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本編
欲求不満すぎてオナニーしてたら恋人にバレてなんやかんやでセックスする話
しおりを挟むアルと晴れて恋人同士になり、また一緒に暮らし始めて三ヶ月。
俺たちの同居生活は至って順調で、不満など何もなくただただ幸せな日々だった。
……そう。だった、のだが。
ここ最近、俺の頭を支配している悩みがある。
アルと恋人になって以来、その関係に何の進展もないことだ。
別にアルに対して不満があるわけじゃない。むしろ一緒に過ごせば過ごすほど好きなところが増えていく日々。「好き」ってたくさん言ってくれるし、手も繋いでくれるしキスもしてくれる。正直それだけでもいっぱいいっぱいになるくらい幸せだ。
……でも、その、俺も男なわけで。せ、性欲とか、人並みにあるわけで。
正直に言うと、恋人としてもう一段階先へ進んでみたい、って気持ちがある。
でも臆病者な俺は、アルにそれを伝えることができないでいる。
アルは元奴隷だ。そのことについてアル本人が自ら話さない限り、俺からは深く詮索しないようにしているので詳しいことは分からない。でも、奴隷だった頃は時として性的暴行を受けることもあったと溢していた。
そんな過去があるわけだから、下手したら性行為自体がトラウマになっていてもおかしくない。俺がもしアルの立場だったらそうなってる気がするし。
そんなアルに「俺とセックスしてくれ」なんて、軽々しく言えるわけないだろ……!?
しかも「抱いてほしい」だなんて!!
そう、俺はいわゆるネコだ。抱かれたい方である。
でもアルは、背は高いしイケメンだけど、どちらかというと『抱かれたい側』よりは『抱きたい側』に好まれる容姿だと思う。線が細くて色素が薄くて睫毛が長くて、男性的な魅力の中に女性的な美貌も兼ね添えている。だから、これまでもそういう目で見られてきた経験はあるかもしれない。でも、抱く側としてはどうだろう。
いくら恋愛感情があっても俺のこと抱けるのかなとか、思ってしまう。俺は平凡を絵に描いたような容姿で、別にゲイ受けするような感じでもないし。しかも経験皆無なせいでリードもできそうにない。
終わってる。俺が悪条件物件すぎて終わってる!
ていうかセックス以前に俺は色気も何もなくて、関係が進まないのは単純に俺にそれだけの魅力がないからでは?なんてことも考えてしまうし。
なんてモヤモヤ悩んでる最中にも欲求は溜まっていくもので、最近ではアルが仕事で不在の間にこっそりと自慰をするのが日課になりつつある。アルがいない部屋で、アルに抱かれるのを想像しながらする自慰にはひどく背徳感を覚えるが一向にやめることができない。経験がなくとも「抱かれたい」欲求には逆らえず、前だけでは飽き足らず後ろまで使っているのだからもう末期だ。
俺がアルのことを毎日こんな目で見てるって知られたらどうしよう。気持ち悪いって思われるかな。男に抱かれたがるおかしい奴だって。
いや……一応恋人なんだし、俺からそれとなくアピールしてみてもいいのだろうか。でもやっぱり、性行為に良い思い出がないであろうアルを誘うなんてとてもじゃないけどできない。
俺が焦りすぎなのかな……。
アルに隠し事をしているという事実だけで罪悪感が酷い。アルに抱かれてみたいけど、アルのことは傷付けたくない。アルのためなら何だって我慢できるはずなのに、目の前の欲に逆らえない自分が恨めしかった。
✦✦✦
- side アル -
僕の恋人はとても可愛い。
