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B 楓陥落6
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そのまま俺たちは動物園をあとにした。お互い話すことはなかった。
ただし、お互いの手だけはじっと握っていた。お互いの考えていることを確かめ合うように指を絡めて、力強く握り合っていた。
「宗介さん、ホテル行きたいんですよね…?」
駐車場に停めた俺の車に乗りこむやいなや、楓は呟くように聞いてきた。
一瞬の間に、何と答えるのが適切なのかを考える。楓の今の様子からして、断られることはないだろう。ただし、楓は緊張していて、不安なのだろう。
「楓ちゃん、不安なの?」
「うん…」
「大丈夫。優しくするし傷つけないから」
「そうじゃない…」
楓は小さな声のまま、俺の答えにペケをつけた。
「宗介さんって、モテそうだし、女性慣れしているから…そういうのは大丈夫だと思っています」
「はは…そんなことないよ」
「だから…遊びにされるのが不安なんです。やっぱり、それは不安だから…」
やはり楓は直感が優れているというかなんというか。今みたいに図星の発言をしてくるから、面食らう時が多々ある。
もしかしたら、俺の本性もとっくに見抜いているのかもしれない。それでも俺のことが好きになってしまったということなんだろう。
だけど、今この状況で、俺がどう振る舞えばよいのかは分かる。俺は両手で楓の手を握ると、じっと目を見つめた。
「楓ちゃん、約束するよ。俺は楓ちゃんのことが好きだから…絶対に大切にする」
「んうぅ…約束ですよ?」
「うん、約束する」
すると、観覧車を降りてから笑み一つこぼさなかった楓が、甘い吐息を漏らしながら微笑んだ。
やっぱり、こういうのに弱いよな。この場を無事に切り抜けられることに安堵しつつも、どこか俺は楓にがっかりしていた。
どうやら俺は、予想の範疇を越える行動をする時の楓が魅力的に感じるようだ。俺が見たい楓は、こんなありきたりな言葉に転がされる楓じゃないんだ。観覧車の時の胸の高鳴りはきっとそういうことなのだろう。
「じゃ、行こっか」
「うん」
そんなくだらないことを考えながら、俺は車を発車させた。いずれにしても親子丼はもう目と鼻の先まで来ているのだ。最後まで完璧に振る舞わないとな。
そのまま俺たちは動物園をあとにした。お互い話すことはなかった。
ただし、お互いの手だけはじっと握っていた。お互いの考えていることを確かめ合うように指を絡めて、力強く握り合っていた。
「宗介さん、ホテル行きたいんですよね…?」
駐車場に停めた俺の車に乗りこむやいなや、楓は呟くように聞いてきた。
一瞬の間に、何と答えるのが適切なのかを考える。楓の今の様子からして、断られることはないだろう。ただし、楓は緊張していて、不安なのだろう。
「楓ちゃん、不安なの?」
「うん…」
「大丈夫。優しくするし傷つけないから」
「そうじゃない…」
楓は小さな声のまま、俺の答えにペケをつけた。
「宗介さんって、モテそうだし、女性慣れしているから…そういうのは大丈夫だと思っています」
「はは…そんなことないよ」
「だから…遊びにされるのが不安なんです。やっぱり、それは不安だから…」
やはり楓は直感が優れているというかなんというか。今みたいに図星の発言をしてくるから、面食らう時が多々ある。
もしかしたら、俺の本性もとっくに見抜いているのかもしれない。それでも俺のことが好きになってしまったということなんだろう。
だけど、今この状況で、俺がどう振る舞えばよいのかは分かる。俺は両手で楓の手を握ると、じっと目を見つめた。
「楓ちゃん、約束するよ。俺は楓ちゃんのことが好きだから…絶対に大切にする」
「んうぅ…約束ですよ?」
「うん、約束する」
すると、観覧車を降りてから笑み一つこぼさなかった楓が、甘い吐息を漏らしながら微笑んだ。
やっぱり、こういうのに弱いよな。この場を無事に切り抜けられることに安堵しつつも、どこか俺は楓にがっかりしていた。
どうやら俺は、予想の範疇を越える行動をする時の楓が魅力的に感じるようだ。俺が見たい楓は、こんなありきたりな言葉に転がされる楓じゃないんだ。観覧車の時の胸の高鳴りはきっとそういうことなのだろう。
「じゃ、行こっか」
「うん」
そんなくだらないことを考えながら、俺は車を発車させた。いずれにしても親子丼はもう目と鼻の先まで来ているのだ。最後まで完璧に振る舞わないとな。
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