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第三章 借金漬けにされるとは、情けない!

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「よし、これで僕の4連勝だ!」
「勇者様はギャンブルの才能がおありのようですわ」
「ふふふ。それなら何よりだ」

 お金をかけるようになっても僕の勝利は続いていた。勝てる勝負を確実にモノにして、負けそうな勝負はさっと引く。これを繰り返しているだけだけなんだけど、結構うまくいっている。
 トータルでは50メダルぐらいしか勝っていないけど、危険を冒さず、着実にメダルの数を増やしていく。それが僕には合っているのかもしれない。

「この様子なら大丈夫そうだ。私は用事があるから少し席を外す。後は頼んだぞ」
「承知しましたわ、ハロルド様」

 あれ?ハロルド様は席をはずすのか。まあ、忙しい方だし仕方ないか。僕がそんなことを考えているうちに、ハロルド様は足早に部屋を出て行った。
 その瞬間、今まで口を閉ざしていたサラさんが大きなため息をついた。

「はぁーあ。勇者様って、つまんない男なのね」
「なっ…!」

 いきなり侮辱の言葉を浴びせられて、僕は咄嗟の言葉が出なかった。
 
「勝ち方もチマチマしていて…っていうか絶対童貞でしょ?さっきなんて、ママのおっぱいジロジロ見過ぎて笑っちゃったんだけど」
「し、失礼だな!それに…賭け事には、関係ないじゃないか!」
「あはは!何その反応?やっぱり童貞じゃん」

 この子はいったい何なんだ。さっきまでは王様の前だから猫をかぶっていたというのか。というか、いくらなんでも失礼じゃないか。僕は普段怒るようなタイプではないけど、流石にイライラしてきたぞ。

「こら、サラ!やめなさい!…エルド殿、娘の非礼は母である私の責任でもあります。申し訳ございません」

 ドロシーさんが娘を戒め、そして、僕に頭を下げた。サラさんの態度にはムカムカするけど、お母さんに謝られてしまうと許すしかない。なんだかモヤモヤするけど、ここは場を収めるしかない。

「い、いえ…ドロシーさんが謝るほどのことではないです。それに、僕もついかっとしてしまいました」
「それなら良かったですわ」

 ドロシーさんの顔がぱっとにこやかになる。そして、クスクスと口を手で抑えて、上品に笑い始めた。

「ふふふ。それにしても…勇者殿が童貞だったとは…」
「あはは!ママも笑っているじゃん!」
「すみません、勇者様。女性1人満足させたことのない殿方が、世界を救おうとしていると思うと、何だか滑稽で…」

 ドロシーさんまで僕のことを笑い始めた。その瞬間、僕の心の怒りの導火線に火がついた気がした。もう腹が立ったぞ。この失礼な母娘をけちょんけちょんにしてやるんだ。
 幸い今の手札には最強の役が揃っている。この役を倒せるのは、最弱の役だけ。最弱の役は他のどの役よりも弱いけど、最強の役より強いという仕組みなわけだ。
 だけど普通そんな役を揃えたりはしない。よし、ここで大きくお金を張って、目にもの見せてやろう。

「僕はこの勝負、メダル100枚を賭けます!」
「あはは!すぐムキになるところも、やっぱり童貞だね!」

 僕が今日1番のメダルを賭けたことに、サラさん…いや、サラは大笑いしている。今に見てろよ。僕は場に最強の役のペアカードを伏せた。

「うふふ。では勝負に乗りましょう」

 ドロシーさんも勝負を降りない。僕と同じように、場に2枚のカードを伏せた。これは決まった。僕の勝ちだ。

「それでは、カードオープン!」

 サラの掛け声に合わせて、僕とドロシーさんがカードを裏返す。

「そ、そんな!?」

 驚きの声を出したのは、僕の方だった。そこには、ドロシーさんの出したカードは最弱の役。ということは、僕の負けだ。

「あら?勝ってしまいましたわ」
「うわ、だっさ…!最弱の役で勝った時は、賭け金が倍になるから、あと100枚出してよね」

 あっという間に僕の手持ちのメダルは350枚から150枚へと減ってしまった。たった一回の敗北で、形勢は大逆転。この時、初めて僕はギャンブルの恐ろしさを感じた。
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