うそつきの精霊たち

トノサキミツル

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第四話

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 青の精霊がいった。

 ぼくはきみに文句を言ったつもりはない。

 ぼくはきみに向けて、不快なことをしゃべったつもりとは思わない。

 そして、きみは前に、ずっと前に、よく考えてからつぶやけと言った。

 ぼくは覚えている。

 きみは自分の言ったことを忘れている。

 きみは自分がつぶやいた言葉を忘れてしまっている。


 君の言葉で元気がでる人がいるんだ。

 君の言葉で傷つくひとがたくさんいるんだ。

 君の言葉で悲しむひとがいる。

 それはぼくだ。

 青の精霊が泣きながら、つぶやいた。
 垂れ落ちた涙は青く、空いろのようなインクの色になって滲む。

 みんながうなずいた。
 いいね。いいね。いいね。言葉が回る。時空を超えて、戻ってはくるくると回っていく。

 そして、それは怒った精霊のもとへ届いた。
 怒った精霊はぱちんと音を立てて、泡をつくって消えた。
 
 精霊は、口にした言葉をうそにしてしまうと元には戻れない。

 また姿を変えて、羽をのばして言葉をはくのだ。


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