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21話「再会と夜の丘」▲

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「マルティナ……?」

 女の人の声がする。
 声がした方を見てみると、人混みを掻き分けるようにして二人の冒険者風の男女が現れた。

「ロアナ!アイザック!」

 マルティナは駆け寄ってロアナにしがみついた。

「ルドルフ先生からの手紙の後に、領主様からの手紙も届いてね。『龍神祭』の時ぐらいゆっくり身体休めに来い。って。直接話もあるみたいなんだけど……俺らみたいな駆け出し冒険者に領主様直々なんの話か分からないが……」

 アイザックが愛おしそうにマルティナの頭をポンポンする。

「そんな可愛い格好してたからすぐに気が付かなかったわ……どう?楽しくやってる?身体も大丈夫なの?」

 ロアナがマルティナの頬を撫でる。

「凄く楽しいよ!お仕事も慣れたし、ヒロヤ兄ちゃんもカズミ姉ちゃんもレナ姉ちゃんもいつも遊んでくれるし!そうだ!傷も無くなったんだよ!温泉のおかげ!」

 そう言って浴衣の胸元を開いてロアナとアイザックに見せるマルティナ。

「ちょ!」

 アイザックが慌てて顔を背ける。

「ほんとだ……あんなに深かったのに……」
「ここの温泉の噂……ほんとだったんだな」

 横目に胸元を見ながらアイザックが感心したように言った。
 しかし、俺が気になるのはアイザックとロアナの方。
 アイザックは頬に大きな傷跡がついてるし、ロアナの左脚はちらりと見える包帯が痛々しい。
 そして二人とも装備はボロボロだ。

