思想学部

ケーキ

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一年生

優しい人

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残ったみちかさんという人。

僕の調べでは、近寄り難い女性らしい。

なんでも、彼女はいつも誰にでも優しい。

だからこそ、逆に悪いことをしてしまえば申し訳ないと、人は気を遣い関わりにくいのだ。

くもり気のないそれは、太陽のようにまぶしく輝いていると言っていた。

僕自身も、同じ出身校の人に彼女のことを聞くくらいしか、近付く方法がなかった。

それくらいに誰も彼女と関わろうとしないし、話にも出ない。

相手を知ること…それが普通になるために必要だった。

だが、彼女のことはほとんど未知数で、すすむくんくらいどうなるか分からない。

「すすむくん、みちかさんは辞めておく?」

僕は頭の中で考えを巡らせた結果、その答えに至った。

「行こう!」

そう言って、すすむくんは急ぎ足で、彼女のクラスへ向かった。

その後ろをおとねさんが歩いてついていく。

「すすむくん待ってよ!」そう言って、僕も後をおった。

──────

「みちかさん!」すすむくんはそう言って、図々しく、クラスに入り近付いていく。

みちかさんはおっとりと「はい。」と微笑む。

彼は「思想学部に入って欲しいんだ!」と率直に言った

そんな言い方じゃあ、絶対断られる…。

僕はそう思いながら、おとねさんとクラスの入口から見ていた。

「いいですよ!入れてください」彼女はそう言い微笑む。

すすむくんはやったとその場で喜んだ。

「え!?」僕は思わず声に出した。

──────

こうして部活のメンバーは4人に。

僕はさっき、つっかかっていた疑問を彼女に聞いた。

「どうして、思想学部に入ったの?」

「それがみんなと上手く馴染めなくて…。誘ってくれたのが嬉しかったからかな!」

と微笑む。

「え!?意外…。」

すると「ありがとう」と絶やさない。

僕はその笑顔にやられてしまった。

ところで、部員は4人まで集まった。残りは1人。

しかし、同学年にもう誘えるヒトは居ない。

どうしたものか…

すすむくんにその事を話すと、「きっと大丈夫!」と笑っている。

その自信はどこからくるんだか…

そう思っていると、2人の声が聞こえてきた。

おとねさんとみちかさんだ。

「あの…!これからよろしくね!」

おとねさんは精一杯の声で言う。

「こちらこそ、よろしくね!」

みちかさんはにこやかな表情を崩さない。

おとねさんはそれに安心して笑顔を作った。

なんだこれは…。僕は片手で顔を覆う。

とても癒されるかかわり合いだ…。

いやいや、普通であるためには、この気持ちはいけない…

すると2人は会話を続けた。

「そういえば、思想学部って何をするのかな?」

「分かんないよ…誘われたのが嬉しくて入ったから」

僕はそれにハッとした。

2人がこっちをじーっと見ている。

これはすすむくんに言わなくては…。

僕はすぐに向かって聞いた

「ところで、思想学部って何するの?」

すると、満面の笑みで答える

「分かんない」

「僕達なんで集められたの!」

「冗談だよ~」

彼のそれにイラッときたが、僕は心の中で普通、普通と言い聞かせ、感情を必死に抑えた。

「一人一人、自分の思想を言って、それに向かって、色々考えを集めたり頑張ったりするんだ。」

「曖昧だね…。つまり、心の中の目標みたいな感じ?」

「まぁ、そんな感じ。思想はその時によって変えていいから。」

「分かった」

僕がそういうと、「じゃあ、早速、1人ずつ思想を言ってこうか」と彼は切り出す。

「もう!?5人集まってないのに!」

「うん、まぁ、いいんじゃないかな~。早速言ってくよ!」

彼はそう言って語り出す。

「僕はすごい何かになりたい」

思わず抽象的!と僕は心の中で叫んだ。

「じゃあ、僕が次に言うよ。

僕は普通になりたい」

すると、困った表情で、おとねさんも入ってくる。

「とりあえず、したいことを言えばいいんだよね…!」

僕は「そうみたいだよ」と言った

「え…っと…。私は新しい目標を作りたい!」

最後に、みちかさんが「優しくなりたいな!」と。

それに僕は少し意外だったが、その時は気に止めていなかった─────

「結局みんな思想というか、目標みたいになってるね。」ぼくは、アハハと笑いながら言う。

「最初はきっと、そんな感じでいいんだよ」

彼はそう言って、天井にある照明器具を見つめていた。

その様子を1歩引いたところで、みちかさんは微笑みながら見ていた─────
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