【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

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137話「家(その2)」

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 カズミを先頭に、ぞろぞろと二階へ上がる。
 上がった先は、一階エントランスより少し広めのリビングになっており、ソファーにテーブルや鏡台、暖炉等が備え付けてある。部屋というよりオープンスペースだ。

「寝る前の団欒はここで。って感じかな」

 カズミの説明によると、各階にみんなでくつろげるスペースを設けたらしい。
 そのオープンスペースの正面に両開きの扉と、屋敷の左へと伸びる廊下がある。

「まずは廊下。こっちがみんなの個室になるんだよ」

 カズミが先を歩いていくので、またみんなでついていく。
 廊下は屋敷の左端まで伸びており、そこからまた左右へと続いているようだ。廊下沿いには左右に扉が三つずつある。

「ここがみんなの個室。左手前からヒロヤ、私、レナ。右側の手前からリズ、ドロシー、マルティナの部屋だよ」
「アタイとドロシー、マルティナの部屋はバルコニーに出れるんだぞ。イイだろ?」

 リズが胸を張る。

「え!俺とカズミとレナの部屋は?」
「ごめん。窓だけなんだ……でも、それには理由があってね……」

 カズミが申し訳なさそうに説明する。
 俺の部屋をバルコニー側にすると、そこから夜這うヤツが居るだろうからという理由らしい。抜け駆けは許さないってやつだ。

「そういう理由なんだよ。ね?リズ?」
「……アタイがそんなに信用できねぇのかよ……」
「「「「できません!」」」」

 カズミ、レナ、マルティナ、ドロシーが声を合わせる。

「う……っ」

 真っ赤な顔をして肩を落とすリズ。まぁ仕方ないよね。

「ちゃんと順番を決めますからっ!」

 カズミがビシッとリズを指差す。

「第一夫人様にゃあ逆らえません……」

 シュンとしたリズが返事する。……その辺はカズミに仕切ってもらうしかないな。

「ま……まぁ……その時のヒロヤの気分ってものあるだろうから……どうしてもって時は例外もあるけど……ね?」
「俺のわがままでみんなに恋人になってもらったんだから、そこは当然責任もつよ。……ちゃんと満足してもらえる様に頑張るから」

 俺の決意表明に、みんな赤い顔をしてモジモジしだす。

「れなは……もう覚悟したから……いつでも……ね?」

 レナは小さな声で呟きながら、俺を見上げた。

「う、うん。でもムードは大切だから……ね?」

 幼馴染とはいえ『女神様』を抱くんだ。さすがの俺でも覚悟が必要だ。

「待ってるよ……」

 真っ赤な顔で俯く超絶美少女。どちくしょう!可愛いなぁ!

「うんと優しくしてあげるんだよ?」

 そっとカズミが耳元で囁いた。

 廊下を突き当たり、左に少し歩くと屋敷の左手前円筒形部分。そこはトイレと洗面所になっていた。

「洗面所はわかるけど、二階にもトイレ設置できたの?」
「レナが『水流ウォーター』と『清浄クリーン』を発生させる魔導具を作ってくれたんだよ。それで各箇所の排水やお風呂とトイレを集約して下水処理溝まで流せるようにしたんだ」

 下水処理溝は各家庭の地下に設けられている設備で、そこに飼われた『無害化された』スライムに分解してもらうという構造だ。

「……この辺は元の世界の下水処理より進んでるよね。スライムの分解能力を使うなんて考えたもんだよな」

 各家庭で汚水を処理できるなんて凄いよ。
 廊下を戻り、左奥の円筒形部分は一階部分と同じ温室になっていた。

「屋敷の中にこんなに緑があるなんて……とても嬉しいです」

 ドロシーはかなり喜んでいた。

「ここからもバルコニーに出られるんだよ」

 カズミが部屋の右手にある扉を開けると、そこは大きなバルコニー。

「ここからもあたしの部屋に行けるんだ!」

 マルティナがバルコニーの一番手前のガラス張りのドアを指差す。

「その向こう側がわたしの部屋。その向こうはリズさんの部屋ですね」

 ドロシーがバルコニーを歩いていく。途中、ひときわ大きなガラス扉がある。

「そ、そこはあとでね」

 カズミがそう言って、バルコニーを歩いていく。

「ここはハンナさんの部屋。円筒部分は他の部屋より広いから、赤ちゃんが出来ても全然大丈夫!」

 覗き込むと、確かに広い。

「流石に中に入るのも悪いから、こっちから戻ろうか」

 カズミがさっきの大きなガラス扉に向かった。

「ジャーン! どうだヒロヤ!」

 急にテンションを上げるカズミ。

「お!おお!」

 そこは寝室。しかも俺達個人の部屋より圧倒的に広い。そして、部屋の大半を占める大きなベッド!

「余裕で全員寝られるよ!」

 レナがボフンッ!とベッドにダイブする。

「だよな! たまにはみんなで寝たいもんな!」
「……でも、リズ姉ちゃんは寝てる間にあたしたち追いやって、ヒロヤ兄ちゃん独占するもん……」
「アンタらの寝相悪いのもあるからな?」

 なんかリズって、美人五姉妹(仮)の長女担当じゃなかったか?最近責められキャラになってるような。

「まぁまぁ。で、ここを出ると……」

 正面の両開きの扉を開けると、さっきのオープンスペースへと出た。

「まぁ、二階はこんな感じだよ。その階段の向こうの通路を進むと、屋敷の向かって右手前の円筒形部分がホールになってて、左に曲がった先がハンナさんの部屋に繋がってるわけ」
「なるほど。凄くいい感じの家になってるね。引っ越しとか家具の注文とかも大変だったでしょ? ありがとね」
「ま、まぁスノーウルフちゃん達も手伝ってくれたし」
「ステラさん達、ヒロヤのお家のメイドさんたちも手伝ってくれたしね」

 レナとカズミが照れたように微笑む。

「俺達の部屋は二階に全部あるって事は、三階は何になってるの?」

「あぁ、間取りは二階と同じかな。バルコニーが無くて、大寝室の代わりにリビングになってるぐらいかな?お客様のお泊り用って用途にするつもり……なんだけど……」

 カズミが少し言い淀む。

「?」
「……この先、また増える可能性が無いとも言えないし……ね?」
「何が?」
「同居人というか、ほら……『ヒロヤのもの』がさ」
「あ……」

 アルダの事、ちゃんと説明しとかないとな……



 取り敢えず家の内覧も終わったので、俺は風呂に入った。カズミとレナ、スノーウルフ達とハンナさんは既に入ったらしく、さっきまで裏庭で汗を流してたリズ、マルティナ、ドロシーと四人で。

「そういえばリズさん……」
「どした? ドロシー」

 俺の身体を洗ってくれているドロシーが、リズに厳しい口調で話しかけた。

「ヒロヤさん、魔人化したオットーと戦った時……浩哉さんの力を解放したんですよね?」
「あぁ、凄かったぜ! 魔人化したオットーですら、赤子の手をひねるも同然に叩きのめしたからな!」

 湯船のリズが、お湯をバシャッ!と叩く。

「……その後……ヒロヤさんは欲情したはずですよね? あの力を使って戦った副作用みたいなものですから」
「あら……よく……ご存知……で……」

 顔の半分までお湯に浸かるリズ。

「リズ姉ちゃんズルい!」

 マルティナが頭を洗いながらリズを睨みつける。

「ほ、ほら! あの場にアスカもいたからさ! ヒロヤがアスカに襲い掛かると……色々とマズいだろ?」

 リズはお湯から飛び出して、湯船の縁に手をかけて身を乗り出す。

(お、おっぱいぷるーんぷるーん!)

 いや、そうじゃなくて……

「まぁ、そういう緊急時の交わりは仕方ないんですけど……黙ってるのはズルいですよ……って!アスカさんに見られたのですか?」

 俺のお腹辺りを洗ってくれていたドロシーが、驚いた表情で俺を見上げる。

「オットー相手だと、あの邪眼で身体強化フィジカルブーストを無効化されちゃうから……悔しいけど力を解放しないと戦えないんだよ……」
「そうですか……アスカさんに知られてしまったんですか」
「まぁ、アスカの事だからペラペラ喋られる事はないと思うんだけど」

 再び湯船に身体を沈めるリズ。

「ちゃんと説明はしとかなきゃだめだとは思ってる。アルダにも見られちゃってるしね」
「そうだ! アルダちゃんの事もカズミ姉ちゃんに話さなきゃだよね」

 髪をすすぎながらマルティナが言う。

「その辺りも引っ括めて、ちゃんとカズミとレナに説明しとかなきゃだよな……まぁ新築祝いパーティー終わってからだな」

 リズはまた顔を湯船に沈めた。
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