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本編
恋人にお酒を飲ませてみたらめちゃくちゃエロ可愛かった
しおりを挟む雨の中行き倒れていた美形な奴隷くん——アルを拾ってきて、なんやかんやで恋人同士になってから早いもので数ヶ月が経った。こうして平穏に暮らせるまでは本当に色々あったけど、相変わらず俺もアルも元気にやっています。
季節は巡り、だんだんと夏らしくなってきた今日このごろ。暑いと食べ物が傷みやすくなるから、保存するときは気を付けないとな……などと思いつつ、俺は壁掛けのカレンダーを見ていた。一方アルはダイニングの椅子に座って勉強をしている。俺もその勉強に付き合いながら、カレンダーに今後の大まかな予定をペンで書き込んでいった。そんな中、ふとカレンダーの昨日の日付が目に留まる。
「あ」
「どうしたの?」
「いや、大したことじゃないんだけど、そういえば昨日は俺の誕生日だったなぁって」
一人暮らしになってからは誕生日など祝う機会もなかったので、すっかり忘れていたなぁと思いながらそう呟く。すると、今まで大人しく勉強をしていたアルが突然ガタッと音を立てて立ち上がった。
「なんでそんな大事なこと黙ってたの!?」
「え!?」
「誕生日、凄く大事だよ。もっと早く言ってくれても……いや、そもそも僕がちゃんと聞いてればよかった」
寡黙なアルにしては珍しいくらい大きい声だったので、俺は驚きのあまり瞬きを繰り返す。自分でも忘れていたくらいなのに、アルにとってはそんなに焦るほどのことだったのだろうか。
「何歳になったの?」
「えっと、ちょうど二十歳かな」
「嘘でしょ、そんな節目なのに忘れてたの? じゃあ成人祝いもしないと……。ねぇ、今から買い物行こう。一日遅れだけど、ちゃんとお祝いさせて」
「えっ……いいの?」
俺の言葉にもちろん、と返してアルは微笑んだ。不意打ちで笑顔をくらった俺はまんまとときめいてしまう。ただでさえ俺の好みドストライクな美形だったのに、最近のアルは笑うことが増えてきて俺は以前にも増して心臓撃ち抜かれっぱなしだ。そしてその笑顔を惜しげなく俺に向けてくれることも、たまらなく嬉しい。
そんなアルに、まさか誕生日を祝ってもらえるなんて。自分の誕生日なんてさして重要には思っていなかったけど、アルにお祝いしてもらえるなら話は別だ。ていうか俺、アルに誕生日のこと教えてなかったし、それどころか年齢も言ってなかったなぁ。確かに迂闊だったかも。出会い方が特殊だったとはいえ、これからはもっとアルと色んな会話をしていかないとな、と思ったのだった。
✦✦✦
「改めて、誕生日おめでとう。ラビ」
「へへ……ありがと。なんか照れちゃうね」
その日の夜、アルと二人でささやかな誕生日パーティーをした。美味しそうなケーキも買って、食事もアルが俺の好物で揃えてくれて。成人祝いってことでお酒も用意して、テーブルの上がいつもより豪勢になった。
「お酒飲めるようになったのは嬉しいな。仕事でお酒扱うから、少しは勉強になるかも」
俺の仕事はバーテンダーだ。もともとはアルバイトで雇ってもらっていたけど、お陰様で今もよくしてもらっている。
今までは未成年だったから、お酒は作りはしても飲むことはできなかった。成人して自分でも飲めるようになったから、今まで作っていたお酒がどんな味なのかやっと分かるなぁ。そう思いながら白ワインのグラスを傾ける。アルが選んでくれたお酒は甘くすっきりとした口当たりで、度数もそれほど高くないので飲みやすかった。そしてアルはというと、そんな俺を微笑みながら見つめていた。一緒に飲めたらいいのになあ、と思いつつ、俺はアルに聞いてみる。
「そういえば、アルはお酒飲めるの?」
「どうだろう……飲んだことない。そもそも自分がお酒飲める年齢かどうか分からないし」
「あ、そっか……」
アルは元奴隷だ。小さい頃に奴隷商に売り飛ばされてからずっと奴隷として生きてきたらしく、自分の年齢も誕生日も覚えていないと以前に言っていた。
見た目は俺より少し歳上くらいに見えるから、たぶん成人はしているんじゃないかなぁと思うんだけど。俺もアルの誕生日が来たらお祝いしたいなって思っていたけど、誕生日がわからないとなるとそれも難しい。でもこの先ずっとアルのお祝いができないのはなんだか寂しい気がして。
