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第四章 借金の肩代わりに母親を奪われるとは、情けない!

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 ーああ、どうしてこんなことになってしまったのだろう

「分かりました。外で待っていますから話が終わったらお声がけしてください」

 エルドはそう言うと、私を置いて外に出て行った。嫌よ、こんな男と2人っきりにしないでよ。
 席を外したエルドの姿が見えなくなったのを確認すると、軽薄男は早速私に近づいてきた。そして、優しく私の髪を撫でようとしてきた。

「っ!!触らないで!!」

 私は軽薄男の腕を振り払い、距離をとる。一方の軽薄男は余裕綽々の表情だ。

「…それ以上、私に近寄らないで」
 
 我ながら国王に対して随分と失礼言い回しをしている。でも、そのくらい言わないと、この軽薄男のペースに引き摺り込まれてしまう。

「私を王宮で保護するなんて…誰が貴方の元になんか!」
「ふふふ。アンナ殿には私の妾として仕えてもらいたいのです」
「っ!!最低…!」

 やっぱり、それが狙いなのね。そのためにエルドを騙すなんて… この男は最低だ。

「ははは。あんなにも愛し合った仲ではありませんか」
「っ!それは、あなたが無理やり…!」
「その割には随分と気持ち良さそうでしたね」

 この…相変わらず私のことを完全に舐めている。見てなさいよ。
 私はお台所へと走り、調理用のナイフを手に取った。そして、その刃先を国王に向けた。

「これ以上近づくなら…この国の王とて容赦しません!」
「これはこれは。随分と物騒な真似を」

 私が刃物を向けるとは、流石のハロルド王も予想していなかったのだろう。彼の飄々とした雰囲気が消えた気がした。

「私を手にかけてしまったら、息子ともども、この国では生きていけなくなりますぞ?」

 この期に及んで、エルドのことを引き合いに出すなんて、本当に卑劣な男だ。それならそれでいい。これ以上こんな男の慰め物になるくらいなら、私にだって考えがある。

「それならば、私が命を絶てば良いだけの話でしょう!」

 私は刃先を自分の首へと近づける。大丈夫、覚悟はできているから…

「本気です。これ以上私に関わるのなら、私は死を選びます」
「流石、アンナ殿…見事な胆力だ」

 軽薄男が感心したように言う。こんな男に感心されたって何の名誉にもならない。

「しかし、アンナ殿の命を失うわけにはいきませんなぁ」

 軽薄男はニヤリと笑うと、懐から2枚の書状を取り出し、私に向かって投げた。
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