【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

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12話「盗賊マルティナ」

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「我ら三人、幼馴染同士のパーティー結成に!」

 戦士・アイザックがジョッキを掲げる。

「「「カンパーイ!」」」

 あたし『盗賊シーフ』のマルティナと、『魔術師』のロアナ、そして戦士のアイザックは幼馴染。アイザックとロアナは同い年だけど、あたしは1コ下。

 この国では12歳になったら冒険者として登録できるけど、みんな訓練をしっかりやろうということで、あたしが15歳になるまでパーティー結成は見送ってたんだ。

「って苦いんだけど」

 初めて麦酒を飲んだあたしの第一声。

「これが癖になるんだよ。よく冷えた麦酒は何物にも勝る!」

 アイザックはそう言ってジョッキをひと息で空にする。

「マルティナの訓練終了までこの村の周辺で3ヶ月ほど経験を積んだけど、ほんと私達初心者には良い場所よ」

 麦酒をちびちびと飲むロアナが微笑む。

「なんだ……もうふたりでパーティー組んでんじゃん」

 苦い麦酒が口に合わず、肉串をつつきながら拗ねてみせた。

「なに拗ねてんだよ。マルティナの盗賊としての腕が無きゃ俺達は未完成なんだ」

 アイザックがあたしのおでこを指で突く。

「そうよ!あなたがこうやって一人前になってくれたから、晴れてパーティーとして登録できたのよ」

 ロアナがあたしの頭を撫でる。ほんとこの二人にかかっては、あたしはいつまでも妹ポジションだ。




 故郷の村でも、いつも男の子にいじめられて泣いてたあたしをふたりで慰めてくれてたっけ。

「ほら。泣き顔は似合わないわよ」

 そう言ってハンカチで涙を拭ってくれたロアナ。

「俺らふたりはお前の味方だから。さあ、帰ろう」

 そう言って、いつもおぶって連れて帰ってくれたアイザック。




「拗ねてないよ」

 そう言ってあたしが微笑み返すと、嬉しそうに笑うふたり。これからもずっと三人一緒なんだ。




「あーよく飲んだ」

 アイザックは足元のおぼつかないロアナを支えて店を出る。

 あたしは初めて飲んだアルコールのせいで初春の夜というのに身体が熱い。

「さ、宿に帰るか」

 ロアナに肩を貸しながら、引きずるように歩き出すアイザック。

「あたしは……ちょっと酔い醒ましに散歩してくるね」

「大丈夫なのか?」

「うん。少し歩きたい気分。初めての村だからね。ちょっと散策もしたい」

 まぁアイザックとロアナの邪魔したくないってのも理由の一つ。昔から仲良かった二人。あたしが訓練明けるまでの3ヶ月で仲も進展した事だろう。

「空気が澄んでて気持ちいい」

 『盗賊シーフ』の訓練を受ける為、長く王都の訓練所に居たあたしは、何となく故郷の村と同じ匂いのするこのラツィア村が気に入った。




「うそ!急に雨なんて!」

 1時間ほど散歩していたら、急に雨に降られた。酔いはとっくに醒めており、雨粒がとても冷たい。

 ちょうど通り掛かっていた廃屋敷に雨宿りする。

(ホッ、玄関は開いてる……)

 中を盗賊シーフのスキルで探知する。うん。誰も居ない。

「おじゃまします……」

 そっと中に入る。

「雨が止むまで待つか……」

(確かポーチにタオルがあった筈だから……)

 腰のポーチを開けようとした時……

「ぐっ!」

 後頭部を強い衝撃が襲う。

 意識が遠のきそうになるのを、なんとか踏ん張って、急いでその場から離れる。

 頭を押さえると……出血していた。

 そして、前方に輝く幾つもの赤い輝き……

「ゴブリン!まさか!あたしの探知では……」

 数匹のゴブリンが、暗闇から飛び掛ってくる。

(複数のゴブリンに押さえ込まれたら終わりだ)

 頭の出血を押さえながら、ショートソードを抜き放つ。

 右から襲い掛かるゴブリンの棍棒をショートソードで受け流す。

 その瞬間、左脚に衝撃が走る。

「グフゥッ!」

 別のゴブリンの棍棒が左膝に直撃した。

(ダメだ……折れた……)

 左脚を引き摺り、なんとか逃れようと後退りする。

 そんなあたしの様子を見て、下卑た笑いを浮かべたゴブリンが棍棒を振りかざして飛びかかってきた。

「いやっ!」

 ショートソードで払おうとするも、弾かれ、武器を取り落としてしまう。

(いや……いや……たす……け……)

 5匹は居るゴブリンが掴み掛かってくる。

 腕を掴むゴブリンを振り払い、脚を押えるゴブリンを蹴り飛ばす。

 しかし腰にタックルされて、とうとう押し倒される。

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 暴れてなんとかゴブリンを振り払おうとするも、右脚にも棍棒が振り下ろされる。

「痛い!」

 右脚も折れた……もう逃げられない。

 うつ伏せに這いつくばって逃げようとするも、背中にゴブリン達がのしかかり押さえつけられる。

 腰部の革防具を剥ぎ取られ、下着も引き裂かれる。

「いやぁぁぁ!助けて!助けてぇ!」

 あお向けにされ、胸部の革防具も剥ぎ取られる。

 剥き出しになった乳房にゴブリンが喰らい付く。

「痛い!痛い!いや、いや、いやぁぁぁぁ!」

 そして下腹部に走る感じたことの無い激痛。

(あぁ……あたし……ゴブリンに……)