「誕生日祝ってもらったこと、ないんだっけ?」
「うん、一度もない……。奴隷になったのは6歳の頃だったと思うけど、それからもう何年経ったのかわからないし。仮にわかっても、その、計算が苦手で……」
それもそうか、と俺は納得した。祝ってもらった経験が一度もなければ自分で分かるわけもないし、当時のアルに歳を数えろというのもなかなか無茶な話だ。
奴隷時代はかなり酷い扱いだったようだから、当然アルは学校に通ったこともなく、足し算や引き算などの基本的な計算もできない。俺と出会った当初は読み書きも全くできず、数字も辛うじて1から10まで数えられる程度だった。だけどアル自身はちゃんと勉強したいという意欲があるようで、うちに来てすぐに勉強を始めて、読み書きはもうだいぶできるようになったし、最近は読み書きだけでなく計算なんかも学び始めたようだ。俺も先生代わりに教えたり、解いた問題の採点なんかを手伝っているけど、覚えが早いし本当に頑張っていると思う。
「じゃあ、アルの誕生日も決めないとな。俺だけ祝ってもらうのって、不公平な気がするし……。いつがいい?」
「え、いつがいいんだろう……?」
そんな話題で盛り上がりながら、料理とお酒を楽しんだ。アルと囲む食卓はとても楽しくて、自然と笑顔になる。
いつもと同じようでちょっと特別な日。幸せな時間が流れていた。来年も再来年も、ずっとずっとアルと一緒に誕生日をお祝いできたらいいなぁ……と、俺はお酒でふわふわしてきた頭で思うのだった。
✦✦✦
- side アル -
自分の誕生日も忘れてしまうなんて、本当にラビらしい。
まぁ、僕も自分の年齢を覚えていないので、人のことはあまり言えないんだけど。
本日急遽開催したラビの誕生日パーティー。パーティーといっても僕とラビの二人きりだったけど、ラビははにかみながらお礼を言ってくれた。その笑顔がまた可愛くてきゅんと胸が高鳴る。
ラビは昨日で二十歳になったという。恋人同士になってそれなりに経つのに、そういえば彼の年齢を知らなかったなと今更ながらに思った。
ラビは僕の過去や素性をそれほど詮索してこない。それはきっと「自分の事にも触れないでほしい」という意味だと思っているから、僕もラビの素性についてはいまだによく知らなかったりする。家族のこととか、生い立ちのこととか、僕からすれば彼には結構謎が多い。こんな下町で一人暮らしをしていた割には、僕が奴隷時代に見てきた貴族達にも引けをとらないくらいマナーや所作が洗練されているし、過去には学校に通っていた経験もあるらしい。思い返してみれば、今の彼の生活とは不釣り合いなほど高い水準での教育を受けているなと感じる場面が多々あった。こうして一緒に暮らしていても、日常の何気ない言動からなんとなく育ちの良さが垣間見える。
そんな感じだから、もしかしたらラビは僕なんかでは本来近付くことも許されないような高貴な身分なんじゃないか……と考えたりもした。本当のところは分からないけど、きっと何か事情があるんだろうなとは思う。いつかラビ本人から話してくれるまでは、僕からは聞かないようにしているけど。
……とはいえ、さすがに年齢や誕生日くらいは聞いておくべきだった。そもそも自分自身のを覚えていないから、ラビのを聞くのも忘れていたんだけど。育ちの良し悪し以前に、自分はまだまだコミュニケーションが下手だな、と反省する。
「アル、今日はほんとにありがとね。おれ、幸せ者だなぁ……」
食事も終わって部屋のソファでくつろいでいると、ラビがまたお礼を言ってくれた。お酒が入っているからか、心なしか普段より口調がふにゃふにゃしている。か、可愛い……。
隣に座っていたラビがそっと寄りかかってきたので、それを受け止めてそのまま抱きしめた。ラビはそれに抵抗することなく、むしろ僕の胸に顔を埋めながら、すり、と頬擦りをしてくれる。恥ずかしがりなラビにしては珍しく今日は甘えただ。もしかしてお酒が入ったせい?
「ラビ、いつもより身体あったかいね。お酒で酔っちゃった?」
「んん……そうかも。でも、なんかふわふわして心地いい……」
よしよしと頭を撫でると、ラビは気持ちよさそうに目を細めた。……ちょっとこれ、可愛すぎないか?
