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第一章 狐
六
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時刻は午後六時を過ぎていた。車に戻ると、引田はメモを見て言った。
「うーん。清里か。二、三時間は掛かるな」
「これから行くんですか?」
僕は訊いた。
「いや、明日にしよう」
明日の午前八時に出発することに決まった。
引田は僕の居住アパートまで送り、翌日も迎えに来ると言って去っていった。
僕の部屋は二〇三号室だ。見上げると、灯りが付いていた。同棲中の恋人、芽衣子が僕を待っている。芽衣子は二年前から交際している恋人だ。警察大学校に通っていた九か月間は休日しか会えなかったが、今は毎日顔を合わせられる。
僕はチャイムを鳴らした。するとドアが開いた。
「おかえりー」
芽衣子が屈託のない笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま」
「今日、初出社だったんでしょ。どうだった?」
「うん。職場はいい人達そうだった。仕事は、まだよく分からない」
「そうなんだ。まあ、初日じゃまだよく分からないよね」
「うん」
彼女の想像以上に常識を超えた意味でよく分からないという思いがあったが、それ以上は言わなかった。心霊捜査室の事は他言できない決まりだった。玉木所長から、捜査上必要な時以外は心霊捜査室の捜査官であることは友人はもちろん家族にでさえも他言無用であると釘を刺されている。だから、先程の引田も特別捜査官と名乗っていた。
「キャリアだから、警部補なんだっけ?」
「そうだよ」
「刑事なの?」
「えーと、まあ、そんな感じだよ」
お茶を濁した言い方しかできないのはもどかしい。
「すごーい」
僕の状況を知らない芽衣子は無邪気にはしゃいだ。芽衣子は警察についてはテレビドラマでの真贋入り混じった知識くらいしかない。しかし、その方が好都合でもある。もし、警察に詳しい人間だったら誤魔化せない可能性も高い。
僕は部屋着に着替えた。テーブルには夕食の用意がしてある。
「それより、腹減ったよ。食べよう」
「うん。今日はハンバーグだよ」
嬉しそうに芽衣子は言った。芽衣子のレパートリーはハンバーグ、カレー、オムライスのおおよそ三択だ。その中ではハンバーグが一番うまい。たまに、餃子や酢豚などの中華や、焼き魚や肉じゃがなど和食の時もある。中華はまあままで、和食はイマイチだ。
「そういえば、人が沢山倒れた事件あったじゃん」
芽衣子が言った。僕はどきりとした。ニュースにもなっていたので、芽衣子が知っていてもおかしくはないが、タイムリーだなと思った。
「うん、あったね。それで?」
「実は、うちの会社から結構近かったんだよね。一駅くらい先なんだけど」
「ああ、そうなんだ」
「だから、会社で話題になっててね。毒ガステロとかだったら怖いなって」
「ああ。あれね、テロとかじゃなさそうだよ」
「えっ。もしかして、あれの捜査してるの?」
興味津々と言った風に芽衣子が目を輝かせた。
「いや、そういう訳じゃないよ。ちょっと小耳に挟んだだけで」
僕は笑って誤魔化した。秘密を持つというのは、簡単ではなさそうだと思った。常に神経を張り巡らせないといけないのは気が休まりそうにない。ふとした瞬間に口走ったらどうしようと不安になった。
「そうなんだ」少し残念そうな表情をした。「でも、テロじゃないなら何なんだろう。事故?」
「さあ。そこまでは知らない」
僕は何気ない風を装って言った。
「ふーん」
そして、他愛もない話をしつつ夕食を終えた。僕は芽衣子を後ろから抱きしめた。芽衣子の豊満な胸を揉む。
「やっぱり、芽衣子のおっぱいは最高だな」
僕がそう言うと、芽衣子は満更でもない感じで笑みを漏らした。
芽衣子はFカップの巨乳の持ち主だ。あくまで僕の個人的の意見だが、DカップのDはデフォルトで、これがノーマルであり基準であると思っている。EカップのEはエクセレントだ。そしてFカップのFはファンタスティック、GカップのGはグレートだ。Hカップ以上も悪くないが、やはりDからGまでが僕が好きなおっぱいだ。
正直なところ、彼女と付き合う事にした決め手はこの巨乳だった。僕にとって胸の小さな女性はほぼ男性と言っても過言ではないくらいなのだ。女性は巨乳に限る。というより、巨乳こそが女性だと思っている。こんな事は誰にも言えない。言ってしまったら、多くの女性を敵に回すだろうことは容易に想像できるからだ。大学に入って間もない頃、美人だが胸の小さな女性に好意を寄せられた事が数度あった。しかし、僕はイマイチときめかなかった。周りからはもったいないとか、同性愛者なのかとかぐだぐだ言われたが、僕は適当に煙に巻いていた。本音は「確かに美人だが、おっぱいが足りない」だった。そして、大学三年の時に芽衣子に出会った。僕は、芽衣子に、というより芽衣子の胸に一目惚れした。顔は中の上くらいで申し分ないし、胸は上の上だ。僕は今までで一番と思うくらいには頑張って芽衣子にアタックしたのだ。そして、今、芽衣子のおっぱいは俺の手の内にある。最高な揉み心地だ。
ふと、僕は玉木所長の巨乳を思い出した。自分より十以上年上と思われるが、最上級のおっぱいの持ち主だ。玉木所長は犬神に呪縛を掛けたり、少し怖い部分があるのかもしれないとも感じた。
「もう、来人は私じゃなくておっぱいが好きなんだもんね」
芽衣子が頬を膨らませながら、こちらを見た。僕はどきっとしながら「そんな事ないよ」と否定した。
「芽衣子、今日も一緒にお風呂入ろうか」
僕は芽衣子の胸を揉みながら首筋に顔を埋めて言った。芽衣子は「うん」と頷いた。
「うーん。清里か。二、三時間は掛かるな」
「これから行くんですか?」
僕は訊いた。
「いや、明日にしよう」
明日の午前八時に出発することに決まった。
引田は僕の居住アパートまで送り、翌日も迎えに来ると言って去っていった。
僕の部屋は二〇三号室だ。見上げると、灯りが付いていた。同棲中の恋人、芽衣子が僕を待っている。芽衣子は二年前から交際している恋人だ。警察大学校に通っていた九か月間は休日しか会えなかったが、今は毎日顔を合わせられる。
僕はチャイムを鳴らした。するとドアが開いた。
「おかえりー」
芽衣子が屈託のない笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま」
「今日、初出社だったんでしょ。どうだった?」
「うん。職場はいい人達そうだった。仕事は、まだよく分からない」
「そうなんだ。まあ、初日じゃまだよく分からないよね」
「うん」
彼女の想像以上に常識を超えた意味でよく分からないという思いがあったが、それ以上は言わなかった。心霊捜査室の事は他言できない決まりだった。玉木所長から、捜査上必要な時以外は心霊捜査室の捜査官であることは友人はもちろん家族にでさえも他言無用であると釘を刺されている。だから、先程の引田も特別捜査官と名乗っていた。
「キャリアだから、警部補なんだっけ?」
「そうだよ」
「刑事なの?」
「えーと、まあ、そんな感じだよ」
お茶を濁した言い方しかできないのはもどかしい。
「すごーい」
僕の状況を知らない芽衣子は無邪気にはしゃいだ。芽衣子は警察についてはテレビドラマでの真贋入り混じった知識くらいしかない。しかし、その方が好都合でもある。もし、警察に詳しい人間だったら誤魔化せない可能性も高い。
僕は部屋着に着替えた。テーブルには夕食の用意がしてある。
「それより、腹減ったよ。食べよう」
「うん。今日はハンバーグだよ」
嬉しそうに芽衣子は言った。芽衣子のレパートリーはハンバーグ、カレー、オムライスのおおよそ三択だ。その中ではハンバーグが一番うまい。たまに、餃子や酢豚などの中華や、焼き魚や肉じゃがなど和食の時もある。中華はまあままで、和食はイマイチだ。
「そういえば、人が沢山倒れた事件あったじゃん」
芽衣子が言った。僕はどきりとした。ニュースにもなっていたので、芽衣子が知っていてもおかしくはないが、タイムリーだなと思った。
「うん、あったね。それで?」
「実は、うちの会社から結構近かったんだよね。一駅くらい先なんだけど」
「ああ、そうなんだ」
「だから、会社で話題になっててね。毒ガステロとかだったら怖いなって」
「ああ。あれね、テロとかじゃなさそうだよ」
「えっ。もしかして、あれの捜査してるの?」
興味津々と言った風に芽衣子が目を輝かせた。
「いや、そういう訳じゃないよ。ちょっと小耳に挟んだだけで」
僕は笑って誤魔化した。秘密を持つというのは、簡単ではなさそうだと思った。常に神経を張り巡らせないといけないのは気が休まりそうにない。ふとした瞬間に口走ったらどうしようと不安になった。
「そうなんだ」少し残念そうな表情をした。「でも、テロじゃないなら何なんだろう。事故?」
「さあ。そこまでは知らない」
僕は何気ない風を装って言った。
「ふーん」
そして、他愛もない話をしつつ夕食を終えた。僕は芽衣子を後ろから抱きしめた。芽衣子の豊満な胸を揉む。
「やっぱり、芽衣子のおっぱいは最高だな」
僕がそう言うと、芽衣子は満更でもない感じで笑みを漏らした。
芽衣子はFカップの巨乳の持ち主だ。あくまで僕の個人的の意見だが、DカップのDはデフォルトで、これがノーマルであり基準であると思っている。EカップのEはエクセレントだ。そしてFカップのFはファンタスティック、GカップのGはグレートだ。Hカップ以上も悪くないが、やはりDからGまでが僕が好きなおっぱいだ。
正直なところ、彼女と付き合う事にした決め手はこの巨乳だった。僕にとって胸の小さな女性はほぼ男性と言っても過言ではないくらいなのだ。女性は巨乳に限る。というより、巨乳こそが女性だと思っている。こんな事は誰にも言えない。言ってしまったら、多くの女性を敵に回すだろうことは容易に想像できるからだ。大学に入って間もない頃、美人だが胸の小さな女性に好意を寄せられた事が数度あった。しかし、僕はイマイチときめかなかった。周りからはもったいないとか、同性愛者なのかとかぐだぐだ言われたが、僕は適当に煙に巻いていた。本音は「確かに美人だが、おっぱいが足りない」だった。そして、大学三年の時に芽衣子に出会った。僕は、芽衣子に、というより芽衣子の胸に一目惚れした。顔は中の上くらいで申し分ないし、胸は上の上だ。僕は今までで一番と思うくらいには頑張って芽衣子にアタックしたのだ。そして、今、芽衣子のおっぱいは俺の手の内にある。最高な揉み心地だ。
ふと、僕は玉木所長の巨乳を思い出した。自分より十以上年上と思われるが、最上級のおっぱいの持ち主だ。玉木所長は犬神に呪縛を掛けたり、少し怖い部分があるのかもしれないとも感じた。
「もう、来人は私じゃなくておっぱいが好きなんだもんね」
芽衣子が頬を膨らませながら、こちらを見た。僕はどきっとしながら「そんな事ないよ」と否定した。
「芽衣子、今日も一緒にお風呂入ろうか」
僕は芽衣子の胸を揉みながら首筋に顔を埋めて言った。芽衣子は「うん」と頷いた。
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