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第三章 借金漬けにされるとは、情けない!

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 僕はハロルド様に連れられて、カジノにやってきた。だけどハロルド様は大衆が賑わっている賭場に向かわない。向かったのは、店の隅にある「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた鉄の扉だった。
 ハロルド様が一定の間隔で何度かノックをすると、鉄の扉がゆっくりと開いた。そこには上の階へと続く階段があった。

「こ、こんな仕掛けがあるのですね」
「ははは。驚いてくれたのなら何よりだ」

 まったく。ハロルド様と一緒にいると驚かされることばかりだ。やっぱり王様ともなると、世界が違うんだ。権力とは無縁でいたいと思っていたけど、こういうのにはちょっと憧れるなあ。そんなことを考えながら、僕はハロルド様の後ろをついていく。
 しばらく階段を上がると、鉄の扉の前に2人の女性がいた。

「ああ、お待ちしておりましたわ。ハロルド様」
「変わりないようだな。ミセス・ドロシー。どうだ?サラも元気にしていたか?」
「はい。ハロルド様…」

 ドロシーと呼ばれた女性は、母性溢れる雰囲気と、トロンとした垂れ目が印象的だ。パーマがゆるくかかったセミロングの髪型が、温和な雰囲気を醸し出している。
 多分母さんと同じくらいの歳の人かな。でも雰囲気は正反対だ。母さんはキリッとしていて、厳しくも優しいタイプの女性だけど、ドロシーさんはおっとりしていて、ついつい甘えたくなるタイプだ。
 こういうことを思うのは何だけど、体型は母さんと似ているかもしれない。思わず目移りするくらい胸が大きいのだ。母さんもかなり大きいと思っているけど、ドロシーさんも負けていない。とはいえ、母さんはこんな大胆なドレスは絶対に着ないだろうから。
 …それにしても、凄いドレスだ。大きな胸が作る谷間がかなり見えているし、スリットからは白く長い脚が見えている。
 とにかく、目のやり場に困る格好なのだ。そのせいか僕は急に緊張してしまい、ごくりと唾を飲み込み、ドロシー夫人から目を逸らす。

「ふふ…」

 そんな僕の様子に気がついたからなのか、サラと呼ばれた女の子が僕の方を見て、くすくすと笑っていた。
 多分僕と同じくらいの年齢だろう。クッキリとした目鼻立ちはお母さん譲りなのか、とても大人っぽく感じる。だけど、体格は小柄で華奢だ。金髪のツインテールも彼女の幼さを感じさせている。
 ドレスは、お母さんとは対照的に露出度は高くない。でも、それが彼女の美しさを強調しているようにも感じる。どことなく精巧に作られた人形のような美しさと無機質さを秘めているのだ。
 …おっと、あんまりジロジロと見るのも失礼だよね。僕は慌てて2人の顔を見るようにした。

「こちらが巷で話題になっている勇者・エルド殿だ」
「は、はじめまして」

 気がつくと、ハロルド様は僕の紹介をなさっていた。慌てて僕は2人に向かって挨拶をする。

「うふふ。はじめまして。ドロシーと申しますわ」
「ドロシーの娘、サラです。勇者様の噂はかねがね聞いています」
「あ、ありがとうございます」

 こうやって「勇者」として扱われるのはまだ慣れないな。しかし、この綺麗な母娘は一体どうしてこんなところにいるのだろう。

「さあ、挨拶も済んだところで、エルド殿には、この美女2名とギャンブルで勝負してもらいたい」

 挨拶を終えたのを確認すると、ハロルド様は唐突に本題を切り出した。
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