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第三章 借金漬けにされるとは、情けない!

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「やった!また勝った!」
「あら、今の一戦は負けるつもりはありませんでしたのに」
「エルド殿は筋が良いようだな」

 ギャンブルの基礎を簡単に教えてもらった後、僕はカードゲームでドロシーさんと勝負している。カードを揃えて強い役を作った方が勝ちというシンプルなゲームだけど、なかなか奥が深い。
 初めのうちはルールを覚えるのに必死だったけど、今ではドロシーさんに勝てるくらいまで成長した。
 まだまだお金をかけていない段階だけど、ギャンブルのコツを掴めてきたかもしれない。勝つための最短ルートを辿りつつ、相手の表情や仕草をしっかりと観察することが大事なようだ。

「これだけ筋が良いなら、お金をかけた勝負をしても問題ありませんわ」
「ありがとうございます。ただ…」

 ありがたいことに、ドロシーさんから太鼓判を押してもらった。でも僕はバツが悪い返事しかできなかった。地下通路の魔物を倒すために、結構なお金を使っていたのだ。今はそんなにお金を持っていないのだ。

「案ずるな、エルド殿。すでにメダルはこちらで用意させてもらった」
「え!?よろしいのですか?」
「大した額ではないが、地下通路の魔物を倒した祝い金だ。300枚のメダルがあるから、好きに使って良いぞ」

 ええと、300枚のメダルということは300Gということか。強めの剣を一本買えるくらいの金額だ。なるほど。このお金を増やすも減らすも僕次第というわけか。望むところじゃないか。

「さて、勝負に臨む前にエルド殿には2枚の書類に署名してもらいたい」
「僕のサインが必要なのですか?」
「うむ。1枚は勝負の結果に従うという誓約書だ。これに署名することで、金銭の譲渡の正当性が保証されるのだ」

 ハロルド様が急に難しい言葉を使いはじめた。ええと、要するに勝負の結果に従うことを誓うってことだよね。それならサインしないと。僕は誓約書の署名欄に自分の名前を書き込んだ。

「次にこちらの書類は…私がエルド殿に祝い金を渡したことを証明する書類だ。今は国の財政管理も厳しくしていてな。このような微小の金額でも記録をつけることが求められているのだ」

 僕がハロルド様からお金を譲り受けたことを証明するためにサインが必要ってことか。王様とはいえ、ちゃんとこまめに記録を取らないといけないんだな。

「書類では便宜上、私がエルド殿に金銭を渡して、エルド殿がメダルに換えたことになっている。まあ、些細なことだ」

 つまり、書類では300Gのまま受け取ったということになるのか。うん。ハロルド様の言う通り、大した問題じゃないな。そう思いながら僕は書類に署名をした。
 さあ、いよいよ本当のギャンブルで勝負だ!
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