【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

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270話「深階層班(その3)」

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 ホブゴブリンが三体も現れた部屋は流石にアレっきりで、ホブゴブリン+ハイゴブリン数体というのがほとんどだった。
 
「順調極まりないね」
「とはいえ、夜までに第四階層は無いだろうな」
「誰も怪我が無いんだ。それにこしたことはない」
 
 俺のつぶやきに、リズとアスカが応えてくれた。
 
「それでも、進めるだけ進みたいね。アタイ達の実力に見合う階層まで早く行きたいと思ってるからね」
「確かに。わたし達の目標はあくまでもS級ダンジョン制覇とアズラデリウスの討伐……そのレベルアップの為の『大迷宮アタック』ですからね」
 
 リズとドロシーの言う事はもっともだ。あくまでもS級ダンジョン制覇が俺達の目標であり最優先任務だからな。
 
「まぁ第三階層をくまなく調査するのはギーゼ達に任せればいいよ。──彼女たちの実力だとこの階層がちょうどいいぐらいなんでしょ?」
 
 メルダの後ろから顔を覗かせて話し掛けるカズミ。
 
「あぁ。今回はミスがあったらしいが、本来ならホブゴブリンぐらいは問題なく相手できるメンバーだ」
 
 アスカが前方を向いたまま応えた。そこへ、少し先を歩いていたアルダがこちらへと走ってきた。
 
「扉があった。今、マルティナが調べてる」
 
 ◆
 
「鍵も罠も無い。中は……ホブゴブリン一体とハイゴブリンが四体だと思う」
「……前衛にもう一人加えた方が良さそうだね」
 
 マルティナの報告に、腕を組んで考え込むリズ。
 
「問題ないよ。ハイゴブリン程度なら私の『炎球ファイヤーボール』で倒せるし」
 
 カズミが腕まくりする。
 
「なられなも『炎球ファイヤーボール』でもう一体のハイゴブリン倒そうか?」
「レナには、ハイゴブリンが使うかもしれない魔術を警戒して欲しいんだけどな」
「れななら『炎球ファイヤーボール』唱えてからでも直ぐに対応できるから大丈夫♡」
「そ……そうなのか……」
 
 少し呆れた表情でレナを見るリズ。伊達にランクAじゃないよねレナ。つか女神様だしね。
 
「ならアタシ達が実質相手にするのは、ホブゴブリン一体とハイゴブリン二体か。──ヒロヤ、ホブゴブリンは任せてくれるか?」
「いいけど……どうして?」
「たまにはみんなにもアンタにも良いところを見せておきたい」
 
 刀の柄を握り締めて扉を見つめるアスカ。いや、さっきのホブゴブリン戦でも充分良いところ見せてもらったよ。
 
「なんていうか……アンタたちに背中を任せて、一番強い敵と相対するって感覚が──なんか気持ちいいんだよ」
 
 俺を見下ろして笑うアスカ。
 
「信頼……ってやつだね。アスカちゃん、きっとオットーとのパーティーじゃ味わえなかったんだよね」
「あぁ……なるほど。多分それだ」
 
 マルティナがアスカの肩を叩き、アスカはその言葉に納得したように頷いた。
 
「じゃあアスカに一番大きいやつを任せるよ」
「他のザコはアタイらに任せな。──気持ちいいからって絶頂イクんじゃないよ」
 
 俺とリズに笑って頷き、扉の前に立つアスカ。
 
「では……参るっ!」
 
 アスカが扉を蹴破った。
 
 ◆
 
「「炎球ファイヤーボール!」」
 
 カズミとレナが攻撃魔術を唱える。そして現れた火球はともにスイカサイズの大きさだ。
 それらは両サイドのハイゴブリンに飛翔していき、二体のハイゴブリンの頭部で炸裂して爆散した。
 
(レナと同じ大きさなんだ……凄いなカズミ……)
 
 今更ながらにカズミの炎系魔術のレベルに舌を巻きながら、俺は残ったハイゴブリンの一体に向かって突っ込んでいく。
 父さんの『力』を使って敵の動きを『予知』する。
 
(遅い。回避する必要はないな……)
 
 予知した攻撃を躱さずとも懐に入り込める。そのまま駆け抜け、抜刀した一閃を胴に叩き込む。
 高く上げた棍棒を振り下ろすことも出来ずに、切断された上半身が地に落ちるハイゴブリン。
 納刀してアスカに目をやると、ホブゴブリンに攻撃させる事もなく、跳躍してその鋭い突きを額に喰らわせていた。
 深々と突き刺さった刀を、ホブゴブリンの胸を蹴って抜き、そのまま後方に着地した。
 
(やっぱりアスカの『突き』は凄い……)
 
 身のこなしも軽く正確だから、その突きも正確で速い。
 視線を移した先で繰り広げられるマルティナとアルダの連携も凄い。
 素早い身のこなしで、ハイゴブリンの攻撃を躱して懐に入り込んだマルティナが、ショートソードとマンゴーシュの連撃を脚に叩き込み、膝をついたところにアルダが振りかぶったハンマーの一撃を頭部に叩き込んで粉砕した。
 
(マルティナの素早い動きも凄いけど、アルダのあの重い一撃はえげつないな……)
 
 あっという間に、魔石を残して姿を消すモンスター達。
 
「あ……あっという間だね……」
「あ、あぁ……今更ながらアタイ達の近接戦闘連中の実力は凄えよ……」
 
 メルダとリズが驚いたように突っ立っている。
 
「な、なんか少し悔しいです。わたしも早くコレを使って戦いたいですのに……」
 
 ドロシーが右手を前に差し出し、仕込まれた『鉄の爪アイアンクロー』をジャキッ! と展開する。
 
「つ……次は頼むよドロシー……」
 
 眼前に差し出された鉄の爪アイアンクローを見つめて、リズが息を飲んだ。
 
「アンタ達が魔術で二体斃してくれたからね。アタシ達も早くケリをつけることができたんだ」
 
 アスカがカズミとレナの肩に手を置く。カズミとレナは照れたように笑った。
 
「どうだい? 気持ちよかったかいアスカ?」
 
 揶揄うようなリズの言葉に、微笑みながらアスカは応えた。
 
「あぁ。少し股を濡らした」
 
 ◆
 
 他の回廊に逸れることなく、俺達はひたすらに『第四階層』へのルートを探すべく東に向かって続く回廊を歩き続けた。
 
 それから三部屋ほど戦ったところで、野営を決めた。
 
 レナが『魔物避け』の防御壁を部屋に施し、その間に野営の支度をする。とはいえ、トイレの目隠しに帆布をポールで立てるぐらいなのであっという間だった。
 
「身体を拭くのは、目隠しいらないだろ?」
 
 目隠しを立て終わって、リズが言う。
 
「だよね。アスカとウーちゃん以外は……その……ヒロくんの……ものだし……」
「だろ? 誰も恥ずかしくないよな?」
「いや、ダメでしょ!? アスカちゃん人妻なんだから隠さなきゃ!」
 
 アルダとリズに、メルダが食って掛かる。
 
「でも、朝の稽古終わってから、いつもアスカとギーゼと一緒にお風呂入ってるでしょヒロヤは」
「そうだよ……ウーちゃんはアレだけど、アスカは今更だよね?」
 
 カズミとレナが「何言ってるの?」といった表情でメルダを見る。
 
「知ってんの!? で、平気なの!?」
 
 メルダが驚いたように二人を見る。
 
「アスカちゃんが恥ずかしくないんだったら問題ないよね? ──ね? ヒロヤ兄ちゃん?」
 
 笑顔で俺に問いかけるマルティナ。
 
「ま……まぁそうだけど……確かにアスカは人妻だからね……俺、見ちゃわないようにするよ」
「アタシは大丈夫だぞ? そもそもアタシはゴージュ以外には──」
「『ゴージュ以外には欲情しない』でしょ? 前にも聞いたよ!」
 
 メルダが本当に「ぷんぷんっ!」という感じで怒っている。
 
「あーアレか。『ヤキモチ』だなメルダ」
「そうですか! ヒロヤさんに他の女の裸を見てほしくないんですね?」
 
 リズとドロシーがニマニマと笑ってメルダを見る。
 
「そ、そうだよ! ヤキモチだよ! つか、みんな平気なのがおかしいんだよ?」
 
 うん。メルダの感覚が正しいよ? ウチのおなご連中がオープンすぎるんだと思うよ。
 
「ヒロヤ様! ウーちゃんがお身体をぬぐいますです~」
 
 俺の手を引いて部屋の隅に行こうとするウーちゃんの事は、みんな流石に止めた。
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