曖昧なパフューム

宝月なごみ

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かりそめの幸福

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 濡れた体を温めるために、ふたりはバスルームにいた。頭上に固定したシャワーからは、熱い雨が降り注ぐ。

「ん……すごい、朱夏さん。どんどん溢れてくる」
「や、言わない、で……っ」
「ひくひくして、かわいい……。もっと奥まで、舐めてあげる」

 立ったまま壁に背中を預ける朱夏の前に屈み、貴人は彼女の片足を持ち上げ秘部を舐め回していた。時々上目遣いで朱夏の表情を窺うと、目が合った彼女のナカがキュッと締まる。

 視線だけで感じているの?

 そう思うと貴人は優越感を煽られ、ますます無我夢中で彼女のそこにむしゃぶりついてしまう。

「も、ダメ……、貴人くん、一度、やめてっ」

 いやいやと首を振りながら、朱夏が悲鳴のような声をあげる。

「いやです。今夜は、数えきれないほど朱夏さんをイかせるって決めましたから」

 貴人はそう言って蜜壺に中指を埋め込み、押し広げるようにかき回しながら、ぷっくり熟れた小さな突起をちゅう、と吸い上げる。

「あああっ……!」

 朱夏は首をのけぞらせ、一度目の絶頂を迎えた。どぷ、と溢れた蜜が、貴人の指を伝って床に滴る。

 貴人は立ち上がり、はぁはぁと息を荒らげ放心状態の朱夏の前で、彼女の体液にまみれた指を口に含んでちゅぱ、と舐め取った。

「……おいしい。朱夏さんの、やらしい味がする」

 淫靡な囁きにかぁっと頬を熱く舌朱夏は、ふいっと顔を逸らして、羞恥に耐える。

 そんな彼女にクスッと笑みをこぼした貴人は、彼女の顔を両手で優しく包み込んで自分の方を向かせ、唇を合わせる。

「ん、ふぅ、ん……」

 二度、三度と繰り返すキスの合間に漏れる、朱夏の甘ったるい声にぞくぞくしながら、貴人は彼女に問う。 

「そのかわいい声……あの人にも、聞かせたの?」

 朱夏は気まずくなって、唇を噛んだ。エレベーターでキスをしていたことに、貴人は気づいていたのだ。あれは不本意なキスではあったが、生理的に漏れる吐息や苦しさを訴える声が、岡崎にとっては甘いものに聞こえたかもしれない。

 貴人は朱夏の正直な反応に苦笑し、彼女の頬をそっと撫でて言う。

「嘘でも否定すればいいのに、そうしない朱夏さんが好きだよ。あの人とのキスなんて、俺がすぐに上書きするし、もっと甘い声で鳴かせる」
「貴人くん……」

 不器用で至らない自分を丸ごと受け入れてくれる貴人に、朱夏の胸がじわりと暖かくなる。こんなに優しい人を突き放そうとしていたなんて、自分はなんて馬鹿だったんだろう。

「そろそろベッド、行きましょうか。俺、もうこんなに興奮してるけど……ここじゃ、思い切りあなたを愛せない」

 朱夏の手を取り、すでに熱く猛り立つ自身に触れさせた貴人が、熱っぽく上ずった声で囁く。朱夏はとっさに手を引っ込めたくなる程ドキドキしたが、彼の目をしっかり見つめてコクンと頷いた。

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