9 / 22
第二章 私がキスをするまで
9
しおりを挟む「リザ、気をつけて行ってくるのよ」
「はあい。それじゃあ、お母様、ザール君、行ってきます」
「ああ、リザ…行ってらっしゃい」
あれから私は、週に一度、フロラブィ婦人に護身術を教えている。もちろん、そこまで本格的な指導をしていない。婦人には身の危険が迫ったときには、まず逃げること、もしくは相手を無闇に刺激しないことを教えておいた。その上で、いくつか技を絞って教えている。
…このことはリザにも言っていない。婦人は「武芸は殿方の嗜み」と散々リザを叱っていた手前、自分が武芸を学ぶことを知られたくないようだ。だから、護身術のことリザに言わないようにお願いされた。だから些細なことかもしれないが、私と婦人の間には「秘密」ができてしまった。
それから婦人は週に一度、リザに外出の用事を任せるようになった。リザが不在の2人きりの時間に、空き部屋を用いて…私は婦人に護身術を教える。そして今まさに、私と婦人は外出するリザを見送ったところだった。
「あの子ったら、あんなに馬を飛ばして…」
「はは、リザらしいですよ」
婦人が母親らしくため息をつく。しかし、おてんばなところが抜けきっていないのもリザの魅力だ。そんなことを考えていると…
「さあザール様、今日はどんな技を教えてくれますの?」
私にそう尋ねる婦人の顔は、つい先ほどまでリザに見せていた「母親の顔」ではなかった。きっと私の思い込みなのだろう。しかしそれでも私にはこの時間の婦人の顔が「女の顔」をしているように思えてならないのだ。
…私は不貞行為は何もしていない。リザに内緒で婦人に護身術を教えているだけだ。それは大したことではないはずだ。しかし、リザと行為に及ぶことを我慢し続けている私にとって、婦人との関係はインモラルで…刺激が強かった。
婦人は護身術の時、肢体のラインが浮き出る服を着てくる。動きやすい服とのことらしいが、婦人のグラマラスな肢体がくっきりと分かって…情欲がかきたってしまう。
婦人の肌は雪のように白くしっとりとしている。技を教える時、どうしても婦人の身体に触れることになる。柔らかくてすべすべとした肌は…リザの母親であることを忘れてしまいそうになる。
そして婦人は毎回香水を変えてくる。清楚で爽やかな香りを纏うこともあれば、どこかほのかに情熱的な香りを纏うこともある。その全てが官能的に思えてきて…いつしか私の本能は至近距離で婦人の香りを嗅ぐことを楽しみにしていた。
「ザール様、今日も楽しかったですわ」
「よ、良かったです」
「たまにはこうして体を動かしたほうがスッキリしますわね。ではまたお願いしますわ」
指導が一区切りつくと、婦人は満足そうに先に退室していく。残された私はすぐさま自室に戻り、先ほどまでの婦人の姿を思い出して自慰行為に耽る。そして、何にも形容し難い罪悪感を覚える。このままだとダメだ。リザも婦人も私も、不幸な結末を迎えてしまう。そう思った私はある決心をした。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる