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第三章 私が受け入れるまで

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「…ですから、私は婦人の想いには応えられません」

 リザと長い間抱擁を交わし、変わらぬ愛を確かめた後、私はすぐに婦人の自室へと向かった。
 そして、私の想いの全てを伝えた。リザを誰よりも愛していること。婦人の想いには応えられないこと、そして婦人の誘惑にも屈しないこと…

「…ふふふっ」

 その話を聞き終わった婦人はくすくすと笑い出した。上品に口元を覆っているが、相当におかしいのだろうか、その肩は大きく揺れている。
 リザに対する私の想いを笑われているのではないかという不快感、そして、婦人の裏の顔に対する恐怖心…負の感情が入り混じる。それでも、私は婦人に対して、毅然とした態度を取ることにした。

「…何がおかしいのですか?」
「ごめんなさい。ザール様のお気持ちはよく分かりました。ただ、それにしては行動が伴っていないのではないですか?私、それがおかしくって」

 そう言い終えると、婦人は私の方へと近づいてきた。その力強く真っ直ぐな目で、私をじっと見つめながら…

「リザに拒絶されたザール様は、やり場のない鬱憤を抱えて、悶々としていましたね。そして、その鬱憤は果たして誰に向けられたのでしょうか?」
「うっ…」
「ふふふ。あんなにいやらしい目でジロジロ見てくるんですもの…誰でも分かりますわ」

 返す言葉がなかった。確かに、一時の迷いとはいえ、私は婦人に対して劣情を抱いていた。どれだけリザを愛していると言っても、そのことは変えようのない事実だった。

「それだけならば見過ごしても良かったのですが…私に護身術の指導をした後に、あんなことまでなさっているなんて…ねぇ?」
「なっ!?」

 心臓の鼓動が一気に激しくなる。一時の気の迷いによるものとはいえ、私が実際にしていたことは、リザには到底言える代物ではない。そんな私の秘密を、当の本人はとっくに気づいていたのだ。

「私、ザール様が本当にリザに相応しい相手なのか不安になりましてよ?私のような年増女に興奮をして…女なら見境なく手を出す色情狂なのかしらって」
「そ、そんなことは…」
「ねえ…このこと、リザに伝えてもいいかしら?」

 最も恐れていた言葉を婦人は口にした。それはまるで、動揺する私に追い打ちをかけるかのようだった。
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