しかし本人は自分を平凡だと言ってこれを全く自覚していない。確かにぱっと目立つような顔立ちではないかもしれないが、誠実で優しいところや、笑顔が可愛いところ、恋愛に奥手で初心なところ。日の光を浴びて輝く金髪も、控えめなモスグリーンの瞳も、彼の魅力を引き立てている。彼の全部が愛おしい。
正直、恋人になれるだなんて夢にも思っていなかった。
僕は元奴隷だ。彼——ラビに拾われるまでは社会の最底辺を這いつくばりながら生きてきた。
そんな底辺の僕が、ラビのような綺麗な人と恋愛関係になるだなんてとても恐れ多いし、絶対にあってはならないことだと。ラビへの好意を自覚してからもその考えは変わらず、だからこそ彼からの好意に鈍感になっていたのかもしれない。ラビが僕なんかを好きになってくれるなんて想像もしていなかったのだから。
だから今、彼の恋人になれて僕はすごく浮かれている。僕もラビも誰かと“お付き合い”するのは初めてだから慣れないことも多いけど、それでも3ヶ月経っても僕の恋心は留まることがなく、毎日のようにラビに好きだと伝えていた。僕の愛情表現にラビは毎回顔を真っ赤にしながら照れていて、本当に可愛い。世界一可愛い。何故こんなにも可愛い人が今まで誰からも手を出されずにいられたのか甚だ疑問だ。絶対に誰にも取られたくない……。
そんなラビだが、最近はなんだか悩み事があるみたいだ。
それとなく聞いてみても「なんでもない」「悩みなんかない」と言われてしまう。でもやっぱり微妙に元気がないように感じるし、ラビは無自覚だろうが溜め息の回数も増えている。
出来ることなら力になりたいけど、無理矢理聞き出すのもよくないし、どうしようか……。
そう考えつつ今日も仕事に向かう。僕とラビは仕事の時間がズレていて、僕が朝から夕方、ラビは昼すぎから夜までだ。だからいつも僕が先に家を出る。その間ラビは家事をしたり、買い物に出たり、家で休んでいたりと色々みたいだ。
ちなみに仕事は僕が工房の見習い、ラビはバーテンダーである。
やっとのことで見つけた仕事だ、今日も頑張ろう……と職場に到着したのだが、トラブルが発生していた。工房の機械が不具合を起こして修理に出すことになったらしい。最近メンテナンスしたばかりなのに……と同僚がぼやいていた。
主人が個人で経営している小さな工房だ。当然、機械も一つしかない。急に修理に出すことになってしまったので予定していた作業ができなくなり、仕方がないので今日は臨時休業にする、と主人が従業員に告知した。せっかく来たけど、事情が事情なのでやむを得ない。結局、僕はほとんどトンボ帰りのように帰路を辿ることとなった。
ラビは今日は休みのはずだったから、早いうちから買い物に出ていなければまだ家にいるはずだ。せっかくなので一緒に過ごそうと、僕は真っ直ぐ帰宅する。
「ただいま……」
玄関のドアを開けて家に入ると、ダイニングにラビの姿はなかった。キッチンにもいない。出掛けているのか、と判断し、帰ってくるまで勉強をしようと思い立った。今ではそれなりに出来るようにはなったが、読み書きの勉強は相変わらず日課として続けている。
いつもは寝る前に勉強しているから、筆記用具や辞書は寝室に置いてある。それらを取りに行こうと寝室のドアに近付いた時、ドアの向こうから微かに声が聞こえた。
声の主は一人しかいない。出掛けたと思ったが家にいたのか。そっと耳をすませてみると、やはりラビの声……なんだか苦しそうだが、声を抑えているのか何を言っているかまでは聞き取れない。
音を立てないように、少しだけドアを開けて中を覗いてみた。
そして、見てしまった。
「っふ、う……♡ んぅっ、アル……♡♡」
ラビが僕の名前を呼びながら、僕のシャツを抱いて自慰をしていた。