「かなり……無茶してない?」

 マルティナも気が付いたのか、心配そうに二人を見てる。

「大丈夫だ。ベテランパーティーに臨時で入れてもらっててな。大変だけどいい経験を積めてるよ」

 アイザックが弱く微笑む。

「れなが案内するよ!あなた達も今日ぐらいはゆっくりするといいわ。後で温泉にも案内してあげる」

 そう言ってマルティナとロアナの手を引くレナ。

「じゃあ行こう!」

 マルティナはアイザックの手を引く。

「たまには二人でゆっくりしたらいいよ!1時間後に『守護者の丘』集合ね!」

 レナが去り際にウインクする。

「うん!また後で!」

 四人は人混みの中に消えていった。



「さて、色々と見て回るか」
「うん!」

 カズミが嬉しそうに俺の手を取る。そういや二人っきりって久々だな。

「あ!かき氷ある!あっちは焼きとうもろこし!」

 屋台を見て回ると、意外と元の世界でのお馴染みがあって妙に懐かしくなる。
 そんな中、人だかりが凄い屋台が。たくさんの女の人に男は一部と言ったところか。

「はいはい。祭りが終わったら店の方に来ておくれ。そのときに注文は受けるよ」

 おばあさんの仕立て屋の出店か。おそらく浴衣の件かな?予想以上に反響があった様だ。
 屋台に近づき、おばあさんに声を掛ける。

「おや。いらっしゃい。楽しんでるかい?」
「はい!美味しそうなものがいっぱいで目移りしてます」

 カズミはおばあさんに返事したところで売り物に目をとめる。

「あ……私の浴衣と同じ色……」
「これかい?浴衣こしらえた時の端切れで作ったんだよ。結んでみるかい?」

 薄緑色の細長い布は、どうやらリボンのようだ。

「いいの?」

 嬉しそうなカズミの背後に回り、器用に髪を束ねてリボンを結ぶおばあさん。

「ほら、どうだい?とても似合ってるよ」

 おばあさんが手鏡をカズミに渡す。

「わぁ!」

 色んな角度から結ばれたリボンを嬉しそうに眺めるカズミ。中身がアラサーとはいえ、やっぱり女の子だなぁ。

「おばあさん、これください」

 俺は胸からぶら下げた巾着袋を開けた。『龍神祭』に備えて、家の手伝いを頑張ったので懐は暖かい。

「え、買ってくれるの?」
「うん。凄く似合ってるし……その……可愛いから」

 そう言った俺の顔は真っ赤になってるんだろうな。まぁそれ以上に赤くなったカズミが見れたからいいや。

「甲斐性のある男はモテるよ。小銀貨4枚ね」

 10銅貨で1小銀貨だから、400円ってところか。

「なんか私だけ悪いかも……」

 そう言って、他のリボンに目をやるカズミ。

「あ、レナとマルティナの色もある。それもください!」

 と帯から巾着袋を取り出すカズミ。

「いいよ。あの二人の分も俺が買うから。庭の草むしり頑張ったからお駄賃たっぷり貰ってるんだ」
「でも……この二つは私が買うって言い出したのに……」
「いいから」
「じゃあ、カズミちゃんはこれをヒロヤちゃんにプレゼントすれば良いのよ」

 おばあさんが俺達のやり取りを見て、白い大きめの布を一枚取り出した。

「男の子にリボンは似合わないからねぇ」

 笑いながら俺の首に巻きつけてくれる。

「あ……スカーフ……ヒロヤ、格好良いよ!」

 俺の手を取ってブンブン振るカズミ。

「よし。決まりだね。ヒロヤちゃんはリボン三つで……銀貨1枚におまけしちゃおうかね。カズミちゃんはスカーフのお代、小銀貨2枚ね」

 小銀貨10枚で銀貨1枚だから千円ぐらいか。

「おばあさん、スカーフまで買わせるなんて商売上手だ」

 俺は小銀貨をしまい、笑いながら銀貨1枚をおばあさんに手渡した。

「リボン三つにスカーフ一枚お買上げありがとね」

 ウインクして空色と薄桃色のリボンを紙袋に入れて手渡すおばあさん。

「はい。小銀貨2枚です」

 カズミもお代を手渡す。

「まいどあり。リボンもスカーフも似合ってるよお二人さん」
「ありがとうおばあさん」

 俺達はおばあさんにお礼を言って屋台を離れた。



「さて、次はどこ行く?なにか食べる?」
「食べるのはレナとマルティナと一緒になってから食べたいな……」

 キョロキョロと屋台を見ながら手を繋いで歩く。

「……ねぇ、早いけど『守護者の丘』に行かない?」
「そうだな。レナとマルティナを待とうか。合流したらみんなに何か食べたい物奢るよ」
「やった!」

 俺とカズミは人混みを抜けて、丘を目指した。



「二人でここに来るの久しぶりだね」
「そうだな……ここに初めて来た時以来か」

 俺達はいつものベンチに座って、祭りで賑わう村を見ていた。

「あの……さ」
「?」
「リボン……ありがとね」

 カズミが上目遣いに俺を見る。

「俺の方こそスカーフありがとな」
「……」
「……」

 なんかカズミが可愛くて、会話が途絶えてしまった。

「……ねぇヒロヤ、憶えてる?ここに来た時に、私言ったよね」
「うん。『何があっても傍に居て』って言ったっけ」
「そう。あと『あの夜に言った事は本気だから』って」

 死んだ夜に言ってた『離婚したら一緒になって』ってやつだよな。

「……レナの気持ちはどうか分からないけど、ヒロヤに好意を寄せてるマルティナには……正直ちょっと嫉妬してるんだ……」

 そう言いながら、マルティナに貰った組紐に目を落とすカズミ。

「いや、だからそれは」
「わかってる。でも、マルティナの気持ち考えたら、仕方ないのかなって感情もあるの」

 手首の組紐を愛おしそうに撫でる。

「でも、俺は……」
「こないだ家まで送ってくれた時に言いかけた事なんだけど……」

 あ、ほっぺにチュウされた時の事か。

「……ちゃんと私の事も見てて。って言いたかったの」

 そう言って潤んだ瞳で俺を見つめるカズミ。
 見つめ合ってるうちに、静かに目を閉じた。

(前にもこんなチャンスあったんだよな)

 と思いながら、まず周囲を確認する。よし、今度は大丈夫そうだ。
 そっと肩を抱いて顔を近づける。そして唇で唇に触れる。

「ん……」

 小さく吐息を漏らすカズミ。
 やがて、カズミの舌が俺の咥内にそっと侵入してくる。

「!」
「……わかってる。わかってるんだよ?私達みたいな子供がしちゃいけない様なキスだって事は」

 一旦、唇を離してそう呟いたカズミ。目には涙が浮かんでいる。

「……でもね……身体は子供でも、心は29歳の女なの」

 そう言って、今度はカズミが俺の唇に口づける。先程より大胆に舌が侵入してきた。俺の舌に軽く触れ……一瞬の躊躇ののち、絡めるように動き出した。
 俺も同じ。身体は6歳でも心は23歳の男だ。こんな情熱的なキスをされると……
 俺は少し体勢を変え、両手をカズミの背中に回して強く抱きしめながらその舌を貪りだした。

「んちゅ……くちゅ……」

 抱きしめ返すカズミの腕に力が入る。
 俺の舌はカズミの咥内に侵入して上顎、舌の裏、頬の内側、あらゆる場所を蹂躙した。
 俺の舌の動きに応えるように激しく舌を絡ませるカズミ。

「ふっ……ふっ……んふっ……」

 カズミの鼻から抜ける吐息が激しくなってきた。
 息が苦しくなる前に、そっと唇を離す。お互いの舌が名残惜しそうに、先端だけでいつまでも絡み合う。
 やがて、唾液が糸を引きながら舌先が離れる。

「……身体がまだまだ未成熟だから……感じられるかどうかわからないけど……」

 そう言って浴衣のまえをはだけて、その僅かに膨らみかけた乳房を露わにするカズミ。

「触って……いいの?」

 俺の言葉にカズミは小さく頷く。
 そっと手を添えるように触れてみる。未成熟だが、やっぱり柔らかい。

「ヒロヤぁ……んくっ!」

 小さな乳首に軽く触れると、カズミが押し殺したような声を上げる。

「……やっぱり……くすぐったい……」
「そっか」
「でもね、このくすぐったさが気持ち良さになる事知ってるから……好き……」

 顔を真っ赤に染めたカズミが俺を見上げて微笑んだ。

「カズミ……またキスしていい?」
「ん……」

 カズミの小さな乳首を親指で触りながら、小さく開いた口を吸い上げるようにキスをした。
 やがてカズミの手が俺の浴衣の裾を割って、そっと差し込まれる。
 すでに充血していた俺のペニスを下着の上からそっと擦る。

「……ふわっ……ほっきくなっへるねおっきくなってるね……」

 キスをしたままカズミがニコリと笑って、その手を下着の中に入れてくる。

「うっ……」

 その感触に、思わず唇を離す俺。

「気持ち良いけど……精通がまだだから出ないよ……」

 俺の言葉に、いたずらっぽく笑うカズミ。

「……私は……前世からこうなりたくて……ようやくひとつになれそうなのに……ままならないね……」

 カズミはそう言って俺の唇を求めて目を瞑る。
 強く抱きしめ、もう一度絡み合うような激しいキスをして……やがて軽く啄むようなキスが続き、そして離れた。

「うん。満足した……って事にしとこう!」

 カズミは立ち上がって浴衣の胸元を直す。
 そして村の方に目を向けて、その表情が固まる。

「……なに……あれ……」

 俺はカズミのその視線を追った。

「──!」

 村外れが赤く燃えている。兵舎のある方向だ。

「何かあったんだ!村に降りよう!」
「うん!」

 俺達は手を取って丘を駆け下りた。

 
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