【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

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77話「危惧」

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(温かくて優しい……)

 そんな気持ちに包まれてふわふわしてる状態から、徐々に意識が覚醒していく。

「あ、ヒロヤ起きた?」

 カズミが俺の顔を覗き込んでいる。

「カズミ……」

 どうやら膝枕されているみたい。俺はカズミの腰にしがみつく。

「カズミーー♡」
「ヒロヤ……カズミと二人だと、そんな風に甘えんのな……」
「あ……れな砂糖吐きそう……」
「ヒロヤさん……そんな一面が……」
「ヒロヤ兄ちゃん子供みたい」

 みんな言いたい放題だ。いやマルティナ……俺、子供だよ?
 カズミは顔面真っ赤。

「アレスのヤツがドジかましたらしくてさぁ……」

 ホブゴブリンから救い出した女性達がどうなったのか聞くと、村に引き揚げる最中のグイド達がたまたま現れて、女性達を責任持って村に連れて帰ると言ってくれたそうだ。
 そのグイド達の撤収理由を聞いたところ、前述のリズのボヤキにも似た言葉である。

「それなんだけどね……」

 俺の頭を膝の上に乗せたまま、カズミが心配そうに話す。

「アレスのドジって、また大怪我でもしたの?」
「いや、怪我は大した事無いんだけど……そっちじゃなくて」

 そう言ってリズを見るカズミ。

「あぁ。メンバーのマーティーとロアナはオットーについて行ったんだと」
「!」

 慌ててカズミの膝から起き上がる俺。

「途中からオットーのパーティーと一緒になったらしいんだけど、アレスの怪我でグイド達が撤収決めた時に、オットーが『わたし達はこのままダンジョンを目指したい。ついては盗賊シーフと魔術師が居ると心強いので、このまま同行してくれないか?』と頼んだんだってよ」

 リズも難しい表情をしている。それってヤバくないか?

盗賊シーフのマーティーは理解できるけど、オットーのパーティーにはソラっていう魔術師居たよね?」
「そうなのよ。ロアナ大丈夫かな……」

 カズミが立ち上がってお尻を払う。
 隣ではレナとマルティナがドロシーに『オットー』との因縁を説明しているようだ。

「それは──マズいように思います。話を聞けば、そのオットーという人物は、女性をモノにする為には手段を選ばない男のように思われます」
「うん。ロアナもそうだけど、その手段によっては同行してるマーティーも危険かも」

 ドロシーの危惧はまさに俺が抱いたものと同じだ。

「俺、どれくらい寝てた?」
「うーん、一時間ぐらいかな?……大変だったんだから」
「そうだよ。筋組織の破壊が激しいトレーニングの比じゃないぐらいで、れなが『回復ヒーリング』掛けてあげたんだから」

 カズミとレナに責められる。ごめんなさい。

「そもそもレッサーデーモンぐらいなら……れな達も居るんだから一人で戦おうとせずに、もっと頼って欲しいよ」

 腰に手を当ててプンスカ怒ってるレナ。超絶美少女のこういう姿は堪らなく可愛い。……俺、怒られてるんだけどね。

「絶対だめとは言わないけど……もう少し『その力』の使いどころは選んだ方が良いと思うよ。だからもっと感情をコントロールしようね」

 怒られからの優しくアドバイスありがとうレナ。

「とにかく俺はオットーに追いつきたい。ロアナとマーティーが心配だ」
「同感だね。アタイも先を急ぎたい」

 リズがみんなを見る。

「私達も異論は無いよ」

 カズミ、レナ、マルティナ、ドロシーも頷く。

「よし。そろそろ夕刻だけど、日が暮れるまで進もう。今の小鬼の森での夜営は危険だけど、もともとそのつもりで今回は来たからな」

 リズは立ち上がってリュックを背負う。俺達も出発の準備を整える。

「あたしが先頭行くよ。ヒロヤ兄ちゃん、並んで歩いてね」

 俺とマルティナ、カズミとレナ、リズとドロシーの順番で、俺達は森の中心を目指して歩き出した。



 俺が眠っている間にみんな休めたせいか、陽が落ちるまで、結構な強行軍で行程を進めることができた。まぁ、寝てた俺が一番体力あったんだけどね。
 夜営に関してはちょっとしたアイデアをみんなで考えていたので、それを実行する。
 巨木を探し、そこを今夜の野営地と決める。