今まで見たこともないような蕩けた顔をして、聞いたこともないような甘ったるい声を出しているラビが。僕のシャツに頬擦りしながら、片方の手はアナルを弄り続けている。僕が覗いている位置からはラビの指にほぐされてとろとろになった穴がしっかりと見て取れる。
「んぁっアル……♡♡ すき、アルっ、すき……っ♡」
驚きのあまり固まってしまうが、それでも目が離せない。ラビがこちらに気付かないのを良い事に、僕は舐めるようにラビの痴態を目に焼き付けた。
好きな子が自分のシャツを抱いて、自分を好きだと言いながら自慰している。初めての体験に脳がショートしそうだった。気付けば自身の中心は触ってもいないのに既にガチガチに硬くなっていて、しかしそんなことすら気にも留めずひたすらにラビを凝視していた。
自分は性欲が薄い方だと思っていた。
奴隷時代にはそれこそ性奴隷のような扱いを受けたこともあって、求められれば自分の意思とは関係なく身体を差し出していた。ただそれは単純な性欲発散、相手が楽しいだけの行為で、僕にとっては腹を外から殴るか内から殴るか程度の違いしか感じていなかった。抱くのも抱かれるのも同じ。ただ命令されればそれに従うだけだった。逆らったらそれこそ何をされるかわからなかったから。
そう思っていたのに、今はどうだろう。目の前のラビの姿に、信じられないくらい興奮している自分がいた。たったシャツ1枚で、細い指の1本や2本程度であんなに蕩けてしまっているのに、もし僕本人としたら一体ラビはどうなってしまうのだろうか。……見てみたい。ラビのことをもっともっと気持ちよくさせてあげたい。
ドキドキと心臓がうるさいくらい鳴っている。なんだか身体も火照っている。
ごくりと唾を呑んでから、僕は開きかけのドアをゆっくりと開けた。
✦✦✦
「ラビ」
アルのシャツを拝借してもはや日課となってしまった自慰行為に勤しんでいると、不意に背後から声がして身体に影が落ちる。うつ伏せのような姿勢でいたのと、自慰に夢中になりすぎて全く気付かなかった。それと同時に、俺に呼びかけた声の主が誰なのかを認識して血の気が引いていく。
「あ、アル……!? なんで……仕事じゃ……!?」
「急に休みになったんだ。それで帰って来てみたら、ラビが僕のシャツで悪戯してたから」
そう言われて今度こそ真っ青になる。こっそりオカズにして自慰をしているのがバレた上に、下半身は丸出しで上半身も辛うじてシャツを引っ掛けているだけの、ほとんど裸みたいな情けない格好を晒しているなんて本当にしんどい。こんなとこ見られたくなかった、バレるくらいなら我慢すればよかった……と後悔の念ばかり浮かんでくるが、今更何を思ったところでもう遅い。きっと引いているだろうと思うと怖くてアルの顔が見られない。
「ごっ、ごめんなさい……!」
「何に謝ってるの?」
「アルのシャツだめにして、こんな事して、ごめん……。俺、気持ち悪いよね……? ど、どうしたら許してくれる? お願い、何でもするから嫌いにならないで、んむっ……!」
必死に謝っていたのに、ふいにキスで口を塞がれた。
じっくり味わうような、深い深い口付け。元よりアルにキスをしてもらうのが大好きな俺は、直前までの自慰行為で身体が敏感になっていたことも相まって、それだけでひどく感じてしまう。
「ねぇ、僕のシャツと僕本人……続き、するならどっちがいい?」
「ふぇ……」
「ラビが選んでいいよ。このシャツ使ってまた自分でする? それとも……僕にいっぱい抱きしめられてキスされて、奥の奥までぐちゃぐちゃになって、とろとろに甘やかされたい?」
「ッ……」
アルの言うことを想像するだけで身体の奥がきゅんきゅんする。
