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 俺の名前は北見宗介。この辺りの大学に通う2回生だ。授業は真面目に聞くタイプではなく、色々と遊び散らかしている。
 もちろん、時間を一番割いているのは女遊びだ。マッチングアプリや出会い系から始めて、少しずつ場数を踏んで…そこから街に出てナンパもするようになった。
 幸いにも見てくれは女受けする方なので、成功率は結構高い。大学に入る少し前から始めて、結構食い散らかした自信がある。
 だけど半年前ぐらいからはアプリやナンパで食い散らかすのも飽きていた。初めからある程度男を待っている女とヤるのに飽きたのだ。だから男を待っていないような女…日常生活で出会う女を口説き落としてヤるようになった。
 高校・大学の同級生やら、アルバイトの女の子、パートの人妻、常連さん…わずか半年ではあるが、色々な女に手を出した。もちろん全てが上手くいくわけではない。ただ歳のわりに場数を踏んでいるおかげなのか、上手くいくことが多い。頻繁にアルバイトを変えたり、地元のカルチャークラブに通ったりして、女との出会いを増やすのは面倒な作業だけど。
 要するに、典型的な遊び人というやつだ。しかしながら、そんな俺の最近の悩みは中々深刻だ。女とヤること自体に飽きつつあるのだ。ワンナイトも1人の女を徹底的に仕込むのも飽きた。年下の学生とも遊び飽きたし、年上のOLや人妻とも遊び飽きた。



「…それで、お父さんが急に単身赴任することが決まったんですよ!」
「ええ!そんな急に決まるんだね。お家、大変じゃない?」
「そうなんですよ。だから支度やら何やらで家が大変で~」

 カフェのアルバイト終わり、俺は最近入ったばかりの新人、山岡楓と話をしていた。楓は高校3年生の18歳、LJKというやつだ。たまたまバイトの時間が重なることが多かったことから、打ち解けるようになった。
 こういう話をすると、悪友には狙わないのかと聞かれる。確かに楓は目もぱっちりとしていて、清純派女優って感じの雰囲気だ。清楚な黒髪ポニーテールもよく似合っている。胸もそこそこあって、スタイルもいい。
 だけど、わざわざ労力割いてまでやりたいとも思わなくなってきた。こちとら同じぐらいの年齢の女とはもう飽きるぐらいやっているのだ。

「あ、もうすぐお母さんが来ます。宗介さん、話に付き合ってくれて、ありがとうございます」
「いや、いいよ。楓ちゃん、気にしないで」

 何なら俺くらいのレベルになると、むしろあえて手を出さずに、こうやって他愛無い会話をしていた方が精神的に満たされるぐらいなのだ。

「あ、お母さん着いたみたい」
「そうだ。せっかくだから、これ上げるよ。お母さんと一緒に食べなよ」
「え~!嬉しい!ありがとうございます!」

 俺は買っておいた店の焼き菓子を、別れ際に楓に渡した。大した金額ではないけど、やはりこうしたプレゼントは心を掴むにはもってこいだ。
 無邪気に喜ぶ楓は中々可愛い。楓は明るくて人懐っこいようで、会話をしていると癒される。大学生になり、すっかり汚れてしまった俺の心が洗われる気がしないでもない。

「…さて、俺も帰るか」

 楓が車に乗り込むのを確認し、俺は自分の車に乗り込もうとした。

タッタッタッ…

 その瞬間、後ろか足音が近づいてきた。何事かと振り返ると、そこには透明感のある美淑女が立っていた。
 おお、中々いい感じのおばさんじゃないか。歳は30半ばくらいだろうか。あどけなさが残るぱっちりとした目と、サラサラとした茶髪のボブヘアが印象的だ。それに肌艶も良く、薄い唇が透明感を一層強調している。
 手足も長く、ニットにデニムという軽装でも、十分すぎるほど様になっている。それに、ニットの上から分かる肉感的な胸の膨らみも見事だ。

「あの、北見さんですよね?」
「あ、はい。何でしょうか?」

 おっといけない。値踏みに気を取られて警戒されてはたまったものじゃない。俺は慌てておばさんと目を合わせる。それにしても、このおばさん、どこかで見たことあるような。

「私、楓の母です」
「ああ!楓さんのお母さんでしたか!」

 そうか。この目元、確かに楓とそっくりだ。あの娘の美貌にして、この母親の美貌あり…そんな感じだな。

「焼き菓子、わざわざありがとうございます」
「あ!いえいえ。そんなご丁寧に…」
「ふふふ。娘からは色々聞いています。北見さんにはお世話になっているって」
 
 楓の母親は大きな目をにこやかに細めて、微笑している。その所作は淑女らしく品がある。わざわざお礼を言いにくるあたり、随分律儀なのだろう。

「いえいえ、こちらこそ、娘さんのおかげでバイトが楽しいですよ」
「まあ、娘が聞いたら喜ばすわ」
「あはは。それでは帰りお気をつけて」

 長話もふさわしくないと判断した俺は早々に会話を終わらせ、自分の車に乗り込んだ。
 楓ちゃんは狙わない。そう思っていたけど、あの母親を見たら考えが変わった。そうか。親子丼はキめたことがなかったな。
 …それに楓はさっき、単身赴任で父親がいないって言っていた。おいおい。随分と好都合じゃないか。よし、決めた。親子ともども口説き落として、好き放題遊ぼう。親子丼だ。
 帰り道の車内、久々に熱くなれる標的が見つかったことに、俺の下卑た笑いは止まらなくなっていた。
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