……こ、これ」
アルはそう言い淀みながら、マドレーヌの入ったバスケットを俺のほうについと押し出す。
「……すごく美味しいから、ラビにも食べてほしい」
彼のその言葉を聞いて、俺は思わず目をしばたたかせた。
二人きりの共同生活にまだ慣れていないアルは、俺と一緒に何かをすることは苦手なのだと思っていた。食事もその例には漏れず、ここ最近は毎日食卓を共にしているとはいえ、俺が見ている限りではアルは居心地が悪そうにしていたから。
「いいの?」
先程同じことを言ったアルに「俺の許可なんか必要ないんだけどなぁ」と思ったばかりだというのに、俺はつい彼にそう尋ねてしまった。
俺の言葉にアルはこくりと頷くと、バスケットからマドレーヌをふたつ手に取る。そして、そのうちのひとつを俺に向かって差し出した。
「一緒に食べよう」
一緒に。彼からそう言われて俺はとてつもなく嬉しくなった。
自分を買った貴族の元から逃げ出して、何もわからないままに俺に拾われたアル。まだ身体も万全ではない中で、知らない人間と慣れない生活を送るのは少なからず苦痛もあるだろう。だけど今、そんなアルが一緒にお菓子を食べようと言ってくれている。
アルからそんなことを言われたのは初めてのことだった。否が応でも胸の奥があたたかくなって、ふわふわとした高揚感に包まれながらも、俺はアルからマドレーヌを受け取り、それをぱくりと食べた。
「わ……おいしい!」
ひと口かじった途端口の中にじゅわっとバターの風味が広がって、とっても美味しい。
俺もマドレーヌを食べるのは久しぶりだったので、その美味しさに思わず笑顔になってしまった。そしてそんな俺を見たアルの表情も、なんとなくだが先程より少し柔らかくなった気がした。
「ほんとだ、すごく美味しいね」
「うん。おいしい……」
俺が美味しいねと言って笑いかけると、アルも小さな声ではあったが同意の言葉を返してくれた。
アルと一緒にこんなに穏やかな時間を過ごすことができるなんて。俺、今すごく幸せだ。
「ラビ」
アルのよく通る心地良い声が、俺の名前を呼ぶ。
それだけでドキドキしてしまうのだから、俺は既に手遅れなのかもしれない。
俺は、アルのことが好きだ。
少しの間だけ一緒にいられればいい、なんて思っていたけど、本当は……もう気持ちに誤魔化しがきかないほど好きになっていた。
「その……ありがとう」
控えめに、しかし律儀にお礼を言ってくれるアルの姿が、俺にはとても眩しく見えた。
アルの過去について、俺は彼にほとんど詮索していないが、幼い頃から長く奴隷として生きてきた中で、おそらく肉体労働だけではなく所謂〝そういうこと〟もされてきたのだと思う。
アル本人には言っていないが、実は彼が寝込んでいて意識がなかったとき、医者に彼を診てもらっていた。俺はその際に、アルについて「性的暴行を受けた形跡がある」と医者から伝えられたのだ。
アルはとても美しい容姿をしているので、きっとそういうことをされたのも一度や二度ではなかったはず。そして時には自分と同じ男性からもそういう目で見られてきたのだろう、ということは想像に難くなかった。
アルは多分、俺のことを『いい人』だと思っているかもしれない。行き倒れていた自分を助けて、無条件で衣食住まで与えてくれる、根っからの善人だと。
しかし俺のこの感情はそんなアルの信頼を裏切るようなもので、それがひどく心苦しい。
罪悪感。その一言に尽きる。
だから俺は、何も言わない。絶対に好きだなんて告げてはいけない。
せめて彼の心を傷付けることがないように。そう遠くないうちに訪れるであろう彼との別れの日まで、彼にとっての『いい人』を演じ切ることが、今の俺にできる唯一の贖罪なのだ。
「明日も一緒にお菓子食べよう。何か食べたいものがあったら言ってね」
明日も、と俺が言うと、それを聞いたアルの目がわずかに輝きを帯びたような気がした。その反応だけで〝次〟を楽しみにしてくれていることが伝わってきて、俺も嬉しくなる。
今日はとても良いお茶会ができた。アルもお菓子を気に入ってくれたし、俺の自惚れかもしれないがほんの少しだけ、彼との距離も縮まった気がして。俺としては大満足だった。
そう思いながら俺はテーブルを片付けようとしたが、しかしその前にアルに引き留められた。
「……ラビ、あの……」
「なに?」
「これ、……」
遠慮がちにアルが示したのは、テーブルに置いてあるティーカップだった。これは、俺が先程まで飲んでいたアールグレイのカップだ。
「紅茶の淹れ方、教えてほしい。だめ?」
俺は自分の耳を疑った。
アルが、自分から何かをしたいと言った。これはうちに来てから初めてのことだった。これまでは俺に何を要求するでもなく、自ら意思表示をすることもほとんどなかったのに。
これは、きっとアルにとってはとても大きな変化だ。
当然、俺はアルの言葉を快く了承する。すると途端にアルは安堵したような、緊張が解けたような、そんな表情になった。
「それと、その……他にも、やりたいことがあるんだ。明日、聞いてほしい」
頼ってもいい?
そう言われているような気がして、俺は思わず笑顔になった。
「もちろん!」
アルがやりたいこと、興味を持っていること、どんな些細なことでも話してほしい。俺は自分に出来うる全てを以て、アルの力になりたい。
俺は、アルの幸せを何より願っている。俺の気持ちになんか気付かなくていい。アルとさよならする日が来ても、アルが他の誰かと幸せになったとしても、それでいいんだ。そう自分に言い聞かせて、「ずっと一緒にいたい」という本音に、俺はそっと蓋をした。
こうしてアルと一緒にいられる時間は、おそらくあっという間に終わってしまうだろう。だからこそ、今だけは。
ごめんね、アル。
もう少しだけ、君のそばにいさせてほしい。
end.
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「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
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それはそれはものすごく‥‥‥
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性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
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