普段は甘え下手なラビがこんなにデレデレになっている姿は初めて見たかもしれない。お酒のせいか頬は火照っていて、目もとろりと潤んでいる。シャツの襟元から覗く細い首筋もほんのりと赤く染まっていて、色気がだだ漏れである。……これは、正直めちゃくちゃクる。
今すぐにでも押し倒してしまいたい欲に駆られるが、きっとラビにはそんなつもりはないのだろうとぐっと我慢した。しかしラビはそんな僕にはお構いなしで、甘えるように顔を近付けたかと思うと、そのまま僕の唇を奪った。
「んっ……んむ、はぁ……っ♡」
ラビの咥内は温かくて、キスだけでとろけてしまいそうだった。その温かさが心地よくて、そのまま舌を差し出して深く口付けをする。
ラビのほうからキスしてくれるだなんて信じられない。普段もキスをすれば精一杯応えてくれるけど、するのはいつも僕からだった。照れくさいのかラビからは滅多にしてくれない。それなのに。
「アル。アル……だいすき」
「……っ!」
いつになく積極的なラビの色香に眩暈がしそうだ。
もともと顔に色々出てしまうタイプらしいラビは、身体を重ねるようになってからは特に色気が隠しきれていなかった。本人は普通にしているつもりだろうけど、明らかに以前より仕草のひとつひとつに艶っぽさが増しているし、これまた無意識だろうがふとした瞬間に誘うような表情をすることがある。それだけならまだいいのだけど、問題はこれが僕以外の人に対しても発揮されるということだ。僕が気を揉むのも無理はないと思いたい。本当、無自覚って怖い。
「ねぇアル……ベッド、いこ?」
ちゅ、ちゅ、と僕の首筋や頬にもキスをしながら、ラビが魅力的なお誘いをしてきた。こんなに可愛くおねだりされて断れるわけがない。僕は頷いてラビを寝室のベッドに運ぶ。
ラビのほうからこんなに熱烈なアピールをしてもらえるなんて、これもお酒の力なのか。それにしてもこんなに可愛くなるだなんて聞いてない。いやラビはいつも可愛いんだけど、普段はこういったことに不器用なぶん、ギャップがたまらない。
ベッドに着くなり、ラビは僕を押し倒して上に乗ってきた。
本当に今日のラビは積極的だ。上に乗ってくれるのも初めてだし……下から見上げる彼の姿もまたそそる。相変わらず目はとろんとしていて、そのモスグリーンの瞳いっぱいに僕を映していた。
「アルにお祝いしてもらえて、ほんとに嬉しかったんだ。だから今日は、おれが頑張るから。……いっぱいお礼させて?」
ラビはそう言うと、上に乗ったまま僕のスラックスのベルトに手をかけた。
✦✦✦
「んっ……んむ、ちゅ……♡」
あれから数分後。ラビは僕のペニスを口に咥えて健気に奉仕していた。
ラビの口の中はとろっとろに熱くなっていて、慣れていないであろう拙い舌遣いがまたもどかしくも気持ちいい。しかし少しずつ質量を増していくそれをラビの小さな口では咥えきれなくなったのか、途中からは咥えるのをやめて舌で舐めるほうにシフトしていた。そんな中でもラビは一生懸命奉仕してくれているが、僕は中心に熱をくすぶらせつつもなかなか達することができないでいる。ラビから「アルは何もしちゃダメ」と言われてしまったので僕はどうすることもできないが、そのぶん僕の上で必死にフェラを続けるラビの蕩けきった顔を存分に堪能していた。
「アル、ごめん……つらいよね? お、おれが下手くそなせいで……ほんとにごめん」
今一歩のところでなかなか達せない僕を見て、涙目になりながらラビが謝る。僕はそんなラビを慰めるように優しく頬を撫でた。慣れてないのはわかっていたし、それでも頑張って僕を気持ちよくさせてくれようとするラビが可愛くて、愛おしい。
「大丈夫。あとは自分でするから、触ってもいい?」
「だ、ダメ!」
ラビはまだ諦める気はないらしい。フェラではイかせられないと察したらしいラビは、先程から解していた後ろを僕の性器に充てがった。クチュ、と卑猥な音がして、その秘部からローションがとろりと溢れる。
ラビはごくりと喉を鳴らしてから、ゆっくりと腰を下ろし始めた。
「アッ♡ あ、あぁ……♡♡」
