【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

思考機械

文字の大きさ
上 下
78 / 287

77話「危惧」

しおりを挟む
(温かくて優しい……)

 そんな気持ちに包まれてふわふわしてる状態から、徐々に意識が覚醒していく。

「あ、ヒロヤ起きた?」

 カズミが俺の顔を覗き込んでいる。

「カズミ……」

 どうやら膝枕されているみたい。俺はカズミの腰にしがみつく。

「カズミーー♡」
「ヒロヤ……カズミと二人だと、そんな風に甘えんのな……」
「あ……れな砂糖吐きそう……」
「ヒロヤさん……そんな一面が……」
「ヒロヤ兄ちゃん子供みたい」

 みんな言いたい放題だ。いやマルティナ……俺、子供だよ?
 カズミは顔面真っ赤。

「アレスのヤツがドジかましたらしくてさぁ……」

 ホブゴブリンから救い出した女性達がどうなったのか聞くと、村に引き揚げる最中のグイド達がたまたま現れて、女性達を責任持って村に連れて帰ると言ってくれたそうだ。
 そのグイド達の撤収理由を聞いたところ、前述のリズのボヤキにも似た言葉である。

「それなんだけどね……」

 俺の頭を膝の上に乗せたまま、カズミが心配そうに話す。

「アレスのドジって、また大怪我でもしたの?」
「いや、怪我は大した事無いんだけど……そっちじゃなくて」

 そう言ってリズを見るカズミ。

「あぁ。メンバーのマーティーとロアナはオットーについて行ったんだと」
「!」

 慌ててカズミの膝から起き上がる俺。

「途中からオットーのパーティーと一緒になったらしいんだけど、アレスの怪我でグイド達が撤収決めた時に、オットーが『わたし達はこのままダンジョンを目指したい。ついては盗賊シーフと魔術師が居ると心強いので、このまま同行してくれないか?』と頼んだんだってよ」

 リズも難しい表情をしている。それってヤバくないか?

盗賊シーフのマーティーは理解できるけど、オットーのパーティーにはソラっていう魔術師居たよね?」
「そうなのよ。ロアナ大丈夫かな……」

 カズミが立ち上がってお尻を払う。
 隣ではレナとマルティナがドロシーに『オットー』との因縁を説明しているようだ。

「それは──マズいように思います。話を聞けば、そのオットーという人物は、女性をモノにする為には手段を選ばない男のように思われます」
「うん。ロアナもそうだけど、その手段によっては同行してるマーティーも危険かも」

 ドロシーの危惧はまさに俺が抱いたものと同じだ。

「俺、どれくらい寝てた?」
「うーん、一時間ぐらいかな?……大変だったんだから」
「そうだよ。筋組織の破壊が激しいトレーニングの比じゃないぐらいで、れなが『回復ヒーリング』掛けてあげたんだから」

 カズミとレナに責められる。ごめんなさい。

「そもそもレッサーデーモンぐらいなら……れな達も居るんだから一人で戦おうとせずに、もっと頼って欲しいよ」

 腰に手を当ててプンスカ怒ってるレナ。超絶美少女のこういう姿は堪らなく可愛い。……俺、怒られてるんだけどね。

「絶対だめとは言わないけど……もう少し『その力』の使いどころは選んだ方が良いと思うよ。だからもっと感情をコントロールしようね」

 怒られからの優しくアドバイスありがとうレナ。

「とにかく俺はオットーに追いつきたい。ロアナとマーティーが心配だ」
「同感だね。アタイも先を急ぎたい」

 リズがみんなを見る。

「私達も異論は無いよ」

 カズミ、レナ、マルティナ、ドロシーも頷く。

「よし。そろそろ夕刻だけど、日が暮れるまで進もう。今の小鬼の森での夜営は危険だけど、もともとそのつもりで今回は来たからな」

 リズは立ち上がってリュックを背負う。俺達も出発の準備を整える。

「あたしが先頭行くよ。ヒロヤ兄ちゃん、並んで歩いてね」

 俺とマルティナ、カズミとレナ、リズとドロシーの順番で、俺達は森の中心を目指して歩き出した。



 俺が眠っている間にみんな休めたせいか、陽が落ちるまで、結構な強行軍で行程を進めることができた。まぁ、寝てた俺が一番体力あったんだけどね。
 夜営に関してはちょっとしたアイデアをみんなで考えていたので、それを実行する。
 巨木を探し、そこを今夜の野営地と決める。