そんなことを言われたら期待してしまう。シャツだけでもこんなに興奮するのに、アル本人としたら……ダメだ、俺もう全部顔に出ちゃってる。俺、気持ち悪いのに。勝手にしてたこと、アルにたくさん謝らないといけないのに。
しかしアルは、期待と申し訳なさが入り乱れている俺にまた優しくキスを落としてから、極上の笑みをこちらに向けてくれた。
「気持ち悪いなんて、そんなこと思うわけないでしょ。恋人がこんなに求めてくれて、嬉しくないわけない」
「え……ほ、ほんと……?」
「ごめん……あの、そういう事がしたくなかったわけじゃないんだ。僕もラビと恋人同士になれて浮かれてたっていうか……。それに、僕なんかがラビに触れてもいいだなんて、考えたことなかったし、なんだか恐れ多くて……」
ああ、そうか。アルは子供の頃からつい最近までずっと奴隷として生きてきたんだ。そのせいで自分を底辺の存在だとか、人間じゃないとか思っているような節があった。これは長い時間をかけて刷り込まれたものだろうから、仕方ないのだけど……だからこそ、俺が綺麗な生き物か何かに見えてるんじゃないだろうか。恋人だから普通だ、と言っても、そもそもアルは今まで普通の生活すら満足にできていなかったのだから、わからないに決まっているのに。
「俺も、黙っててごめん、ね。そ、その……アルがいい」
「うん」
「お、俺たち恋人同士なんだし、アルが嫌じゃなければその……も、もっと触ってほしいです……」
はっきりと「抱いてほしい」とはまだ言えずに、結局変な言い回しになってしまった。でもこれだけ口に出して伝えるのでも俺にとってはめちゃくちゃ勇気がいる。
そんなムードもへったくれもない俺を、アルは「もちろん」と言って抱きしめてくれた。
「……あの、する前に一つ言っておかないといけない事があるんだけど」
「ん、なに?」
良い雰囲気になったと思ったら、唐突にアルが神妙な面持ちで俺を見つめてきた。はやる心をいったん抑えて、俺もアルを見つめ返す。
たぶん、大事な話。
「僕は……こういう事するのは初めてじゃない。命令されたら男女どちらともしてたし、上も下も経験ある。だからラビみたいに綺麗な身体ではないけど、それでも本当にいい……?」
アルの言う経験とは、奴隷だった頃の、だろう。
これだけルックスが良いのだから、そういう目で見てくる人もきっと少なくなかったんだろうなとは思っていた。でも、アル自身の口からそのことについて触れたのは初めてだった。思い出したくない事だったかもしれないのに、伝えてくれるアルは本当に誠実な人だと思った。
「アルは綺麗だよ」
俺は微笑んでアルにそう言った。アルはいつだって綺麗だ。見た目だけではなくて、その内面も、何もかもが美しいから。
それに、俺だって別に綺麗じゃない。そりゃ恋愛経験は皆無だし、それは身体のほうも同じなんだけど……。俺は男だから女の子のような純潔なんかないし、ただ恋愛に臆病すぎて何もなかっただけだ。同性しか好きになれない後ろめたさから、今までは先程のような自慰行為すら満足にしてこなかった身体。あまりにも経験値がなさすぎて、アルには見合わないのではないかと心配になっているくらいだ。
「もしアルがこういう事に嫌悪感があるなら、無理はしてほしくないけど……」
「ん、そういうのは、少しあったはずなんだけど。でもなんでだろうね。……今、すごくラビのことが抱きたい」
俺を見つめるアルの瞳に熱が篭っていることに気付いてしまい、下腹部がずくんと疼いた。
やばい。俺、すごく興奮してる。アルに抱いてほしくてたまらない。
「好きな人を自分の意思で抱くのは初めてだから、加減できるか心配だけど……」
