【R-18】再会した勇者に婚約破棄された〜選ばれたのは、母親でした〜

ミズガメッシュ

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第二章 私がキスをするまで

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「私、なかなか頑張ったでしょう?」
「はい。この短期間でここまで成長するとは…お見事です」
「ザール様にお褒めいただくとは、光栄ですわ」

 フロラブィ婦人の体捌きは見事なものだった。もちろん兵士の習熟度に比べればまだまだである。しかし体術の経験がない女性が短期間の練習をしたことを踏まえれば、十分なものだった。
 どうやら私が示した課題を解決するために着々と反復練習を続けていたらしい。見事としか形容のしようがない。婦人の振る舞いに緊張していた私が、素直に感心をしてしまうほどだ。

「では、最後に実演ですね」

 満を辞してと言わんばかりに婦人は「実演」を求めてきた。

「ザール様が暴漢役になって、私を襲うのです。それに私が対処できれば、免許皆伝ということでよろしいでしょう?」

 婦人は私に認められて気分が良いのか、随分と楽しげだ。私は特に何も考えぬまま、婦人の作った雰囲気に流されて「暴漢」を演じることになった。
 …後々思うに、その油断は致命的だったのだろう。

「それでは、いきます」
「はい」

 暴漢が合図をしてから飛びかかるなんてあり得ないだろう。私は内心そんなことを思いながら、大した力も込めず婦人の腕を掴んだ。すると突然、婦人は後ろに倒れこもうとした。

「危ない!!」

 腕を掴んだだけで後ろに倒れるなんて、明らかに力の流れが不自然だ。しかし、そんなことを考える暇はなかった。私は後ろ向きに倒れる婦人を支えようとして、婦人の背中に手を回し抱きかかえようとした。そしてそのまま婦人も私も倒れ込んでしまった。

「きゃっ!」

 結果的に、私は婦人を押し倒す形になった。仰向けの婦人の背中に手を回し、上から抱きしめるような体勢になっている。
 婦人の肌が伝わる。女性特有の柔らかさと瑞々しさを感じる。私の胸には婦人のグラマラスな胸がむぎゅうと押し当たっている。衣服越しにもその大きさと柔らかさが分かる。
 婦人の匂いが私の鼻腔をかすめている。気品漂う花の香りの中に、どことなく動物的な女性の匂いが秘められている。
 至近距離にある婦人の顔は…嫌がる素振りも一切なく、私の目をじっと見つめて微笑んでいる。普段の引き締まった顔とは違って、トロンとした「女」の顔だ。

「暴漢にここまでされたら…護身術も通用しませんわね」

 婦人は私の耳元に顔を近づけて、甘く囁いた。それだけで身体がゾクゾクと昂ってしまう。私の身体は一気に興奮の最高潮に達していた。心臓は高鳴り、婦人への劣情が込み上げてくる。
 それでも…これ以上はダメだ。リザを裏切りたくないから。
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