184 / 287
183話「新ダンジョン探索・第二階層(その4)」
しおりを挟む
時間は掛かりながらも、第二階層の探索は順調に進んでいった。
道中の遭遇にハイクラスが混ざるようになって、少し難度が上がった感がある。まぁ、ウチのメンバーでなら問題ない程度だけど……
そろそろ夜営場所を決めようか? という風にリズと話ししていた時に『ソイツら』は現われた。
「上!」
ドロシーがカズミを抱き、その場から飛び退く。
第二班の頭上からゴブリンが跳びかかってきたのだ。完全に不意を突かれた。
突然始まった近接戦闘に、リズが慌ててショートソードを抜き放つ。
最後尾にいた俺とアスカの動きが数テンポ遅れた。レナとリズが頭上からの不意討ちをなんとか躱すものの、五体のゴブリンに囲まれる。
「レナ!」
近接戦闘に不慣れな二人。俺は『闇斬丸』の鯉口を切って駆け出した──が。
「うふ♡ 初実戦だね」
<i630629|38618>
レナは短剣を抜き放ち、その端正な顔に笑みを浮かべている。
(そうか! マルティナ直伝の『短剣術』!)
「無茶はするんじゃないよ」
そう声を掛けるリズも笑顔が漏れている。
そんな二人に、ゴブリンが一斉に遅い掛かる。
リズは一体のゴブリンをショートソードで斬り伏せ、そこから包囲を脱する。
レナは自らゴブリンの間合いに飛び込んで、その棍棒を短剣で受け止めた。
次の瞬間、もう片方の手で新たに抜き放った短剣をゴブリンの胸に突き立てた。
(速い!)
リズもレナも身のこなしが軽い。先に包囲から抜け出したリズは、レナに襲いかかろうとしていたゴブリンを背後から斬り捨て、目の前のゴブリンを倒したレナは振り返りざまに、もう一体のゴブリンを屠る。
残った一体は……
「グワッ!」
咆哮とともに飛び掛かったスーちゃんが、手に持ったザックを振りかぶって叩き伏せていた。
(あ……鉱石いっぱい入ったやつだ。アレはダメージ半端ないわ)
◆
「れな、マルティナに鍛えられたからね」
「アタイも、S級ダンジョンから帰ってきてから結構稽古したんだよ」
<i630630|38618>
ふふん! と揃ってドヤ顔。あまりに急で動けなかった自分が情けない……
「ドロシー、庇ってくれてありがとね」
「カズミさんだけは近接に巻き込まれてはいけないですから」
流石はドロシー。ナイス判断。
「あたしが通った時は何も無かったのに」
「はい。ボクも探知出来ませんでした」
マルティナとノリスが天井を見上げた。
「『湧いてきた』んだよ。ダンジョンらしい奇襲ね」
短剣と魔石を拾い上げるレナ。
「こういう事もある訳だ。気を抜けないなヒロヤ」
「……はい」
アスカの言うとおりだ。気を引き締めていこう。
◆
次の部屋のハイゴブリン達を斃した後、その部屋で夜営することにした。
準備を終え、夕食をとる。そしてお茶を飲みながら今日の事を話し合う。
「あ、あ、あの……わ、湧いてでる……も、モンスター、か、か、かなり危険です……ね」
カリナ姉さんも不安なんだろう。それはカズミやロッタも同じだ。
「レナさんみたいにとは言わないまでも、最低限『短剣術』などの護身を身につけないと……」
ギーゼの言うとおりだ。幸い、クランにはマルティナという『短剣術』に秀でたメンバーがいる。
「ボクも短剣得意ですよ」
「じゃあ帰ったらみっちりやるか?」
手を挙げたノリスの肩を叩きながら、カズミ、カリナ姉さん、ロッタを見てニヒヒと笑うリズ。
「私……ダメだったんだよね……」
カズミが俯く。夏休みに挫折したからな……
「カズミは不器用だから仕方無いよ。防御壁とか魔術で使えないの?」
「……『炎の壁』だったら……」
「……いや、乱戦では使えないよね? 危ないよね?」
久々にカズミにツッコんだ。
どうしても近接戦闘が身につかない場合は、風系なり光系なりの魔術防御を使えるようにするしかないのかな。
「エルダ達が常に傍につく──ってわけにもいかないか」
「メルダもそうしたいんだけどね……」
「アルダも無理かな……」
前回のS級ダンジョンでは、三人に付きっきりでカズミとレナを守ってもらったけど……
「いえ、わたしたち頑張ります! ね? カズミさん、カリナさん!」
「は、は、はい!」
「うん……頑張る……」
ロッタとカリナ姉さんにつられて、カズミもなんとか頑張るみたいだ。
◆
「なんとか第三階層まで行けるといいッスね」
「……明日の昼には転移魔導具でダンジョン入り口に戻るらしいからな」
俺と一緒に見張りを務めるゴージュとアスカ。おかしな組み合わせだって? いや、それには訳があって……
◇
「今夜はアタイとドロシーとマルティナがヒロヤと見張りするんだ!」
「いや、アルダ達がヒロくんと見張りするの!」
「私とレナでしょ? 幼馴染トリオだもん!」
「カズミ姉ちゃん達、昨日も組んでたよね! ズルいよ!」
◇
とまぁ、こんな調子で始まっちゃったのだ。
それをギーゼらルーキー組に呆れた顔で見られたもんだから……
「師匠はオレと見張りするッスよ」
とゴージュが強引に決めてくれたのだ。
「ときにゴージュよ。アタシ達の家はいつできるんだい?」
「建築には取り掛かってくれてるッスよ。多分一、二週間ぐらいじゃ無いッスか」
「じゃあそれまではヒロヤ達の屋敷に世話になるんだよね」
「……部屋はいっぱい空いてるから問題ないけどね」
思わず苦笑する。
「あ、家ができてそっちに住むようになっても『風呂』は入りに行くッスからね」
「あと、アタシがハンナさんの料理を覚えるまでは飯も世話になる」
「……その辺はカズミと相談して……」
あの家も実質『クランハウス』だから別に良いんだけどね。多分飯代は請求されると思うよ。お給金から天引きかな?
