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第11話 イベントへ② 1000m走

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 …遠い。
 10分経っても競技場は見えなかった。

 ひたすら階段を登り続けた。
 それから5分後、

「やっと。着いた」

 競技場前でしんどそうな水色、緑色メンバー。座りこみ、なかなか立てずにいると聞きなれた声が。

「久しぶりだな!ゴリラエンジン」
「ナナ!」
「あれ?もう競技始まってるんじゃ」
「ナナが出るのは魔法飛ばしとダンジョン探索と最終日の上限なしのギルド対抗戦だぞ」
「言っちゃっていいの?」
「ゴリラエンジンはギルドに入ってないからな。言っても問題はない。…もしかして、止めたのに入ったのか?」
「入ってない入ってないって」
「なら問題ないぞ!もちろん、告げ口も禁止だからな!」
「分かってるって」

 ナナと話しているうちに体力は回復し、競技場へと向かった。

「楽しんでくるんだぞ」
「あぁ、じゃあな、ナナ」

 競技場の中に入り、知ってる世界とはまた違う世界を見た。
 今までは友達と魔法の練習をして狩りをして。そんな日々だったのが、今目の前では4種の種族が全力で戦っていた。
 今日の種目は【1000m走×5】。

「うぉ。すげぇ」

 空を飛ぶエルフ。物凄いスピードで走る獣人。土の中を泳ぐ魚人。そして平凡な人間。

「マジで人間が圧倒的不利じゃん」

 拓海が入ったタイミングは遅かったため、もう既に3回戦が終了していた。

 1回戦目勝者獣人。2回戦目勝者エルフ。3回戦目勝者獣人。
 そして4回戦目がスタートしようとしていた。

「おーい!」

 振り返ると先程裏門で出会った女の人だった。

「遅かったね」
「はは。始めてでここまで来るのあんなに大変なんですね」
「…」
「ん?」
「あ、そっか!入る時に教えとけば良かったね。裏門から登った3段目、あそこで全力で足踏みするとバグでここまですぐに来れるの」
「え!?」
「ごめんね。伝えとけば良かった」
「いえいえ、むしろ良いこと教えてもらえて助かりました。明日からはその技使わせてもらいます!」
「…優しい人だね」
「え?」

 そのうちに4回戦目が終わった。勝者は獣人。

「ごめんね。これ見に来たんだよね。次がラストだから見ないとね」
「はい」

『皆さん、本日最後の戦いですよ~。盛り上がって行きましょ~!!!!』

「ウォー!!!」

 かなり盛り上がっている。主にギルドメンバー。

『5回戦目はギルドリーダーによるガチ勝負!大いに盛り上がりましょう。まずは社畜ギルドのリーダーガンバルンバ。続いて自由ギルドリーダーミルキー。その横は狩りギルドリーダーライオン。そして魚群ギルドリーダーサカナの戦いです!!』

 盛り上がる実況。ちなみにこの実況はギルドに所属していないメンバーが務めることになっている。
 
『それでは、位置について、よーい、ドン!!』

 一斉にスタートした。
 軽やかに飛ぶエルフに拓海は思わず、

「エルフ、綺麗だな」
「だよね。私もエルフにすれば良かった」

 そして、勝者はエルフだった。

『それでは本日の順位発表。1位狩り、2位自由、3位魚群、社畜となります。まだまだ順位変更はありますので皆さん、頑張ってくださいね!それでは、また明日ー!』

「これがあと1週間続くんですね」
「そうだよ。楽しみだよね!」
「はい!」

 そして柴田似の女性と別れ、1人帰路に着こうとしていた。
 すると、出会ってしまった。
 あの男と。

「ゴリラエンジン君!もしかして、気が変わったのかい?」
「え…」
「あれ?もしかして昨日の今日で忘れたのかい?ハッハッハ。社畜のリーダーだよ」
「いや覚えてますけど…」
「そうかいそうかい。ごめんね」
「それじゃ…」

 再び手を掴まれる拓海。だが、今回は油断しない。すぐに手を振りはらった。

「何をするんだ」
「だから俺はギルドに入るつもりはないんだって」
「目上の人にそんな態度とっていいと思ってるのか?」
「目上の人?俺とあなたは関わりがないですよね」

 拓海がガンバルンバと争っていると空からナナが助けに来た。
 拓海を持ち上げガンバルンバと引き離してくれた。

「お前、何やってるんだ?」
「帰ろうとしたら絡まれたんだよ」
「はぁ。今日はエルフの町から帰った方がいいぞ」
「…あの、一緒に良いですか?」
「ゴリラエンジン、敬語は辞めろ。一緒に行ってやるぞ」
「ありがとうな」

 この日はガンバルンバの絡みによりすぐにログアウトしたかったため、エルフの町観光はせずに森へと帰って行った。





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