「いいよ、しなくて。俺も男なんだから、そこまでやわじゃないつもりだし」
ゆっくりとベッドに押し倒されて、深いキスを交わす。今までもキスの時はドキドキしっぱなしだったけど、今はそれだけではなかった。期待で身体が火照っている。自分の太腿にアルの硬くなったものが当たるだけで、心臓がドキドキして壊れそうだった。
✦✦✦
「ナカ、柔らかいね……。何で開発したの?」
キスでとろとろにされた後に、ローションをたっぷりと纏ったアルの指が中に侵入してきた。
連日の後ろを使った自慰行為で既に結構な柔らかさをもったそこは、いとも容易くアルの細い指を飲み込んでしまう。
「んっ、ゆび……自分の、指で……」
「そうなんだ。道具とかは使わなかったんだ?」
「つ、使ったほうがいいんだろうけど……その、恥ずかしくて、買えなかった」
俺の言葉にアルはラビらしいねと笑う。その間にも俺の後ろは解され続けていて、今やアルの指を3本ほど美味しそうに咥え込んでいる。解さないと挿れられないから致し方ないのはわかっているけど、そこが今どうなっているのか想像するだけで既に羞恥で死にそうなのが本音だ。
下半身からクチュクチュと卑猥な音がして、自分の指では届かないようなところまで犯される。アルがその長い指をくっと曲げると何か奥のしこりのような物に当たり、途端に今まで経験したことのないほどの快感が駆け抜けた。
「んぇっ!?♡」
「前立腺。後ろ弄ってたなら知ってるでしょ?」
「し、しってる、けどっ……ふぁ♡♡」
知ってるけど、自分の指じゃこんなにダイレクトに触れることなんて出来なかった。前立腺を弄るたびに俺が面白いくらいに反応するので、アルはさぞかし楽しいことだろう。今までだって指が掠める程度でも気持ちよかったのに。とんとんとん、と一定のリズムでそこを刺激されるのがたまらない。我慢していた声が漏れてしまう。
「んぅ゛っ♡ んんっ♡ い゛っ……♡♡♡」
「声我慢しないで?」
「ふぁ……っ♡ ひ、卑怯……!」
唇を噛んで声を堪えていたら、アルの指が口内に割り入ってくる。指を噛んではいけないと咄嗟に口を開いてしまうと、もう駄目だった。口からは甘ったるい喘ぎ声しか出て来なくなる。そんな俺を満足気に見ながら「別に噛んでもよかったのに」と言いつつもアルのやつ、絶対わかっててやってる。
「あ、あ゛ぁ、ひぃ♡ ま、まって♡♡ これ、おかしくなっちゃ……あうっ♡♡」
とんとんとんとんとん♡♡
「あ゛、あんっ♡ だめ、そればっかりだめ♡♡ あっ、んっ、あ゛あ゛ぁっ♡♡」
極めつけに前立腺をきゅう、と指で摘まれた瞬間、目の前がスパークして恐ろしいくらいの快感が襲う。同時に俺の性器からびゅくびゅくっと出てくる白く濁った精液。信じられないくらい気持ちいい射精だった。
——中だけで、達してしまった。こんなの今まで一度もなかったのに。
「はぁっ……はぁ、はっ……」
「ラビ、かわいすぎ……。きもちよかった?」
「ん、っ♡♡」
達したばかりで返事が上手くできないので、せめてこくこくと頷く。アルに触ってもらっていると思うだけで身体はどんどん感度が上がっていって、どこに触れられても快感を拾ってしまう。
すっかり柔らかく解れたアナルからアルの指が出て行くが、その感覚にすら快感を覚えてしまう俺は変態なのかもしれない。ピクンと身体が反応したのも束の間、すっかり解れた恥部に指ではない熱いモノが充てがわれる。ついと視線を向けると、そこにはゴムを纏ったアルの性器があった。
「~~~~~ッ♡♡」