ラビが女の子のような嬌声を上げる。それに合わせて、限界まで勃起したペニスがずぷずぷ……とラビの薄い腹に収まっていった。まだ完全に入りきっていないが、ラビはこの時点で既に強い快感に襲われているのか、ビクビクと身体を震わせていた。それでもじっくりと腰を進め、少しずつ少しずつ挿入していく。
その間も僕はじわじわと解放できない熱に焦らされている。今すぐその細い腰を掴んで一気に奥まで貫きたい衝動に駆られたが、僕はラビの言葉を守ってぐっと堪えていた。
「ふ、あぁ……ッ♡ もう、もうだめ……また、おれだけ気持ちよくなっちゃう……っ♡♡」
腰を進めるにつれ、僕のペニスがラビのいいところにゴリゴリと擦れる。それが余りにも気持ちよすぎたのか、ラビは下ろしていた腰を一旦止めてしまった。僕はというと、ナカの温かさと締め付けにいつ理性が持っていかれてもおかしくはない状態だ。それでもラビの僕を気持ちよくしたいという心遣いが嬉しかったから、それを無駄にしないようあくまで最後までラビの意志に任せる。
「大丈夫……ちゃんと気持ちいいよ。あと半分くらいだから、がんばろ?」
「う、うんっ……♡」
ラビは既にガクガクになっている下半身を叱咤して腰を進めた。動いたことでまた敏感な場所が刺激されたのか、ラビが快感にくっと喉を反らす。それでも今度は腰を止めずに挿入を続けていく。目に涙を浮かべながら、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返すラビの姿はとても扇情的で、嗜虐心がそそられた。ごり、と一番太い部分がまた前立腺に当たる。もうラビの足腰はいつ砕けてしまってもおかしくないだろう……と思っていた矢先。
どちゅんッッッ♡♡
「あ゛ッッッあ゛っあ゛あああーーーーーッッ!!♡♡♡」
ラビはついに限界がきたようでガクッと腰が抜けてしまい、それまではじわじわと挿入を試みていたペニスを一気に根元まで咥え込む。ラビの陰茎からびゅるるっと白濁液が吐き出され、またそれと同時にナカがきゅうきゅうとうねり、前と後ろ両方で絶頂を迎えたのがわかった。
「……、……ッ♡♡」
騎乗位の体勢なので、体重がかかるぶん挿入も深い。そんな状況で結腸の奥まで一気にぶち抜かれてしまったラビは、強すぎる快感に声を発することもできないようだった。ナカはいまだきゅんきゅんと激しく収縮しており、休む間もなくイキ続けているのがわかる。
僕ももう限界だった。いまだ絶頂から帰ってこないラビの腰をぐっと掴んで、スライドするように揺さぶった。
「あ゛、ま゛ッッ……あ゛っあんッッ♡♡ ひぅ゛、んぁうっ♡♡」
一度動いてしまうともう我慢ができなかった。瞬く間に理性が焼き切れてしまい、僕は欲望のままラビの最奥に精をぶちまける。
毎度思うけれど、ラビの中は気持ちよすぎる。僕のを迎え入れるたび、熱い肉襞がうねって離さないと言わんばかりに絡みついてくるのがたまらなく気持ちいい。相性っていうんだろうか、そういうのが物凄くいいんじゃないかとつくづく思う。
「はぁ、んっ……♡ アル……♡ きもち、よかった……?」
「うん、気持ちよかったよ……♡ ゴム、つけられなくてごめん。赤ちゃんできちゃうかもね……?」
「……ッ!♡」
久々に中に直接出してしまったけど、ゴムをつけさせてくれなかったのはラビだから、今日は許してくれるよね……? そんなことを頭の片隅で思いながら指でラビの髪を梳く。ラビは僕が言った言葉に興奮したのか、目にハートを浮かべながらはぁ、と熱い吐息を吐いた。
「赤ちゃん、できてもいいから……っ♡ アルのこと、もっときもちよくさせて……?」
ラビはそう言って、ゆさゆさと一生懸命に腰を動かしてくれる。気持ちいいのもそうだが、そんなラビの姿を特等席からくまなく眺めることができるのがまた最高だ。いつになく積極的で淫靡な彼の姿が、更に僕を昂らせる。
「あっあっ……♡ ん、あんっ♡ ぁ、アルっ♡♡ アルぅ……ひ、んんっ♡♡」
「ラビ、きもちいいね……♡ これ、もっとほしい?」
「ん、ほしい……♡ アルの、もっといっぱいほしいの♡♡ アルの赤ちゃんの種、おれのおなかにいっぱい出して……♡」
