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43話「ロックゴーレム」▲(視点・リズ→ヒロヤ)
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「……ん?」
急激に意識が覚め、目を開けた。まだ暗闇に包まれた室内。窓から僅かに月光が差し込んでいる。そして、両腕と胸に暖かな感触。
「──!」
もう少しで声を上げるところだった。
アタイの腕の中で眠る少年。
頭を起こして見渡すと、カズミ、レナ、マルティナが並べられた2つのベッドの端に追いやられている。
(あーアタイが蹴飛ばしちまったか……寝相悪いからね……)
どうやら他の娘達を追いやってヒロヤを独占する格好になってたみたいだ。
「すー……」
アタイの胸に顔を埋めて、気持ち良さそうに眠るヒロヤ。
「……ほんと可愛いね……」
こんな可愛い少年が、アタイのメスの部分に初めて触れたオス。それは物理的にもそうなんだけど、精神的にも……
(ヒロヤにももちろんなんだけど、アレスにも悪い事しちまったな)
アタイはそれまで、腐れ縁と思って苦楽を共にしていたアレスの事が実は好きだったんだ、という事に最近気付いた。
早く帰って、アレスに抱かれたい。初めてを捧げたいって気持ちがある。
(けどさ……)
アタイの中の『メスとしての本能』が、初めて性的接触をしたこの少年を求めてる事にも気付いてしまった。
(難儀なもんさね)
静かに眠るヒロヤの顔に自然と近づいていって……その唇にキスをする。
(ダメだって思ってるんだけど……堪んないね……)
唇が軽く接触するだけなのに、アタイの中のメスが歓喜する。『あの夜』は自分から激しいキスを求めてしまった。
(これは……アタイ自身が早くアレスのものにされないと大変な事になっちゃうね)
心はアレスを求めても、アタイのメスがヒロヤを求める。そんな心と身体が歪な状態は良くない。
(あぁ……アレス……早く……)
指を熱くなったクレバスに這わせる。既にぐっちょりと湿ったそこは、早くオスを迎え入れようとヒクヒク痙攣している。
我慢できず、肌着をめくって乳房を露わにする。
「あ……」
胸に抱いたヒロヤの顔に、硬くなった胸の頂点を擦り付ける。
(ダメだってば……)
なんとか自分の中のメスに抵抗する。
(これ以上すると……ヒロヤを起こしちゃうよ)
なんとか力を抑え、触れるか触れないかぐらいでヒロヤのおでこに乳首を擦り付ける。
(もし起きちゃったら……)
ダメだ。そうなったら無理矢理にでもヒロヤを求めてしまうだろう。ヒロヤが起きたら……ヒロヤが起きたら……
(ヒロヤに初めてを──)
『初めてを散らしてくれ』と懇願する。間違いなく。だから……
(起きないで……ヒロヤ……)
そう願いながら、乳首と秘芽への愛撫で……
「くっ……んっ……ふうぅぅぅんっ!」
声をなんとか押し殺し……アタイは達してしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
昨夜は久しぶりにお風呂にも入れたからか、清々しい目覚めを迎えた気持ちの良い朝。
手早く支度をして、馬に荷物を結わえ付ける。
今回のボルグからアビルまでの行程で、木桶がひとつでは足りない事に気がついたので、宿の主人に聞いてみると、折り畳めるという便利な革製の桶を五つ用意してもらった。
リズに代金を払って貰って、それも馬に結わえ付けた。
