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第二章 再出発の日にも母親を寝取られるとは、情けない!

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「ハロルド様!?何故このような場所に!?」

 僕は驚きのあまり、開いた口が塞がらなくなっていた。ハロルド様はどうしてこんな所に来たのだろう。従者も付けていないから、お忍びなのだろうか。
 僕よりも驚いているのは母さんの方だ。驚きと緊張で顔がこわばって、身体が小さく震えている。まるで怯えているみたいじゃないか。急に王様が家に来たのには、びっくりするけど、何もそんな風にならなくても。ハロルド様はお化けじゃないんだから…

「ふふふ。勇者殿には話しておくべきことがあってな」

 僕が母さんに呆れていると、ハロルド様が口を開いた。その表情はとてもにこやかだ。先ほどまで僕を叱責してきた人と同じ人とは思えない。
 
「先ほどは皆が見ている手前、勇者殿を厳しく叱責してしまったが、あれは私の本意ではない」
「え?」
「私個人としては、勇者殿のことを心の底から応援しているのだ」
「そ、そうだったのですね」
「そこで、もし私の叱責で落ち込んでしまったらと思い、様子を見に来たというわけだ。落ち込んでいたのなら、励まそうと考えたのだが…今の勇者殿に不要のようだな」
「は、はい!」

 うう、ハロルド様の優しさが身に染みる。ハロルド様が実はこんな思慮深くて、気配りのできる人だったなんて。流石六賢者の1人に数えられる御方だ。
 そうだ。僕は色々な人の期待を背負っているんだ。ハロルド様だってその1人だ。期待を裏切らないためにも、僕は強くなって、立派にならないと!
 僕が決意を固めた時、母さんが視界に入った。強張った表情で俯いている。初めて王様に会って緊張しているのは分かるけど、いくら何でも失礼じゃないのか。流石の僕もイライラしてきた。

「母さん!ハロルド様にちゃんと挨拶しないと!」
「そ、そうね…し、失礼しました…ハロルド様…急なご来訪に驚いてしまって…」
「ははは。良いのですよ。こちらこそ急に訪れてしまい、ご迷惑でしたね」

 母さんは目を合わせないまま話している。いつもはあれだけ、「人と話す時は相手の目を見なさい」と言うくせに…
 まあ、つまらないことでイライラしてもしょうがない。僕はこれから旅に出かけるのだ。

「さあ!勇者よ!再び冒険を始めるがよい!」
「はいっ!」

 僕は元気よく返事をした。

「ふふふ。良い返事だ、さあ、アンナ殿、御子息の出立を見送りに行きましょう」
「あ…ちょっ、ちょっと…」

 ハロルド様は母さんの手を引き、僕とともに家の外へと向かった。
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