【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

思考機械

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57話「装備」

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「……そういや、お前ら名前付けてなかったな」

 今朝はなんか早起きだった。まだみんな起きてなかったので、支度してそっと部屋を抜け出し、こうやって馬達に朝ごはんを与えている。

「ここに置いていくわけにもいかないし、一緒にラツィア村行くか?」

 旅の後半で俺が乗らせてもらった青鹿毛の馬に話しかける。

「あ、ヒロヤくんおはよう。お馬さんたちにご飯あげてくれたんだ」

 レナが起きてきた。

「レナおはよう。いつもレナ任せだったから。珍しく早起きしたから、たまには俺がね」

 と振り返ると、すぐ傍にレナがいた。

「……ヒロヤくん、昨日逃げちゃったけど、レナの下着姿どうだった?」

 俺の腰にしがみついて小悪魔的な微笑みを浮かべるレナ。女神なのに悪魔……

「か、可愛かったよ……っていうか、い、色っぽかった」

 正直な感想を述べる俺。そうさ、俺はスケベだからな。

「よし。んじゃまた今度別なの見せてあげるね」

 そう言って、レナは宿の建物へと走っていった。

「……また煩悩と戦わなきゃいけないのか……」

 俺は青鹿毛の首を撫でながら深いため息をついた。いや、嫌じゃないんだけどね。寧ろ『アザっす』なんだけどね。



 部屋に戻り、宿が用意してくれた朝食を済ませてからみんなで宿を出る。目指すはトルドの店。

「流石に午前中には無理だろうけど、その間に武器とか見繕っとこうよ」

 リズが店の重い扉を開けた。

「おう。待っとったぞ」

 そこにはパイプを咥えたトルドと、テーブルでお茶してる三姉妹。

「え……まさかもう出来てる?」

 驚くリズの後ろから店を覗き込んでみると……飾られた五つの革鎧が。

「見た目はただの革鎧だが、すべてのパーツに『例の合金』を中に仕込んどるから丈夫さは太鼓判じゃ。ウチは弟子達が優秀だからな。仕事も早い」

 ニヤリと笑うトルド。

「革鎧の下はこれを着るといい」

 そう言って人数分のアンダーウェアまで用意してくれていた。

「ワイヤースパイダーの糸を編んで仕立てたから、衝撃にも強いし刃を通しづらいんです」

 アルダに上下セットを手渡された。俺のは黒。

「みんな着替えてこい。嬢ちゃんふたりはエルダとメルダが着せてやれや」

 俺はトルドに手伝ってもらって、革鎧を装備する。
 胸部分以外は要所に絞った最小限のパーツで纏めてくれていた。

「ワシの革鎧は動き易いのが自慢なんじゃが、それでもお前さんの剣術の動きを阻害せんようにな。ただし、盾を持たんお前の為に手甲部分だけは大きく作っておいた」

 確かに動き易い。関節の動きも邪魔されない。そして軽い。革ブーツの上から取り付けるすね当てもとても軽い。

「これなら今まで通りの動きができそうだよ。トルドさんありがとう」

 そして、革鎧を纏ったメンバーが店内に揃う。
 リズとマルティナも動き重視の造りで、胸、腰、腕、脚のパーツ構成。腰パーツは短いスカートの上から取り付けられていた。アンダーウェアはそれぞれ赤と薄桃色。

「いや、ズボンタイプで良かったんだけどな」

 リズが少し恥ずかしそうにしているが、三姉妹曰く

「「「可愛さも重視です!」」」

 との事。アンダーウェアを着ているので、別にパンツが見えちゃうとかはない。
 カズミとレナも似たようなパーツ構成だったが、膝と肘のパーツが追加されている。アンダーウェアは薄緑と空色。
 何が優秀って、これらのパーツは『普段着の上からでも取り付けられる』点。実際、カズミとレナはそれぞれ革ベストだけ脱いで、いつものワンピースの上から装着している。
 ファッション性も重視しているのは三姉妹のこだわりか。

「あ、ヒロヤの胸当てにも桜が彫ってる」

 そう言われてカズミの胸元を見てみると桜の花びらが彫られていた。自分の胸元を鏡で見てみると……うん。同じ模様が。

「れなとマルティナは『白い花エターナルフラワー』なんだよ。カズミに貰ったペンダントとおんなじ!」
「アタイは『薔薇』だったか……」
「マルティナさんのアイデアなんだ。アルダ、こういう細かい加工得意だから」