アルのそれは大きくて、ガチガチに勃起していて、ゴム越しでもわかるくらいにどくどくと脈打っている。どうしよう、ドキドキが止まらない。俺、アルのを見てこんなに興奮しちゃってる。まだ挿れてすらいないのに、既に俺のアナルはちゅうちゅうとアルのペニスに吸いついていて期待が全く隠せていない。
「……ラビ。いい……?」
「っ、あ……♡」
アルの顔を見ると、少し苦しそうに眉を寄せながらも微笑んでいた。早く挿れたくてたまらない、っていう雄の顔。アルも限界なのは同じだった。こんな顔しちゃってるのに、それでも俺に聞いてくれるところが本当にアルらしくて好きだ。
俺は返事の代わりにアルの身体に腕を回した。
ぬぷっ……♡
アルのモノがゆっくりとナカに侵入してくる。入念に解したため痛みはないが、指とは圧倒的に違うその質量に強い圧迫感を覚えた。
ぐぐぐ、と奥まで挿入するとそれは一旦止まった。俺はというと、アルのペニスが自分の腹の中に入っているという事実だけでなんかもういっぱいいっぱいだ。
「大丈夫……? 苦しくない?」
「だい、じょぶ……。だいじょぶだから、動いて……っ」
もっとほしい。アルのペニスで俺のいいところを嫌ってくらいに責めてほしい。俺の頭の中にはそんな淫らな考えばかりが浮かんでいた。実際は初めて受け入れる本物の男性器に身体を慣らそうと必死なのだが、俺の本能はあさましくもアルを求め続けた。
グチュ、と下半身のローションが卑猥な音を立てる。アルがゆっくりと律動を開始した。圧迫感はまだあるが、それよりもアルの腰が動くたびにペニスのカサの部分がゴリゴリと前立腺を刺激してくるのがたまらなくて。俺の意思とは関係なしに勝手に鼻にかかったような甘ったるい声が出てしまう。
「んッ……♡ や、あ、ぁん♡♡」
「ラビッ……かわいい、かわいいよ……。顔、もっと見せて?」
涙やら涎やらでぐちゃぐちゃになっている顔を見られたくなくて、顔を両腕でガードしているとアルがその手を退かそうとした。恥ずかしくてイヤイヤと首を振ると、アルは少し不満気な表情を見せたがしかし、その腕力でいとも容易く俺の腕をほどいてしまった。
「ラビは僕の顔好きでしょ? いくらでも見ていいから、ラビもかわいい顔、僕にいっぱい見せてほしいな……♡」
アルはそう言いながら俺の両手に自分の指を絡ませる。その間もピストンは止めず、それどころか少しずつスピードが上がっていった。俺は快感の逃がしどころがわからず、恋人繋ぎになった指にきゅっ♡と力を込めて握り返すしかない。
「ふっ、ぅあっ♡ あっ♡ あ゛、っん゛♡♡ 」
「ごめんラビ、もうちょっとだから……!」
アルも限界が近いんだろう、額に汗を浮かべて辛そうだ。
ごりゅっ、ごりゅっ、ごりゅっ、と音が聞こえるくらいに激しいストローク。だんだん大きく強くなる動きに伴って、理性が飛びそうなくらいの快感が全身に走る。ついにアルのペニスは奥の結腸の入り口までごちゅごちゅと責めはじめ、俺は気持ちよすぎてみっともなく喘ぐことしかできない。
「ぁ、あ゛あぁっ♡ だめっ♡ イクッ♡♡ イっちゃうッッ♡♡ ぁ、ゔ、んんんんっ♡♡♡」
洪水のように押し寄せる快感に逆らうことなどできず、ビクンビクンッと身体を痙攣させながら俺はイッた。……なのに、熱が全然引かない。見ると自身のペニスはまだ勃ち上がったままで、射精はできていなかった。
おかしい、今確かにイッたはずなのに。
「ラビ、初めてなのにもうメスイキしちゃったの……? 本当、かわいいね」
「へ、めすいき……?」
「女の子のほうでイッたってことだよ」
「おんなのこ……? おれ、おんなのこじゃないのに……?」
アルが教えてくれているんだけど、イッたばかりで頭がふわふわしていてよくわからない。ちゃんと聞きたくても口から出てくるのは本当に女の子みたいな喘ぎ声ばかりだし、アルはまだ達せていないから勿論ピストンも止まっていない。絶頂から戻ってこない身体はずっとイキッぱなしで……俺、ほんとに女の子になっちゃうのかも……♡
どちゅんっどちゅんっどちゅんっ♡♡
「ま゛、まって……♡ きゃうっ♡♡ ア、なんか♡ なんかへん♡♡ きもちいの、とまんなっ……あ゛っんんん♡♡」
「ッ……」
アルのと絡めた指をきゅううっ♡と握りしめ、爪先をピンと伸ばして俺はまたイッた。同時にアルも、挿入したままゴム越しに射精する。アルのペニスがドクドクと脈打ちながら精を吐き出すのがナカの感覚でありありとわかった。それがまた俺を興奮させるのだが、イキっぱなしの身体ではまともに言葉を発することすらままならない。
「好き。好きだよラビ。愛してる……♡」
「っぁっん……♡ おれも♡ おれもアルのこと、すき♡♡ だいすき……っ♡♡」
抱きしめられながらキスをされる。脳が多幸感で満たされて溶けてしまう。
気持ちよすぎて頭が回らないが、アルが好きって言ってくれてる。俺もいっぱい好きって伝えなきゃ……そんな気持ちから「好き」をうわごとのように繰り返していた。
「んんっ……♡」
ずりゅ、と音がしてアルのペニスが俺の中から出て行く。その感覚にすら感じてしまいビクンと身体を震わせて甘イキしてしまった。
アルがパンパンに膨らんだゴムを外して、口を縛ってゴミ箱に捨てていた。それを目で追いながら、勿体無いな、とつい思ってしまう。
「ごめんラビ。ゴム一つしか無かったから、今日はこれで」
「……ほしい」
「え?」
「アルの、アルのもっとほしい♡ ゴムなくていいからっ♡ 奥までいっぱい突いて、おれのなかに出してほしい……っ♡♡」
もっともっとアルので満たされたい。俺のお腹いっぱいに精液出してほしい。
中に出されたことなんて勿論ない。でも、アルのだったらほしい。アルの全部を俺のものにしたい。
「ラビは本当に僕を煽るのが上手だね……♡」
どちゅっ♡
アルのペニスが再び挿入される。それを待っていたかのように、俺のナカがきゅうきゅうとそれに吸い付いた。ピストンも最初の時のような緩やかさはなくて、ごちゅごちゅと俺の弱いところを的確に突いてくる。それだけで意識が飛びそうなほどきもちいい。
子宮がぐぐっと降りてくるような変な感覚。再び結腸の弁をノックするかのように刺激されると、だんだんとそこが柔らかくなってきている気がした。
「あ゛っ……♡ おく、おくはいっちゃう……っ♡♡ ん゛、ぁあっ♡」
「奥まで欲しいんでしょ? 大丈夫、いっっっぱい愛してあげるからね……♡」
「んっ♡♡♡」
ごちゅッッッッ
「ん゛ぁ゛っ♡ ……~~~~~~~♡♡♡」
一際強いピストンで一気に結腸が貫かれる。バチバチバチッ!と火花が飛ぶような強烈な快感と共に、俺はまたメスイキした。なんだこれ、きもちよすぎる。あたまおかしくなる。ずっと気持ちよくてガクガクと痙攣が止まらない。身体がいうこときかなくて、狂ったみたいにイキ続けている。
「あ゛っあぁッッ♡♡ あんっッッ♡♡ ア゛ッッッい゛、ぁっ♡♡ ん゛んんっ……♡♡」
「ごめ、ラビ……! 腰とまんなっ……」
俺はもう気が触れる寸前だったが、アルもまた余裕がないみたいだ。強く激しかったピストンがやや小刻みになって、射精のための動きに変わる。俺はキャパオーバーな快感に耐えようと、無意識にアルの背中に爪を立ててしまう。
「……ッッッ~~~~~~♡♡♡」