 何度か聞いたことのある『ゴブリンに捉えられた女冒険者の末路』……

 このまま死ぬ事も許されず、ずっとゴブリンの慰み物になり、子種を植え付けられ、醜悪なゴブリンを延々と産みだす運命。

「助け……て……アイザック……ロアナ……」

 そう呟くあたしの口を塞ぐように、ゴブリンの醜悪な陰茎が突き立てられた……




 もうどれくらい経っただろうか。あたしには永遠に思えた時間だった。

 あれから別の部屋に引きずり込まれ、いちだんと大柄なゴブリンに犯され続けている。

 抵抗しないように両腕も折られ、身動きが取れない。

 そして折られた箇所の激痛の為、意識を失う事も許されない。

 もう秘部の痛みはない。痺れるような感覚だけだ。

 ただ、下腹部が苦しい。どれだけの体液を注ぎ込まれたのだろう。

(死にたい……早く死にたい……)




 やがて、室内が騒がしくなる。

 あたしは目を開けているものの、視覚が機能していない。なにも見たくない。

 暫くして、あたしにずっとのしかかっていた重量がふと軽くなる。

 あたしの頭が持ち上げられる。そして柔らかく、暖かい感触に包まれる。

「……殺して……もう……ころして……」

 この暖かい感覚に包まれたまま死にたい。あたしはずっと死を懇願するように呟き続ける。

(大丈夫……もう大丈夫だから……)

 子供の声がする。

 その声の主が見たくて、あたしは拒絶していた視覚を受け入れる。

 ぼんやりと見えてきたのは、泣き顔の男の子。あたしの頭を優しく抱いてくれている。

「大丈夫だから……」

 男の子が呟く。

(アイザック?)

 そして優しくあたしの頬をハンカチで拭う女の子。

(ロアナ……?そっか、あたしまたいじめられて泣いてたのか……)

「あぁ……アイザック……一緒にお家に帰ろう……」

 またおぶってお家に連れて帰ってよ。アイザック……


ーーーーーーーーーーーーーーー


「恐らくは恐怖からの記憶の混濁……いや幼児退行か……」

 盗賊さんの治療をひと通り終えたルドルフさんが、駆けつけた男女の冒険者に説明している。

 俺達は治療室の隅で3人膝を抱えて座っている。そう、親を含む大人達にかなり怒られたのだ。

「それで……マルティナは大丈夫なんですか……?」

 魔術師風の女性冒険者が聞く。

「身体の方はもう大丈夫だ。……膣内や子宮も処置して……大丈夫、孕んでもおらんよ」

「マルティナ……なんでこんな事に……」

 戦士風の男性がその場に座り込み、涙を流した。この人が、盗賊さんが言ってたアイザックという人らしい。

「幼児退行していたのはある意味都合が良かったよ。この村での出来事すべての記憶を消しておいた。万に一つも思い出すことはない」

 ルドルフさんがアルコールで両手を洗い、タオルで手を拭きながら椅子に腰掛ける。

「静かな場所で落ち着いた生活を送れば、他の記憶は戻ってくるはずよ」

 ジゼルさんがアイザックにハンカチを手渡す。

「ありがとうございます」

「暫くこの村で落ち着いて過ごすといい。幸いにも……」 

 ルドルフさんが俺達を見る。

「今はこの子供たちを自分の幼馴染と認識してるようだしね」

「ふぇ?」

 カズミが変な声をだした。

「あら?あなた達が責任を持ってマルティナちゃんの面倒を見てあげるのよ?……それぐらいのお仕事任されてもいいわよね?」

 ジゼルさんがウインクする。

「……頼めるか?」

 アイザックさんが俺の手を握り締める。

「私達は一旦故郷の村に帰って、マルティナとの生活を始める支度をするの。そしてここにマルティナを迎えに来るまで……お願いします」

 ロアナと言うらしい女魔術師が頭を下げる。

「いや、俺達は村の奉仕活動もやらされる事になっていて……」


 そう。こんな危険な事をした俺達やジャン達はこっぴどく大人達に怒られたのだ。

 ジャンとアリサの両親、そしてこのアイザックとロアナには凄く感謝されたのだが……危険な事をしたのには変わりはない。

『今後しばらくは奉仕活動に勤しむように』

 俺の父はそう命じた。


「一緒にやれば良いのよ。マルティナちゃんもしばらくしたら元気になるから」

 ジゼルさんに押し切られた。

「では、マルティナの事、よろしくお願いします」

 アイザックとロアナは頭を下げ、治療院を出ていった。

「さ、あなた達も泊まって行きなさい」

 ジゼルさんが俺達を立たせる。

「せっかく『検査入院』という形でこっちで引き取ったんだ。朝になれば親御さんたちの怒りも落ち着いてるだろうさ」

 ルドルフさんがタバコをふかしながら笑う。

 俺とカズミ、そしてレナはしゅんとしたままで寝室に連れて行かれたのだった。


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