成長グロウス
 ドロシーの魔術で、巨木の枝が伸び始めて、蔓の様に隣り合った木々と絡んでいく。

「お、いい感じにできたじゃん」

 巨木の高さ10m程の場所に、天然の広い足場が完成している。

「「浮遊フライ」」

 カズミとレナが、魔術で俺達全員をその『天然の足場』へと連れて行ってくれた。

「思ったよりしっかりしてるね」

 レナが強度を調べる様にジャンプする。さすがに少し揺れるようだ。

「ちょっと……あんまり揺らさないでくれるかな……」

 リズが足場の端、巨木の幹にしがみついてふるえてる。

「リズ、高いところ苦手なんだ」
「わ、悪いかよ!なんか……地に足が着いてないと、お……落ち着かねぇんだよ」

 いつもは凛々しいリズが、なんか可愛い。

「さすがに天幕は張れないよね」

 広さは六人横になってもまだ余裕がある。天幕なら四つは張れるスペースだ。

「この足場、半分程度囲いましょう」

 そう言って再び『成長グロウス』を唱えるドロシー。
 足場になってる枝からまた蔓が伸び始め、足場の約半分をドーム状に覆い尽くした。

「こりゃいいわ!焚き火は出来ないけど、火炎石カイロ持ち寄って中で暖が取れるな!」

 幹にしがみついていたリズも、目の前の『天然のドームテント』に興奮して中に入る。なんか『まさにエルフ』な魔術だ。

「これでモンスターの襲撃を受ける事も少なくなるな」
「晩御飯つくるね!」

 マルティナがゼット商会特製の火炎石調理プレートを取り出して、みんなで調理を始めた。木の上なので火が使えないが、これはほんと便利だ。



「でさ、ヒロヤ……」
「?」

 カズミ達に料理を任せて、俺とリズは武器の手入れをしていた。

「オットーに『次は殺す』って言ってたじゃん?……殺るの?」
「ロアナやマーティーに何かあったら……ね」
「今度はアスカとソラも居る。アイツらもかなりの使い手だよ」

 リズの言葉に、俺は考えを巡らす。魂を全解放すればなんとか……

「二人はアタイ達がなんとか牽制するよ。だから……なるべく『身体強化フィジカルブースト』だけでヒロヤとして戦って欲しい」

 心配そうに俺を見るリズ。ぶっ倒れた時、そんなに酷い状態だったんだろうな。

「戦って欲しい。じゃないよ。ヒロヤとして戦え」

 振り向くと、カズミが腰に手を当てて睨みつけていた。

「はい……」
「私達が居るんだから」
「はい」
「さっきもれな言ったけど、ちゃんと頼ってよ?」
「あたしも頼って欲しい」
「わたしもヒロヤさんの力になりたいです」
「はい……」

 ぶっ倒れて行動不能になって迷惑掛けられないしな……

「どうせ『後で動けなくなって、みんなに迷惑掛けられない』とか思ってるんでしょ?そういう事じゃないの!」

 ビシッと俺を指差すカズミ。完全に考えを読まれてます。さすが俺の正妻。

「うん。わかってる。……みんなありがとね」
「これだけの『良い女』がみんなあなたに頼られたいって思ってるの。自覚しなさいよね?」

 そう言って、カズミが笑顔で締めてくれた。



「先に三時間ほど寝かせてくれるかな?そしたら後は朝まで俺が夜警するから」

 食後に俺が夜警の提案をする。

「もう!言ったそばから!私達を頼れって言ったでしょ?」
「いや、違うんだよ。俺だけレッサーデーモンと戦った後、ゆっくり寝させてもらったからさ。みんなにもゆっくり寝て欲しいんだよ」
「そういや一人だけ気持ち良さそうに寝てたよな……」

 リズがニヤニヤしながら俺を見る。

「カズミ、ここはヒロヤくんに甘えましょ?明日も強行軍でオットー達に追いつかなきゃなんだから」

 レナも笑いながら言った。

「……うん。わかった。……何かあったらすぐ起こすんだよ?」
「ありがとう。じゃあ三時間経ったら起こしてね」

 みんなにそう言って、早めの床に着くことにした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...