きゃうきゃうと可愛らしく喘ぎながら、ラビはすっかり甘ったるくなった声音でおねだりしてくれる。相変わらずラビの後孔にはペニスがずっぷりと嵌っていて、結合部は先程僕が出したものが溢れてドロドロになっていた。ラビはもう完全に腰が抜けてしまっているのか一向に挿入が緩まる気配はなく、それでも僕が気持ちいいようにと頑張って動こうとする姿がたまらなくいじらしい。
「あっ♡ んぁうっ♡ や、イクッ♡ またイッちゃっ……ア゛ッ、ん゛ぅッッ~~~~~~♡♡♡ 」
ラビが全身をビクビクッと痙攣させながら吐精せずにイッた。絶頂の瞬間、ナカがきゅううっ♡とひときわ強く締まったのがわかって、それとほぼ同時に僕も達する。
「ぁ、ん……ッ♡ はぁっ……はぁ……♡♡」
ラビは絶頂が終わってもまだ快感の波が去ってくれないようで、なかなか呼吸が整わない。
ラビの身体を見やると、先程までは薄っぺらかった下腹部が少し膨らんでいた。二度の射精により、ラビの腹の中はきっと精液でいっぱいに満たされているのだろう。その事実が僕に何ともいえない充実感を与える。
「ラビ……♡」
「ぁ、んうッッ……♡♡」
僕の可愛い恋人をもっともっと、とろけるくらい甘やかしたい。その感情のままに、これまでほぼされるがままだった僕は初めて起き上がり、ラビを押し倒してキスをする。ずっと騎乗位だった体勢が正常位に変わり、挿れたままのそこはそれだけでも感じるのか、ラビがまた甘い声を上げた。
「ありがと、ラビ。すっごくきもちよかったよ……♡ だから今度は、僕がラビのこと気持ちよくする番……でいいよね?」
「……♡♡♡」
ラビは何も言わなかったが、僕の言葉にこくりと頷いて、背中に腕を回してくれた。
✦✦✦
翌朝。俺は恥ずかしさと二日酔いの頭痛で頭を抱えていた。
都合よく記憶が飛んでくれていたら良かったのに、そんなこともなく昨晩のことはバッチリ覚えている。お酒が入って少し気が大きくなっていたとはいえ、俺はアルにあんな恥ずかしいことを……あぁダメだ、思い出すだけで頭痛が増してくる。
「もう二度とお酒飲まない……」
「なんで? また飲んでみようよ。今度は僕も付き合うから」
俺に水の入ったグラスを差し出しながら、アルがどこか楽しそうにそう言ってくる。グラスはありがたく受け取ったものの、俺はまだアルの顔をまともに見ることができない。それどころかアルの声を聞くだけでも昨日の痴態を思い出して、羞恥で死にそうだった。しかもお酒が入っていた俺と違ってアルは素面だったから、なんなら俺自身より鮮明に全部覚えていると思うと、もう……。グラスの水を全部飲み干しても顔から熱が引かなくて困る。
「昨日はやっと飲めるようになったって喜んでたのに。それに、少しだったらそれほど酔わないでしょ」
「そうだけど……そうなんだけどぉ……!」
「僕はまた見たいな、お酒入ったラビも。可愛かったし……ね?」
アルにそう言われて俺はまた居た堪れなくなり、テーブルに突っ伏した。ひたすら恥ずかしい。いくらお酒に酔っていたからって、何がどうなってあんな大胆なことができたのか、昨日の自分に問いたい。そりゃ、いつもアルにリードしてもらってばっかだなとか、アルにも俺と同じくらい気持ちよくなってほしいなって思ってはいたけど……!いたけどさ……!
「あ、でも、僕以外の人の前では絶対飲まないで。約束ね」
「飲まない……。絶っっっ対飲まない……」
アルに何故か強めに釘を刺された気がしたけど、その意図を汲み取る余裕などなかった。言われなくてもそんなことしない。とにかくお酒はもう飲まない……。
で、でも、アルがお酒入ったらどんな風になるかは見てみたいから、アルと一緒ならちょっといいかも……なんて。アルもお酒飲んだらふにゃふにゃになったりしちゃうのかな。もしそうだったら絶対可愛いな。飲んだことないって言っていたから、本人もわからないんだろうけど……正直めちゃくちゃ興味ある。次に飲む時は付き合ってくれるって言っていたし、アルがそう言うんなら……いいかな?
とまあ、そんなこんなで俺は「アルと二人きりの時以外お酒は飲まない」と固く約束させられたのだった。
end.
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