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004 運動しよう!…で喉突き!オエェェ…
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※ 001~003の2カ月前、介護プログラムが始まるあたりのお話です
「そんなの聞いてないわよっ!もう!放っておいてっ!」
ほらほら来た来た。
午後の1時だというのに、寝間着姿。
そんな姿で居間の座卓に突っ伏し、外に出ない決意を猛アピール。
おーい子供か。2歳児か。2歳児はむしろ「おそとーー!」だけどな。
…って、心の中で言い返す。
これ、絶対言ってはいけない。口に出せばそれがゴングだ。言えば2時間は「ファイッ!」だ。
でも。言うべきことは言わなきゃ。甘えさせても好転することなど一つもない。
それどころか、状況は刻一刻と悪化するだけなんだ。
私は心を鬼にして、母と対峙する。
「お母さん。お母さんが週二回って言ったんだよ?先週の見学で、トレーナーさんに週1回って勧められたのをさ、『私は週2くらいやらないと身体鈍っちゃう』って頑として譲らないから『し・か・た・な・く』週2にしたんだよ?今更変更出来ないんだからね!」
実際にそうだ。確かに言った。
言ってそのように手配したのだから、もう撤回できない。
認知症が進んでからの母は、他人にはとことん強がる。
と言うか、調子こく。いやそれはもう「わたし出来るモン!」を並べ立てる。
普通はそこで宥めるのだろうけど…
私はそんな甘ったるいことは御免。
別に「後悔させてやろう」とか「思い知れ」とかそういう気持ちじゃないよ?
例えて言うなら、自分で罠の穴掘って、どういうわけか進んでハマりに行くんだよいまの母は。
穴を掘ったこと忘れるんじゃなくて、穴があることを知って、なお進んでいく。
面白いくらい意気揚々、威風堂々ハマりに行く。
私が「こうしてくれたらいいなぁ。でも、ちょっときついかなぁ」と心配しているところに、「こうしてくれたらいいなぁ」の方に自分から進んでくれる。楽な選択肢を提示しても、断固拒否する。
そんな石より硬い決意表明を、利用しない手はな…尊重すべきだと思いませんか?
もちろん、後でイヤイヤするのはお見通し。
でもいちど言質を取ったんだから、もう引き返せない。それを許したら、この先が全部崩れる。
だから、絶対譲らない。
「そんなこと言ってません!」
「言った!だから手配したのよ?さ、服どこ?早く着替えて!行くよ!」
「あたしは大丈夫ですっ!こんなに動けるのッ!だから行かないッ!」
「なら逆に行けるでしょ!行って動けること証明しろよ!」
母の態度に、私も冷静さを失ってしまう。
勢いで私は母の手を取った。もちろん母も抵抗する。
まったくなんて馬鹿力だ。こんな力あるなら動けるだろさっさと動けっ!
…と、心の中で毒づいた時。
ほとんど、一瞬の出来事だった。
こんなに俊敏に動けるのかよ、普段どんだけサボってんだ?と言いたくなる俊敏さだった。
「鬼の首取ったような態度であんたっ!」
私の手を振り払おうとした母の腕が、私の喉を思いっきり突いた。
思わず私は仰け反り、後ろにひっくり返った。
本気で苦しい。かなりピンポイントで入った。
そう言えば私が幼稚園から小学生まで、お母さん護身とか言って空手やってて、黒帯まで行ったんだっけ…。
「義母さんっ!ダメだ!手を引け!」
ノリが叫び、一瞬遅れて母の手を叩く。
(え…?ノリ?)
喉を押さえながら、ベチン!と響いた音に驚いた。
私はうずくまってしまい顔は見えないけど、たぶん私が見たこともないような、恐ろしい顔をしているんじゃないかと思う。
普段、ノリは母に甘い。ほんとに甘い。嫉妬するくらい甘い。
そのノリが、母に手を上げた。信じられない一瞬だった。
いま、ノリの剣幕に、この一瞬の出来事に、母は固まり言葉を失っている。
なんとも言えぬ重い重い静寂が、リビングを覆っていた。
*********************************
先週から、身体機能回復のためのリハビリがはじまった。
やっと要介護の認定が下り、ケアマネージャーさんと現状再確認の面談をし、いま介護プログラムの作成をしてもらっている。
私たちは、要介護認定が下りるまでの1カ月+2週の間、認定レベルよってどのプログラムがどこまで利用可能かを調べ、認定が下り次第、ケアプランを作成するケアマネさんに伝えられるようにしていた。
大前提は、母の望みをできるだけ叶えること。
その望みとは、「住み慣れたこの家で、出来るだけ長く暮らしたい」だ。
基本方針はそれで決まり、必要なケアを考える。
まず、日々の生存確認と体調確認。これはヘルパーさんに。
そしてもう一つ。マンションの一階まで降りるのも苦労している状態だから、身体機能の回復。これはリハビリセンターに。
認定が下り、早速ざっくりとそのことをケアマネさんに伝えると、私たちの要望に則って居宅サービス計画を作ってくれることになった。
ケアプランとは、要介護者のレベルや症状、家庭状況に応じて、介護サービスの種類や内容などを決める計画書だ。
介護保険の適用範囲内でどこまで出来るかを確認し、担当のケアマネさんがケアプランを作成てくれる。
その中に一週間の予定表もあり、日々のヘルパーさんの訪問やリハビリセンター通いも、その予定に則って実施される。
ところが、ケアプランが出来るまで2週間はかかる。1人の計画や予定表作成でなんでそこまで時間がかかる?と思われるだろう。
理由は単純。前が詰まっているからだ。単に順番待ちなのだ。
要介護者は 右肩上がり且つ指数関数的に増えているのに、対応人員数も事業者数も、それに全く追い付いていない。
それが、介護業界の現実だ。
時間がかかることは把握していたし、ケアマネさんは自治体に所属してるし、個人の裁量で物事を動かすことはできない。
私たちの場合は、ケアプラン作成前に合意も得ているし、方針ははっきり決まっている。
そこでケアマネさんは「プランが完成する前に、リハビリは開始しましょう」と仰ってくださり、早めにスタートすることになったのだ。
*********************************
「オエェェェェ…」
ひとまず、奥の部屋に退避した。静寂に耐え切れず…なんて可愛い理由じゃない。
打たれた喉が苦しく、えずくように咳込んだためだ。
トイレじゃわざとらしいし、母はトイレが近い。占拠はできない。
吐くような苦しさではなかったから、ここを選んだ。
「琴、大丈夫か?」
後から追ってきた孝範が、背中をなでて言う。
て言うか背中さすると無かった吐き気が生まれちゃうから。ちょっとやめて。むしろ水…
と思ってたら水が出てきた。さすがノリ。
「…うん、ありがとう、大丈夫」
ゴクゴクと一気に飲み干し、一息つく。
「…わかってるよ。ごめん。感情的になった」
少し落ち着くと、途端に力が抜ける。
私、何やってるんだろう。
それは、覚悟も決めたよ。嫌われようがどうしようが、進まなければいけない道がある。母の短い未来を、少しでも母の希望どおりに描くなら、その道に乗せなきゃならない。だから、心を決めたんだ。
でも、あんなに嫌がられて。拒否されて。手まで上げられて。ノリまでこんな風になって。
そこに、何があるんだろう。
ううん、覚悟はしてたよ。こういう場面くらい。
でもさ。でも、だよ…。
一気に、気持ちが霧がかる。
いや、霧じゃない。
どんより灰色の雲だ。真冬のあの、なんとも言えない重い重い雪雲だ。
「琴、少し強引じゃないのか?」
意外なノリの言葉に、私の頭にドバっと血が上る。
「これって、勢いで言ったことを、都合よく利用してるだけじゃないのか?義母さんあんなに嫌がって…」
ちょっと待てよノリ。いまその言葉じゃないだろ。
もちろん、そう言うノリの気持ちもわかる。外から見ればそうかも知れない。でも…でも、でもっ!なんだお前?ここまでひっついてきて、傍観者のつもりなのかよっ!
ノリ、あれだけ調べて、必要な事アドバイスしたくせに、お母さんの反応見た途端怖気づいてその反応かよっ!
ノリは分かってないっ!!! なんにも分かってないっ!!!
再び、私の心にいがついた。我ながら復活が早いな。マッチ棒か。
「違うんだよっ!ノリは甘いんだよっ! ここでそんな優しさなんて、1mmも役に立たないんだよ!」
ノリが身構える気配がする。
構わず、私は横にいるノリに向き直り、正面から言う。
「なに呑気なこと言ってんの?お母さんのあの姿見て、私がなんにも思わないとでも思ってんの!? なんでここまで、嫌われてまで、やらなきゃいけないんだろうって、葛藤だってするよっ!でも…でもっ!…ノリは数年後…ううん、半年後かも知れないよ? お母さんが施設で、焦点定まらない眼で天井ぼんやり眺めて寝そべって、私たちが声かけても、誰が誰だかわからなくて、何の反応も示さない…そんなんなっていいって、そんな時間が何年も続いてもいいって! そう思ってんのかよっ!何年も続くって、風呂敷広げすぎだとでも思ってんのかよっ!」
嗚咽交じりの私の語気に、ノリが怯んだ。
はっきり言って私は口が悪い。気持ちが昂ると男言葉になる。悪い癖だと自覚はしている。気をつけてはいるけれど…勢いに任せて悪態をつき後悔することなんて、まだまだ沢山ある。
しかし今日は違う。
心が叫んでる。心の縁が決壊して気持ちの洪水が起きている。
悲しい。寂しい。辛い…。
次から次へと際限なく溢れ、もうノリの優しさでは抑えられない。
「いま言ったこと、大げさだと思ってる? ねぇ、ここで甘えさせたらどうなると思う?お母さんは、この家にいたいんだよ?私たちと笑い合える時間を、少しでも多く過ごしたいんだよ? その望みをできるだけ長く叶えたい…。叶えるなら、母さん自分で動ける力を取り戻さなきゃいけないんだよ? でも、甘えさせたら…甘えれば、駄々をこねればきついこと避けられる、なんて覚えたら…もう、先は無いんだよ…終わりなんだよ……」
泣いた。とうとう嗚咽になった。
気持ちの洪水は、身体の中だけで収まる限界を超えた。一気に超えた。
どれくらい泣いたかな。ふと気づくと、私はノリの胸の中にいた。
「琴。わかった。…琴は、覚悟を決めた。そうだな?」
「前からそう言ってる! 嫌われようが恨まれようが親子の縁を切ると言われようがっ! …お母さんがこの家にいたいって望むなら、この家にいることが大事だって!そう言うのならっ! それができるように何だってするよ、何にだってなるよ…。鬼って罵られても包丁突きつけられても……やるしかないんだよ…」
ノリが私の頭を優しく撫でる。
まるで昔のお母さんだ。
そうだよ。こんな時いつも、お母さんが心を温めてくれた。
そのお母さんだもん。私は、最後の恩返しをしなきゃいけないんだ…。
「分かった。ごめん。俺は介護に対しての「覚悟」ってものを、甘く見てた。いま、俺も覚悟を決める。あとは任せて」
そう言ってノリは、私の額にキスをした。
そして、スッと部屋を出て、リビングに向かった。
その背中は、さっきとはまるで違って、一回り広く大きく見えた。
**************************************
リハビリをしている母は、とても楽しそうだった。
…さっきの騒動は何だったんだ?
まったく、馬鹿馬鹿しくなる。現金な母だ。
でも、いいよ。リハビリに来てくれたのなら、もう何だって過去のこと。どうせ母もすぐ忘れるし。気にかけるだけ時間と心の無駄遣いだ。
リハビリセンターについてから、しばらくボーっとしてた母。
着いてからしばらくは、トレーナーさんの案内で色んな機器で遊ばせてもらっていた。はじめは慣れない環境で、ちょっとおっかなびっくりだった。
だけど、持ち前の好奇心の強さはまだ健在だったようだ。
すぐに慣れ、だんだん力強く、ニコニコしながら遊び…いや、トレーニングしていった。
それにしても、とんだとばっちりだ。
結局あのあと、ノリは母を説得した。そして10分と経たず「行くよ」って。ノリも母も満面の笑みで。
まったく「…は?」だよ。あの状況からどうやって…?何者なんだノリは? ハートを射抜くマジシャンか。いやそれはなんか方向違う。私はノリに射抜かれた自信あるけど。エッヘン。
家を出て、送迎の車に乗る前に、ノリに聞いた。
ノリが使った手。それは彼の温かさや包容力に依るところも大きいけれど、結局はこれだ。
「手を握りながらこう言ったんだ。『お義母さん、大丈夫。僕も琴音さんも、今日のリハビリ最後まで一緒にいるから。約束する。不安なんでしょう?初めてのところで。安心して。二人がついてる。終わったらさ、一緒においしいものでも食べようよ』ってね」
おい。勝手に私も付き合わすなよ。
思わず足が出かけた。ノリを蹴り上げる寸前まで行った。
だって。
リハビリの間、好物の上総屋さんのポテトフライ、みんながいない時間にこっそり買って、一人占めと思ってたのに。あーもう。今日はお預けかぁ…。
なんて、食べ物の恨み100万年の思いに駆られていたら、ノリが心のど真ん中を突いてきた。
「あそこまで覚悟を決めた琴だったら、「最後まで付き合う」程度の約束で義母さんを引っ張り出せるなら、絶対そうするだろ? そして難なく最後まで付き合うだろうと思ったんだ。義母さんも、それならって、イヤイヤながらでも行くだろう。なんだかんだで義母さん、琴が大好きだからさ」
大好きだからさ、って…。
逃げ道塞ぎやがったこいつ。ズルい。
でもね。そうだ。そうなんだ。私は覚悟を決めた。そうノリに言った。
なら、ノリのこの判断は間違っていない。今日この場に私しかいなければ、間違いなく同じことを言っただろう。
「もう一つ。気付いたか?着替え」
「え?」
何のことかさっぱりわからず、聞き返す私。
「あのあと戻ってから気付いたんだけど…。義母さん、運動用の着替えを座卓の横に用意してた。丁寧に畳んでさ。ハナから行く気満々だったんだよ。でも、いざ時間が近づいて、ふっと今日の予定も記憶から飛んで、どこか不安になったんじゃないかな。俺たちだってよくあるだろ? 楽しみにしてた予定なのに、朝着替えてると面倒になることってさ。それが、認知症で理性のタガが外れてるから、大きな反応になっただけじゃないのかなって、そう思った」
全く気付かなかった。
言われてみれば、私だって、いざ外に出る段になって面倒になるなんてしょっちゅうだ。
「…ただ、反応が大きいだけ、か。そうね。感情ばっかり先立って、見落としてたわ。うん。不安を解消するためにはじめのうちは一緒に行こう…確かにそうね。その解決策が一番かも知れないわ」
「そう。もちろん、しばらくの間は色んなことを開始することになるだろうから、俺らもきつい時期は続くと思う。けど、義母さんを軌道に乗せる、俺らも落ち着ける状況を作る、これを一番早く形にしたいなら、これが一番の近道だと思う」
確かに、何かを始める度に私たちが付き合わなければならない。それは大変だ。
大変だけど、ノリが言うように、軌道に乗せるにはそれが一番近道なのだろう。
母は、意地張ってるのも確かだけど、色んなことを拒否する根本的な原因が「不安」なのだとしたら、その不安の根本を一つづつ解決すればいい。
「ノリ、ありがとう」
思わず口をついてお礼の言葉が出た。ほんとうに、無意識だった。
親子、特に母娘だと、感情ばかりが先だって大事なことを見逃す。そこを、ノリが補完してくれた。
ありがとう。やっぱり、私にはノリしかいない。こんなに私や母のことを見て、きちんと分かって行動して解決してくれる。
感謝しかないよ、ノリ。
**************************************
そしていま私たちは、座ってるのもなんだからと、試しに母と同じプログラムを体験させてもらっている。
うん、これはこれで悪くないかな。
でもさ。ノリは余裕。私は…
うっわ超背筋弱い。あ、足も弱い。え、ちょっとこれ意外にきつくない?
舐めてた。お年寄り用の強度だって舐めてかかっていた。
けどさ、特に天井から吊るされたロープを使ったストレッチ、これがバランスを取るのが難しい。ノリは余裕だったけど。
「琴もさ、毎週2回義母さんといっしょにやる?」
ノリが笑って言う。なんだその意地悪い笑みは。
なんだかちょっとムカッ腹が立って、ノリのふくらはぎを蹴る。
大げさに痛がるノリ。それを見ておかしそうに微笑む母。
あ、いま、なんかいいなって思った。そうね。こんな機会を、少しでも多く持てますように。いつも一緒にいられるわけじゃないけど…
そして…
今日これが終わったら、上総屋さんのポテトフライ買いに行く!絶対ゼッタイぜっーーーーーたい!邪魔が入りませんように…。
そう決意を固めながら、悲鳴を上げ軋む体を、しばらく痛めつけた。
「そんなの聞いてないわよっ!もう!放っておいてっ!」
ほらほら来た来た。
午後の1時だというのに、寝間着姿。
そんな姿で居間の座卓に突っ伏し、外に出ない決意を猛アピール。
おーい子供か。2歳児か。2歳児はむしろ「おそとーー!」だけどな。
…って、心の中で言い返す。
これ、絶対言ってはいけない。口に出せばそれがゴングだ。言えば2時間は「ファイッ!」だ。
でも。言うべきことは言わなきゃ。甘えさせても好転することなど一つもない。
それどころか、状況は刻一刻と悪化するだけなんだ。
私は心を鬼にして、母と対峙する。
「お母さん。お母さんが週二回って言ったんだよ?先週の見学で、トレーナーさんに週1回って勧められたのをさ、『私は週2くらいやらないと身体鈍っちゃう』って頑として譲らないから『し・か・た・な・く』週2にしたんだよ?今更変更出来ないんだからね!」
実際にそうだ。確かに言った。
言ってそのように手配したのだから、もう撤回できない。
認知症が進んでからの母は、他人にはとことん強がる。
と言うか、調子こく。いやそれはもう「わたし出来るモン!」を並べ立てる。
普通はそこで宥めるのだろうけど…
私はそんな甘ったるいことは御免。
別に「後悔させてやろう」とか「思い知れ」とかそういう気持ちじゃないよ?
例えて言うなら、自分で罠の穴掘って、どういうわけか進んでハマりに行くんだよいまの母は。
穴を掘ったこと忘れるんじゃなくて、穴があることを知って、なお進んでいく。
面白いくらい意気揚々、威風堂々ハマりに行く。
私が「こうしてくれたらいいなぁ。でも、ちょっときついかなぁ」と心配しているところに、「こうしてくれたらいいなぁ」の方に自分から進んでくれる。楽な選択肢を提示しても、断固拒否する。
そんな石より硬い決意表明を、利用しない手はな…尊重すべきだと思いませんか?
もちろん、後でイヤイヤするのはお見通し。
でもいちど言質を取ったんだから、もう引き返せない。それを許したら、この先が全部崩れる。
だから、絶対譲らない。
「そんなこと言ってません!」
「言った!だから手配したのよ?さ、服どこ?早く着替えて!行くよ!」
「あたしは大丈夫ですっ!こんなに動けるのッ!だから行かないッ!」
「なら逆に行けるでしょ!行って動けること証明しろよ!」
母の態度に、私も冷静さを失ってしまう。
勢いで私は母の手を取った。もちろん母も抵抗する。
まったくなんて馬鹿力だ。こんな力あるなら動けるだろさっさと動けっ!
…と、心の中で毒づいた時。
ほとんど、一瞬の出来事だった。
こんなに俊敏に動けるのかよ、普段どんだけサボってんだ?と言いたくなる俊敏さだった。
「鬼の首取ったような態度であんたっ!」
私の手を振り払おうとした母の腕が、私の喉を思いっきり突いた。
思わず私は仰け反り、後ろにひっくり返った。
本気で苦しい。かなりピンポイントで入った。
そう言えば私が幼稚園から小学生まで、お母さん護身とか言って空手やってて、黒帯まで行ったんだっけ…。
「義母さんっ!ダメだ!手を引け!」
ノリが叫び、一瞬遅れて母の手を叩く。
(え…?ノリ?)
喉を押さえながら、ベチン!と響いた音に驚いた。
私はうずくまってしまい顔は見えないけど、たぶん私が見たこともないような、恐ろしい顔をしているんじゃないかと思う。
普段、ノリは母に甘い。ほんとに甘い。嫉妬するくらい甘い。
そのノリが、母に手を上げた。信じられない一瞬だった。
いま、ノリの剣幕に、この一瞬の出来事に、母は固まり言葉を失っている。
なんとも言えぬ重い重い静寂が、リビングを覆っていた。
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先週から、身体機能回復のためのリハビリがはじまった。
やっと要介護の認定が下り、ケアマネージャーさんと現状再確認の面談をし、いま介護プログラムの作成をしてもらっている。
私たちは、要介護認定が下りるまでの1カ月+2週の間、認定レベルよってどのプログラムがどこまで利用可能かを調べ、認定が下り次第、ケアプランを作成するケアマネさんに伝えられるようにしていた。
大前提は、母の望みをできるだけ叶えること。
その望みとは、「住み慣れたこの家で、出来るだけ長く暮らしたい」だ。
基本方針はそれで決まり、必要なケアを考える。
まず、日々の生存確認と体調確認。これはヘルパーさんに。
そしてもう一つ。マンションの一階まで降りるのも苦労している状態だから、身体機能の回復。これはリハビリセンターに。
認定が下り、早速ざっくりとそのことをケアマネさんに伝えると、私たちの要望に則って居宅サービス計画を作ってくれることになった。
ケアプランとは、要介護者のレベルや症状、家庭状況に応じて、介護サービスの種類や内容などを決める計画書だ。
介護保険の適用範囲内でどこまで出来るかを確認し、担当のケアマネさんがケアプランを作成てくれる。
その中に一週間の予定表もあり、日々のヘルパーさんの訪問やリハビリセンター通いも、その予定に則って実施される。
ところが、ケアプランが出来るまで2週間はかかる。1人の計画や予定表作成でなんでそこまで時間がかかる?と思われるだろう。
理由は単純。前が詰まっているからだ。単に順番待ちなのだ。
要介護者は 右肩上がり且つ指数関数的に増えているのに、対応人員数も事業者数も、それに全く追い付いていない。
それが、介護業界の現実だ。
時間がかかることは把握していたし、ケアマネさんは自治体に所属してるし、個人の裁量で物事を動かすことはできない。
私たちの場合は、ケアプラン作成前に合意も得ているし、方針ははっきり決まっている。
そこでケアマネさんは「プランが完成する前に、リハビリは開始しましょう」と仰ってくださり、早めにスタートすることになったのだ。
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「オエェェェェ…」
ひとまず、奥の部屋に退避した。静寂に耐え切れず…なんて可愛い理由じゃない。
打たれた喉が苦しく、えずくように咳込んだためだ。
トイレじゃわざとらしいし、母はトイレが近い。占拠はできない。
吐くような苦しさではなかったから、ここを選んだ。
「琴、大丈夫か?」
後から追ってきた孝範が、背中をなでて言う。
て言うか背中さすると無かった吐き気が生まれちゃうから。ちょっとやめて。むしろ水…
と思ってたら水が出てきた。さすがノリ。
「…うん、ありがとう、大丈夫」
ゴクゴクと一気に飲み干し、一息つく。
「…わかってるよ。ごめん。感情的になった」
少し落ち着くと、途端に力が抜ける。
私、何やってるんだろう。
それは、覚悟も決めたよ。嫌われようがどうしようが、進まなければいけない道がある。母の短い未来を、少しでも母の希望どおりに描くなら、その道に乗せなきゃならない。だから、心を決めたんだ。
でも、あんなに嫌がられて。拒否されて。手まで上げられて。ノリまでこんな風になって。
そこに、何があるんだろう。
ううん、覚悟はしてたよ。こういう場面くらい。
でもさ。でも、だよ…。
一気に、気持ちが霧がかる。
いや、霧じゃない。
どんより灰色の雲だ。真冬のあの、なんとも言えない重い重い雪雲だ。
「琴、少し強引じゃないのか?」
意外なノリの言葉に、私の頭にドバっと血が上る。
「これって、勢いで言ったことを、都合よく利用してるだけじゃないのか?義母さんあんなに嫌がって…」
ちょっと待てよノリ。いまその言葉じゃないだろ。
もちろん、そう言うノリの気持ちもわかる。外から見ればそうかも知れない。でも…でも、でもっ!なんだお前?ここまでひっついてきて、傍観者のつもりなのかよっ!
ノリ、あれだけ調べて、必要な事アドバイスしたくせに、お母さんの反応見た途端怖気づいてその反応かよっ!
ノリは分かってないっ!!! なんにも分かってないっ!!!
再び、私の心にいがついた。我ながら復活が早いな。マッチ棒か。
「違うんだよっ!ノリは甘いんだよっ! ここでそんな優しさなんて、1mmも役に立たないんだよ!」
ノリが身構える気配がする。
構わず、私は横にいるノリに向き直り、正面から言う。
「なに呑気なこと言ってんの?お母さんのあの姿見て、私がなんにも思わないとでも思ってんの!? なんでここまで、嫌われてまで、やらなきゃいけないんだろうって、葛藤だってするよっ!でも…でもっ!…ノリは数年後…ううん、半年後かも知れないよ? お母さんが施設で、焦点定まらない眼で天井ぼんやり眺めて寝そべって、私たちが声かけても、誰が誰だかわからなくて、何の反応も示さない…そんなんなっていいって、そんな時間が何年も続いてもいいって! そう思ってんのかよっ!何年も続くって、風呂敷広げすぎだとでも思ってんのかよっ!」
嗚咽交じりの私の語気に、ノリが怯んだ。
はっきり言って私は口が悪い。気持ちが昂ると男言葉になる。悪い癖だと自覚はしている。気をつけてはいるけれど…勢いに任せて悪態をつき後悔することなんて、まだまだ沢山ある。
しかし今日は違う。
心が叫んでる。心の縁が決壊して気持ちの洪水が起きている。
悲しい。寂しい。辛い…。
次から次へと際限なく溢れ、もうノリの優しさでは抑えられない。
「いま言ったこと、大げさだと思ってる? ねぇ、ここで甘えさせたらどうなると思う?お母さんは、この家にいたいんだよ?私たちと笑い合える時間を、少しでも多く過ごしたいんだよ? その望みをできるだけ長く叶えたい…。叶えるなら、母さん自分で動ける力を取り戻さなきゃいけないんだよ? でも、甘えさせたら…甘えれば、駄々をこねればきついこと避けられる、なんて覚えたら…もう、先は無いんだよ…終わりなんだよ……」
泣いた。とうとう嗚咽になった。
気持ちの洪水は、身体の中だけで収まる限界を超えた。一気に超えた。
どれくらい泣いたかな。ふと気づくと、私はノリの胸の中にいた。
「琴。わかった。…琴は、覚悟を決めた。そうだな?」
「前からそう言ってる! 嫌われようが恨まれようが親子の縁を切ると言われようがっ! …お母さんがこの家にいたいって望むなら、この家にいることが大事だって!そう言うのならっ! それができるように何だってするよ、何にだってなるよ…。鬼って罵られても包丁突きつけられても……やるしかないんだよ…」
ノリが私の頭を優しく撫でる。
まるで昔のお母さんだ。
そうだよ。こんな時いつも、お母さんが心を温めてくれた。
そのお母さんだもん。私は、最後の恩返しをしなきゃいけないんだ…。
「分かった。ごめん。俺は介護に対しての「覚悟」ってものを、甘く見てた。いま、俺も覚悟を決める。あとは任せて」
そう言ってノリは、私の額にキスをした。
そして、スッと部屋を出て、リビングに向かった。
その背中は、さっきとはまるで違って、一回り広く大きく見えた。
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リハビリをしている母は、とても楽しそうだった。
…さっきの騒動は何だったんだ?
まったく、馬鹿馬鹿しくなる。現金な母だ。
でも、いいよ。リハビリに来てくれたのなら、もう何だって過去のこと。どうせ母もすぐ忘れるし。気にかけるだけ時間と心の無駄遣いだ。
リハビリセンターについてから、しばらくボーっとしてた母。
着いてからしばらくは、トレーナーさんの案内で色んな機器で遊ばせてもらっていた。はじめは慣れない環境で、ちょっとおっかなびっくりだった。
だけど、持ち前の好奇心の強さはまだ健在だったようだ。
すぐに慣れ、だんだん力強く、ニコニコしながら遊び…いや、トレーニングしていった。
それにしても、とんだとばっちりだ。
結局あのあと、ノリは母を説得した。そして10分と経たず「行くよ」って。ノリも母も満面の笑みで。
まったく「…は?」だよ。あの状況からどうやって…?何者なんだノリは? ハートを射抜くマジシャンか。いやそれはなんか方向違う。私はノリに射抜かれた自信あるけど。エッヘン。
家を出て、送迎の車に乗る前に、ノリに聞いた。
ノリが使った手。それは彼の温かさや包容力に依るところも大きいけれど、結局はこれだ。
「手を握りながらこう言ったんだ。『お義母さん、大丈夫。僕も琴音さんも、今日のリハビリ最後まで一緒にいるから。約束する。不安なんでしょう?初めてのところで。安心して。二人がついてる。終わったらさ、一緒においしいものでも食べようよ』ってね」
おい。勝手に私も付き合わすなよ。
思わず足が出かけた。ノリを蹴り上げる寸前まで行った。
だって。
リハビリの間、好物の上総屋さんのポテトフライ、みんながいない時間にこっそり買って、一人占めと思ってたのに。あーもう。今日はお預けかぁ…。
なんて、食べ物の恨み100万年の思いに駆られていたら、ノリが心のど真ん中を突いてきた。
「あそこまで覚悟を決めた琴だったら、「最後まで付き合う」程度の約束で義母さんを引っ張り出せるなら、絶対そうするだろ? そして難なく最後まで付き合うだろうと思ったんだ。義母さんも、それならって、イヤイヤながらでも行くだろう。なんだかんだで義母さん、琴が大好きだからさ」
大好きだからさ、って…。
逃げ道塞ぎやがったこいつ。ズルい。
でもね。そうだ。そうなんだ。私は覚悟を決めた。そうノリに言った。
なら、ノリのこの判断は間違っていない。今日この場に私しかいなければ、間違いなく同じことを言っただろう。
「もう一つ。気付いたか?着替え」
「え?」
何のことかさっぱりわからず、聞き返す私。
「あのあと戻ってから気付いたんだけど…。義母さん、運動用の着替えを座卓の横に用意してた。丁寧に畳んでさ。ハナから行く気満々だったんだよ。でも、いざ時間が近づいて、ふっと今日の予定も記憶から飛んで、どこか不安になったんじゃないかな。俺たちだってよくあるだろ? 楽しみにしてた予定なのに、朝着替えてると面倒になることってさ。それが、認知症で理性のタガが外れてるから、大きな反応になっただけじゃないのかなって、そう思った」
全く気付かなかった。
言われてみれば、私だって、いざ外に出る段になって面倒になるなんてしょっちゅうだ。
「…ただ、反応が大きいだけ、か。そうね。感情ばっかり先立って、見落としてたわ。うん。不安を解消するためにはじめのうちは一緒に行こう…確かにそうね。その解決策が一番かも知れないわ」
「そう。もちろん、しばらくの間は色んなことを開始することになるだろうから、俺らもきつい時期は続くと思う。けど、義母さんを軌道に乗せる、俺らも落ち着ける状況を作る、これを一番早く形にしたいなら、これが一番の近道だと思う」
確かに、何かを始める度に私たちが付き合わなければならない。それは大変だ。
大変だけど、ノリが言うように、軌道に乗せるにはそれが一番近道なのだろう。
母は、意地張ってるのも確かだけど、色んなことを拒否する根本的な原因が「不安」なのだとしたら、その不安の根本を一つづつ解決すればいい。
「ノリ、ありがとう」
思わず口をついてお礼の言葉が出た。ほんとうに、無意識だった。
親子、特に母娘だと、感情ばかりが先だって大事なことを見逃す。そこを、ノリが補完してくれた。
ありがとう。やっぱり、私にはノリしかいない。こんなに私や母のことを見て、きちんと分かって行動して解決してくれる。
感謝しかないよ、ノリ。
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そしていま私たちは、座ってるのもなんだからと、試しに母と同じプログラムを体験させてもらっている。
うん、これはこれで悪くないかな。
でもさ。ノリは余裕。私は…
うっわ超背筋弱い。あ、足も弱い。え、ちょっとこれ意外にきつくない?
舐めてた。お年寄り用の強度だって舐めてかかっていた。
けどさ、特に天井から吊るされたロープを使ったストレッチ、これがバランスを取るのが難しい。ノリは余裕だったけど。
「琴もさ、毎週2回義母さんといっしょにやる?」
ノリが笑って言う。なんだその意地悪い笑みは。
なんだかちょっとムカッ腹が立って、ノリのふくらはぎを蹴る。
大げさに痛がるノリ。それを見ておかしそうに微笑む母。
あ、いま、なんかいいなって思った。そうね。こんな機会を、少しでも多く持てますように。いつも一緒にいられるわけじゃないけど…
そして…
今日これが終わったら、上総屋さんのポテトフライ買いに行く!絶対ゼッタイぜっーーーーーたい!邪魔が入りませんように…。
そう決意を固めながら、悲鳴を上げ軋む体を、しばらく痛めつけた。
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