 アルダが胸を張る。

「アルダのオルゴールに綺麗な意匠が彫られてたから、あたし達の鎧にもエンブレム彫ってもらえるようにお願いしたんだ」

 マルティナが微笑む。昨日、アルダと内緒話してたのはそれか。

「うん、自分の鎧って感じがしてとても良いよ」

 俺は自分の胸の桜を指で撫でた。

「それと、このクロスボウと同じものを三つ、いや、四つ欲しいんだ」

 カズミのクロスボウをトルドに見せるリズ。

「それならその辺に積み上げてあるから持ってけ」

 トルドが指差す棚に、無造作に同じサイズのものが乱雑に置かれてあった。

「マルティナは器用だから二丁使いな。あとはレナとヒロヤで持つんだよ」

 それぞれに小型クロスボウを手渡すリズ。

「いや、俺は要らないよ。この刀があるから」

 なるべく刀で戦って経験を積みたいんだ。

「だめだ。これも持っておくんだ」

 いつになく厳しい目で俺を見るリズ。

「これから冬になると、村周辺には北から下りてくる『スノーウルフ』の群れが出現するんだ」

 小型クロスボウ用の矢の弾倉?を有るだけ棚から持ち出すリズ。

「こいつらは通常の『グレイウルフ』より大型でね。もちろん群れで行動する。遭遇した時はまず遠距離のうちに数を減らさなきゃ、いくらヒロヤといえども近接で群れを相手にするわけにはいかない。まぁ、これはゴブリン共にも言えることなんだけど……」

 テーブルに弾倉を並べ、振り向いて俺に諭すように言った。

「『なるべく多数を相手に戦うな』だよヒロヤ。格下とはいえ、削れる時に削っておくんだよ。相手の数をね」

 もう一度俺に小型クロスボウを差し出すリズ。

「リスクを最小限にする為にも、使えるようになっときな」

 リズの言うとおりだ。俺はクロスボウを受け取った。テーブルではパイプをくゆらせながらウンウンとトルドが頷いていた。

「取り敢えず、金はエルベハルトに請求しとくから、好きなの持っていけや」

 トルドの言葉に、俺達は遠慮なく武器を物色しだした。

「あたしマン・ゴーシュ欲しかったんだ」
「私はナイフだけでいいかな」
「レナは短剣良いのが欲しい」
「アタイもショートソードぐらい持っとかなきゃね」
「俺もナイフと……そうだ!」

 コウイチへの土産の事を思い出した。
 トルドにコウイチの背格好を説明して、彼でも使えそうな両手剣を用意してもらう。

「丁度いいのがある。例の合金からこしらえたロングソード持ってけ。軽いぞ」

 カウンター裏をゴソゴソして、一本のロングソードを出してくれた。
 鞘から抜いてみると、確かに軽い。重量が無く打撃力が落ちる分、しっかりと鋭い刃になっていた。

「手入れを怠らんように言っておけ。切れ味が落ちちまうとただのロングソード以下だからな」
「伝えておきます」

 そうやって、昼までトルドの店で装備を揃えることに時間を費やした。
 リズはいつもの複合弓(コンポジットボウ)と矢筒を背に、新たにショートソードを一本左腰に差した。あとは後ろ腰にナイフ。
 マルティナは左腰にショートソード、右腰にマン・ゴーシュと両腰にベルトにぶら下げる形で小型クロスボウ二丁、両腿に短剣を二本ずつ。後ろ腰にナイフ。
 レナは両腰に短剣二本。背中にスリングベルトを通した小型クロスボウ。後ろ腰にナイフ。
 カズミは後ろ腰にナイフ、背中に小型クロスボウ。
 俺は左腰に『闇斬丸(大脇差)』、背中に小型クロスボウ、後ろ腰にナイフ。
 
(よし。これで村に帰れる)

 明日の朝には王都を出発。二部隊と一緒に帰るから、恐らく馬車十数台の大所帯になりそうだ。



「リズ、俺達は馬で帰るの?」

 昼食の為、中央広場に向かう道すがらリズに聞いてみた。

「ああ、そのつもりさ。せっかくゼット商会から頂いた馬たちを、ここに置いていくわけにもいかんしな」
「れな、もう友達だから絶対一緒に帰る!」
「そうよね。私はまたヒロヤの後ろに乗るし」
「……いや、練習もしようなカズミ」

 俺達は昼食をとるカフェを物色しながら、王都滞在最後の日をどう過ごすか色々話をして歩いた。


 
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