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第三章 借金漬けにされるとは、情けない!
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しおりを挟む僕は再び椅子に座っていた。冷や汗がたらたらと流れているのがよく分かる。部屋とカードを隈なく調べたが、何の成果も得られなかったからだ。
まずい、どうしよう…何とかしないと。サラさんの自信満々な態度を見るに、このままだと僕は負ける。
「揉めないように先に言っておきますが、借金ともなれば身ぐるみを剥がせてもらいますわ」
「そんなっ!だってこれは余興だって…」
「何よ。負け犬の当然の末路でしょ」
つまり、僕が身につけている鎧や剣も売られてしまうということか。特に手に馴染んだ剣を売ることになるのは絶対に避けたい。この勝負、負けられない…
いや違う。ここだ。このタイミングなんだ。僕は一か八か勝負に出ることにした。
「望むところだ!僕が勝ったら、この剣をくれてやる!」
僕はそう叫ぶと剣を引き抜き、テーブルに思い切り突き刺した。
「あら、意外と威勢がいいのね」
よし、上手くいった!テーブルに刺した剣が反射して、僕からはサラさんの手札が見える。汚い方法かもしれないけど、今の僕にはこの方法しか思い浮かばなかった。
ええと、サラさんの手札は…なんだ、あんまり強くないじゃないか。この手札では、僕に勝てる役は作れない。ということは、これまでの全てがブラフってことなのだろうか。でも、それはあまりにも不自然だ。
「勇者様、気分が優れないのですか?」
「わっ!?」
いつの間にか隣には、僕を心配そうに見つめるドロシーさんがいた。
「そんなに一点をぼうっと見つめて…それに凄い汗ですわ」
「わっ…」
ドロシーさんはハンカチを取り出すと、少し前傾姿勢になりながら、僕の顔の汗を拭き始めた。僕の目の前には、ドロシーさんの大きなおっぱいがある…少し前屈みになっているから、胸元が緩くて、先まで見えるんじゃないか。僕は思わずごくりと唾を飲み込んだ。
「ちょっと、勝負に集中してよ。私はもう場にカードを出したからね」
「え!?いつの間に!」
サラさんの声が、僕の視線を一気に勝負の場に引き戻す。しまった。何のカードを出したのか見落としてしまった。
でも、サラさんの手札で作れる役は僕より弱かったはず。時間もないし、ここはカードを出すしかない。
僕は慌ててカードを伏せる。大丈夫、勝てるはずだ…
「それでは、カードオープン!」
今度はドロシーさんの掛け声に合わせて、僕とサラが場に伏せたカードを裏返す。
「そ、そんな…!?」
「あはは!また童貞君の負けね!」
サラさんのカードは最強の役。ということは、僕の負け。いや、おかしい。さっきサラさんの手札を見た時には、こんな強いカードを持っていなかったじゃないか!!
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