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208話「シモーネの涙」(視点・カズミ)
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「でも、そんな強力な『魅了』から、よく脱せましたよね」
まだシモーネの『薔薇の果実』脱退に納得がいってない表情のリズを横目に、ドロシーがシモーネに話しかけた。確かに、それほどまでに強力な魔術をどうやって破ったのか気にはなる。
「それは……アレや。……色々と……な」
急に赤くなって俯くシモーネ。ん? ちょっと待ってなにこの感じ。
「あ、あぁ……ヒロヤに『魅了』を破ってもらったんだよな」
リズがしれっと答えた。
「え? ちょっと聞いてないわよ?」
「えっと……どういう事か説明していただきたいんですけど」
「シモーネちゃん……どういう事なの?」
「いや『ちゃん』て……」
私、ドロシー、マルティナの追求と『ちゃん』呼びされて狼狽えるシモーネ。
「まぁ……アレやわ……何があったんや? って聞かれたら『ヒロヤに犯されてん』としか答えようがないんやけどな。──あのデカいのもヒロヤなんやろ? リズ」
◆
ヒロヤが『浩哉の力』を解放&『身体強化』のコンボで縄をぶち切り、一瞬でアンスガー達拉致犯をぶちのめし(一人は死亡)た後、シモーネはアンスガーを助ける為に浩哉に襲い掛かったそうだ。
そして返り討ち。逆に犯されたという。
「ウチの身体中にある傷を見て、どうせ自分本位で乱暴なセックスしかしてもらってないって理解しよったんや。んで……『ホンマのセックス教えたる』って……」
どうやらアンスガーに見せつけるように、イチャイチャでねちっこいセックスをしたらしい。流石はヒロヤだ。そうやってアンスガーの『心を折った』んだろう。おそらくはそれも『魅了』を打ち破る要因だったんだ。
「ウチはアマゾネスの血が嫌やった。相手を貪り、食らい尽くすようなセックス……アンスガー達に犯られた時、これでアマゾネスの血に目覚めてしもうた。もうああいった『暴力的なセックス』しか受け入れられへん身体になってしもうた……って諦めてもうてん」
しかし、そこであのヒロヤのセックスだ。かなり優しくねっとりと攻められたらしい。
「結局、アマゾネスの血に拘ってたんはウチ自身やってんやな……あんなお互いが溶け合うようなねちっこいセックスで……とんでもないアクメに達してもうたんや」
シモーネを責める態度だったドロシーもマルティナも頬を赤らめて頷いていた。まぁ、分かるけど……
「ひょっとして──ヒロヤの傍に居たくて……薔薇の果実を抜けてきたの?」
私の質問に、ほんの僅かキョドったけど……
「いや……薔薇の果実を抜けたんは、間違いなくさっき言うた通りの真面目な理由や。ヒロヤとの事とは別や」
真剣な表情だ。そこは信じてもいいかもしれない。
「ヒロヤがシモーネを抱いたのは、緊急措置的なものだから、みんなは何も気にしないでいいよ」
いつの間にキャビネットから持ってきたのか、リズがウイスキーをグラスでチビチビやっていた。
「緊急措置て……そ、そんな事ないわ! アイツは言うてくれたんや! 『シモーネはイイ女だ。だから俺の女にする』て……」
「あちゃ……」
まぁたそんな事言ったのかヒロヤは……
「そんなのは、アンスガーへの見せつけでアイツの心折る為の演出だろ?」
「そ……そんなん……」
リズがクイッとグラスをあおる。途端に、あのシモーネが……目を見開いて大粒の涙をぽろぽろと零しだした。
「……やっと……ようやっと女として抱いてもらえる……女として愛される男を見つけたと思うたのに……別に、傍に居らんでも──」
その涙は、もう止まらない。泣かせてしまうような事を言ってしまったリズはキョトンとしてしまっている。
「あの言葉を信じて……遠くから見れるだけでも良かったんや……偶に、極々たま~に抱いてもらえるだけで──」
そして……シモーネは大きな声を上げて泣き出した。
◆
「こうなったら、ちゃんとヒロヤに確認するまで帰らへんからな!」
私とドロシー、マルティナが宥めて……ようやく泣きやんだシモーネが、次は開き直ったかのようにリズに向かって吠えた。
「取り敢えず、ウチは荷物を宿から引き上げてくるで!」
そう言って、疾風の如き速度で屋敷を出て行った。
「リズ……ちょっと言い過ぎたんじゃない?」
「わたしもそう思います。アマゾネスとしての血を嫌うシモーネさんの気持ちを考えたら……」
私がリズを窘めると、ドロシーもやんわりと同意した。
確かに、アマゾネスとしてじゃなく、女として抱かれた意味ではヒロヤが初めてだったんだろう。
(ヒロヤ……優しいセックスするからなぁ)
半ば暴力のようなセックスにアマゾネスの血が反応して堕ちたのではなく、優しく、愛のあるセックスに女として反応して堕ちたんだ。
「リズ姉ちゃん……ワザとじゃないの? ──元気なかったシモーネちゃんを奮い立たせようとして……」
マルティナが小さくリズに訊ねる。
「……あんな神妙で慎ましい態度は似合わないんだよアイツには」
そう言ってグラスを空けるリズ。
「──泣いたあとの……あれぐらいが良いんだよ……」
「ま、ヒロヤ次第だよね。──起きたら、みんなで問い詰めてやりましょうよ」
「そうしましょう。本当にご主人様は女性に手が早いです……」
「ヒロヤ兄ちゃん、すけべ……」
取り敢えず『リズの大事な友達』の元気が出そうなのは良かった。あとは……
「はぁ……シモーネの部屋を用意しなきゃね……」
私は、手の空いているノーちゃんを連れて、シモーネを迎える用意をする為に三階へと向う。
「アタイは、ちょっと『薔薇の果実』んところに事情を説明しに行ってくるよ。引き抜きだの何だの言われると厄介だからね」
「わたしもついていきます」
「あたしも。リズ姉ちゃんだけだと、揉め事に発展しそうだし」
「ん……頼んだよ」
私は階段の踊り場から三人を見送った。
(さて……クランのみんなにはどう説明したもんかな……?)
ちょっとレナにも相談してみよう。
まだシモーネの『薔薇の果実』脱退に納得がいってない表情のリズを横目に、ドロシーがシモーネに話しかけた。確かに、それほどまでに強力な魔術をどうやって破ったのか気にはなる。
「それは……アレや。……色々と……な」
急に赤くなって俯くシモーネ。ん? ちょっと待ってなにこの感じ。
「あ、あぁ……ヒロヤに『魅了』を破ってもらったんだよな」
リズがしれっと答えた。
「え? ちょっと聞いてないわよ?」
「えっと……どういう事か説明していただきたいんですけど」
「シモーネちゃん……どういう事なの?」
「いや『ちゃん』て……」
私、ドロシー、マルティナの追求と『ちゃん』呼びされて狼狽えるシモーネ。
「まぁ……アレやわ……何があったんや? って聞かれたら『ヒロヤに犯されてん』としか答えようがないんやけどな。──あのデカいのもヒロヤなんやろ? リズ」
◆
ヒロヤが『浩哉の力』を解放&『身体強化』のコンボで縄をぶち切り、一瞬でアンスガー達拉致犯をぶちのめし(一人は死亡)た後、シモーネはアンスガーを助ける為に浩哉に襲い掛かったそうだ。
そして返り討ち。逆に犯されたという。
「ウチの身体中にある傷を見て、どうせ自分本位で乱暴なセックスしかしてもらってないって理解しよったんや。んで……『ホンマのセックス教えたる』って……」
どうやらアンスガーに見せつけるように、イチャイチャでねちっこいセックスをしたらしい。流石はヒロヤだ。そうやってアンスガーの『心を折った』んだろう。おそらくはそれも『魅了』を打ち破る要因だったんだ。
「ウチはアマゾネスの血が嫌やった。相手を貪り、食らい尽くすようなセックス……アンスガー達に犯られた時、これでアマゾネスの血に目覚めてしもうた。もうああいった『暴力的なセックス』しか受け入れられへん身体になってしもうた……って諦めてもうてん」
しかし、そこであのヒロヤのセックスだ。かなり優しくねっとりと攻められたらしい。
「結局、アマゾネスの血に拘ってたんはウチ自身やってんやな……あんなお互いが溶け合うようなねちっこいセックスで……とんでもないアクメに達してもうたんや」
シモーネを責める態度だったドロシーもマルティナも頬を赤らめて頷いていた。まぁ、分かるけど……
「ひょっとして──ヒロヤの傍に居たくて……薔薇の果実を抜けてきたの?」
私の質問に、ほんの僅かキョドったけど……
「いや……薔薇の果実を抜けたんは、間違いなくさっき言うた通りの真面目な理由や。ヒロヤとの事とは別や」
真剣な表情だ。そこは信じてもいいかもしれない。
「ヒロヤがシモーネを抱いたのは、緊急措置的なものだから、みんなは何も気にしないでいいよ」
いつの間にキャビネットから持ってきたのか、リズがウイスキーをグラスでチビチビやっていた。
「緊急措置て……そ、そんな事ないわ! アイツは言うてくれたんや! 『シモーネはイイ女だ。だから俺の女にする』て……」
「あちゃ……」
まぁたそんな事言ったのかヒロヤは……
「そんなのは、アンスガーへの見せつけでアイツの心折る為の演出だろ?」
「そ……そんなん……」
リズがクイッとグラスをあおる。途端に、あのシモーネが……目を見開いて大粒の涙をぽろぽろと零しだした。
「……やっと……ようやっと女として抱いてもらえる……女として愛される男を見つけたと思うたのに……別に、傍に居らんでも──」
その涙は、もう止まらない。泣かせてしまうような事を言ってしまったリズはキョトンとしてしまっている。
「あの言葉を信じて……遠くから見れるだけでも良かったんや……偶に、極々たま~に抱いてもらえるだけで──」
そして……シモーネは大きな声を上げて泣き出した。
◆
「こうなったら、ちゃんとヒロヤに確認するまで帰らへんからな!」
私とドロシー、マルティナが宥めて……ようやく泣きやんだシモーネが、次は開き直ったかのようにリズに向かって吠えた。
「取り敢えず、ウチは荷物を宿から引き上げてくるで!」
そう言って、疾風の如き速度で屋敷を出て行った。
「リズ……ちょっと言い過ぎたんじゃない?」
「わたしもそう思います。アマゾネスとしての血を嫌うシモーネさんの気持ちを考えたら……」
私がリズを窘めると、ドロシーもやんわりと同意した。
確かに、アマゾネスとしてじゃなく、女として抱かれた意味ではヒロヤが初めてだったんだろう。
(ヒロヤ……優しいセックスするからなぁ)
半ば暴力のようなセックスにアマゾネスの血が反応して堕ちたのではなく、優しく、愛のあるセックスに女として反応して堕ちたんだ。
「リズ姉ちゃん……ワザとじゃないの? ──元気なかったシモーネちゃんを奮い立たせようとして……」
マルティナが小さくリズに訊ねる。
「……あんな神妙で慎ましい態度は似合わないんだよアイツには」
そう言ってグラスを空けるリズ。
「──泣いたあとの……あれぐらいが良いんだよ……」
「ま、ヒロヤ次第だよね。──起きたら、みんなで問い詰めてやりましょうよ」
「そうしましょう。本当にご主人様は女性に手が早いです……」
「ヒロヤ兄ちゃん、すけべ……」
取り敢えず『リズの大事な友達』の元気が出そうなのは良かった。あとは……
「はぁ……シモーネの部屋を用意しなきゃね……」
私は、手の空いているノーちゃんを連れて、シモーネを迎える用意をする為に三階へと向う。
「アタイは、ちょっと『薔薇の果実』んところに事情を説明しに行ってくるよ。引き抜きだの何だの言われると厄介だからね」
「わたしもついていきます」
「あたしも。リズ姉ちゃんだけだと、揉め事に発展しそうだし」
「ん……頼んだよ」
私は階段の踊り場から三人を見送った。
(さて……クランのみんなにはどう説明したもんかな……?)
ちょっとレナにも相談してみよう。
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