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10.ミネルヴァの囁き①
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あれは、今から半年近く前のことか。なんだ…まだ半年しか経っていないのか。
なにせ、魔王と共に過ごした日々があまりにも濃密で充実していたからな。アレン、お前と過ごした薄っぺらい日々が、遠い昔のことのように感じてしまうんだ。
あの日のことを覚えているか?私がヤーザムを退治しようとアジトに乗り込んだ、あの日のことだ。
そこで待っていたヤーザムはあまりにも強かった。今まで戦ったどの敵よりもだ。もちろん、お前など比べ物にならない。
私はあっという間に倒され、気がつくと拘束されていた。私がお前にかけたのと同じ暗黒魔法でな。
「貴様…何者だ…?」
「ふふふ。私の正体が気になるようだな。私の仲間になるなら教えてやらんこともない」
「っ!!誰が貴様の仲間になるものか!!貴様の仲間になるくらいなら…私は命を絶つ!!」
最初は私も必死に抵抗したさ。ヤーザムの格好をした底知れぬ強さを秘めた男…正体は分からなかったが、私の本能が「この男は危険だ」と察知していたからな。
「ふふふ。怯えているのが伝わるぞ。まあいい。この魔法を使えば、君の考えも変わることだろう」
男は禍々しい邪気をまとった手を私にかざした。すると、その邪気が私の頭へとすぅーっと侵入していったんだ。
そこからは凄かったぞ?
まず、身体が邪気にじわじわと侵食されて、脳みそをじっくりと掻き回されるんだ。
それがやけに心地良くてな。思わずその心地よさに身を委ねたくなってしまうんだ。
そして、脳みそをかき混ぜられる心地よさに身を委ねてしまうと…頭と心がじわじわと別のものに作り替えられていくんだ。
もちろん、私は抵抗した。しかし、こんな魔術は聞いたことも見たこともなかった。結局、私は有効な対策法を見つけられなかった。
ならばと私は耐え続けた。心地よさに身を委ねまいと、耐えに耐え続けたんだ。
だから、私は脳みそをかき混ぜられ続けた。体感時間にして1週間…いや1ヶ月か。
いずれにしろ、想像を絶するほど長い時間、かき混ぜられていたんだ。現実の時間にするとほんの一瞬のことだったらしいがな。
そしてとうとう、私は限界を迎えてしまった。心地よさに身を委ねた瞬間…想像を絶するような心地よさが身体を襲ったんだ。
これはとにかく凄かったぞ♪
その強烈な心地よさを享受する中で、私の世界は変わっていった。この男の正体も、この男の目的も察知できた。そして、私の人生の目的も教えてもらったんだ。
アレン…分かるだろう。魔王のおかげで、私はお前から解放されて…本当の自分に生まれ変わったんだ。
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