俺のナカでアルの精が弾けた。あっつい……♡ 腹の一番奥へどくどくと注がれる熱に、俺は言葉にならない嬌声を上げながらまた絶頂を迎える。涙で潤んだ目でアルを見上げると、アルは微笑んでキスをしてくれた。俺は整わない呼吸でそれに精一杯応える。
しあわせ……♡♡
はぁはぁと息を整えながら、俺はそう呟いた。いや、最早声にはなっていなかったかもしれない。涙でぼやけた視界の中、アルを見る。アルは激しく動いたからか少し汗をかいていた。髪が乱れていて、雄の色気が出ていて、すっごくかっこいい……♡
何度も達した身体はもうくたくたなのに、俺は気が付けばアルの身体に脚を絡めてもっとと強請っていた。はしたないとはわかっているけど、アルを離したくない。これが独占欲ってやつなんだろうか。
「アルっ♡ アルすき……っ♡♡ あ、んっ、またおっきく……♡ は、あぅっ♡♡♡」
「ラビ……ごめん、疲れてるだろうけど、まだしばらく寝かせてあげられないかも」
俺の中に入ったままのアルの性器が、再びムクムクと膨張していくのがわかった。とちゅ、と最奥を突かれてまた快感に身体が震える。
結局疲れ果てた俺が気絶するまで、俺たちはずっと抱き合っていた。
✦✦✦
次に目が覚めた時にはそりゃもうひどい有様だった。
喘ぎすぎたためか声は枯れており、腰は完全に抜けていた。自分から強請ったくせして結局後処理はアルにさせてしまったし、立てないので家の事も全部アルがやってくれた……。情けないことこの上ない。それに……あまりにも恥ずかしすぎてアルの顔がまともに見られない。あんなことをした後だから、仕方ないと思いたいけど。
そんな中、アルは俺の世話を焼きながらとても上機嫌だ。
しかも動けない俺をこれでもかというほど甘やかしてくる。少し室内を移動するだけでも毎回お姫様抱っこで連れて行くし、食事もひと口ひと口あーんで食べさせようとする。俺はまだ顔を見るだけでも悶えそうだというのに、アルが終始こんな感じなので凄く心臓に悪い。
「食事くらい自分でできるよ……」
「でも初めてなのに無理させちゃったし。何より僕がラビを甘やかしたいの。……だめ?」
「うっ……ダメじゃない、けど……」
上目遣いでそんなことを言われてしまうと、アルの顔面にとことん弱い俺はダメなんて言えるわけもなく、結局されるがままに甘やかされることとなった。水を飲むのすら「口移ししようか?」なんて言ってからかってくるから、俺は必死に普通でいいと言ってアルからグラスをふんだくる。本当にそんなことされようものならいよいよ俺の心臓がもたない。そんな俺を見てアルはまた「かわいい」と微笑んでいた。
「その可愛いっていうの、恥ずかしい……」
「ごめん、嫌だった?」
「嫌ではない……けど俺、べつにかわいくないし。ふつーだし……」
「……本当に自覚してないの?」
「え?」
どういうこと?と首を傾げると、アルは「そういうとこだよ」と言って俺の髪を撫でた。よくわからない。
こうやって喋っていると激しく抱き合ったのが嘘みたいだ……けど、まだ声はガサガサだし腰はガクガク、服を脱げば身体には無数のキスマークがついている。やっぱり夢じゃないんだよな……と勝手に顔が熱くなる。
「他の人には絶対そういう顔しないでね」
「ど、どういう顔!」
「意識してますーって顔」
「う、うぐぐ……」
顔に出るタイプなのは自負しているので何も言い返せない。
そんな俺の額にキスを落として、アルは悪戯っぽく笑った。アルは本当によく笑うようになったなぁ……と思いながら、でもこんな笑顔を見せてくれるのは俺に対してだけなのだということも、実は知っていたりして。
end.
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