1 / 76
第一章 旅立ちの日に母親を寝取られるとは、情けない!
1
しおりを挟む
※
「母さん、それじゃあ行ってくるよ」
「エルド、気をつけるのよ」
僕は今日、元服を迎えた。今から僕は魔王を退治する旅に出かける。1週間前、この地を治めるハロルド王への謁見を済ませた。そこから自宅に戻り、今は母さんへ最後の挨拶をしているところだ。
物心ついた時から、僕の家には父さんがいなかった。父さんは勇者として旅に出て、魔王に敗北したと言われている。だから、母さんは女手一つで僕を今日まで育ててくれた。人一倍大変だっただろう。
僕が父さんのような勇者になりたいと初めて伝えた時は、猛反対された。そりゃあそうだ。父さんに続いて僕まで喪うことになったら、母さんは独りになってしまう。それでも僕の熱意を知り、母さんは僕が勇者になることを認めてくれた。そして、父さんのような勇者になるためと、勇者の心得を叩き込んでくれた。
綺麗で、優しくて、厳しくて…僕の自慢の母さんだ。僕は絶対に母さんを悲しませない。絶対に戻ってくる。寂しいけど、今は絶対に泣かない。絶対に、立派な勇者になるんだ。
僕は母さんに背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
さあ、冒険の始まりだ!
※
「まったく、涙ぐらい見せてくれたっていいじゃない」
私は勇者エルドを見送りながら、ぽつりと呟いた。小さな頃は「泣き虫エルド」なんて呼ばれていたあの子も変わったものだ。愛する我が子の成長が、とても頼もしく感じた。
さあ、あの子の部屋の掃除をしなくっちゃ。いつ帰ってきてもいいように、ちゃんと綺麗で清潔な状態を保っておきたい。
「誠に申し上げにくいのですが、恐らく貴女の旦那様は…」
その時、私にとって最悪の記憶が一瞬頭を過ぎった。掃除用具を取り出していた私の動きがピタリと止まる。
エルド、旅はきっと貴方を大きく成長させてくれる。でも、どうか…どうか、お願いだから生きて帰ってきて。
「御免下さい。勇者エルド殿の母君、アンナ殿はいらっしゃいますか?」
その時、玄関から男性の声が聞こえた。私は早速「勇者の母君」として扱われるようだ。以前は「勇者の奥方」だったのに。しかし、いきなり誰がきたのだろう?
「はいはーい」
私は少し気の抜けた返事をして、玄関へと向かう。そして、腰が抜けるか思うくらいに驚いた。
そこには、先週、エルドが謁見をしていた御方、つまり、この国を治めるハロルド王が立っていたのだから。
「母さん、それじゃあ行ってくるよ」
「エルド、気をつけるのよ」
僕は今日、元服を迎えた。今から僕は魔王を退治する旅に出かける。1週間前、この地を治めるハロルド王への謁見を済ませた。そこから自宅に戻り、今は母さんへ最後の挨拶をしているところだ。
物心ついた時から、僕の家には父さんがいなかった。父さんは勇者として旅に出て、魔王に敗北したと言われている。だから、母さんは女手一つで僕を今日まで育ててくれた。人一倍大変だっただろう。
僕が父さんのような勇者になりたいと初めて伝えた時は、猛反対された。そりゃあそうだ。父さんに続いて僕まで喪うことになったら、母さんは独りになってしまう。それでも僕の熱意を知り、母さんは僕が勇者になることを認めてくれた。そして、父さんのような勇者になるためと、勇者の心得を叩き込んでくれた。
綺麗で、優しくて、厳しくて…僕の自慢の母さんだ。僕は絶対に母さんを悲しませない。絶対に戻ってくる。寂しいけど、今は絶対に泣かない。絶対に、立派な勇者になるんだ。
僕は母さんに背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
さあ、冒険の始まりだ!
※
「まったく、涙ぐらい見せてくれたっていいじゃない」
私は勇者エルドを見送りながら、ぽつりと呟いた。小さな頃は「泣き虫エルド」なんて呼ばれていたあの子も変わったものだ。愛する我が子の成長が、とても頼もしく感じた。
さあ、あの子の部屋の掃除をしなくっちゃ。いつ帰ってきてもいいように、ちゃんと綺麗で清潔な状態を保っておきたい。
「誠に申し上げにくいのですが、恐らく貴女の旦那様は…」
その時、私にとって最悪の記憶が一瞬頭を過ぎった。掃除用具を取り出していた私の動きがピタリと止まる。
エルド、旅はきっと貴方を大きく成長させてくれる。でも、どうか…どうか、お願いだから生きて帰ってきて。
「御免下さい。勇者エルド殿の母君、アンナ殿はいらっしゃいますか?」
その時、玄関から男性の声が聞こえた。私は早速「勇者の母君」として扱われるようだ。以前は「勇者の奥方」だったのに。しかし、いきなり誰がきたのだろう?
「はいはーい」
私は少し気の抜けた返事をして、玄関へと向かう。そして、腰が抜けるか思うくらいに驚いた。
そこには、先週、エルドが謁見をしていた御方、つまり、この国を治めるハロルド王が立っていたのだから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
181
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる