【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

思考機械

文字の大きさ
上 下
209 / 287

208話「シモーネの涙」(視点・カズミ)

しおりを挟む
「でも、そんな強力な『魅了チャーム』から、よく脱せましたよね」
 
 まだシモーネの『薔薇の果実ローズヒップ』脱退に納得がいってない表情のリズを横目に、ドロシーがシモーネに話しかけた。確かに、それほどまでに強力な魔術をどうやって破ったのか気にはなる。
 
「それは……アレや。……色々と……な」
 
 急に赤くなって俯くシモーネ。ん? ちょっと待ってなにこの感じ。
 
「あ、あぁ……ヒロヤに『魅了』を破ってもらったんだよな」
 
 リズがしれっと答えた。
 
「え? ちょっと聞いてないわよ?」
「えっと……どういう事か説明していただきたいんですけど」
「シモーネちゃん……どういう事なの?」
「いや『ちゃん』て……」
 
 私、ドロシー、マルティナの追求と『ちゃん』呼びされて狼狽えるシモーネ。
 
「まぁ……アレやわ……何があったんや? って聞かれたら『ヒロヤに犯されてん』としか答えようがないんやけどな。──あのデカいのもヒロヤなんやろ? リズ」
 
 ◆
 
 ヒロヤが『浩哉の力』を解放&『身体強化フィジカルブースト』のコンボで縄をぶち切り、一瞬でアンスガー達拉致犯をぶちのめし(一人は死亡)た後、シモーネはアンスガーを助ける為に浩哉に襲い掛かったそうだ。
 そして返り討ち。逆に犯されたという。
 
「ウチの身体中にある傷を見て、どうせ自分本位で乱暴なセックスおめこしかしてもらってないって理解しよったんや。んで……『ホンマのセックスおめこ教えたる』って……」
 
 どうやらアンスガーに見せつけるように、イチャイチャでねちっこいセックスをしたらしい。流石はヒロヤ浩哉だ。そうやってアンスガーの『心を折った』んだろう。おそらくはそれも『魅了チャーム』を打ち破る要因だったんだ。
 
「ウチはアマゾネスの血が嫌やった。相手を貪り、食らい尽くすようなセックスおめこ……アンスガー達に犯られた時、これでアマゾネスの血に目覚めてしもうた。もうああいった『暴力的なセックスおめこ』しか受け入れられへん身体になってしもうた……って諦めてもうてん」
 
 しかし、そこであのヒロヤ浩哉のセックスだ。かなり優しくねっとりと攻められたらしい。
 
「結局、アマゾネスの血に拘ってたんはウチ自身やってんやな……あんなお互いが溶け合うようなねちっこいセックスおめこで……とんでもないアクメに達してもうたんや」
 
 シモーネを責める態度だったドロシーもマルティナも頬を赤らめて頷いていた。まぁ、分かるけど……
 
「ひょっとして──ヒロヤの傍に居たくて……薔薇の果実ローズヒップを抜けてきたの?」
 
 私の質問に、ほんの僅かキョドったけど……
 
「いや……薔薇の果実ローズヒップを抜けたんは、間違いなくさっき言うた通りの真面目な理由や。ヒロヤとの事とは別や」
 
 真剣な表情だ。そこは信じてもいいかもしれない。
 
「ヒロヤがシモーネを抱いたのは、緊急措置的なものだから、みんなは何も気にしないでいいよ」
 
 いつの間にキャビネットから持ってきたのか、リズがウイスキーをグラスでチビチビやっていた。
 
「緊急措置て……そ、そんな事ないわ! アイツは言うてくれたんや! 『シモーネはイイ女だ。だから俺のものにする』て……」
「あちゃ……」
 
 まぁたそんな事言ったのかヒロヤは……
 
「そんなのは、アンスガーへの見せつけでアイツの心折る為の演出だろ?」
「そ……そんなん……」
 
 リズがクイッとグラスをあおる。途端に、あのシモーネが……目を見開いて大粒の涙をぽろぽろと零しだした。
 
「……やっと……ようやっと女として抱いてもらえる……女として愛される男を見つけたと思うたのに……別に、傍にらんでも──」
 
 その涙は、もう止まらない。泣かせてしまうような事を言ってしまったリズはキョトンとしてしまっている。
 
「あの言葉を信じて……遠くから見れるだけでも良かったんや……偶に、極々たま~に抱いてもらえるだけで──」
 
 そして……シモーネは大きな声を上げて泣き出した。
 
 ◆
 
「こうなったら、ちゃんとヒロヤに確認するまで帰らへんからな!」
 
 私とドロシー、マルティナが宥めて……ようやく泣きやんだシモーネが、次は開き直ったかのようにリズに向かって吠えた。
 
「取り敢えず、ウチは荷物を宿から引き上げてくるで!」
 
 そう言って、疾風の如き速度で屋敷を出て行った。
 
「リズ……ちょっと言い過ぎたんじゃない?」
「わたしもそう思います。アマゾネスとしての血を嫌うシモーネさんの気持ちを考えたら……」
 
 私がリズを窘めると、ドロシーもやんわりと同意した。
 確かに、アマゾネスとしてじゃなく、女として抱かれた意味ではヒロヤが初めてだったんだろう。
 
(ヒロヤ……優しいセックスするからなぁ)
 
 半ば暴力のようなセックスにアマゾネスの血が反応して堕ちたのではなく、優しく、愛のあるセックスに女として反応して堕ちたんだ。
 
「リズ姉ちゃん……ワザとじゃないの? ──元気なかったシモーネちゃんを奮い立たせようとして……」
 
 マルティナが小さくリズに訊ねる。
 
「……あんな神妙で慎ましい態度は似合わないんだよアイツには」
 
 そう言ってグラスを空けるリズ。
 
「──泣いたあとの……あれぐらいが良いんだよ……」
「ま、ヒロヤ次第だよね。──起きたら、みんなで問い詰めてやりましょうよ」
「そうしましょう。本当にご主人様は女性に手が早いです……」
「ヒロヤ兄ちゃん、すけべ……」
 
 取り敢えず『リズの大事な友達』の元気が出そうなのは良かった。あとは……
 
「はぁ……シモーネの部屋を用意しなきゃね……」
 
 私は、手の空いているノーちゃんを連れて、シモーネを迎える用意をする為に三階へと向う。
 
「アタイは、ちょっと『薔薇の果実ローズヒップ』んところに事情を説明しに行ってくるよ。引き抜きだの何だの言われると厄介だからね」
「わたしもついていきます」
「あたしも。リズ姉ちゃんだけだと、揉め事に発展しそうだし」
「ん……頼んだよ」
 
 私は階段の踊り場から三人を見送った。
 
(さて……クランのみんなにはどう説明したもんかな……?)
 
 ちょっとレナにも相談してみよう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...