【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

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179話「新ダンジョン探索(その6)」(視点・ヒロヤ→ギーゼ)

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 カズミとレナに起こされて、なんとか起き上がった。途中の見張り交代があったとはいえ、よく眠れた気がする。
 
 革鎧を身に着け、朝食を用意するみんなのもとへと急いだ。
 
 ◆ 
 
「みんな、ちょっと集まってコレを見てくれないかな」
 
 リズがみんなの前に一枚の紙を拡げた。
 
「マップ? マルティナが書いたの?」
「うん!」
 
 カズミの問い掛けに、胸を張るマルティナ。
 
 <i629565|38618>
 
「取り敢えず、今まで踏破したのを書き込んだんだけどね」
「まだ何箇所か分岐の先行けてない所もあるね」
「そうなんだけど、まずは下の階層へのルートを探す事を優先してるから──」
 
 俺の感想に、マルティナがそう言ってマップの右下の方を指差す。
 
「多分、ここらへんがその『下の階層』へ続くルートだと思うんだ」
「ふむ。この第一階層自体は、思ったほどの大きさでは無いようだな。──いや、他のダンジョンに比べれば大きいんだが」
「そうなんだよアスカ。ウェルニア大迷宮と比べてどうなんだい?」
 
 リズがアスカに問う。
 
「四分の一……といったところか。ただ──」
 
 考え込むアスカに頷きかけるリズ。
 
「うん。ラツィア山脈へと続いてるという仮定からすると『かなりの階層数を有してる』可能性が高いんだよ」
「やはりか。ウェルニア大迷宮は16階層以降は未踏破ではあるが……ここは少なくとも20階層を超える規模はありそうだな」
 
 この規模の階層が少なくとも20。そう考えると、なんか身体が熱くなるな。
 
「か、か、階層を降りればお、降りるほど……も、モンスターも強くなるんですよ……ね?」
「もちろんよ。だから早く強くならなきゃだよ?」
 
 おどおどと話すカリナ姉さんの肩を、レナが励ますように叩く。
 
「次はわたし達だけで、それも何度も何度もこの階層にアタックしなきゃね!」
 
 ロッタが拳を握り締め、そんな彼女を見て力強く頷くノリス。
 
 <i629567|38618>
 <i629569|38618>
 
「帰ったら、浅階層組と深階層組に分ける相談もしなきゃ」
「エルダは深階層がいいな。ラツィア山脈の地下なんて、どんな鉱石があるか楽しみだよ」
「ヒヒイロカネとかあると嬉しいな。メルダは『闇斬丸』みたいなカタナを打ってみたいんだ!」
 
 アルダ達三姉妹が盛り上がる。
 
「みんな前向きだね」
 
 俺は小声でリズに囁きかけた。
 
「あぁ。ほんと頼もしいヤツらだよ」
 
 リズがみんなを見渡してニカッと笑った。
 
 ◆ 
 
 夜営したホールを後にして、俺達は先を急いだ。明日中には第三階層まで辿り着いて今回の探索を終えたいところだ。
 
 第一階層の未踏破地域は、それまでの巨大蟻ジャイアントアントに代わってコボルト(犬頭の人型モンスター)が現れるようになったものの、数は三体~五体といったところでそう障害にもならずに進んでいった。
 
 道中のホールではゴブリンやオーク等の人型モンスターが五体ほど。すべてギーゼらルーキー組が掃討した。
 戦利品は鉱石が中心だった。運搬者ポーターのスーちゃんの負担が増えるかとも思われたが、
 
「食料が減ってる分、全く問題ないです!」
 
 と、全てザックに入れて運んでくれた。ほんと、このダンジョン踏破は運搬者ポーターの役割が重要だ。
 
 ◆ 
 
「多分、この先のホールに第二階層へと降りるルートがあるはずだよ」
 
 先行するマルティナが戻ってリズに報告する。
 
「『探知ディテクション』を使ってもいいけど……ノリス、偵察を頼めるか?」
 
 リズがマルティナとともに先行するノリスに声をかけると、彼は頷いて十数m先のホールへと静かに歩いて行った。
 
 ◆ 
 
「ゴブリンが五体。一体は大型だったから恐らくハイゴブリンです」
 
 戻ったノリスがリズに報告した。
 
「ハイゴブリンか。簡単な魔術使う場合もあるからなぁ」
 
 リズが腕を組んで目を瞑る。恐らくルーキー組に任せるかどうか悩んでるんだろう。
 
「行きます。任せてください」
 
 ギーゼが力強く言い切り、隣のカリナ義姉さんも頷いている。
 
 <i629571|38618>
 
「わ、わたしが……あ、『魔術阻害アンチマジック』を使えますっ!」
「攻撃魔術で、最初にゴブリン一体は確実に仕留めます」
 
 カリナ姉さんとロッタはやる気まんまんだ。
 
「カリナが魔術さえ抑えてくれれば、ハイゴブリンは自分が倒します」
 
 ギーゼの言葉に、リズは頷いた。
 
「よし、任せるよ。でも無理はだめだよ。いつでもアタイ達が援護するから」
 
 ギーゼ、カリナ姉さん、ロッタ、ノリスが力強く頷いてホールへと向かっていった。
 
「ヤバそうになったら、オレとアスカが行くッスよ。師匠の手は煩わせねぇッス」
 
 心配そうな表情になってたのだろう。そんな俺に声を掛けるゴージュ。
 
「とはいえ、あのギーゼの剣術も結構さまになってきてるッス。師匠の教えが良いって事ッスね」
 
 ゴージュは軽く手を上げて、アスカとともにホール入り口へと向った。
 
 ■□■□■□■□ 
 
「ロッタ、炎の『魔力付与エンチャント』は使えたよね?」
 
 今回はハイゴブリンを相手にするので、攻撃力重視でロッタに炎の『魔力付与エンチャント』を掛けてもらった。
 
「僕はカリナさんに風の『魔力付与エンチャント』を掛けてもらうよ」
 
 ノリスは攻撃速度重視。うん、それがいい。
 
「ご、ご、ゴブリンは……わ、わたし達に任せて……ギーゼは、は、ハイゴブリンに集中して……」
「わたしは攻撃魔術を使います。カリナさんはハイゴブリンの動きに注視して、魔術を使いそうになったら『魔術阻害アンチマジック』使ってください」
「僕はいつもどおり背後を取って確実に仕留めるよ」
「わかった。──じゃあ行くよ!」
 
 わたしの合図で、みんなホールに飛び込んだ。
 
 <i633741|38618>
 
氷の矢アイスアロー!」
 
 ロッタの放った氷の矢が、手近なゴブリンに直撃して吹き飛ばした。
 わたしは大柄な大人の男ぐらいのハイゴブリンに突進する。
 振り向いたハイゴブリンが、片手を上げる。
 
魔術阻害アンチマジック!」
 
 その上げた手が輝いたと思った瞬間、カリナの魔術の効果か、すぐにその輝きは失われた。
 
「よし!」
 
 魔術を行使しようとしたハイゴブリンに隙が生じる。その懐に飛び込んで曲刀を抜き放つ。
 付与された炎が弧を描き、ハイゴブリンの胴を一閃する。
 
 ──ゴウッ!
 
 すれ違いざま、肉の焼ける匂いが鼻を突く。
 
 ──ギャァァァッ!
 
 後方でノリスが一体のゴブリンの首を刎ねた。
 
 ──ドウッ!
 
 胴を両断されたハイゴブリンが地に臥した。即座に納刀し、次の獲物へと向かう。
 
氷の矢アイスアロー!」
 
 ロッタが再び魔術を発動し、わたしの背後のゴブリン一体を仕留める。
 
 もう一体がわたしに向かって棍棒を振り上げてきたが、低く沈みこんだ姿勢から逆袈裟に斬り上げて両断した。


 
「瞬殺ッスか……あんたらランク上がったんじゃ無いッスか?」
「炎の『魔力付与エンチャント』か。正解だな。ハイゴブリンに手間取れば苦戦は必至だからな」
 
 恐らく、援護の為に入口付近で待機していたのであろう。ゴージュさんとアスカさんがホールに入ってきて、黒い霧と化して消滅したモンスターの魔石を拾い集めだした。
 
(以前の自分なら、ハイゴブリンを一撃で仕留める事など……できなかった)
 
 思わず己の手を見つめる。
 わたしも幼少期から剣術を習った身だ。騎士団に入ってからも鍛錬は怠らなかったつもりだ。しかし……
 
(『尾武夢想流』……実戦を踏まえた剣術とはこうも強力なものなのだな)
 
 『剣速』と『精確さ』。もっと……もっと磨きをかけよう。
 
 顔を上げると、ヒロヤ殿が笑顔で自分を見ている。
 勝手に身体が彼に向かって駆け出し、気がつくと自分は少年の身体を抱き締めていた。
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