成長グロウス
 ドロシーの魔術で、巨木の枝が伸び始めて、蔓の様に隣り合った木々と絡んでいく。

「お、いい感じにできたじゃん」

 巨木の高さ10m程の場所に、天然の広い足場が完成している。

「「浮遊フライ」」

 カズミとレナが、魔術で俺達全員をその『天然の足場』へと連れて行ってくれた。

「思ったよりしっかりしてるね」

 レナが強度を調べる様にジャンプする。さすがに少し揺れるようだ。

「ちょっと……あんまり揺らさないでくれるかな……」

 リズが足場の端、巨木の幹にしがみついてふるえてる。

「リズ、高いところ苦手なんだ」
「わ、悪いかよ!なんか……地に足が着いてないと、お……落ち着かねぇんだよ」

 いつもは凛々しいリズが、なんか可愛い。

「さすがに天幕は張れないよね」

 広さは六人横になってもまだ余裕がある。天幕なら四つは張れるスペースだ。

「この足場、半分程度囲いましょう」

 そう言って再び『成長グロウス』を唱えるドロシー。
 足場になってる枝からまた蔓が伸び始め、足場の約半分をドーム状に覆い尽くした。

「こりゃいいわ!焚き火は出来ないけど、火炎石カイロ持ち寄って中で暖が取れるな!」

 幹にしがみついていたリズも、目の前の『天然のドームテント』に興奮して中に入る。なんか『まさにエルフ』な魔術だ。

「これでモンスターの襲撃を受ける事も少なくなるな」
「晩御飯つくるね!」

 マルティナがゼット商会特製の火炎石調理プレートを取り出して、みんなで調理を始めた。木の上なので火が使えないが、これはほんと便利だ。



「でさ、ヒロヤ……」
「?」

 カズミ達に料理を任せて、俺とリズは武器の手入れをしていた。

「オットーに『次は殺す』って言ってたじゃん?……殺るの?」
「ロアナやマーティーに何かあったら……ね」
「今度はアスカとソラも居る。アイツらもかなりの使い手だよ」

 リズの言葉に、俺は考えを巡らす。魂を全解放すればなんとか……

「二人はアタイ達がなんとか牽制するよ。だから……なるべく『身体強化フィジカルブースト』だけでヒロヤとして戦って欲しい」

 心配そうに俺を見るリズ。ぶっ倒れた時、そんなに酷い状態だったんだろうな。

「戦って欲しい。じゃないよ。ヒロヤとして戦え」

 振り向くと、カズミが腰に手を当てて睨みつけていた。

「はい……」
「私達が居るんだから」
「はい」
「さっきもれな言ったけど、ちゃんと頼ってよ?」
「あたしも頼って欲しい」
「わたしもヒロヤさんの力になりたいです」
「はい……」

 ぶっ倒れて行動不能になって迷惑掛けられないしな……

「どうせ『後で動けなくなって、みんなに迷惑掛けられない』とか思ってるんでしょ?そういう事じゃないの!」

 ビシッと俺を指差すカズミ。完全に考えを読まれてます。さすが俺の正妻。

「うん。わかってる。……みんなありがとね」
「これだけの『良い女』がみんなあなたに頼られたいって思ってるの。自覚しなさいよね?」

 そう言って、カズミが笑顔で締めてくれた。



「先に三時間ほど寝かせてくれるかな?そしたら後は朝まで俺が夜警するから」

 食後に俺が夜警の提案をする。

「もう!言ったそばから!私達を頼れって言ったでしょ?」
「いや、違うんだよ。俺だけレッサーデーモンと戦った後、ゆっくり寝させてもらったからさ。みんなにもゆっくり寝て欲しいんだよ」
「そういや一人だけ気持ち良さそうに寝てたよな……」

 リズがニヤニヤしながら俺を見る。

「カズミ、ここはヒロヤくんに甘えましょ?明日も強行軍でオットー達に追いつかなきゃなんだから」

 レナも笑いながら言った。

「……うん。わかった。……何かあったらすぐ起こすんだよ?」
「ありがとう。じゃあ三時間経ったら起こしてね」

 みんなにそう言って、早めの床に着くことにした。
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