「二人はさ……」
「「?」」
「結婚式とかするの?」
俺は気になってた事を訊いた。フラグっぽいから今まで聞かなかったんだけど、どうしても気になっちゃって。
「籍は入れるッスけど、派手に式を挙げるつもりは無いッスよ」
「アタシも派手なのは……な」
「んじゃ、クランのみんなでお祝いしよっか?」
「いいんッスか?」
「アタシもみんなになら祝福してもらいたい」
「決まりだね」
今度、みんなで相談しとこう。
「師匠は……誰と結婚するんッスか?」
「ぶっ!」
思わずお茶を噴き出してしまった。
「何を言ってるゴージュ。全員とにきまってるじゃないか。──陰で泣く女をつくるつもりか?」
アスカ、何故そんな真面目な顔で?
「そうなんッスか師匠」
「そのつもりだよ。──ただ『家』的にはまずカズミと結婚する事になるかな? 一応貴族同士の結婚になるからね」
「確かに。正妻ポジションだからなカズミは」
そんな話をしながら、見張りの時間は過ぎていった。
道中の遭遇にハイクラスが混ざるようになって、少し難度が上がった感がある。まぁ、ウチのメンバーでなら問題ない程度だけど……
そろそろ夜営場所を決めようか? という風にリズと話ししていた時に『ソイツら』は現われた。
「上!」
ドロシーがカズミを抱き、その場から飛び退く。
第二班の頭上からゴブリンが跳びかかってきたのだ。完全に不意を突かれた。
突然始まった近接戦闘に、リズが慌ててショートソードを抜き放つ。
最後尾にいた俺とアスカの動きが数テンポ遅れた。レナとリズが頭上からの不意討ちをなんとか躱すものの、五体のゴブリンに囲まれる。
「レナ!」
近接戦闘に不慣れな二人。俺は『闇斬丸』の鯉口を切って駆け出した──が。
「うふ♡ 初実戦だね」
<i630629|38618>
レナは短剣を抜き放ち、その端正な顔に笑みを浮かべている。
(そうか! マルティナ直伝の『短剣術』!)
「無茶はするんじゃないよ」
そう声を掛けるリズも笑顔が漏れている。
そんな二人に、ゴブリンが一斉に遅い掛かる。
リズは一体のゴブリンをショートソードで斬り伏せ、そこから包囲を脱する。
レナは自らゴブリンの間合いに飛び込んで、その棍棒を短剣で受け止めた。
次の瞬間、もう片方の手で新たに抜き放った短剣をゴブリンの胸に突き立てた。
(速い!)
