【R-18短編】王子さまの相手は悪役令嬢にしか務まらない〜悪いお妃さまに骨抜きにされるお話〜

7

　王子さまは、お妃さまに夢中でした。むずかしい政治のことは、何もかも大臣に任せきりでした。すると、大臣はそれをいいことに、国を乗っ取ろうとしたのです。不幸にも、王さまは大臣の手にかかり、亡くなってしまいました。

　そう、全ては大臣が仕組んだことだったのです。召使いの娘の乗った馬車を谷底へと突き落としたのも、王子さまにお妃さまをあてがったのも、全ては大臣のしわざでした。

「ああ、なんてことをしてしまったのだ…」

　王子さまは今になって、自分のおろかさを後悔しました。民衆は自分達の生活が苦しくなったのは王子さまのせいだと思い、大臣を応援しています。王子さまは悪政を働いた極悪人として、処刑されることになりました。

　しかし、処刑寸前のところで、助けが入りました。一部の優れた兵士たちが、王子さまを助けに来たのです。前々から大臣の動きが怪しいと察知していた兵士たちは、反旗をひるがえすチャンスをうかがっていたのです。兵士たちの働きのおかげで、大臣はあっという間に捕まってしまいました。

　しかし、これでめでたしとは言えません。王さまが亡くなり、大臣がむほんを起こした国を、新たに建て直さなければなりません。

　兵士たちは、王子さまが新しい国王になることを望んでいました。しかし、王子さまはそれを拒否します。

「私はおろかな過ちを犯した。国王になる資格はない…」

　王子さまは暗いおももちで、弱音を吐いています。すると1人の女性が、兵士たちをかき分けるようにして、王子様に近づきました。そして、王子さまの頬を思い切りたたいたのです。

　その女性は…召使いの娘でした。なんと彼女は生きていたのです。谷底から落ちて大きな怪我を負いましたが、優秀な兵士に助けられたのです。その後は彼の親族に匿われて、怪我を治していたのです。

「次は…次こそは、間違えちゃダメですよ」

　召使いの娘は喜怒哀楽のこもった、何とも言えない表情です。彼女の言葉を聞いた王子さまはボロボロと涙を流して、今度こそ立派な王さまになることを誓いました。

　めでたし、めでたし。