その作業を傍で微笑みながら見てるリズ。
「なに?」
「いや、寝顔があんなに可愛い坊やが、こうやって真剣に作業してるとキリッとした男前になるのって面白いよな」
ニヒヒと笑うリズ。
「……朝起きたら、俺の顔ずっと見てんだもん。起こしてくれりゃいいのに。人が悪いっていうか……」
「カズミばっかりじゃなくて、たまにはアタイが堪能してもいいじゃん。なんか起きたら特等席に居ちゃったんだから」
そう言いながら、笑顔で作業を手伝ってくれた。
◆
朝早く出発できた俺達は、街道を馬でひた走る。
後方には馬車五台からなる商隊が続いている。二組の商隊が共に行動しているようだ。おそらくこの距離を保ったままで王都まで向かう事になるだろう。
「ヒロヤ!私ね、気が付いたんだ!」
俺の背中に身体を預けるカズミが話しかけてきた。
「何に?」
「あのね……」
そう言って、俺のお尻に下半身を密着させるカズミ。
「ちょ!」
「違うの!別にそういう意味で密着したんじゃないの!」
俺のお尻の動きに合わせて、密着したカズミの腰も同じ様に動く。
「こうやって、ヒロヤの動きでリズム覚えようと思ってね」
「なるほど。で、どう?」
「うん。腰浮かせっぱなしだと膝が辛いし、浮かせないとお尻痛いけど、こうやって同じ動きすれば膝も楽だしお尻も痛くない」
「そりゃ良かった。じゃあスピード上げてみるか」
俺は軽く拍車を掛ける。
「リズ!カズミが慣れてきたから、もう少しスピード上げよう!」
先頭のリズに並びかけて声を掛けた。
「オッケー!じゃあ速度上げるよ!」
リズが馬に拍車を掛けて、先を駈けていく。
「ふーん。えっちじゃん」
レナが隣に並んでボソリと呟いた。
「違うから!」
そう言う俺にニヤリと返して、レナもリズを追うように加速していった。
「……今度はあたしがヒロヤ兄ちゃんに乗せてもらうから……」
ふん!と拗ねるように言ったマルティナも横を駆け抜けていく。
「……あいつら……」
俺は困った様にカズミを振り返ると……
「ゴメン……確かに変な気分になってきちゃった……」
全身を俺の背中に密着させたカズミが甘い声を漏らす。下半身を必要以上に密着させてきてんじゃん。
「早く……こんなふうにヒロヤに突き上げられたい……」
耳元で囁くカズミ。その手は俺の腰から外套の中へと伸ばされて、俺の股間と左胸を弄る。
「あ、危ないから!」
暴走気味のカズミを落ち着かせるため、首をひねってカズミの唇に軽くキスする。
「あ……」
「今度チャンスがあったらね」
そう言ってカズミを宥めて、俺はみんなを追う為にスピードを上げた。
◆
途中、馬の休憩と食事を兼ねて休憩。俺の後ろに乗りたがるマルティナを
「まだカズミは単独で騎乗できないから」
となんとか宥めて出発。
馬の疲労をみながらペースを上げ下げしつつ日暮れを迎えた。
「この山を越えれば、もう王都は目と鼻の先だよ。思ったよりいいペースで来れたね」
広い街道から、少し狭くなった山道を少し登った辺りで野営することに。
「しばらくはこんな感じの山道が続くんだよ。もう少し森に入った辺りに天幕張るよ」
リズを先頭に森に入り、拓けたところで手早く野営の支度をする。
二度目なので天幕も素早く張る。野営の準備を整えたところで、完全に日が暮れた。
森の木々の間から少し上の方を見ると、焚き火の灯りが見える。
「ここいらは坑道もあってな。多分上の方のやつらは鉱夫かなんかだよ」
「なんか王都が近づいてきたって感じがするね」
焚き火に木をくべるリズに、カズミがワクワクしたように答えた。
「お馬さんにご飯あげてきたよ」
レナが帰ってきて、焚き火を全員で囲む。
「いいペースで来ちゃったから、商隊の連中はついてこれなかったみたいだな」
干し肉の塊を軽く火にかけてから小さく切り刻み、フライパンで炒める。
香草で和えて、塩コショウを振って今夜の晩御飯の出来上がり。
「こっちも出来たよ!」
少し離れたところでマルティナが何かしてたが、サーシャさんに頂いた加熱プレートでスープを作ってたようだ。
野菜と干し肉が煮込まれた鍋を笑顔で運んでくるマルティナ。
みんなのククサ風のコップに取り分け、パンを配って準備完了。
「じゃあ……いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
◆
食事も済んで、しばらく焚き火を囲んで談笑していると、なにやら上の方が騒がしくなってきた。地響きと共に打撃音もする。
「!」
俺は大脇差を手に取って腰に差す。
「……モンスターっぽいね。上で誰かが戦ってる」
リズも複合弓と矢筒を手にして立ち上がる。
「俺行くよ!」
俺は真っ先に駆け出した。
◆
駆けつけてみると、小柄な女の子三人が大きなハンマーを手に岩の塊を睨みつけていた。
(いや……ただの岩じゃない)
巨大な人型のそれは、右腕を大きく振り下ろす。
「ズンッ!」
地響きと共に土煙が舞い上がる。狙われた女の子は辛うじて避けたようだ。
他の二人がその腕にハンマーの一撃を叩き込む。
二方向からの直撃を受け、粉々に吹き飛ぶ腕。
「ロックゴーレムかい!アタイらの得物じゃ相性悪いね……」
複合弓を構えたリズが忌々しげに呟く。
「大丈夫!狙って!貫通!」
そう叫んだレナがリズを指差すと、既につがえられたリズの矢が輝き出す。
「ありがとね!」
リズの複合弓から輝く矢が放たれ、岩の怪物の喉を貫いた。
が、ゴーレムの動きは止まることなく、次は左腕を振りかぶって小柄な女の子達を狙う。
「チッ!外したか!ヒロヤ!ロックゴーレムは魔術核が首の後側にあるんだ!それを破壊すれば動きが止まる!」
リズは矢筒から矢を取り出して弓につがえる。
(あの高さじゃ届かないか……)
跳躍で届いたとしても、正確に狙うのも難しい。
(脚──だな)
ゴーレムは振り上げた左腕を真下に振り下ろさず、横殴りに軌道を変えてハンマーの女の子達を狙う。
その軌道についていけなかった女の子がひとり、その場に硬直する。
「危ない!」
俺の位置からは間に合わない。そう思った時、視界外から硬直する女の子の元に飛び込むマルティナの姿が。
「!」
小柄な女の子を抱きかかえ、なんとかゴーレムの一撃を躱すマルティナ。
「脚を!」
俺は残った女の子二人に声を掛け、ゴーレムの脚に向かって駆け出した。
「身体強化!」
(岩を……斬れるか……?)
昔、石灯籠を斬った刀があった、と聞いたことがある。この業物なら斬れるかもしれない。
(あとは俺の技量か)
ふと、弱気になりそうな考えを振り払う。
「いけ!ヒロヤ!」
「貫通!」
リズが叫び、レナの魔術をのせた矢を放つ。
俺の目の前を一条の光が横切り、ゴーレムの脚を捉える。
(そこだ!)
矢によって穿たれた箇所を、狙いすまして抜刀とともに斬りつける。
確かな手応えを感じ、納刀する。
もう片方の脚も、女の子二人のハンマーが炸裂して吹き飛ぶ。
両脚を失ったゴーレムはゆっくりと前のめりに
──ズシンッ!
と倒れ込んだ。
レナの後方から飛び出してきたカズミが、倒れたゴーレムの背中に飛び乗り、首筋に両手をかざす。
「爆裂!」
カズミが両手をかざした箇所が内部から破裂するように吹き飛んだ。
その吹き飛ぶ瓦礫の中に、輝く石状のものが弾け飛ぶのが見えた。
「やったね!」
カズミがゴーレムの背中で小さくガッツポーズをとる。可愛い。
「マルティナ!大丈夫?」
俺は倒れ込んだマルティナに駆け寄った。
「あたしは大丈夫。あなた怪我はない?」
マルティナに声をかけられた女の子はキョトンとしている。どうやら怪我も無いようだ。
急激に意識が覚め、目を開けた。まだ暗闇に包まれた室内。窓から僅かに月光が差し込んでいる。そして、両腕と胸に暖かな感触。
「──!」
もう少しで声を上げるところだった。
アタイの腕の中で眠る少年。
頭を起こして見渡すと、カズミ、レナ、マルティナが並べられた2つのベッドの端に追いやられている。
(あーアタイが蹴飛ばしちまったか……寝相悪いからね……)
どうやら他の娘達を追いやってヒロヤを独占する格好になってたみたいだ。
「すー……」
アタイの胸に顔を埋めて、気持ち良さそうに眠るヒロヤ。
「……ほんと可愛いね……」
こんな可愛い少年が、アタイのメスの部分に初めて触れたオス。それは物理的にもそうなんだけど、精神的にも……
(ヒロヤにももちろんなんだけど、アレスにも悪い事しちまったな)
アタイはそれまで、腐れ縁と思って苦楽を共にしていたアレスの事が実は好きだったんだ、という事に最近気付いた。
早く帰って、アレスに抱かれたい。初めてを捧げたいって気持ちがある。
(けどさ……)
アタイの中の『メスとしての本能』が、初めて性的接触をしたこの少年を求めてる事にも気付いてしまった。
(難儀なもんさね)
静かに眠るヒロヤの顔に自然と近づいていって……その唇にキスをする。
(ダメだって思ってるんだけど……堪んないね……)
唇が軽く接触するだけなのに、アタイの中のメスが歓喜する。『あの夜』は自分から激しいキスを求めてしまった。
(これは……アタイ自身が早くアレスのものにされないと大変な事になっちゃうね)
心はアレスを求めても、アタイのメスがヒロヤを求める。そんな心と身体が歪な状態は良くない。
(あぁ……アレス……早く……)
指を熱くなったクレバスに這わせる。既にぐっちょりと湿ったそこは、早くオスを迎え入れようとヒクヒク痙攣している。
我慢できず、肌着をめくって乳房を露わにする。
「あ……」
胸に抱いたヒロヤの顔に、硬くなった胸の頂点を擦り付ける。
(ダメだってば……)
なんとか自分の中のメスに抵抗する。
(これ以上すると……ヒロヤを起こしちゃうよ)
なんとか力を抑え、触れるか触れないかぐらいでヒロヤのおでこに乳首を擦り付ける。
(もし起きちゃったら……)
ダメだ。そうなったら無理矢理にでもヒロヤを求めてしまうだろう。ヒロヤが起きたら……ヒロヤが起きたら……
(ヒロヤに初めてを──)
『初めてを散らしてくれ』と懇願する。間違いなく。だから……
(起きないで……ヒロヤ……)
そう願いながら、乳首と秘芽への愛撫で……
「くっ……んっ……ふうぅぅぅんっ!」
声をなんとか押し殺し……アタイは達してしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
昨夜は久しぶりにお風呂にも入れたからか、清々しい目覚めを迎えた気持ちの良い朝。
手早く支度をして、馬に荷物を結わえ付ける。
今回のボルグからアビルまでの行程で、木桶がひとつでは足りない事に気がついたので、宿の主人に聞いてみると、折り畳めるという便利な革製の桶を五つ用意してもらった。
リズに代金を払って貰って、それも馬に結わえ付けた。
その作業を傍で微笑みながら見てるリズ。
「なに?」
「いや、寝顔があんなに可愛い坊やが、こうやって真剣に作業してるとキリッとした男前になるのって面白いよな」
ニヒヒと笑うリズ。
「……朝起きたら、俺の顔ずっと見てんだもん。起こしてくれりゃいいのに。人が悪いっていうか……」
「カズミばっかりじゃなくて、たまにはアタイが堪能してもいいじゃん。なんか起きたら特等席に居ちゃったんだから」
そう言いながら、笑顔で作業を手伝ってくれた。
◆
朝早く出発できた俺達は、街道を馬でひた走る。
後方には馬車五台からなる商隊が続いている。二組の商隊が共に行動しているようだ。おそらくこの距離を保ったままで王都まで向かう事になるだろう。
「ヒロヤ!私ね、気が付いたんだ!」
俺の背中に身体を預けるカズミが話しかけてきた。
「何に?」
「あのね……」
そう言って、俺のお尻に下半身を密着させるカズミ。
「ちょ!」
「違うの!別にそういう意味で密着したんじゃないの!」
俺のお尻の動きに合わせて、密着したカズミの腰も同じ様に動く。
「こうやって、ヒロヤの動きでリズム覚えようと思ってね」
「なるほど。で、どう?」
「うん。腰浮かせっぱなしだと膝が辛いし、浮かせないとお尻痛いけど、こうやって同じ動きすれば膝も楽だしお尻も痛くない」
「そりゃ良かった。じゃあスピード上げてみるか」
俺は軽く拍車を掛ける。
「リズ!カズミが慣れてきたから、もう少しスピード上げよう!」
先頭のリズに並びかけて声を掛けた。
「オッケー!じゃあ速度上げるよ!」
リズが馬に拍車を掛けて、先を駈けていく。
「ふーん。えっちじゃん」
レナが隣に並んでボソリと呟いた。
「違うから!」
そう言う俺にニヤリと返して、レナもリズを追うように加速していった。
「……今度はあたしがヒロヤ兄ちゃんに乗せてもらうから……」
ふん!と拗ねるように言ったマルティナも横を駆け抜けていく。
「……あいつら……」
俺は困った様にカズミを振り返ると……
「ゴメン……確かに変な気分になってきちゃった……」
全身を俺の背中に密着させたカズミが甘い声を漏らす。下半身を必要以上に密着させてきてんじゃん。
「早く……こんなふうにヒロヤに突き上げられたい……」
耳元で囁くカズミ。その手は俺の腰から外套の中へと伸ばされて、俺の股間と左胸を弄る。
「あ、危ないから!」
暴走気味のカズミを落ち着かせるため、首をひねってカズミの唇に軽くキスする。
「あ……」
「今度チャンスがあったらね」
そう言ってカズミを宥めて、俺はみんなを追う為にスピードを上げた。
◆
途中、馬の休憩と食事を兼ねて休憩。俺の後ろに乗りたがるマルティナを
「まだカズミは単独で騎乗できないから」
となんとか宥めて出発。
馬の疲労をみながらペースを上げ下げしつつ日暮れを迎えた。
「この山を越えれば、もう王都は目と鼻の先だよ。思ったよりいいペースで来れたね」
広い街道から、少し狭くなった山道を少し登った辺りで野営することに。
「しばらくはこんな感じの山道が続くんだよ。もう少し森に入った辺りに天幕張るよ」
リズを先頭に森に入り、拓けたところで手早く野営の支度をする。
二度目なので天幕も素早く張る。野営の準備を整えたところで、完全に日が暮れた。
森の木々の間から少し上の方を見ると、焚き火の灯りが見える。
「ここいらは坑道もあってな。多分上の方のやつらは鉱夫かなんかだよ」
「なんか王都が近づいてきたって感じがするね」
焚き火に木をくべるリズに、カズミがワクワクしたように答えた。
「お馬さんにご飯あげてきたよ」
レナが帰ってきて、焚き火を全員で囲む。
「いいペースで来ちゃったから、商隊の連中はついてこれなかったみたいだな」
干し肉の塊を軽く火にかけてから小さく切り刻み、フライパンで炒める。
香草で和えて、塩コショウを振って今夜の晩御飯の出来上がり。
「こっちも出来たよ!」
少し離れたところでマルティナが何かしてたが、サーシャさんに頂いた加熱プレートでスープを作ってたようだ。
野菜と干し肉が煮込まれた鍋を笑顔で運んでくるマルティナ。
みんなのククサ風のコップに取り分け、パンを配って準備完了。
「じゃあ……いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
◆
食事も済んで、しばらく焚き火を囲んで談笑していると、なにやら上の方が騒がしくなってきた。地響きと共に打撃音もする。
「!」
俺は大脇差を手に取って腰に差す。
「……モンスターっぽいね。上で誰かが戦ってる」
リズも複合弓と矢筒を手にして立ち上がる。
「俺行くよ!」
俺は真っ先に駆け出した。
◆
駆けつけてみると、小柄な女の子三人が大きなハンマーを手に岩の塊を睨みつけていた。
(いや……ただの岩じゃない)
巨大な人型のそれは、右腕を大きく振り下ろす。
「ズンッ!」
地響きと共に土煙が舞い上がる。狙われた女の子は辛うじて避けたようだ。
他の二人がその腕にハンマーの一撃を叩き込む。
二方向からの直撃を受け、粉々に吹き飛ぶ腕。
「ロックゴーレムかい!アタイらの得物じゃ相性悪いね……」
複合弓を構えたリズが忌々しげに呟く。
「大丈夫!狙って!貫通!」
そう叫んだレナがリズを指差すと、既につがえられたリズの矢が輝き出す。
「ありがとね!」
リズの複合弓から輝く矢が放たれ、岩の怪物の喉を貫いた。
が、ゴーレムの動きは止まることなく、次は左腕を振りかぶって小柄な女の子達を狙う。
「チッ!外したか!ヒロヤ!ロックゴーレムは魔術核が首の後側にあるんだ!それを破壊すれば動きが止まる!」
リズは矢筒から矢を取り出して弓につがえる。
(あの高さじゃ届かないか……)
跳躍で届いたとしても、正確に狙うのも難しい。
(脚──だな)
ゴーレムは振り上げた左腕を真下に振り下ろさず、横殴りに軌道を変えてハンマーの女の子達を狙う。
その軌道についていけなかった女の子がひとり、その場に硬直する。
「危ない!」
俺の位置からは間に合わない。そう思った時、視界外から硬直する女の子の元に飛び込むマルティナの姿が。
「!」
小柄な女の子を抱きかかえ、なんとかゴーレムの一撃を躱すマルティナ。
「脚を!」
俺は残った女の子二人に声を掛け、ゴーレムの脚に向かって駆け出した。
「身体強化!」
(岩を……斬れるか……?)
昔、石灯籠を斬った刀があった、と聞いたことがある。この業物なら斬れるかもしれない。
(あとは俺の技量か)
ふと、弱気になりそうな考えを振り払う。
「いけ!ヒロヤ!」
「貫通!」
リズが叫び、レナの魔術をのせた矢を放つ。
俺の目の前を一条の光が横切り、ゴーレムの脚を捉える。
(そこだ!)
矢によって穿たれた箇所を、狙いすまして抜刀とともに斬りつける。
確かな手応えを感じ、納刀する。
もう片方の脚も、女の子二人のハンマーが炸裂して吹き飛ぶ。
両脚を失ったゴーレムはゆっくりと前のめりに
──ズシンッ!
と倒れ込んだ。
レナの後方から飛び出してきたカズミが、倒れたゴーレムの背中に飛び乗り、首筋に両手をかざす。
「爆裂!」
カズミが両手をかざした箇所が内部から破裂するように吹き飛んだ。
その吹き飛ぶ瓦礫の中に、輝く石状のものが弾け飛ぶのが見えた。
「やったね!」
カズミがゴーレムの背中で小さくガッツポーズをとる。可愛い。
「マルティナ!大丈夫?」
俺は倒れ込んだマルティナに駆け寄った。
「あたしは大丈夫。あなた怪我はない?」
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