上 下
3 / 9
第1章 転生

第3話 転生

しおりを挟む
目の前には火の海が広がっていた。

時刻は午前7時半。
やたらと人だかりもできているらしく、消防士も来ているらしい。

が。

私は今、身動きのできない状況に陥っていた。

私の周り全てが燃えている。
これはもう逃げることができない。

消防士の方もなかなか私のことが視界に入らないみたいで、水を別の場所にかけていた。

私は思いっきり助けを呼ぼうとしたのだが…

「たぁ……す…け……て……っ!!!」

うまく呼吸ができないため、声が出ない。

しばらく引きこもっていたせいか体力もない。

だんだんと意識も朦朧として来たので、私はもうこの先がないことを悟った。

「仕事を探してまたやり直そうと思っていたのに…こんな人生悲しすぎるよ…。せめて結婚したかったな…理想の男性と結婚して幸せな家庭も作れたら…どんなに良かったか…」

今になって悔しくなってきた。
あぁ、なんだか走馬灯まで見えてくるなぁ。
まだ死にたくないな…

考えてみるとまだまだやり残したことが私にはあったようだ。

けど、さすがにもう遅い。
息をすることも困難になり、体が言うことをきかなくなってきた。
こりゃ、もうおしまいだな。

私はそう思い、ゆっくりと瞼を閉じたのであった。









しばらくして。

「大丈夫ですか!?生きていますか!?」

消防士がきてくれたみたいだが、私はかなり意識がなかったので、その後のことは覚えていない。

………









さぁぁ。

私は爽やかな風に起こされて目を開けた。
とても青い世界。

あれ?確か私は火事によって倒れていたはず…

もしかして死んでしまったのかな…
最後の最後に消防士が来てくれたような気がするのだけれど…
助けてもらえなかったのかもしれない。
なんだかあっけなくて動きが起きないな…

しかし、なんかやけに体が鉛みたいに重いなあ…
なんか私の体じゃないみたいな…

私は自分の思い通りに動かない体をゆっくりと起こした。

そこには、辺り一面に草原が広がっている。

空には青い空と白い雲。
秋晴れのような清々しさがあり、とても気分はいいのだが…

やはり何かがおかしい。

「や、やっぱりなんで私ここにいるのっ?」

ようやく、状況が追いついてきた。
現状把握してみるとここは知らない場所なんだが、先ほどの声は誰の声だろうか。
聞き覚えのない声が私の近くから聞こえた気がするけどだれなんなのか。

ん?あれあれ。
もしかして、聞き覚えがないというか、なんというか。

私の声ってこんなに低くてしゃがれていたっけかな…

そして私は私の体の異変を目の当たりにしたのであった…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。 !逆転チートな婚約破棄劇場! !王宮、そして誰も居なくなった! !国が滅んだ?私のせい?しらんがな! 18話で完結

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

処理中です...