リズもレナも身のこなしが軽い。先に包囲から抜け出したリズは、レナに襲いかかろうとしていたゴブリンを背後から斬り捨て、目の前のゴブリンを倒したレナは振り返りざまに、もう一体のゴブリンを屠る。
残った一体は……
「グワッ!」
咆哮とともに飛び掛かったスーちゃんが、手に持ったザックを振りかぶって叩き伏せていた。
(あ……鉱石いっぱい入ったやつだ。アレはダメージ半端ないわ)
◆
「れな、マルティナに鍛えられたからね」
「アタイも、S級ダンジョンから帰ってきてから結構稽古したんだよ」
<i630630|38618>
ふふん! と揃ってドヤ顔。あまりに急で動けなかった自分が情けない……
「ドロシー、庇ってくれてありがとね」
「カズミさんだけは近接に巻き込まれてはいけないですから」
流石はドロシー。ナイス判断。
「あたしが通った時は何も無かったのに」
「はい。ボクも探知出来ませんでした」
マルティナとノリスが天井を見上げた。
「『湧いてきた』んだよ。ダンジョンらしい奇襲ね」
短剣と魔石を拾い上げるレナ。
「こういう事もある訳だ。気を抜けないなヒロヤ」
「……はい」
アスカの言うとおりだ。気を引き締めていこう。
◆
次の部屋のハイゴブリン達を斃した後、その部屋で夜営することにした。
準備を終え、夕食をとる。そしてお茶を飲みながら今日の事を話し合う。
「あ、あ、あの……わ、湧いてでる……も、モンスター、か、か、かなり危険です……ね」
カリナ姉さんも不安なんだろう。それはカズミやロッタも同じだ。
「レナさんみたいにとは言わないまでも、最低限『短剣術』などの護身を身につけないと……」
ギーゼの言うとおりだ。幸い、クランにはマルティナという『短剣術』に秀でたメンバーがいる。
「ボクも短剣得意ですよ」
「じゃあ帰ったらみっちりやるか?」
手を挙げたノリスの肩を叩きながら、カズミ、カリナ姉さん、ロッタを見てニヒヒと笑うリズ。
「私……ダメだったんだよね……」
カズミが俯く。夏休みに挫折したからな……
「カズミは不器用だから仕方無いよ。防御壁とか魔術で使えないの?」
「……『炎の壁』だったら……」
「……いや、乱戦では使えないよね? 危ないよね?」
久々にカズミにツッコんだ。
どうしても近接戦闘が身につかない場合は、風系なり光系なりの魔術防御を使えるようにするしかないのかな。
「エルダ達が常に傍につく──ってわけにもいかないか」
「メルダもそうしたいんだけどね……」
「アルダも無理かな……」
前回のS級ダンジョンでは、三人に付きっきりでカズミとレナを守ってもらったけど……
「いえ、わたしたち頑張ります! ね? カズミさん、カリナさん!」
「は、は、はい!」
「うん……頑張る……」
ロッタとカリナ姉さんにつられて、カズミもなんとか頑張るみたいだ。
◆
「なんとか第三階層まで行けるといいッスね」
「……明日の昼には転移魔導具でダンジョン入り口に戻るらしいからな」
俺と一緒に見張りを務めるゴージュとアスカ。おかしな組み合わせだって? いや、それには訳があって……
◇
「今夜はアタイとドロシーとマルティナがヒロヤと見張りするんだ!」
「いや、アルダ達がヒロくんと見張りするの!」
「私とレナでしょ? 幼馴染トリオだもん!」
「カズミ姉ちゃん達、昨日も組んでたよね! ズルいよ!」
◇
とまぁ、こんな調子で始まっちゃったのだ。
それをギーゼらルーキー組に呆れた顔で見られたもんだから……
「師匠はオレと見張りするッスよ」
とゴージュが強引に決めてくれたのだ。
「ときにゴージュよ。アタシ達の家はいつできるんだい?」
「建築には取り掛かってくれてるッスよ。多分一、二週間ぐらいじゃ無いッスか」
「じゃあそれまではヒロヤ達の屋敷に世話になるんだよね」
「……部屋はいっぱい空いてるから問題ないけどね」
思わず苦笑する。
「あ、家ができてそっちに住むようになっても『風呂』は入りに行くッスからね」
「あと、アタシがハンナさんの料理を覚えるまでは飯も世話になる」
「……その辺はカズミと相談して……」
あの家も実質『クランハウス』だから別に良いんだけどね。多分飯代は請求されると思うよ。お給金から天引きかな?
「二人はさ……」
「「?」」
「結婚式とかするの?」
俺は気になってた事を訊いた。フラグっぽいから今まで聞かなかったんだけど、どうしても気になっちゃって。
「籍は入れるッスけど、派手に式を挙げるつもりは無いッスよ」
「アタシも派手なのは……な」
「んじゃ、クランのみんなでお祝いしよっか?」
「いいんッスか?」
「アタシもみんなになら祝福してもらいたい」
「決まりだね」
今度、みんなで相談しとこう。
「師匠は……誰と結婚するんッスか?」
「ぶっ!」
思わずお茶を噴き出してしまった。
「何を言ってるゴージュ。全員とにきまってるじゃないか。──陰で泣く女をつくるつもりか?」
アスカ、何故そんな真面目な顔で?
「そうなんッスか師匠」
「そのつもりだよ。──ただ『家』的にはまずカズミと結婚する事になるかな? 一応貴族同士の結婚になるからね」
「確かに。正妻ポジションだからなカズミは」
そんな話をしながら、見張りの時間は過ぎていった。
0
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる