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15話「温泉と村興し」

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「平和だねぇ……」

 俺達のすぐ前を歩く女弓師がボソリと呟いた。

「いつもこんな仕事なら楽だよな」

 先頭を歩く二人の男戦士のうち、リーダーらしき男が答える。




 今回、温泉を調べる為に俺、カズミ、レナ、マルティナ、ジャン、アリサとルドルフさんに同行してくれた冒険者パーティーの3人。

 ギルマスさんが「温泉周辺は、居ても魔物ではなく獣ぐらいだけど、万が一があっちゃいけない」と同行させてくれたメンバーだ。

 リーダー・アレスは16歳で冒険者ランクD。この村では腕利きの『戦士ファイター』だ。

 アレスの隣を歩くのは『駆け出し戦士』のガルム13歳。冒険者ランクF。

 そして一歩遅れて、僕達のすぐ前がリズ。15歳で冒険者レベルEの『弓師アーチャー』。

「子供たちの温泉巡りの護衛とはいえ、レナちゃんやカズミちゃん、そしてヒロヤくんが一緒に居るんだ。このまま『小鬼の森』にでも行きてぇよな」

「オレはマルティナちゃんに良いところ見せたい」

「……まだ言ってるよこのバカどもは……」

 前を行く戦士二人の会話に呆れるリズ。

 そう。ギルド掃除の時に会った、あの騒がしいパーティーだ。

「……でもまだ信じられないわ。こんな可愛い子達が、三人だけで『ハイゴブリンを含む』ゴブリン10匹討伐したんだよね……」

「ああ、間違いなくオレ達より強いよ」

 リズの呟きにアレスが真顔で応える。

「……たまたまなんですよ……レナとカズミの魔術は凄いですが……」

 確かにあの時は討伐出来た。アリサを助けなきゃ。という気持ちやマルティナの無惨な姿を目の当たりにし、レナの『身体強化フィジカルブースト』と併せて想像以上の力が出たんだと思う。

 自身で使える様になった『身体強化フィジカルブースト』を併用して師匠との稽古を続けているが、あの時の力には程遠い。

(まぁ、12歳になるまでのんびりやるさ)

 とは思っているものの、一度あの『強さ』を体感してしまった今は少し焦りもある。




 山道を抜け、次第に周囲に緑が無くなり岩場の斜面に出る。

「あ、温泉の匂い……」

 カズミがスンスンと鼻を鳴らす。

 軽い斜面を上がると……

「あったー!温泉ー!」

 岩で囲まれたちょっとした泉。ルドルフさんが近づいて手をつける。

「ふむ。温度は丁度いい感じだね」

 泉から山の斜面へと繋がる岩壁を伝って、ここへ流れ込んでる様だ。

「ここで湧き出してる訳じゃなく、どこかの源泉からここへ流れてきてるようだ」

 やがて温泉の中のルドルフさんの手が輝き出す。

「パパが『分析アナリシス』を使って調べてるわ」

 レナが耳元でささやく。

「ほぉ……かなりの成分が混じり合ってるな。複数の源泉から流れ込んでるのか……」

 ルドルフさんが呟く。

「体力回復、魔力回復、ちょっとした傷にも効く成分と……ほほぉ。『抗加齢アンチエイジング』による美肌効果もあるぞ」

「!」

 美肌効果と聞いて、カズミ、レナ、リズが食い付く。いやみんなまだまだ若いから。

「源泉を探しに行くか……アレスくんとガルムくん、まだ先に行ってみたいからついてきてくれるか?」

「おけ。イイっすよ!」

 アレスが元気に応える。

「後は……今の間に温泉堪能しとくか?」

 ルドルフさんがそう言った途端、戦士二人が「しまった!」という顔をする。

「あの……オレ達は……その」

 ガルムがオドオドと言った。

「源泉調査の後な。女子供優先だよ当たり前じゃないか」

 ルドルフさんがニヤリと笑う。ゆっくり落ち着いて入る為に気を使ってくれたんだな。

 ルドルフさんは、後ろ髪引かれるスケベ戦士二人を連れて、なだらかな岩山を登って行った。

「じゃあ、先に女性陣に入ってもらうか。俺達はここで見張っとくよ」

「そ、そうだな!」

 俺はジャンの手を引いて、温泉から少し離れた岩陰に行った。

「絶対覗いちゃだめだからね!」

 後ろからカズミの怖い声がする。

「の、覗かねぇよ!き、興味ねぇし!」

 ジャンが返す。

「だよな!ヒロヤ」

「いや、俺は興味あるかな……」

「……いや、実はオレも……」

 小さな声でホンネを話し合った。




「ヒロヤ兄ちゃん!一緒に入ろうよ!」

 マルティナの声に、ジャンとふたりして岩陰から顔を出すと……

「マルティナ!タオルタオル!」

 素っ裸のマルティナがこちらに走ってくる。後ろにはタオルを巻き、マルティナのタオルを手にしたレナが追いかけてる。

「ブッ!」

「ジャン!」

 ぶっ倒れるジャン。鼻血を出して意識失ってるぞ……まぁ6歳児には刺激強いわな。

(成仏しろよ……)

 ジャンを看取る俺に体当たりするマッパのマルティナ。ムッチリとした感触に包まれたかと思いきや、いつの間にか現れたリズとともにあれよあれよと俺は脱がされた。

「いいじゃん!一緒に入ろうよ!」

 リズがニヤリと笑う。後ろではレナがやれやれといった顔をしてる。

 ふたりに抱えられて、温泉へと運ばれた。

「ちょっと!覗くなっていったじゃん!」

 腰まで温泉に浸かったカズミが胸元を隠しながら怒鳴る。

「いや俺の意思じゃないから!」

 マルティナに抱きかかえられ、そのまま温泉に浸かる。

(あ……良いお湯……)

 そして素敵な背中への感触……柔らかい。前世といい今といい、俺の背中どれだけの徳を積んだんだ?ってくらい幸せだわ。

「ヒロヤ兄ちゃん、ちっちゃくて可愛い」

 むっちりとしたマルティナに後ろ向きに膝の上に抱きかかえられ温泉と……を堪能する。

「おー小さいくせに良い身体してんじゃん。ちゃんと鍛えてるんだ」

 隣には少し色黒な、細身で筋肉質ながら出るところは出て色気のあるリズ。なかなかワイルドな色気だ。頂点のポッチは見事な桃色。

「一緒にお風呂♪」

 ニコニコ顔で俺の左腕にしがみつくアリサ。

「ヒロヤ、せめて目瞑ってよ」

 正面には赤い顔で俺を睨みつけるカズミ。

 レナは温泉を堪能してるのか、うっとりとした表情だ。

 ふたりとも年相応の幼女体型だが、胸は少しだけレナに軍配が上がるか。

 でも恥ずかしそうなカズミの表情も堪らない。可愛いしゅき。

 とにかく、俺はおっきしたモノを手で抑えながら目を瞑った。




「しかし、水浴びとかは好きだけど、温かい湯に浸かるってこんな気持ち良いんだな」

 リズの声。

「ここまで歩いてきたけど、その疲れも飛んじゃうね」

 レナの声。

「温泉……ずっとお湯に浸かりたかったんだ……幸せ……」

 カズミの声。

「お湯気持ちいい!」

 これはアリサの声。

「あ!あたしのここの傷、見えなくなってる!」

 背中越しにマルティナの声。手の動きから、どうやら胸の傷の事を言ってるらしい。

「ほら!ヒロヤ兄ちゃんこれ!」

 そう言って俺の頭を捻る、目を開けるとまさに「どーん!」といった感じでマルティナの胸が。そして陥没した乳首が俺を欲情させる。

「ほ、ほんとだ……さっきまで残ってたよね」

 ゴブリンにつけられた深い傷が幾つも残ってた胸がきれいな白い肌に戻っていた。

「こら!ヒロヤ!目を開けない!……って、すご、本当にきれいになってる……この温泉の効能は本物だね」

 傍に来て、俺の目を塞いだカズミの驚く声がする。

「ほほぉ……こりゃ凄えな……」

 リズの感心する声。冒険者である彼女にしてみればありがたい効能だろう。




「さて、そろそろ上がろうか」

 リズが立ち上がった水音がする。

「お、俺はもう少し入ってるよ……マルティナ、ありがとう。もう離してくれる?」

「えー……わかった。逆上せちゃだめだよ?」

 ザブザブと温泉から上がる水音が続いた後、不意におっきした俺のジュニアをギュッと力一杯掴む小さな手。

「ぐふっ!」

「……えっち……」

 カズミだった。耳元で責めるように囁いて、彼女も上がっていった。

しずまらなきゃ出れないよ……」

 ようやく目を開けれた俺は、そのいうことを聞かないジュニアをお湯越しに見下ろした。

「そういや……ジャンのやつ大丈夫かな……」




 ルドルフさん達が帰ってくる頃には、なんとかジャンは意識を取り戻し、男4人で温泉に入っていった。

 帰り道でスケベ戦士二人とジャンに色々と追及されたが、隣で手を繋ぐカズミの視線が怖くてとにかくスルーした。




 村に帰ってきて、冒険者パーティーやジャン、アリサと別れて俺の家に来た。

「なるほど。山の源泉にそんな効能が」

 ルドルフさんの話を聴いて、深く頷く父。

「ええ。冒険者達が増えている今、この温泉を利用しない手は無いと思いますね」

「そういえば、旅の最中に温泉に入る機会あったけど、あれは確かに気持ちよかったなぁ」

 母が懐かしそうに笑う。おそらく冒険者時代の話なんだろう。

「ああ。山の中で野宿した時だったな。あれは気持ち良かった」

 父も懐かしそうに話す。

「この人ったら、勇者様と覗こうとするもんだから、魔術師のミリアに『水の息吹ウォーターブレス』食らってたのよ」

「あ!あれは勇者殿が!」

 と父は腰を浮かせるが、思い直して咳払いをする。

「ゴホン!とにかく、その源泉から村まで温泉を引くのはいいアイデアだ。皆が利用できる温泉場の建設を検討しよう」




「それと領主様」

 カズミが父に話しかける。

「ん?カズミさんどうした?」

「領主様は元冒険者と伺いました。その、武器や防具を作る職人に心当たりはありませんか?是非この村に招致して欲しいのですが」

「ふむ。それは確かにこの村に必要なものなのだが……」

 父が難しい顔をする。

「冒険者の始まりの地として、急速に発展はしているものの、まだまだこの村は小さいのだよ。腰を落ち着けて店を出してくれる職人が居ないのだ」

 父の言葉を聞いて、カズミが少し考える。

「ならば……温泉場の建設後で構いませんので、王都の軍隊の招致を考えて頂けませんか?」

「軍隊……?ほほぉ。村に軍事訓練の部隊を招致しろということか」

 父がカズミを感心したように見つめる。

「はい。城塞都市ムンドに駐留する部隊は交代制だと聞きました。そこで、交代する部隊の調練場として村を利用して頂けないかと」

「王都からムンドに向かう部隊に、ここで暫く調練してもらってからムンドに向かう。と」

「そうです。そしてムンドから引き揚げる部隊にも、ここでひと休みして頂きます。どちらの場合にも、効能が高い『温泉場』は非常に良い癒しとなるでしょう」

 おお、カズミの表情が『仕事中の三浦主任』だわ。

「なるほど。これは良い案だ。守護騎士殿の娘とはいえ、末恐ろしい知恵者よ」

 父はそう言って俺を見るとニヤリと笑った。

「部隊が短期間とはいえ交代で駐留するとなったら、自然と職人も集まる事だろう。よし、まずは温泉場の建設に力を注ごう」

 父はカズミの手を取って握りしめる。

 カズミはキョトンとした表情で父を見つめた。

「こ、子供の戯言を真面目に聴いて頂いてありがとうございます!」

「いやいや、素晴らしいアイデアだよ。秘書として欲しいぐらいだ」

「滅相もありません!」

 カズミは赤い顔をして俯いた。

 そんなカズミを惚けた顔で見つめるコウイチ。

 だめだからな。カズミは俺のもんだ。


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