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私は、浴室で悲しくて恥ずかしくて泣いてしまいました。

あんなにも怒らせてしまったのは、私のせいです。

どの位経ったか、慧一様が浴室に入って来ました。

「また泣いているのか?」


「・・・お義姉様は、どうしたのですか・・・?」


「部屋に帰した。だから、泣くな。」


慧一様は、私を抱き締めてくれます。

でも私は涙が溢れて止まりません。

そんな私に、慧一様は優しくキスをしてきました。


「いつかは知られる事だった。少し早いが、離婚しても良い。香織が泣く必要は無い。」


「でも、まだ妊娠中です。優しくしてあげて下さい。きっと私を恨んでおられます。だから、慧一様だけでも優しくして・・・。ンッン。」


慧一様は、私が話しているのにキスしてきました。


「私は、お前以外の女に優しくするつもりは無い。」



きっぱりと言い切る慧一様に、私は戸惑ってしまいます。


「慧一様、お義姉様の事がお嫌いなのですか・・・?」


「好きか嫌いかで言えば、嫌いだ。あんな誰にでも足を開く淫乱な女は見たくもない。だが、子供が欲しいから我慢している。」


「そんな・・・。では、お子様が欲しいのは私の為ですか・・・?」


「勿論。」


慧一様は、私の目を見て真実を言っている事が分かりました。

何という事でしょう・・・。

そんな大それた事を、私の為にするなんて・・・。








~慧一視点~。







「産まれたのは男の子?なんて喜ばしいのでしょう!これで跡継ぎは心配いらないわね。」


お婆様が喜んでいる。

これで良い。

血が繋がらなくても、子供は跡継ぎだ。

これで香織が孕まなくても、何も言われないだろう。


「良かったですね。」


「慧一?嬉しくないのかい?跡継ぎだったんだよ。」


お婆様は訝しげに聞いてくる。


「嬉しいですよ。」


ニコリと笑い、本心を言う。


「それならば良いけれど。」


「お婆様、病院には行かないのですか?」


両親と香織は病院に行っている。


「ええ、子供が帰ってきたら会えるのだし、行きませんよ。いつ美弥子さんと子供は帰ってくるの?」


「子供も順調に育っているので、一週間位らしいです。」


「そうなの。五体満足で生まれたのなら、何の文句もありませんよ。でも、まだ名前が決まって無いでしょう?慧一は何か考えているのかしら?」


「そうですね。顔を見ない事には決められませんが、孝介、弘行、一真、祥弌あたりですかね。」


「うん。どれも良い名前だわ。どんな顔をしているのかしら?楽しみですよ。」


お婆様と話していると、両親と香織が帰って来た。


「ただいま帰りました。いやぁ、なんとも美男子でしたよ。生まれたてだというのに、顔立ちが立派でした。」


「そうなの。なんとも頼もしいわね。美弥子さんはどうなっているのかしら?元気だとは聞いているけれど。」


「私達が行った時には、寝ていました。三十分程起きるのを待っていましたが、起きなかったので子供の顔を見て帰って来ました。」


「そうなの。」


「香織、顔色が悪いぞ。どうした?」


心配になり香織の顔を覗くと、香織は首を振る。


「何でもありません。」


「まあ!本当ね!香織、お部屋で横になっていなさい。後で様子を見に行きますから。」


「・・・はい、お母様。失礼致します。」


居間から出ていった香織が心配で、話しを打ち切り香織の部屋に行くと、香織は泣いていた。


「どうした、香織?気分でも悪いのか?」


「・・・いいえ。お義姉様、寝ていませんでした。病室から出る時、私と目が合って睨んでいました。やはり、私はお義姉様に憎まれているのですね・・・。」


香織が哀れで、私は香織を抱き締める。


「憎むなら、私を憎めばいいものを。」


離婚するまで、香織をあの女から守る。

それが今の私にできる一番の事だ。


「香織、早めに離婚する。だから心配するな。」








~美弥子視点~。





子供を産んでやったのに、私に顔を見せにも来ないなんて!

こうなったら、絶対に離婚なんてしてやらない!

あの男と女に後悔させてやる!

子供は私の物だ!





















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