世界の全て

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2人の唯一①

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「私はこれからあなたの思想について、大勢の前で、誤ったものだと証明しようと思います。」

それに、周りはとても盛り上がる。拍手さえおこった。

「間違いなど存在しない。その考えでは、犯罪や、他者を苦しめる行為すらも間違いではなく、しても何も思われないものとなってしまう。許されてしまうのだ」

集多はとても強く握りこぶしをつくる。

「そんなことが許されていいはずがない。」

そう言い男の顔をみると、拍子抜けする。何も感じていないように、表情を変えていなかった。
 
「あなたはどう考えていますか?」

男は「心の底から相手の苦しみを望む人は存在しない。だから、きっと大丈夫だと俺は信じている」と言った。

「そんなことはありえない。人は過ちを繰り返してきた。これからもそれは変わりません。」

「あなたのその考えは人を堕落させ、悪い道へといざなうものです。」

集多は批判を続ける

「正解という絶対的なものが必要になる。人を導くのは揺るぎない絶対の真理。」

それに男は「その考えも存在していいんだ。」

ただそう言った。

「存在してはいけない考え、世界には往々として存在する。あなたはそれすらも間違いでないと言うのですか?」

「ただ考えることは悪じゃない。それを自分で否定してしまうことは悲しいことだ。」

「いいえ、悪い考えは消し去らなければいけない。あなたのような偏った考えは。」

中々決着がつかないので、集多は呆れたようにいう。

「あなたは変わらないようですね。昔からずっと。

名前のように誤り続けるのです。これからも。」

───────

「ゆういちくん!」

加木と出会う前、いつも私は大人からそう呼ばれていた。

名付け親さえも、たまに、ゆういちの方が普通だったと言う。

ゆいいつ、読み方はこちらの方が正しいのに、誤った呼び方が定着している

ゆういちと言う名前が嫌いだった。

それから色々あって、私は加木と出会う。

まさか、思想だけでなく、名前までも私を憎いと思わせる人間が居て、更に目の前に現れるとは思っていなかった。

彼と同じクラスになってからは、よく周りからゆういちさん、ゆういちくんと呼ばれることが多くなる。

私はそれが許せなかった。いつも私の眼前をとらえ、馬鹿にするかのようにおちょくってくる。

彼は許してはいけない。

私はそこから宗教の名前を、集多教と自分の苗字をつけた。

周りのもの達は、「集多」と呼ぶことが多くなる。

残った彼の思想、それがあり続ける限り、理想の世界というものは永遠にありえない。

私は強くそう思った。

──────
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