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⑥眠り姫にキスを
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──悪いな、私の代わりにあの娘を愛してやってくれ。
私はこの国が愛おしい。
私はこの国の為だけにしか命を掛けられない
私ではあの権力の操り人形である、あの娘を救えはしない。
お願いです、異母兄上、私の代わりに、マリエラを愛し、呪縛から解放してあげて下さい。不出来な弟からの最初で最後の願いです。
グレイルは意識を取り戻す前に、この国の王太子に最も近いとされる王子、シュタット・ギル・マルクベル・オーランド=ロットミラーの執務室に、学園修了式で騒ぎが起きる十日前に秘かに呼び出され、直々に頭を下げられていた。
自分には公国の血を引くあの娘を血の呪縛から解放できないと、腹違いの弟(世間的には遠縁の血筋)に何度も相談され、時には諭し、考え直すようにグレイルは神官として勉めていた。
全ての泥は己が被るからと、どうかあの娘を救ってやってくれと頭を下げられ、否と言えるほどグレイルと言う青年は、王家を怨んではいなかった。
神官グレイルの出生は、父親である現王が執務で煮詰まっている時に、母親である女・現ダウザー侯爵家の夫人が王宮にて花嫁修業の一環として侍女として登城していた際に出会い、結ばれた末に生まれた、どちらにしても望まれない子であった。
女には不義の証であり、王にとっては中々子が生まれない正妃の手前もあり、戯れに撒いてしまった子種であり、いつ暗殺されるかもしれぬ我が身。
王と女が選んだ答えは、子供を捨てる、と言うものだった。
誰もが無償の愛などと言うモノを持てるものだとは限らない。消して短くない年月神官として生きてきたグレイルに教えてくれたのは、生きた人々であり、神殿関係者だった。
グレイルは目覚めて早々に、胸の奥で異母弟を初めて憐れんだ。
今にも泣きだしてしまいそうなのに、本人がそれに気付く素振りが全くない。
子を授けてくれと言いながらもどこか怯えを見せる相手に、どうして無理強いが出来ようかと、苦渋に満ちた次期国王であろう異母弟の姿を脳裏に描き出した彼は、己の髪を梳いていた彼女の手を捕まえ、そっと指先に触れるだけの口付けを贈った。
きっと、何処も彼処も華奢で、グレイルと等しく性愛の喜びを全く知らない少女、マリエッタ。
王太子に一番近い青年に惹かれながらも、その気持ちを自覚する前に諦め、王子が望んだ未来へ足を進めた、敏すぎる、隣国の公王としての継承権をもつスーデン公爵家の姫。
腹に力を入れ、寝椅子の上に起き上がったグレイルは、床に降り、マリエッタの正面に膝を就き、見上げるようにして、微笑み。
「私はどのようにしたら女性を悦ばせることが出来るのか判りません。ですから、あなたが教えて下さい、マリエッタ様」
私はこの国が愛おしい。
私はこの国の為だけにしか命を掛けられない
私ではあの権力の操り人形である、あの娘を救えはしない。
お願いです、異母兄上、私の代わりに、マリエラを愛し、呪縛から解放してあげて下さい。不出来な弟からの最初で最後の願いです。
グレイルは意識を取り戻す前に、この国の王太子に最も近いとされる王子、シュタット・ギル・マルクベル・オーランド=ロットミラーの執務室に、学園修了式で騒ぎが起きる十日前に秘かに呼び出され、直々に頭を下げられていた。
自分には公国の血を引くあの娘を血の呪縛から解放できないと、腹違いの弟(世間的には遠縁の血筋)に何度も相談され、時には諭し、考え直すようにグレイルは神官として勉めていた。
全ての泥は己が被るからと、どうかあの娘を救ってやってくれと頭を下げられ、否と言えるほどグレイルと言う青年は、王家を怨んではいなかった。
神官グレイルの出生は、父親である現王が執務で煮詰まっている時に、母親である女・現ダウザー侯爵家の夫人が王宮にて花嫁修業の一環として侍女として登城していた際に出会い、結ばれた末に生まれた、どちらにしても望まれない子であった。
女には不義の証であり、王にとっては中々子が生まれない正妃の手前もあり、戯れに撒いてしまった子種であり、いつ暗殺されるかもしれぬ我が身。
王と女が選んだ答えは、子供を捨てる、と言うものだった。
誰もが無償の愛などと言うモノを持てるものだとは限らない。消して短くない年月神官として生きてきたグレイルに教えてくれたのは、生きた人々であり、神殿関係者だった。
グレイルは目覚めて早々に、胸の奥で異母弟を初めて憐れんだ。
今にも泣きだしてしまいそうなのに、本人がそれに気付く素振りが全くない。
子を授けてくれと言いながらもどこか怯えを見せる相手に、どうして無理強いが出来ようかと、苦渋に満ちた次期国王であろう異母弟の姿を脳裏に描き出した彼は、己の髪を梳いていた彼女の手を捕まえ、そっと指先に触れるだけの口付けを贈った。
きっと、何処も彼処も華奢で、グレイルと等しく性愛の喜びを全く知らない少女、マリエッタ。
王太子に一番近い青年に惹かれながらも、その気持ちを自覚する前に諦め、王子が望んだ未来へ足を進めた、敏すぎる、隣国の公王としての継承権をもつスーデン公爵家の姫。
腹に力を入れ、寝椅子の上に起き上がったグレイルは、床に降り、マリエッタの正面に膝を就き、見上げるようにして、微笑み。
「私はどのようにしたら女性を悦ばせることが出来るのか判りません。ですから、あなたが教えて下さい、マリエッタ様」
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