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第一章・始まりは…
14・ぶち壊された初恋(※胸糞表現注意)
しおりを挟む「それでは、そろそろオリフェウス様のご質問にお答えすることに致しましょうか?
貴方様が『無礼』とまで仰る言葉を私に教えてくれた御方とは何方を示すのかをお答えしますわ」
「誰の名を出すつもりかは知らないが、下手な嘘は吐かない方が身の為だぞ」
「ええ!勿論、嘘など申しませんわ。
その御方とは貴方様の大切な幼馴染リュシフェル様でいらしてよ」
「…馬鹿な!」
「いつもいつもリュシフェル様は私達友人の前ではこのように仰っておられますの。
オリフェウス様は頼りにならない御方とか、気が利かないとか、女心も分からないだけではなく、人の気持ちにさえ疎い愚かな御方だと」
「……ッ!!…」
オリフェウスが息を飲む音さえ聞こえてきた気がした。
ミナールの告げる内容に耐え切れなくなったリュシフェルは声を上げかける。
「…それは!」
「あら?リュシフェル様、私の話したことに何か間違いがありまして?
そんなオリフェウス様に女神像の前で手を差し出されてもリュシフェル様はお困りになられるどころか、お嫌でしょう?」
日頃からリュシフェルは幼馴染オリフェウスの話がしたいあまり、友人達の前ではオリフェウスのことを褒めずに愚痴をこぼす体でいつも惚気ていたのだ。
しかし、それは幼い恋心の裏返しであり、友人達は生温かい目でリュシフェルのことを見守っていたはず。
それを逆手に取ったミナールは更に酷い言葉を付け加えオリフェウスを貶めることにより、リュシフェルの幼い恋心を巧妙に隠してしまったのだ。
つまり、ミナールが作為的に行った意図は明らか。
リュシフェルとオリフェウスを結び付ける気など更々ないどころか、リュシフェルがオリフェウスに嫌われてしまえばいいとさえ望んでいるのだ。
裏返しの恋心をうまく利用されたことから嫌でも分かる。
ミナールの狙いを理解しているにも関わらず、リュシフェルを黙らせてしまうミナールのやり方に対して、なす術さえ持たない無力な自分が心底悔しい…
「ですから、友人である私がお困りになられているリュシフェル様を助けて差し上げようと思いまして、オリフェウス様にリュシフェル様のお気持ちを教えて差し上げたまでですのよ」
「これが、私の気持ちを教えたと果たして言えるのかしら?」
「…あら?リュシフェル様ったら、まさかとは思いますけれど…日頃から嫌がっておいでだったオリフェウス様を今更お好きと仰って弄ぶおつもり?
ふふふ…そんな酷い真似などなさるはずはございませんわよねぇ…!」
片眉を上げて意地悪く笑うミナールの言葉は到底許せるものではない。
リュシフェルのことは勿論、オリフェウスのことまで馬鹿にした上での発言だ!
だが、ここでミナールの挑発にのってしまえば、これまで我慢を重ねてきたヴィクトァールを守る全てを台無しにしてしまう…
その結果だけは何としても避けなければならない。
リュシフェルの勝手な振る舞いでヴィクトァールに迷惑を掛けることは人として間違っているように思えるからだ。
破茶滅茶ではあるが親しい友人だと思っていたミナールからの思わぬ手酷い返しを受け、リュシフェルは自分がミナールから厭われ憎まれているのだとハッキリ自覚せざるを得ない。
辛くて目を背けたくなるが、リュシフェルはミナールから嫌われているどころか憎まれてさえいる事実はもはや疑いようもない。
想いを寄せ合う幼馴染オリフェウスとの仲を引き裂いても心が痛まないくらいミナールにとってリュシフェルは疎ましい存在なのだ。
ミナールのことを友人と思っていればこそ、迷惑を被るヴィクトァールに対してミナールの友人として代わりに詫びることも当然のことと思えた。
ヴィクトァールの偽の恋人となりミナールの目を覚まさせることにも協力できたのはミナールが友人だと思えばこそ。
悲しくて虚しくて堪らないが、今になって嘆いても…もう遅いのだ。
どこでどう間違えたのか振り返ってみても他の選択肢など今更残されてはいないのが現実だ。
アメジストの瞳を覆っている張り詰めていた膜が遂に破れ、つと滴が零れ落ちる。
リュシフェルの頬をつたいアメジストの瞳から次々と流れ滑り落ちる滴。
募るばかりの虚しい心を持て余すように頬をつたい流れる滴を拭うことさえできず、リュシフェルはただ静かに涙を流すばかりだった。
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。.
胸糞悪い展開となりましたが、
徐々にスッキリとなって参ります。
それまで我慢のお付き合いを
お願いいたしますꕤ*.゚
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